Magna International Inc. 2016年12月期の動向

業績

(単位:百万ドル)
2016年
12月期
2015年
12月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 36,445 32,134 13.4 1)
営業利益 2,780 2,651 4.9 -
地域別売上高*
北米 19,381 17,759 9.1 2)
欧州 9,140 7,252 26.0 3)
アジア 2,217 1,612 37.5 4)
その他地域 439 454 (3.3) 5)

*完成車組立、治工具および製造技術は含まれていない。

要因

1) 全社売上高
-2016年12月期の売上高は、前年比13.4%増の36,445百万ドル。2016年の世界のライトビークル生産の同4%の成長より大幅な伸びとなった。

2) 北米
-2016年12月期の売上高は、前年比9.1%増の19,381百万ドル。売上増は主にChrysler 「Pacifica」、Ford「F-Series Superduty」、Ford 「Edge」、Lincoln「MKX」、Chevrolet「Malibu」、Cadillac「XT5」そしてLincoln「Continental」などの新しいプログラムの立ち上りによるもの。

3) 欧州
-2016年12月期の外部生産売上高は前年比26.0%増の9,140 百万ドル。売上増の主たる要因は、2015年度およびその後の企業買収や、14.2億ドルの販売増、GETRAGの買収などが含まれている。他の貢献要因としては、Audi「A4」、Audi「A3」、Audi「A3 Sportback」、Skoda「Superb」、Mercedes-Benz「E-class」、BMW「X1」などの新しいプログラムの立ち上りが挙げられる。

4) アジア
-2016年度の売上高は、前年比37.5%増の2,217百万ドル。売上増は主に特に中国での新しいプログラムの立ち上りや、Chongqing Xingqiaoruiとのパートナーシップ契約、GETRAGの買収など2015年度およびその後の買収などによるものとなっている。

5) その他地域
-2016年12月期の同社のその他地域での外部製販は439百万ドルで前年比3.3%減。減収は現行プログラムの生産量の低下並びに67百万ドルの為替差損によるものであった。これらの損失は特にブラジルでの一部顧客への値上げや新しいプログラムの立上げにより相殺された。

企業買収

-ラッチやヒンジ、ストライカーを生産するBOCOを買収。買収手続きは2016年第4四半期に完了。買収完了後、ドイツWuppertalと中国の天津にあるBOCOの生産2拠点は、Magna Closuresの傘下となる予定。BOCOの年間売上高は100百万ユーロ超で、BMW、Daimler、Audiなどの顧客に納入している。(2016年9月26日付プレスリリースより)

-2016年5月、同社は自動車エレクトロニクス分野で一流の技術サービスを提供するTelemotive AGを買収した。この買収は自動車のコネクテビティ、ヒューマンマシーンインターフェイス (HMI)、インフォテインメントなど同社のエンジニアリングサービスの製品ポートフォリオを拡大するものとしている。

-2016年1月、Getragの買収を完了。Getragは、従業員約14,000名を雇用し、MT、AMT、DCT、ハイブリッドなどさまざまなトランスミッションを提供している。(2016年1月4日付プレスリリースより)

合弁会社

-傘下の独Getragと中国・東風汽車集団の合弁会社が、中国武漢市の工場でDCTの量産を開始したと発表した。新たに生産する「6DCT150」は、Getragと東風汽車が小型車向けに共同開発した。歯車などを軽量、コンパクト化し、燃費改善に寄与する。今後、低燃費化ニーズが高まっている中国市場での拡販を目指す。(2016年5月11日付日刊自動車新聞より)

最近の動向

-2016年10月、南昌で第3世代7DCT300の量産開始を祝う式典と、江鈴汽車との合弁会社「格特拉克(江西)伝動系統有限公司[GETRAG (Jiangxi) Transmission Co., Ltd.] の創立10周年を祝う式典を行った。今回ラインオフしたDCT 7DCT300はトルクが300Nmまでの中型、コンパクト乗用車向けに設計したもので、全輪駆動及びスタート/ストップと惰性走行などの省燃費機能にも適している。この製品は2015年にRenault-Nissanよりイノベーション賞「Prix de l'innovation Renault-Nissan」を受賞している。(2016年11月4日付けプレスリリースより)

受注

-Ford 「Super Duty」の2017年モデルに搭載される「Trailer Reverse Guidance」システムに、同社の視覚ベースの運転支援システム「EYERIS」が採用されたと発表した。Magnaはすでに、Ford 「F-Series」向けにも全方位 (360度) の視界に対応する後方運転支援システムを納入している。同社のカメラシステムは現在、世界の自動車メーカーの60%超に採用されているという。(2016年10月26日付プレスリリースより)

-Chevrolet 「Camaro ZL1」の2017年モデル向けにフロントおよびリアフェイシアを納入していると発表した。このフェイシアは、米国のミシガン州Delta TownshipにあるMagnaのDexSys製造部門で生産されている。(2016年10月5日付プレスリリースより)

-Fordの新型「S-MAX Vignale」に同社の電子ビジョンシステム「EYERIS」が採用。また、Magna傘下のGetragは6速MTおよび6速DCTを同モデル向けに納入している。これらのトランスミッションの生産は、合弁会社のGetrag Ford Transmissionsが行っている。(2016年9月6日付プレスリリースより)

-BMW Group向けのトランスファーケース「Actimax」の累計生産数が500万ユニットに達した。同社は、2003年よりBMW向けに「Actimax」を含むドライブシステムの生産を行っている。この「Actimax」は、四輪駆動システム「xDrive」を搭載するほぼ全てのBMWのモデルに採用されており、オーストリアのIlz工場およびLannach工場、メキシコのRamos Arizpe工場で生産されている。(2016年6月23日付プレスリリースより)

-FCA USの「Chrysler Pacifica」の2017年モデル向けに、新型のシート・ストレージシステム「Stow'n Go」を開発したと発表した。このシートシステムのほかに、同モデルにはMagnaのボディ・シャシーシステム、パワートレイン部品、外装部品 (ロッカーパネル、スポイラー)、クロージャーシステム (サイドドアモジュール、ハンドル、ラッチ)、アウトサイドミラー、電子運転支援システムなどが搭載されている。(2016年5月10日付プレスリリースより)

-FCA 「Jeep Grand Cherokee」の2016年モデルおよび新型「Chrysler Pacifica」の2017年モデル向けに、新型カメラシステム「EYERIS Generation 3.0」を納入すると発表した。「EYERIS Generation 3.0」は、既存のプラットフォームに用いられている技術をベースとし、視界やカメラの画質を向上させたもの。「Jeep」のフロント部分に搭載されるレーダー付フュージョンシステムの一部であるこのカメラシステムは、車線維持、自動ハイビーム、自動緊急ブレーキ、アダプティブクルーズコントロールなどの機能をサポートする。(2016年3月9日付プレスリリースより)

-Ford 「F-150」の2016年モデルに搭載されているトレーラーアシストシステム「Pro Trailer Backup Assist」に、同社のリアビューカメラおよび画像処理技術が採用されたと発表した。「Pro Trailer Backup Assist」は、トラックを走行させながらコントロールノブを用いてトレーラーを誘導するシステムで、トレーラーを安全に後退させることができる。(2016年1月6日付プレスリリースより)

受賞

-GrammerとMagna Internationalの合弁会社であるGRA-MAGは、中大型トラックメーカーのPACCARから2016年度のSupplier Performance Management (SPM) Achiever賞を受賞した。PACCARはSPMプログラムで「Leader and Achiever」ステイタスを達成したトップサプライヤーを表彰している。GRA-MAGはエアライドサスペンションやトラックシートにおいて、快適で使いやすく、パフォーマンスが高い製品を供給している。(2016年12月14日付プレスリリースより)

-米国のミシガン州Hollyにあるエレクトロニクス工場がホンダより「Supplier Performance Recognition Award」を受賞。同工場では従業員約529名を雇用し、ホンダをはじめFord、Jaguar、トヨタなどの自動車メーカー向けにフロントおよびリアビューカメラを生産している。Magnaのエレクトロニクス工場が2016年にこの賞を受賞するのは今回で3度目となる。(2016年7月6日付プレスリリースより)

-中国において4つの製造部門がGMより「Supplier Quality Excellence Award」を受賞。今回受賞したのは、Magna Electronics Zhangjiagang (張家港)、Magna Closures Kunshan (崑山)、Magna Closures Hefei (合肥)、Magna Mirrors Jinshan (金山)。(2016年7月6日付プレスリリースより)

-2016年「Ford World Excellence Award」を「Smart」部門で受賞。Ford 「F-150」の2016年モデルに搭載されているトレーラーアシストシステム「Pro Trailer Backup Assist」に採用されたMagnaの技術が評価されたもの。このシステムには、Magnaのリアビューカメラと画像処理技術が使用されている。(2016年6月14日付プレスリリースより)

-チェコのLiberecにある生産拠点がPSAより2016年「Best Plant Award」を受賞。製造・品質・効率において優れた実績が評価されたもの。このBohemia工場では約1,200名の従業員を雇用し、BMWやVolkswagen向けにバンパー、ロッカーパネル、インストパネル、アームレスト、グローブボックス、センターコンソール、テールゲートなどさまざまな製品を生産している。(2016年6月8日付プレスリリースより)

-ブラジルのSao Pauloの生産拠点が、ホンダより2015年「Honda Brazil Supplier Award」を品質部門および納入部門で受賞。同拠点は、ホンダに内装ドアハンドルを納入している。(2016年6月8日付プレスリリースより)

-リアビューカメラが評価され、ホンダより「Good Supplier Award」を「Cost Performance」部門で受賞。Magnaは、ホンダの「Accord」、「CR-V」、「Fit/Jazz」、「City/Grace」、「HR-V/Vezel」、「ILX」、「RDX」向けにリアビューカメラを納入している。(2016年4月12日付プレスリリースより)

-トヨタから「Special Recognition Award」を受賞。トヨタの2016年型「Tacoma」に搭載された、ミラー、ガラス、ウェザーストリップ、グリル、オーナメント等が評価された。(2016年3月16日付プレスリリースより)

-GMから2015年「Supplier of the Year」賞を受賞。(2016年3月10日付プレスリリースより)

-中国の江蘇省張家港 (Zhangjiagang) にあるエレクトロニクス工場がHonda Chinaより「Excellent Supplier Award」を受賞したと発表した。製品の卓越性や品質が評価されたもの。同工場では従業員約130名を雇用し、ホンダ、Ford、Fiat、吉利汽車、長城汽車など複数の自動車メーカー向けに、運転支援システム用カメラや車載エレクトロニクス部品を生産している。(2016年2月9日付プレスリリースより)

研究開発費

-同社は、税引前利益の最低7%を年間の研究開発費として投資する方針。

研究開発拠点

-中国・上海の徐匯 (Xuhui) 区でシートのエンジニアリングセンターを開設。シートの試験室や試作品製作室などを備え、まず従業員60名が勤務する予定。フル稼働時には100名以上に増員される見込み。(2016年1月25日付プレスリリースより)

技術提携

Innoviz TechnologiesとLiDAR技術で提携
-同社とInnoviz Technologiesは、両社が自動運転技術の実現および将来の完全な自立走行の実現へ向けたLiDARリモートセンシングソリューションの開発で提携。高解像度のソリッドステートLiDARは、3Dリモートセンシングを活用して車両周辺の高精度なリアルタイム画像を作り出す。一方で自動車の規格を満たし、コストとサイズも大幅に削減する。Innoviz LiDARは、現在すでに市場にあるソリューションに多様性が加わり、如何なる車種にもシームレスに統合でき、明るさや気象条件の変化にも効果的に対応できるよう設計されている。InnovizのLiDARデバイスは、プロトタイプデモとしてCES 2017のMagnaブースに展示される。(2016年12月20日付のプレスリリースより)

製品開発

CES 2017で将来のモビリティ機能に関するデモを実施
-CES 2017で、MicrosoftのHoloLens複合現実体験とADASシミュレータを使った将来のモビリティ機能に関するデモンストレーションを実施。自己完結型ホログラフィックコンピュータにより体験できる将来の車両技術は下記のとおり:
・自動運転を可能にするカメラ、センサー、LiDAR、レーダーシステム
・ドライバーに連続的にフィードバックするシートセンサー
・アクティブな空力性能による燃費技術
・複数のハイブリッド技術からフル電動化まで様々なパワートレインアーキテクチャー
(2016年12月14日付プレスリリースより)

電動スーパーチャージャー
-電動過給器を2017年にも欧州市場に投入する。同市場では二酸化炭素(CO2)排出規制の強化を背景に、エンジンの排気量を小さくして過給器でパワーを補う過給ダウンサイジングエンジンが広がる見通しになっている。中型クラス以上の車には電動過給器が適していると見て、モーターの技術を生かして参入する。同社は電動化の技術を生かし、まず欧州での需要拡大を狙って市場に参入する。12V用と今年から欧州で導入が始まる48Vシステム用の2つの仕様を開発する。(2016年3月4日付日刊自動車新聞より)

ピッチスライドとチップスライドEZエントリーシート
-両方のシートは車両のアクセス性およびスペースの柔軟性改善のために設計されている。ピッチスライドシートとは、車両の助手席側の第二列側のシート、一方チップスライドシートは車両の運転手側の第二列側のシート用に設計されている。

ウルトラオールホイールドライブシステム
-同社はAudiと新しいQuattroウルトラオールホイールドライブシステムを開発するためのパートナーになった。この技術はAWDシステムが必要時に全ての4つのホイールに作動し、摩擦やトランスミッションロスを低減させる。同様に燃費、排気、運転性能、安定性など改善させる。ウルトラ AWDシステムは2016年にAudi「A4 allroad」から搭載されている。

ウルトラドアモデュール
-同社は超軽量ドア構造を開発するために合州国エネルギー省、FCA, Grupo Antolinなどと共同で研究を始めた。この構造は平均の量産品ドアに比べ42.5%質量減少を達成するために同社のSmartLatchエレクトロニックラッチシステムとアルミの使用を特徴としている。重量軽減は排気および燃料消費の削減を促進する。将来計画としてはフルスケールプロトタイプの製造、性能および安全試験を含め、最終的には量産までを含んでいる。

アイリス インーキャビン チャイルド モニタリング
-同社はアイリスカメラ技術に基ずいたビデオベースのチャイルドモニタリングシステムを開発。後部座席上部のデジタルカメラが後部座席の乗客の上からの眺めを映し出す。暗闇でも赤外線LEDライトが後部座席の乗客を映し出す。このシステムは2017年北米国際オートショーでデビューする2018年型ホンダ「Odyssey」に搭載される。

D-オプティック ライティング
-D-オプティックLEDヘッドランプは、ハイパワーLEDに射出成型のレンズを付け高性能の照明効率を提供する。D-オプティックLEDライトはハロゲンライトに対し60%のエネルギー消費改善、HIDライトに比べ40%の改善を提供する。

カーボンファイバーサブフレーム
-同社はFordと協力しカーボンファイバーサブフレームの試作品を開発。カーボンファイバーサブフレームはプレス鋼のサブフレームより34%軽い。さらにカーボンファイバーサブフレームは2つのスチール部品と4つのメタル部品からなり、プレス鋼フレームから87%の部品を減らし組立を簡略化する。現在同社はFordで車両搭載試験のための試作のサブフレームを生産している。

クリアビューアウトサイドミラー
-クリアービューアウトサイドミラーは従来のミラーシステムに比べ、より広い視界とより良い深視力を見せるためカメラを従来のミラーに組み込んだものである。

設備投資額

(単位:百万ドル)
2016年12月期 2015年12月期 2014年12月期
全社 1,807 1,591 1,495

海外投資

<米国>
-サウスカロライナ州Spartanburgでシート工場の開所式を行ったと発表した。新工場ではBMWグループから受注したシートの供給を行う。2017年6月操業開始予定で、従業員数は2020年までに最大で480名になる見込み。同社はサウスカロライナ州に3つの工場を保有しており、従業員数は約1,450名。新工場はサウスカロライナ州で4番目の工場となる。(2016年12月6日付プレスリリースより)

<英国>
-英国Telfordにアルミ鋳造工場を建設する。Jaguar Land Roverに納入する。新工場の面積は約225,000平方フィートで、フル稼働時には従業員295名を雇用する計画。2016年秋に着工し、2018年に生産開始となる予定。新工場では、Magnaの高真空ダイカスト法を用いてさまざまな軽量アルミ鋳造品を生産する。(2016年5月25日付プレスリリースより)

<メキシコ>
-メキシコのQueretaroに自動車外装部品工場「Magna Exteriors Queretaro」を開所したと発表した。面積は29万平方フィートで、最新の射出成形および自動塗装ラインを備える。従業員約600名が勤務し、フェイシア、バンパー、ロッカーパネルなどの成形・塗装部品をグローバル自動車メーカーに供給する。(2016年5月18日付プレスリリースより)

<中国>
-中国の浙江省台州 (Taizhou) でシート工場を新たに開設する。吉利汽車 (Geely) 傘下のVolvo向けに納入する。すでに建設が開始されており、2016年半ばまでに完成する予定。面積は5,200平方メートルで、小型クロスオーバーSUV向けにシートシステムを生産する。このモデルは、Volvoの「CMA (Compact Modular Architecture)」プラットフォームを採用した初のモデルとなる。新工場の建設は、最大90名の新規雇用を創出するとみられる。(2016年3月9日付プレスリリースより)