Robert Bosch GmbH 2008年12月期の動向

ハイライト

業績 (単位:百万ユーロ)
  2008年
12月期
2007年
12月期
増減率
(%)
要因
グループ全体
売上高 45,127 46,320 (2.6) 1)
営業利益 1,515 3,170 (52) 2)
自動車技術部門
売上高 26,475 28,449 (6.9) 3)

1)
-売上高は前年に比べ2.6%減の約451億ユーロ。ドルやその他通貨に対するユーロ高も売上に影響を与えた。
-為替要因を無視すれば、売上は対前年度比0.5%減。
-企業買収やすでに株を保有していた企業の子会社化など、今回初めて決算に追加された売上により460百万ユーロの増。

2)
-全体の営業利益減の主な理由は、自動車技術部門の収益悪化。原材料費急騰や財務状況悪化の影響を被った。
-各部門の中で自動車技術部門の営業利益がもっとも悪化。営業利益は、前年の17億ユーロから減少し321百万ユーロ。
-自動車技術部門の営業利益率は約1.2%程度に落ち込んだ。この減少は、自動車メーカーからの受注減によって生産能力が余剰となったことや原材料費高騰に因る。

3)
-売上高は、6.9%減少し265億ユーロ。為替要因調整後でも、対前年度比5.1%の減。
-売上減の主たる要因は、北米での業績による。同社事業計画では自動車生産台数は4%程度の減少と考えていたが、実際にはより厳しい16%の減少。
-年央より欧州自動車業界も不調になり状況が悪化。
-第4四半期の金融危機の深刻化によるグローバルな生産の大幅な落ち込みも一因。
-北米で活発に事業を行っていた部門はこの不況により特に影響を受けた。とりわけシャシーシステムブレーキ部門は、ブレーキ市場の構造変化により苦戦。
-またディーゼル燃料の高騰や欧州でディーゼルとガソリンの価格差が無くなってきたことによって、ディーゼル技術の需要は軟調となった。
-不調であった自動車用マルチメディア部門の業績は、経済状況によってさらに悪化。


受注
-BMW
2008年2月、同社とZFの折半出資による合弁会社ZF Lenksystemeが供給するアクティブステアリングが「BMW X5」にオプション搭載されると発表。ZF Lenksysteme製のアクティブステアリングがSUV/SAVモデルに採用されるのは「BMW X5」が初。

-日産
2008年7月、同社の日本法人が日産自動車が2008年秋発売するSUV「エクストレイル」のDE車にエンジン制御ユニット(ECUS)を納入すると発表。

-Mercedes-Benz
2008年9月、同社製パーキング・アシスタントがMercedes-Benz A およびB-Classに採用されたと発表。

-Volkswagen
2008年11月、フォルクスワーゲン・オブ・アメリカ向けに、ピエゾインジェクタを採用したディーゼルコモンレールシステムを供給すると発表。対象モデルは、2.0リッターターボ直噴エンジン搭載の2009年式「Jetta TDI」。

-Fiat
2008年12月、同社のスタート/ストップ・システムがFiatに初めて採用されたと発表。対象車種は「500」で、2009年3月に販売開始。


企業買収

-2008年、デンマークのEsbjerg市にあるHolger Christiansen A/Sを買収。Holgerはスターター及びオルタネーターの再製造を行っている。
-2008年、米国イリノイ州シカゴのMorse Automotive Corporationのブレーキ事業を買収。


合弁事業
Bosch Mahle Turbo Systems GmbH & Co. KG
-2008年5月、同社とMAHLEは欧州独禁当局からの承認を受け、ターボチャージャーの開発・製造・販売を行う折半出資の合弁会社Bosch Mahle Turbo Systems GmbH & Co. KG(本社:Stuttgart)を設立したと発表。新会社は、同社、Mahleからそれぞれ半数ずつ従業員を出向させ、約100名体制でスタート。既に操業中のSt. Michael ob Bleiburg工場(オーストリア)およびBlaichach/Immenstadt工場(ドイツ)を利用し、2011年からターボチャージャーの量産に着手する予定。ターボチャージャーの基幹部品及びコンポーネントの製造・組立てに最大500名の従業員が従事する。(2008年5月28日付プレスリリースより)

SB LiMotive Co. Ltd.
-2008年9月、同社とSamsung SDIが自動車用リチウムイオンバッテリーの開発・生産・販売を行うため、折半出資で設立した合弁会社「SB LiMotive Co. Ltd.」が2008年9月1日から稼動を開始した。2011年から高性能リチウムイオンバッテリーシステムの量産を開始する計画。両社はこの合弁事業に向こう5年で300-400百万ドルを共同投資する予定。SB LiMotiveは、韓国の水原(Suwon)を本社所在地とし、ドイツのStuttgartに子会社を置く。(2008年9月1日付プレスリリースより)


人員削減

-2008年、約3,000名の従業員を削減。

開発動向

研究開発費 (単位:百万ユーロ)
  2008年12月期 2007年12月期 2006年12月期
グループ全体 3,889 3,583 3,348
自動車技術部門 3,250 2,899 2,743


研究開発体制
-グローバルに32,600人を越える研究開発員が在籍。
-このうち、1,400人は全社的研究及び先進技術部門に属する。
-グローバルで3,850以上の特許を申請。
-約10,000人が米国およびアジア太平洋で研究開発に従事し、各顧客の要求に対し注力。また同社は、シンガポールやサンクトペテルブルクに新しい研究開発センターを設立し国際的な研究ネットワークの拡充を実施。


研究開発施設及び試験施設
研究開発センター(シンガポール)
-2008年、シンガポールに研究および先進技術センター、「The Research and Technology Center Asia Pacific」を開設。ここでアジア太平洋地域における最新技術や市場機会の分析や研究開発への可能性を特定、促進する。

冬季自動車性能試験センター
-2008年12月、内モンゴルの牙克石(Yakeshi)で建設していた冬季自動車性能試験センター「博世(呼倫貝爾)汽車測試技術中心有限公司(Bosch (Hulunbeier) Automotive Test and Technology Center Co., Ltd.)」の開業式を行ったと発表。この試験センターは、投資総額1.5億元、総面積180万平方メートル、センター内には冬季氷面走行試験場、冬季路面走行試験場、試験室などの施設を備え、同社の保有する世界最大、最高水準の冬季試験場となった。今後このセンターでアジア太平洋地域の顧客メーカーのために寒冷気候条件下でのABS、ESP、TCS等各種アクティブセーフティーシステムの走行テストを行う。(2008年12月1日付プレスリリースより)


技術提携
-2008年12月、同社とPSA Peugeot Citroen(PSA)は、ディーゼルハイブリッド技術で戦略的提携を結んだと発表。PSAの四輪駆動ディーゼルハイブリッド車向けに、電気モーター、パワーエレクトロニクスの開発・製造・供給を行う。2011年からプジョーとシトロエンの車両に導入する予定。同社は、提携の一環として、電気リアモーター、フロントマウント型の高圧オルタネーター、それらを制御するパワーエレクトロニクスを供給する。また、PSA車両の仕様に準拠した電気・電子部品間のインターフェイス、ABS、ESPを設計する。(2008年12月9日付プレスリリースより)


製品開発
インジェクターの加圧システム
-2008年、大型商用車用の新たなシステムの生産を開始。これはインジェクターの噴射圧をさらに高めるもので、現在では2,000バールまで加圧が可能。その結果、燃焼がさらにクリーンになり、噴射プロセスもこれまでより弾力的に設定できる。

ESP(R)ブレーキコントロールの改良

-2008年、ESP(R)ブレーキコントロールの改良型の生産を開始。偏搖角と横加速度を測定するセンサーが初めてコントロールユニットと一体化され、センサー設置のスペースが不要になり、システムのアセンブリーコストの節減につながった。

乗用車のNOx対策
ディーゼル排気ガスのNOx削減対策としてSCR触媒コンバーターを採用。このシステムでは、非NOx化測定モジュールにより適正量の尿素が排気ガス流に噴射される。この技術はこれまで商用車では広く使われていたが、乗用車にはじめて使われたのは2008年になってから。これにより、Euro5, Euro6や世界で最も厳しいとされるカリフォルニアの規準などこれからの規準をクリアすることがすでに可能。

夜間視界拡大システムの新バージョン

-夜間視界拡大システムは2005年に製造が開始されたが、これまでのところ、需要の大きい高級車に装着されてきた。赤外線ヘッドライトで車両前方の路上を照らす。カメラでとらえた映像はデジタル処理され、運転者におくられディスプレー上に表示される。新しいバージョンでは、取り込んだデータを読み取り、歩行者を識別し、危険がある場合は運転者に警告を発することが可能で、2009年に量産が開始される。

自動駐車アシスト
-2008年からコンパクトクラスの2車種に搭載されている自動駐車アシストに新しいアシスト機能が加わる。新しいシステムでは、駐車スペースを測定し、ステアリング操作を行なう。運転者がやることはアクセルとブレーキを踏むことだけ。

デュアルビューディスプレー

-新型ディスプレーの"デュアルビュー"の量産に向けて現在準備を進めている。二つのプログラムを一つのモニタースクリーンに映すことが可能で、二つのプログラムのうちどちらを見られるかは見る角度によって決まる。たとえば、運転者がナビ情報をみているときに、同乗者が映画をみることができる。量産開始は2009年半ばの予定。

設備投資

設備投資額 (単位:百万ユーロ)
  2008年12月期 2007年12月期 2006年12月期
グループ全体 3,276 2,634 2,670
自動車技術部門 2,195 1,808 2,040

自動車技術部門
-自動車技術部門の設備投資は、全体の約3分の2を占めた。
-前年から引き続きドイツReutlingenの半導体工場に投資するほか、2008年はドイツ国内、インド、中国、トルコにあるコモンレールディーゼルやガソリン直噴製品の生産工場に重点的に投資。


海外投資
<オーストリア>
-2008年9月、同社とMahleの合弁会社Bosch Mahle Turbo Systemsは、オーストリアで新工場を着工する。St. Michael ob Bleiburg(Carinthia州)に建設する新工場では、2011年から、年間最大150万基のターボチャージャーの生産・組立を行う。2011年には150名以上の雇用を予定。(2008年9月18日付プレスリリースより)

<中国>
-2008年5月、中国で排ガス規制の強化に伴い需要拡大が見込まれるディーゼルエンジン(DE)用の高性能タイプの燃料噴射ポンプを増産すると発表。商用車用DEに搭載されるコモンレール式噴射装置の高圧ポンプで、日本の太田工場(群馬県太田市)では月産を今月から従来比約1.5倍の1万2千台規模へ、7月以降からは同2倍となる1万6千台規模へと段階的に引き上げる。その上で今年末には中国生産を立ち上げ、現地供給を日本からの輸入分との合計で月間3万台レベルに拡大する。(2008年5月30日付日刊自動車新聞より)