Magna International Inc. 2015年12月期の動向

業績

(単位:百万ドル)
2015年
12月期
2014年
12月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 32,134 34,403 (6.6) 1)
営業利益 2,651 2,605 1.8 -
地域別売上高*
北米 17,759 17,398 2.1 2)
欧州 7,252 8,843 (18.0) 3)
アジア 1,612 1,579 2.1 4)
その他地域 454 668 (32.0) 5)

*完成車組立、治工具および製造技術は含まれていない。

要因

1) 全社売上高
-2015年12月期の売上高は、前年比6.6%減により32,134百万ドル。米ドルに対し各通貨が弱く、2014年と比較して201512月末では約33.5億ドルの売上減の要因となる。為替要因を除くと、同社の売上は対前年比3%増となった。

2) 北米
-2015年12月期の売上高は前年比2.1%増の17,759百万ドル。売上増の要因としてFordTransitMustangEdge Chevrolet ColoradoGMC Canyon Mercedes-Benz C-ClassGM full-size SUV向けを含む新規事業の開始が主に貢献した。この売上増は為替差損、既存事業の売上低下、特定の製品セグメントの売却、販売価格の値引きと一部相殺された。

3) 欧州
-2015年12月期の売上高は前年比18.0%減により7,252 百万ドル。売上減の主要因は対米ドルへの弱い各国通貨のマイナス効果、既存事業の売上低下、いくつかの事業の終了、販売価格の価格下落による。欧州における新事業は売上減と部分的に相殺となった。これらの事業はVolkswagen: CaddyPassatFord TransitBMW: 2-SeriesBMW X4向けを含む。

4) アジア
-2015年度の売上高は、前年比2.1%の増加で1,612百万ドル。主に中国、インドでの新規事業の開始、Xingqiaoruiとのパートナーシップの双方が売上増に貢献。売上増はマイナスの為替効果、既存事業の売上低下、販売価格の値引きと一部相殺。

5) その他地域
-減少の要因は米ドルに対し弱い通貨、既存事業の売上低下(ブラジルでの新規事業と一部相殺)、販売価格の低下による。

企業買収

-同社は、英国を本拠とするホワイトボディ向け部品のティア1サプライヤーであるStadco Automotiveを買収することで合意したと発表した。Stadcoは、自動車用スチールプレス部品およびアルミプレス部品の生産のほか、複雑な車体 組み立てなどを行っており、顧客にはJaguar Land Rover、Ford、GMなどが含まれる。生産拠点は、英国に4拠点、ドイツに1拠点を保有し、従業員数は約1,400名。2015年第4四半期に買収 手続きが完了する見込み。(2015年10月2日付プレスリリースより)

-同社は、Getragを買収することで合意したと発表した。買収金額は約17.5億ユーロ。Getragは、マニュアルトランス ミッション、自動マニュアル、デュアルクラッチトランスミッション、ハイブリッドなどさまざまなトランスミッションシステムを提供している。また、複数の 完全子会社に加え、Fordのほか江鈴汽車 (Jiangling Motors) や東風汽車 (Dongfeng Motors) など中国の自動車メーカーとの合弁会社も保有している。顧客にはBMW、Daimler、Renault、Volvo、長城汽車 (Great Wall) が含まれる。同社は合弁会社を含めて、欧州・アジア・北米の9カ国に13の生産拠点と10のエンジニアリングセンターを保有している。従業員数は約 13,500名。今回の買収手続きは2015年末ごろに完了する見込み。(2015年7月16日付プレスリリースより)

-同社は、台湾を本拠とするPhilips & Lite-On Digital Solutions (PLDS) より、ドイツWetzlarにあるヘッドアップディスプレイ事業および電子部品事業、台湾・新竹 (Hsinchu) にある超音波センサー事業を買収したと発表した。これにより、Magnaは欧州での電子部品のエンジニアリング能力を強化し、電子部品のラインナップ拡充 やコネクテッドカー技術の製品化を進める計画。また、PLDSの従業員約60名がMagnaに加わる予定。PLDSはデジタルコンバージェンス分野を牽引 しており、今回Magnaが買収する2拠点の自動車事業では、車載ワイヤレス充電、ヘッドアップディスプレイ、コネクティビティ向けの製品のほか、さまざ まな電気機械式装置の開発を行っている。(2015年2月3日付プレスリリースより)

再編

-Grupo Antolin-Irausaは、同社の内装部品事業の買収が完了したと発表した。なお、中国の合弁会社2社は含まれていない。同社の内装部品事業は今後、Grupo Antolinの新たな部門「Cockpits and Interior Trim」として、ドイツMunich近郊のAllershausenに本拠を置く。買収により、Grupo Antolinはインストパネルのほかさまざまなソフトトリム製品をラインナップに加え、車両の内装部品一式に関する技術力や生産能力を獲得した。また、 最新のドア製造技術を取得したことで既存のラインナップを強化する。さらに、米国、英国、ドイツ、中国などの主要市場での事業拡大を見込んでおり、買収完 了後には米国でドアパネルの生産を開始する予定。今回の買収によりGrupo Antolinの事業規模は、2014年の数値で試算するとグローバルで売上高が40億ユーロ超、従業員数は約28,000名と倍増する。買収前に125 カ所だった生産拠点は161カ所に増加する。(2015年8月31日付プレスリリースより)

-Samsung SDIへ電池パック事業を売却すると発表した。売却には、同事業の全従業員264名と生産・開発拠点のほか、現在の受注分が含まれる。これにより Samsung SDIはEV用バッテリー事業を拡大する計画。売却手続きは2015年上期に完了するとみられる。(2015年2月23日付プレスリリースより)。

合弁会社

-同社とChongqing Hongli Zhixin Automotive Parts Manufactureは、中国で折半出資による合弁会社を設立すると発表した。新会社では、シートシステムおよびシート部品を生産し、長安Fordをは じめとする中国に拠点を持つ顧客向けに納入する。Hongli Zhixinは中国の独立系シートサプライヤーで、フォームやトリム、シートストラクチャーを生産し、複数の自動車メーカーを顧客に持つ。今回の合弁会社 設立にあたって、Hongli Zhixinは哈爾浜 (Harbin) にある生産設備と2つのプログラムを新会社へ譲渡する。新会社は重慶を本拠とする予定。(2015年11月25日付プレスリリースより)

-同社と重慶星喬瑞汽車零部件は、中国で合弁会社を設立することで合意した。出資比率は、同社のボディ・シャシー部門の Cosma Internationalが53%、Xingqiaoruiが47%となる。2015年下期から2016年はじめに設立される予定。Xingqiaoruiは、自動車のホワイトボディ (車体骨格構造) 向けの部品を生産するティア1サプライヤーであり、長安Fordの主要サプライヤー。合弁会社は、Xingqiaoruiが保有する重慶の2工場と浙江省 杭州の1工場のほか、重慶にある同社の新工場も使用する計画。(2015年5月4日付プレスリリースより)

提携

-同社は、Magna PowertrainがVolkswagen Groupのプログラム「Future Automotive Supply Tracks (FAST)」の戦略的パートナーに指名されたと発表した。Volkswagenのモデル向けに納入していたドライブラインシステムの生産が評価されたもの。今回同社は、FASTプログラムの戦略的パートナー44社のうちの1社に選出されている。(2015年8月25日付プレスリリースより)

受注

-同社は、第2世代のFord 「S-MAX」向けに、同社のフロントおよびリアビューカメラシステムを納入すると発表した。このカメラシステムでは、後方誘導ライン、駐車距離制御イン ジケーター、3画面による180度の視界などが自動車のコックピットに表示される。このカメラシステムは、Ford 「Galaxy」の2016年モデルにもオプション搭載される予定。(2015年9月14日付プレスリリースより)

-同社は、起亜の新型「Sorento」のAWDシステムに、同社の「Dynamax」四輪駆動 (AWD) 用カップリングが採用されたと発表した。韓国・忠清南道の牙山 (Asan) 市に位置する合弁会社WIA-Magna Powertrainがこの製品の生産を行い、韓国および米国にある起亜の組立工場に納入する。(2015年5月18日付プレスリリースより)

受賞

-同社は、中国・上海にある同社のミラー製造部門がVolvoより「Volvo Cars Quality Excellence (VQE) Award」を受賞したと発表した。同拠点は、Volvo向けにウィンカー、調光機能、熱/温度センサーなどの最新機能を備えた電動格納式アウトサイドミラーを納入している。(2015年12月4日付プレスリリースより)

-同社は、Mahindraより「Best Product Development Performance Award」を受賞したと発表した。同社のボディー・シャシー部門であるCosma Internationalが、設計・エンジニアリング・開発したラダーフレームが評価されたもの。このラダーフレームは、MahindraのSUV 「Scorpio」をはじめとするプラットフォームに採用されている。同社はこれまで、グローバルの顧客向けに2,400万ユニットのフレームを生産してきた。フレームの設計・エンジニアリング・開発は、インドのBangaloreとPuneにあるMagnaの製品開発・エンジニアリングセンターで行われ た。同社は、Puneのボディー・シャシー工場で2014年にフレームの生産を開始。同工場では、これまで約45,000ユニットのシャシーフレー ムを生産している。(2015年10月6日付プレスリリースより)

-同社は、米国のミシガン州Hollandにあるミラー製造部門が「Volvo Cars Quality Excellence (VQE) Award」を受賞したと発表した。「Automotive News Pace Award」を受賞した同社の「Infinity」インサイドミラーの納入が評価されたもの。このMagna Mirrors Hollandでは従業員700名超を雇用し、自動防眩ミラーや内装・外装用エレクトロクロミック (EC) ガラスをVolvo Cars Group、GM、Ford、FCAなどの自動車メーカー向けに生産している。(2015年9月24日付プレスリリースより)

-同社は、Magna SeatingがFordより、南米におけるトップサプライヤーに「Body Interior」部門で選出されたと発表した。Magna Seatingは南米に7拠点を保有し、Fordを含む複数の顧客に納入している。これまで、Fordの15種類のプラットフォームに向けてシート一式を生産してきた。(2015年8月13日付プレスリリースより)

-同社は、Fordより「World Excellence Award」を「Smart」部門で受賞したと発表した。Fordの新型ピックアップトラック「F-150」には、同社の「Pure View」シームレススライディングウィンドウのほか、ピックアップトラックに初搭載された360度カメラシステム「SurroundVue」が採用され ている。(2015年6月18日付プレスリリースより)

-同社は、ホンダより「Excellence in Delivery Award」を受賞したと発表した。米国のミシガン州Hollyにあるエレクトロニクス工場が、リアビューカメラの納入に関して最高評価を獲得したもの。 Magnaのリアビューカメラは、ホンダ 「Accord」、「Civic」、「CR-V」に採用されている。(2015年5月21日付プレスリリースより)

-2015年「Automotive News PACE Award」の受賞式が米国Detroitで行われた。受賞した製品および技術は以下の通り。
製品部門:Magna Closures:「Pure View」シームレススライディングウィンドウ (2015年4月20日付各種リリースより)

研究開発費

-同社は、税引前利益の最低7%を年間の研究開発費として投資する方針。

研究開発活動

-同社は、Fordおよび米国エネルギー省との提携により開発したマルチマテリアル軽量車両 (MMLV:multi-material lightweight vehicle) コンセプトカーの検証試験を完了したと発表した。Washington D.C.で開催された「SAE 2015政府/産業会議」において、Fordと共同で試験の結果を発表している。MMLVの軽量部品と、ベースとなるFord 「Fusion」の2013年モデルの従来部品を比較したライフサイクルアセスメント (LCA) 調査の結果を公開。LCA調査では、MMLV用製品の一生において、「Fusion」の2013年モデルの製品に比べて、地球温暖化係数 (GWP) を16%向上させるほか、一次エネルギー消費 (燃料の使用と材料の生産・再利用に必要なエネルギーを足したもの) を16%削減するという。(2015年1月30日付プレスリリースより)

技術提携

サイバーセキュリティ
同社は、Argus Cyber Security Ltd.とサイバー攻撃に対し、車両向けセキュリティソリューション提供のため提携した。Argusとの提携では、同社は自動車用電子制御システムおよび安全性が重要なシステム設計の専門範囲について寄与し、Argusは不正侵入防止システム(Intrusion Prevention System : IPS)およびクラウドベースの監視サービスを提供する。

製品開発

新コンセプトスポーツカー「MILA Plus」
-同社は、2015年ジュネーブモーターショーにおいて、新たなコンセプトカー「MILA Plus」を公開すると発表した。この2人乗りハイブリッドスポーツカーの走行距離はEVモードで75km、重量は1,520kg。1kmあたりのCO2 排出量は32gとなる。押出アルミ製スペースフレームをベースとした構造は、スチール製に比べて軽量でモジュラー構造により柔軟性を向上させたほか、異なるドライブラインの配置を可能にしている。モジュラー型のホワイトボディ (車体骨格構造) は、量産されている部品およびシステムを活用することができるため、自動車メーカーにとっては生産の効率化や柔軟性の向上につながるという。(2015年 2月26日付プレスリリースより)

ビジョンシステム「EYERIS Gen 3.0」
-同社のEYERISビジョンシステムの最新バージョンは、前世代に比べて視界の改善およびカメラの解像度を強化した。レーダーシステムとの組み合わせで、EYERISは、車線維持支援、自動ハイビーム、自動緊急ブレーキ、およびアダプティブクルーズコントロールを提供。EYERIS Gen3.0システムは、FCA2016Jeep Grand Cherokee2017Chrysler Pacificaで利用可能となる予定。

カメラベース 自動緊急ブレーキ (AEB) システム
-同社は、自動車業界初のカメラベースの緊急ブレーキシステムを開発した。このシステムは、時速8キロから60キロの間の速度で前方衝突警報および自動緊急ブレーキを提供するために、前方カメラを使用。加えて、約60メートル離れた車両を検知することが可能。このシステムは、2016Chevrolet Volt上で利用可能となる予定。


トレーラー牽引バックアップシステム
-ドライバーがコントロールノブを用いてトレーラーを操縦することが可能。リアビューカメラは、トラックとトレーラーの間の角度を測定。このシステムはPro Trailer Backup Assist Systemの一部として2016 Ford F-150に搭載。


アクティブエアロダイナミックシステム
-同社はアクティブフロントディフレクター、アクティブリフトゲートスポイラー、アクティブテールゲート、アンダーボディパネルを含むエアロダイナミックシステム分野での製品開発を拡充した。

カーボンファイバーフード
-同社は2016年 Cadillac ATS-V およびCTS-V models向けカーボンファイバーの量産開始。このフードはアルミフードよりも27%より軽く、スチール製フードよりも72%軽量化。

アルミニウムオイルパン、アルミダイカスト部品
-同社はGMと共同でCadillac CT6 Sedan向けアルミニウムトランスミッションオイルパン、13のアルミダイキャスト車体部品を開発した。このオイルパンは約60%の重量削減効果がある。このアルミ車体部品の製造に使用される高圧真空ダイキャスト工法は、その部品の壁をより薄くし重量を削減する。さらに、同工法では一体型部品の製造が可能なため、パーツ数の減少により組み立て工程の複雑性を削減する。

設備投資額

(単位:百万ドル)
2015年12月期 2014年12月期 2013年12月期
全社 1,591 1,495 1,094

海外投資

<インド>
-同社は、インドのグジャラート州Sanandに新たに開設した2工場が生産を開始したと発表した。両工場ともに、Fordの組み立 て工場に隣接するサプライヤーパーク内に位置する。そのうちの1工場では、シートシステム一式を組み立て、ジャストインタイム方式でFordに納入する。 面積は215,000平方フィートで従業員数は約200名。年間で約24万基のシートシステムを生産する。もう一方の工場では、Ford向けにボディー・シャシーシステムを納入する。面積は356,000平方フィートで、フル稼働時には従業員約400名を雇用する予定。(2015年12月9日付プレスリリースより)

<メキシコ>
-同社は、メキシコのコアウイラ州Allendeに新たに自動車シート工場を開設したと発表した。新工場の建物面積は108,000平方フィート。自動車シートに使用するソフトトリムの材料の裁断・縫製を行う。2017年のフル稼働時には、従業員約1,000名を雇用する見込み。 同社は、今後3年間で同拠点に8百万ドルを投じる計画。(2015年11月23日付プレスリリースより)

-同社は、ミラーの新規受注に対応するため、16百万ドル超を投じてメキシコMonterreyにあるミラー工場Magna Mirror Systems Monterreyを拡張すると発表した。現在80,000平方フィートの既存工場をさらに55,000平方フィート拡張し、自動塗装ラインや組立ラインのほか、新たに射出成形ラインも導入する。現在620名超の従業員に加え、約60名が新たに雇用される予定。拡張工事は2015年8月に開始され、 2016年8月に完了する見込み。(2015年9月2日付プレスリリースより)

-同社は、メキシコのケレタロ州で自動車外装部品を生産する工場の建設を開始したと発表した。投資額は約135百万ドル。面積は 26,400平方メートルで、初年度は約600名の従業員を雇用する計画。フェイシアやロッカーパネルなど、成形・塗装した外装部品をグローバル自動車メーカー向けに生産する。2016年第1四半期に開設する予定。(2015年3月18日付プレスリリースより)

-同社は、メキシコのモレロス州Emiliano Zapataに、自動車用シャシー部品の組立を行う新工場「Autotek Morelos」を開設したと発表した。13万平方フィートの新工場では、日産をはじめとするグローバル自動車メーカー向けに溶接構造組立部品を生産する。フル稼働時の従業員数は約300名となる見込み。「Autotek Morelos」の開設により、現在メキシコに31拠点を保有し、24,000名を超える従業員を雇用していることになる。(2015年2月18日付プレスリリースより)