Robert Bosch GmbH 2010年12月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万ユーロ)
  2010年
12月期
2009年
12月期
増減率
(%)
要因
グループ全体
売上高 47,259 38,174 23.8 -
純利益 2,489 (1,214) - -
自動車技術部門
売上高 28,097 21,716 29.4 +中国、インド等に代表される業界全般の好調

要因
1) 自動車事業の業績
-自動車技術部門の売上高は前年比で29%増加の28,097百万ユーロ。北米のブレーキ事業を売却*したが、売上高は2007年の金融危機以前にまでほぼ回復。2010年の後半から多少減速したものの、2010年の上半期の売上高は前年同期比で約40%を上回った。
*曙ブレーキへ北米ブレーキ事業を売却。

-特にアジア地域でのマーケットシェア拡大が顕著。自動車技術部門のアジア地域の売上高は部門全体の28%で、過去最高。(前年は24%)
-製品面では、燃費向上、安全、快適性といった分野での需要の高まりが業績に寄与。主にガソリンダイレクトインジェクション、スタート-ストップシステム、エレクトリックパワーステアリングが好調。アクティブセイフティシステムへの需要も拡大。
ディーゼルシステム部門では、2009年は不況の影響が大きかったが2010年の業績は回復。欧州(西欧)でのディーゼル車販売台数の増加や、商用車市場の復調傾向が寄与。一方、シャシーシステム・ブレーキ部門は未だ停滞。

EV/HEV化への動き

HEV/EVシステム
- 長期的視点から、電気自動車の高い将来性を認識。パワートレインの電気化や、HEV、EVシステムの開発等、この分野では年間400百万ユーロを投資。
-2010年には、VW Touareg 用、Porsche Cayenne S用のパラレルフルハイブリッドの生産を開始。2011年からはPSAのe-4WD ディーゼルハイブリッド用にパワーエレクトロニクスと電気モーターを量産する予定。

バッテリー
-バッテリー技術分野では、韓国のSamsung SDIと2008年に合弁会社 SB LiMotive Ltd. を設立、2010年にはFiat 500EV用及びBMWのEV「Megacity Vehicle」用のバッテリーを受注。同年11月から韓国Ulsanで量産を開始した。

<SB LiMotibe Ltd. 概要>
-折半出資の合弁会社、両社は2013年までに500百万米ドルを出資する予定。
-拠点
1.ドイツ(Stuttgart):バッテリーパック及びシステムの開発
2.韓国(Ulsan):リチウムイオンバッテリーセルの生産/年産能力(計画):2012年までにEV20,000台分、2015年までに180,000台分
3.米国ミシガン州(Orion):バッテリーパック及びシステムの開発(旧Cobasys)
4.米国オハイオ州(Springboro):バッテリーパック及びシステムの生産(旧Cobasys)

パイロットプロジェクト
子会社のInnovations Software Technology GmbH がシンガポール政府機関「EVタスクフォース」より、国内におけるEVの充電設備を受注。同社は充電設備の設計から開発、設備、運用、メンテナンスまでを一括して行う。2011年3月に導入予定の三菱自動車の電気自動車「i-MiEV」用として、充電時間8時間のスタンドを25ヶ所、充電時間45分の急速スタンドを1ヶ所設置する計画。(2010年10月8日付プレスリリースより)

既存分野の拡大

-内燃機関の優位は少なくとも乗用車で20年、商用車ではそれ以上は今後も継続すると捉えている。
-直噴ガソリンエンジン用ユニットの販売を拡大し、現在、金額ベースで約25%を確保する世界シェアを、2012年に2倍となる50%に引き上げる計画。ダウンサイジングエンジンの普及が活発化している欧州を中心に自動車メーカーのニーズ吸収に取り組む。
-Bosch Mahle Turbo Systemsは排ガスターボチャージャーを初受注。小型ガソリンエンジンおよびコモンレール式ディーセルエンジンに採用予定。同社はStuttgart(ドイツ)に開発拠点を、Blaichach/Immenstadt(ドイツ)とSt. Michael(オーストリア)に生産拠点を保有。現在、乗用車・小型商用車用ターボチャージャーシステムを開発中。2011年末から本格生産を開始し、年間約100万台の供給を目指す。(2010年3月29日付プレスリリースより)

新興国市場
-
2010年半ばから、中国湖南省の長沙工場で「New Baseline」ジェネレーターの量産を開始。低価格小型車向けで、吉利汽車、第一汽車、Volkswagenに納入する計画。同製品はブラジルでは2008年から、インドでは2009年から生産。将来的には南アや欧州でも生産予定。(2010年8月4日付プレスリリースより)
-エアバッグコントロールユニットの新製品「AB light」を開発。中国、インド、ブラジルなどの新興国市場で需要が拡大している低価格車向け。中国江蘇省の蘇州工場で東風汽車向けに量産を開始。設計の標準化に加え、自社開発した特定用途向け集積回路(ASIC)を使用することにより、部品点数削減と小型化を実現。(2010年6月22日付プレスリリースより)

開発動向

研究開発費

(単位:百万ユーロ)
  2010年12月期 2009年12月期 2008年12月期
グループ全体 3,810 3,603 3,889
自動車技術部門 3,004 2,862 3,250
-なお、現状では売上高との比較で10%レベルにある開発投資の比率を順次削減、2012年をめどに7%程度に圧縮する計画。研究開発の効率化に取り組み費用を削減、経営体質の強化につなげていく。 (2010年1月29日付日刊自動車新聞より)

研究開発体制

-研究開発員は世界で34,000名以上。(2010年末時点)

研究開発拠点

  所在地 事業内容
地域センター 米国
ロシア
シンガポール
中国
日本
-地域動向の調査や市場機会の分析

-北海道の女満別テクニカルセンター(TCM)におけるテストコース拡張工事が終了。31億円を投じ、テストコースの面積をこれまでの倍の63万平方メートルに拡張。1992年の開所以来、TCMには総額83億円が投資されたことになる。この拡張されたテストコースは直径300メートルのダイナミック路、長さ800メートルの4車線直進路や新たな緊急回避スペースを完備。2013年までにハンドリングコースや周回路の増設のためにさらに10億円の投資を見込んでいる。さらに、43億円を投じたボッシュの研究開発施設である横浜事務所の拡張工事も2010年6月に終了した。(2010年11月16日付プレスリリースより)

製品開発

燃費向上
燃料噴射システム
噴射圧を2500気圧超に高めた大型車向けディーゼル燃料噴射システムを開発する計画。同社は、2011年末に噴射圧を現行品と比べ約15%増の2500気圧に高めた次世代タイプの投入を決めている。ただ、中期的に排ガスのクリーン化と同時に、燃費改善(CO2排出削減)を求める規制が一層、強化される見通しになってきた。このため、自動車メーカーの規制対応を支援していくには超高圧システムが不可欠と判断した。すでに3千気圧の噴射システムを試作、テストを展開しており、その成果を活用しながら早期の実用化に取り組む。 (2010年3月31日付日刊自動車新聞より)

Denoxtronic 2.2
商用車用ディーゼル排気後処理システムの新製品「Denoxtronic 2.2」を開発。「Denoxtronic 2.2」とSCRコンバーターを組み合わせることで、NOxを最大95%低減することが可能という。このシステムは米国排出ガス規制「EPA2007」、「EPA2010」、「Tier 4」および欧州規制「Euro 6」に適合するエンジン開発に寄与。(2010年8月16日付プレスリリースより)

アクティブセイフティ
衝突予知緊急ブレーキシステム(PEBS)
衝突予知緊急ブレーキシステム(PEBS)の量産を開始すると発表。PEBSはレーダーセンサーやビデオセンサーで車両前方の状況を検知、前走車に追突する危険性を予知する。PEBSが搭載されるのはAudiの新型「A8」が初めて。(2010年4月27日付プレスリリースより)

快適性
新型ヘッドユニット
8インチのタッチスクリーン付ヘッドユニットを開発。1つの画面で運転席と助手席に別々の映像を表示することができるデュアルビュー液晶を採用。この製品が搭載されるのは新型「Jaguar XJ」が初めて。(2010年5月5日付プレスリリースより)

設備投資

設備投資額

(単位:百万ユーロ)
  2010年12月期 2009年12月期 2008年12月期
グループ全体 2,379 1,892 3,276
自動車技術部門 1,556 1,165 2,195

国内投資

ドイツReutlingenの8インチウェハー工場が2010年3月から稼働開始。600百万ユーロを投資し、同社の単一投資としては過去最大の規模。なお、Reutlingenで生産される半導体とマイクロメカニカルチップは主に自動車産業向けとなる。(2010年3月16日付プレスリリースより)

海外投資

<トルコ>
-2013年までに総額約500百万ユーロをトルコ事業に追加投資する計画を発表。同社は1973年にトルコに最初の生産拠点を開設して以降、既に14億ユーロを投資済み。追加投資分は主にディーゼル・ガソリン噴射システムの生産・開発に充てる。2010年におけるBoschグループのトルコでの売上高は、前年実績(約630百万ユーロ)を上回る750百万ユーロとなる見通し。また、輸出を含めたトルコ事業の売上高は16億ユーロに達する見込み。なお、同国の従業員数は現在の8,700人から2013年には10,000人規模になる予定。(2010年9月24日付プレスリリースより)

<米国>
-Robert Boschは、米国サウスカロライナ州のDorchester工場を拡張すると発表。今後5年間で1億2500万米ドルを投資、約300名の増員を見込んでいる。今回の投資に伴う増員は2011年下半期より行われる予定。拡張した工場では、ディーゼル車およびガソリン車用フューエルインジェクター、次世代ABS、横滑り防止装置(ESC)システムを生産し、北米自動車市場へ供給する。(2010年12月3日付プレスリリースより)