Robert Bosch GmbH 2007年度の動向

ハイライト

業績
(単位:百万ユーロ) 2007年度 2006年度 増減率
(%)
要因、背景
グループ全体
売上高 46,320 43,684 6.0 (1)
営業利益 3,170 2,416 31.2 (2)
自動車技術部門
売上高 28,449 27,220 4.5 (3)

(1)売上高は前年に比べ6%増の463億ユーロ。ドルだけでなく、円に対してもユーロ高が進んだため、売上金額にはマイナス効果。しかし、為替要因を無視すれば、昨年の売上高は少なくとも8%増加し、長期的成長目標にそって順調に推移。8%の伸びのうちほぼ1.4%は、一連の企業買収の結果初めて決算に加えられた事業の売上げに基づく。

(2)
-自動車関連事業では、営業利益率は、同部門の売上高の10.2%に相当する先行研究開発投資を実行したにもかかわらず、前年の4%から5.8%に上昇。

(3)
-自動車関連事業の売上高は、名目で4.5%増加して284億ユーロ。為替レート調整後では6.7%の増。
-増加した主な要因は、ディーゼルおよびガソリン用改良噴射システムの需要増ならびにESP(R)(電子安定制御システム)装着車両のシェアの上昇。
-Pacifica社や Beissbarth社を初めとして新たに連結対象となった会社は、名目でおよそ1.1%売上増に貢献。
-増加の要因は多々あるが、特に欧州においては、燃料消費、ひいてはCO2の削減に役立つディーゼルおよびガソリン用改良噴射システムに対する需要増が顕著。
-ESP(R)装着車の比率も増加。
-主要欧州メーカーからの順調な受注と、急成長を続けている中国とインドの自動車メーカーとのビジネスが拡大しているアジア太平洋地域における伸張が業績向上に貢献。
-インドの子会社Motor Industries Company Limited (Mico) への出資比率を60%から70%に引き上げ。
-北米においては、米国の主要自動車メーカーの不調が続く中、ドルベースではゆうに5%の売上げ増を達成。


受注
-2008年からインドのTata Motors.の[Nano]にValue Motronicエンジンコントロールシステムを供給。また、Nanoには、ブレーキシステム一式、ディーゼル噴射システム、スターター、オルタネーターも供給する。

-2007年8月、独自開発した「スタート/ストップ・システム」の量産体制が整い、実用化に向けた生産を視野に、客先である複数の自動車メーカーと詰めの調整に入っていると発表。「スタート/ストップ・システム」は、BMW 1 シリーズに搭載されているが、2007年8月からBMWのMiniシリーズに搭載されるのに続き、2007年11月からは新型ワゴン「Mini Clubman」にも搭載される。新型「Mini Clubman」向けには、「スタート/ストップ・システム」との連動性に配慮し、最適化されたスターター、コモンレールディーゼル用インジェクションシステムを併せて供給する。(2007年8月21日付プレスリリースより)

-2007年9月、軽自動車用ガソリンエンジンのECUを初受注した。日本法人が08年から供給を開始する見通し。(2007年9月19日付日刊自動車新聞より)


合弁会社
-同社とデンソーは、2006年10月の合意に基づき、ポーランドのヴロツワフ(Wroclaw)にディーゼル排気微粒子除去フィルターの開発、生産を行う折半出資の合弁会社Advanced Diesel Particulate Filters Sp.zo.o.(ADIF)を設立。両社は共同で、2009年から高効率でコストパフォーマンスに優れるコージェライト製DPFの生産を開始する予定。新会社で生産されたDPFは、同社とデンソーがそれぞれで販売する。新会社は、当初、デンソー本社内(日本刈谷市)に支店を設置し、日本で開発、生産準備を進めるとしている。資本金は800万ユーロ。同社は、ADIFが本拠をおくポーランドのWroclawで、既にブレーキシステム工場を操業している。(2007年7月23日付プレスリリースより)


企業買収
-2007年度において、Pacifica Group Ltd (Melbourne, Australia)の株式の過半数を取得、アメリカとアジアにおけるブレーキ事業を強化。Pacifica Groupは、ブレーキキャリパ、ハンドブレーキ等、自動車用ブレーキ部品製造、およびスペア部品事業での大手。2005年の売上高は約480百万ユーロ、グローバル規模での総従業員数は2,000人強。(2月23日付けプレスリリースより)

-2007年、Beissbarth Automotive Group からBeissbarth GmbH (Munich, Germany) とそのイタリアの子会社Sicam s.r.l. (Correggio, Italy)を合わせて取得。


展望
-2008年の売上高見込みはおよそ5%増。
-税引き前売上高利益率は7から8%台の維持を目標。

開発動向

研究開発費
(単位:百万ユーロ) 2007年度 2006年度 2005年度
R&D費用
3,583 3,348 3,073
売上高に対する割合(%) 7.7 7.7 7.4

‐2007年度は、売上の7.7%に当たる36億ユーロを研究・開発に投資。グローバルで3,280以上の特許を登記。
-自動車技術部門での研究開発費は、2006年度は部門売上の10.1%であったが、2007年度は部門売上の10.2%。


研究開発体制
‐グローバルに29,000人を越える研究開発員がおり、先進技術の開発に取り組む。うち1,300人は全社的研究及び先進技術部門に属する。
-29,000人を超える研究開発要員のうち、21,000人は欧州で、大部分がドイツ、米州では米国を中心に2,500人、また、アジア太平洋では、インド、日本、中国を中心に3,500人が従事。


研究開発施設
-2006年、シンガポールに新規研究施設の建設を決定、2008年中に稼動開始の予定。

-2007年10月、韓国の京畿道竜仁(Yongin, Gyeonggi)に、韓国事業本部、兼、新技術研究開発センターを開設した。(2007年10月19日付プレスリリースより)

-2007年6月、米ミシガン州・プリマス郡(Plymouth Township)に、R&Dセンターを新設。同センターは、研究開発施設に加え、自動車用電子機器、スターターモーター、ジェネレーター、電子制御部品の設計部門を置いている。(2007年6月28日付プレスリリースより)


製品開発
アイドリング・ストップシステム(Start-Stop System)

-同社のアイドリング・ストップシステムは、車が停止すると自動的にエンジンをとめ、信号が青になると自動的にエンジンを始動させるシステム。市街地では燃料消費を最大8%削減するコスト効率にすぐれたシステム。2007年には、このシステムを標準装着したモデルを3車種投入。同社は、独自のスターターとエンジンマネジメントシステムを供給。今後の大量生産に向けてプロジェクトを展開中。

空調センサー(Climate Control Sensor)
-2007年3月、同社は、自動車内の二酸化炭素 (CO2)量をモニターする新タイプのClimate Control Sensor(CCS)を開発した。このCCSは車内の二酸化炭素 (CO2)量を測定すると同時に、エアコンシステムをより効率的に稼動させる機能をもつ。車内に新鮮な空気が流れこむとエアコンシステムは空気循環モードに切り替わる。空気循環モードになると冷房に必要な電力が少なくて済み、省エネ効果が上がる。同社では、エアコンの出力を最強にした状態でこのCSSを作動すれば、最大10%の燃費削減が可能と試算している。(2007年3月29日付けプレスリリースより)

ハイブリッドドライブシステム(Hybrid Drive Systems)
-現在、続けているリチウムーイオン電池をベースにした研究は、車の航続距離を延ばすための電池の開発に役立つものだが、環境にやさしい代替燃料で動く小型の内燃エンジンの開発ももう一つの方法。また、ガソリンエンジン用のhomogeneous charge compression ignition (HCCI)(同質充填圧縮点火)のような新たなエンジンコンセプトも研究段階。

ディーゼルテクノロジー(Diesel Technology)
-噴射圧力を最大2,000バールまで高めた最初のコモンレール・システムを2007年に開発。高度にダイナミックなソレノイドバルブのついたインジェクターも開発中。

ガソリンエンジン(Gasoline Engines)

-次世代ガソリン直接噴射システムは、様々な燃焼工程や燃料に対して弾力的に対応することが可能。最適な低温スタートプロセスによって米国で最も厳しい排気基準を下回るレベルを達成。さらに高い効率を達成する方法は、直接噴射システムとターボチャージャーとの組み合わせ。この組み合わせによって、排気量の小さいエンジンでも同じ出力が可能になるため、さらに燃料消費と排気ガスが削減できる。2007年にはこの技術を使って自動車メーカーの数社がエンジンの開発を開始。また、2010年からは、ドイツのMahle GmbH と共同開発した排気ガスターボチャージャーの製造と販売を開始する計画。

代替燃料車、ハイブリッド車用部品(Alternative-Fuel and Hybrid-Drive Solutions)
-2007年は、いくつかのエンジンマネジメントシステムと噴射部品の量産を開始。NG-Motronic システムとそれに適した噴射バルブを装着すると、エンジンはガソリンと天然ガスの両燃料で始動できる。エタノールを使った場合、そのフレックス燃料システムによって点火を調節することにより、ガソリンとエタノールの混合比に応じて、噴射燃料の量をコントロールできる。したがってどんな混合比の燃料でも使うことが可能。

-世界中の内燃エンジンと電気モーターを組み合わせたハイブリッド・ドライブを開発中。このため、エンジン・マネジメント・システム、適正な電気モーター、パワーエレクトロニクス、及び電圧安定器を組み合わせたハイブリッド・コンセプトを開発中。ガソリンとディーゼル両方のハイブリッド用のシステムを受注済み。

-将来、エンジンを最適な状態で運転できるようエンジン温度を従来のものよりはるかに厳格に管理できるサーマルマネジメント・システムを開発中。2007年、従来のものより重量的に格段に有利な新世代のサーボモーターとブレーキブースターの生産を開始。その上、CO2センサーは、将来、エアコンの運転効率の向上に役立つ。その結果、エンジンから要求されるエネルギー量を削減することができる。

ESP(R)
-ESP(R)は、現在、同社のエンジニアが開発中の新たな役割の基盤となるもので、その中核は、能動的・受動的安全モジュールシステム(CAPS)。 このシステムにドライバーアシストと車載通信システムを組み合わせて事故防止の改善をはかることが目標。こうした対策によって死亡事故は35%削減できると専門家は推定。同社は、この緊急予防ブレーキシステムの最初のオーダーを、2009年から上級車種の標準装着品として受注済み。このシステムは、多機能ビデオやセンサーを使っている場合、危機的な道路状況において緊急ブレーキを自動的に作動させるだけでなく、レーン変更認知システムとして機能し、さらに運転者への支援を高める。
-追加的機能のネットワーキングによって高められるもうひとつの機能として、ZF Lenksysteme GmbHとの合弁会社で共同開発したアクティブ・ステアリングがある。2007年にさらに1社がこのシステムを新規に採用。駐車時の支援だけでなく、ESP(R)からのデータを利用して、突然ステアリングに異常が発生したり、横風を受けたりした時に、車を安定にさせることが可能。
窒素酸化物除去(Denoxtronic)
窒素酸化物除去システムは、ディーゼルエンジンのNOX(窒素酸化物)触媒用の尿素測定システム。本年の販売数はおよそ40万個で、2012年には260万個になると見込まれる。このうち、今後、「クリーンディーゼル」の需要が増大すると予想される米国では100万個と見込まれる。これに向けて、欧州、アジアだけでなく米国でも開発プロジェクトを強化。厳格な米国規制にそった量産体制を2008年に開始、2010年から増産体制に入る予定。小型商用車やSUVだけでなく、乗用車も対象。米国でのディーゼル車のシェア拡大は、開発プロジェクトに織込み済み。


開発提携
-ガソリンおよびディーゼルの直噴装置の開発をさらにすすめるとともに、ドライブトレイン の全ての分野において開発を推進。これには、排ガスターボチャージャーも含まれ、Mahle GmbHとの合弁会社の設立を2008年はじめに発表。

-2007年7月、同社と半導体メーカーの仏伊STマイクロは、STマイクロによる最先端の半導体製造技術のライセンス供与について契約を結んだと発表した。同社は自社の基板製造工場でこれを適用し、高度に集積化された車載製品の設計と製造を行う。契約締結は、過去20年間にわたる両社のパートナーシップを継続させることも背景にある。同社が導入するのは、ST独自の最新技術「BCD8」で、アナログ、デジタル、および電源の各回路を単一チップ上に集積化する技術。昨年発表されたもので、単一のシリコン・チップ上で完全なシステム(MCUを含む)の製造を初めて可能にした。高度な集積化によって、コスト低減、信頼性向上、製品の小型化が可能になる。(2007年7月12日付日刊自動車新聞より)

設備投資

設備投資額
(単位:百万ユーロ) 2007年度 2006年度 2005年度
合計 2,634 2,670 2,923

自動車技術部門
-2007年の自動車事業関連の設備投資は全体の約3分の2を占めた。主要なプロジェクトはReutlingenの8インチのウェーファー生産の新半導体工場の建設で、総投資額は600百万ユーロの予定。 また、コモンレールディーゼル噴射製品生産のためにドイツ、インド、中国、トルコでの生産能力を増強。


国内投資
-Reutlingen の新半導体工場に数年間で600百万ユーロの投資を予定。
-2008年までに、Abstatt の技術センターを拡張するため60百万ユーロを上回る投資を実施。


海外投資
アジア
<インド>
-2007年8月、Nashik工場で、コモンレール式直噴システムの生産に着手したと発表。インドの現地工場でコモンレール式直噴システムを生産するのは今回が初。同社は、先に、2005年から2008年にかけてインドに総額180億ルピーの投資を行うことを明らかにしており、その大部分は、コモンレール式直噴システムの開発に振り向けられている。同社は、2006年からNashik工場でコモンレール式直噴システム用部品を生産するのと並行して、同システムの現地生産を視野に、生産技術、専門技術の強化を図ってきた。その成果が実り、このほど、インド市場および海外市場向けに供給するコモンレール式直噴システムの生産開始にこぎつけた。初年度の2007年には10万台を生産し、2010年には生産能力を350万台にまで引き上げる。同社は、2005年11月、インドのマハラシュトラ州(Maharashtra State)政府当局との間で、Nashik工場へのコモンレール噴射技術の導入、及び同工場でのメカニカル・インジェクター増産に関する覚書き(MoU) に調印している。(2007年8月24日付プレスリリースより)

-同社は、2005年から2008年にかけインドに3億2,500万ユーロに上る資本投資を行うことを明らかにしているが、2010年までの投資額としてさらに1億7,000万ユーロを上積みする。インドにおけるディーゼルコモンレールシステムの生産能力強化に加え、2008年からの開始を予定しているガソリンシステムの生産プロジェクトにも投資の一部を振り向ける。さらに、2008年末をメドにABSの、また、2009年には電子制御ユニット(ECU)の現地生産にそれぞれ着手する計画という。同社の2007年におけるインドでの売上げは、前年比ほぼ20%増の8億1,500万ユーロとなる見通しで、インドにおけるグループ全体での従業員数についても18,000人と、10%の伸びを見込んでいる。同社ではこれまで、子会社Motor Industries Company Limited (Mico)を通じインド市場での事業を展開してきたが、同子会社の株主総会での決議、および規制当局による承認をもって、社名を「Bosch Limited」に変更、ブランドの統一化を図りたい考え。(2007年12月6日付プレスリリースより)

<中国>
-2010年までに計画されている主な投資プロジェクトは、上海の中国本社、長沙の物流センター、内モンゴルの冬季テストコース。その他、セキュリティシステム事業は、珠海の新工場に移転。蘇州の拠点で製造している製品種目と無錫の拠点で製造しているコントロールユニットやディーゼルシステムの製造品目を夫々拡大する計画。

<韓国>
-2007年10月、韓国の京畿道竜仁(Yongin, Gyeonggi)に、韓国事業本部、兼、新技術研究開発センターを開設した。5階建とした当初計画から規模を大幅に拡大、このほど、地上10階建て、延床面積25 000平米余りの新社屋・技術研究センターが完成した。最大500人のワークスペース確保が可能という。技術研究センターは、先進的な車載向け製品性能試験施設および応用技術研究・開発施設を備え、100人を越える研究員がR&D活動に専従する。投資額は217億ウォン(1,800万ユーロ余)。(2007年10月19日付プレスリリースより)

<ベトナム/インドネシア>
-はじめてベトナムで工場用地を取得、現地子会社を2008年春設立。2番目の工場は近くインドネシアに設立予定。

<日本>
-日本の子会社、ボッシュ株式会社の残りの株式を取得する意向。

米州
<米国>
-2007年6月、技術開発分野でのさらなる強化を図るべく、米ミシガン州・プリマス郡(Plymouth Township)に、R&Dセンターを新設した。同センターは、研究開発施設に加え、自動車用電子機器、スターターモーター、ジェネレーター、電子制御部品の設計部門を置いている。ボッシュは、優先的な投資分野として、引続き自動車分野における研究開発強化を推進しており、延床面積7万平方フィートの実験施設を活用した製品の開発研究、設計の検証、製品認証実験の企画等を行うため、プリマスR&Dセンターに60名を越えるエンジニアおよび技術専門スタッフを配している。同センターは、目下、iBoltシステム、アダプティブクルーズコントロール(ACC)、予防安全システム(PSS)といった様々な革新的なドライバー補助システムの設計を担っている。(2007年6月28日付プレスリリースより)

<ブラジル>
-2007年8月、同社は、他社に先駆けてブラジルで初となるABSの現地生産を開始すると発表。2007年8月29日、サンパウロ郊外のCampinas工場でABSの量産に着手することが本決まりとなった。同社は、約1,000万ユーロを投じ、Campinas工場にABSの生産ラインを導入する。ブラジルにおける同グループ従業員数は、子会社と関連会社とを合わせ13,700人余りで、売上げ規模は11億ユーロ(2006年実績)。(2007年8月29日付プレスリリースより)