VWグループ(上):2026年までにEV350万台の年産能力を整備

子会社PowerCoがバッテリー事業統括、CARIADが車載ソフトウェアを開発

2022/10/19

要約

VW ID.5
2022年5月に発売されたEV SUVクーペのVW ID.5(出典:VW)

 VWは2021年4月、「Way to Zero」と銘打った脱炭素化計画を発表。2050年までにカーボンニュートラル企業になることを目指し、中間目標として2030年までに欧州で車両1台当たりCO2排出量を2018年比40%削減する。そのためにはEVへの移行に加え、生産および利用段階に使用する電力を再生可能なエネルギー源で生成する必要がある。VWグループは2022-2026年の5カ年投資計画で、設備投資と研究開発費を合わせた総投資額1,590億ユーロのうち、56%の890億ユーロを電動化・デジタル化など未来技術への投資に割り当てる。そのうちEVには520億ユーロを割り当て、2026年までに350万台のEVの年産能力が整備される見込み。

 電動化については、2021年のEV販売台数が前年のほぼ2倍となる45万2,900台となり、販売全体に占めるEVのシェアは2.5%から5.1%に拡大した。2025年には20%、2026年に25%、2030年に50%へ拡大する見通し。

 新型EV投入計画では、VWブランドはEVのサブブランドのID.シリーズから2022年にSUVクーペのID.5と新型ミニバンのID. Buzz、2023年に新型セダンのID. Aeroを投入。2026年には新開発のプラットフォームを使用する次世代EVセダンのTrinityの生産を開始する。Audiは2024年に中型セダンのA6 e-tronを投入予定。SEATの高性能ブランドCUPRAはVWの電動車プラットフォームMEB(Modular electric-drive toolkit)を使用し、2024年にSUVクーペのTavascan、2025年に都市型EVのUrbanRebelを投入する。

 EVの生産は欧州・中国・米国で行っており、2022年にはMEBプラットフォームをベースとするEVを合計120万台生産する見込み。2022年上期には、ドイツのEmden、Hanover、米国のChattanoogaにあるMEB工場が改装され、EV生産が増加した。EV用バッテリーの生産については、子会社のPowerCoが事業を統括。欧州では2030年までに6工場の建設を計画しており、ドイツのSalzgitter工場は2022年に、スペインのSagunto工場は2023年に建設が開始される。また、PowerCoは電池メーカーとの共同開発や素材メーカーとのバッテリー原材料に関する提携も行っている。


 自動運転技術の開発では、Boschとレベル2および3の自動運転システムを共同開発。Mobileyeとは戦略的提携を結び、同社の高精度・高精細地図のデータベースを利用する。車載ソフトウェアについては、子会社のCARIADを中心に2025年までに内製化率を60%以上に高めるとしている。CARIADは、VWグループの全ブランド向けに統一された拡張可能なソフトウェアプラットフォームを構築し、2025年頃に投入する計画。モビリティサービスの分野では、2022年7月にフランスのレンタカー大手Europcarを買収。同社のサービスを基盤に、VWグループのモビリティプラットフォームを構築する。

 なお、VWグループの新型車投入計画、欧州・中国・米国市場の動き、販売台数と業績、LMC Automotive生産予測については、次稿の「VWグループ(下)」をご覧ください。

 

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