【ものづくり】第21回関西機械要素技術展2018:自動車産業の課題に応える技術

400km/h新幹線ディスク、鍛造Mgピストン、LiB用バリレス端子、薄層カーボン織布など

2018/10/12

要約

 第21回関西機械要素技術展M-Tech(会期:2018年10月3日(水)~10月5日(金)、会場:インテック大阪)は、リードエグジビションジャパン主催により、歯車、ベアリング、ねじ、ばねなどの機械要素や、金属、樹脂に関する加工技術を一堂に集めた専門商談会として開催された。今年は過去最多の1,380社が出展した。また、最新の技術動向が学べる技術シンポジウムも同時開催され、設計・開発、製造・生産技術部門を中心とした製造業関係者が多く来場し、出展企業と商談を行っていた。

 イベントの特徴として日本各地の工業振興会の展示ブースも多く、今回は13都道府県、27市町村が出展。中小企業による技術の博覧会のような様相でもある。また、中国、タイ、台湾、韓国、ベトナム、インドなど、海外からの出展も200社以上あり、特に中国や東南アジアからの出展が多い。その中から自動車産業の課題に応える技術の展示を取材した。

入場登録所 入場登録所
第21回関西機械要素技術展2018
入場登録所
第21回関西機械要素技術展2018
会場風景(タイのブース)



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ものづくり基盤技術の高度化:400㎞/h新幹線ローター、鍛造Mgピストン、LiB用バリレス端子

 経済産業省の「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」に基づく支援策として、毎年「戦略的基盤技術高度化支援事業」の認定を受けた中小企業に助成を行っている。過去に認定を受けた3メーカーの技術展示を取材した。

 

(出展会社概要) 経済産業省「戦略的基盤技術高度化支援事業」選定メーカー

会社名 展示品
認定支援事業テーマ名
目的・用途
大阪富士工業㈱
(兵庫県尼崎市)
400km/h新幹線ブレーキディスク
H26「レーザークラッディング表面機能化技術による次世代高速鉄道用ブレーキディスクの開発」
<高速鉄道>
ヒートクラック最小化
クラッドディスク作成
鍛鋼+耐熱合金
ゴーシュー㈱
(滋賀県湖南市)
鍛造マグネシウム製二輪車ピストン
H24「低コスト・高機能化を達成するマグネシウム合金の冷間鍛造法の開発」
鍛造マグネシウム低コスト化
日伸工業㈱
(滋賀県大津市)
車載リチウムイオン電池用バリレス端子
H27「厚板小物高精度絞り部品の製造押し込み絞りプレス加工技術の確立(ABSブレーキ用ピストン)」
バリレス精密プレス
「ラウンドトリム®」

注)クラッド:異種金属が何らかの方法で接合されている状態をいう

 

400km/h新幹線ブレーキディスク(大阪富士工業)

 平成26年度の支援事業(期間平成26年9月~平成29年3月)。 経済産業省も日本の高速鉄道を世界販売したい戦略があり開発を助成している。展示品は高速化400km/hの対応の新幹線のブレーキディスク。自動車分野にも活用でき、参考になる技術であるため取材した。

 大阪富士工業が現在注力しているのは、レーザークラッディングと呼ばれる増肉溶接。プラズマ溶射とアーク溶接の中間的な工法で、プラズマ溶射では厚さは最大0.3mm程度だが、レーザークラッディングでは3mm程度の厚肉溶接が可能となる。また増肉の材料は自由に選定できる。展示品は異種金属を接合するクラッドディスク。母材の鍛鋼ブレーキディスクに耐熱合金を厚肉溶接した後に、表面を旋盤加工している。

 現状の量産車両の時速300km/h対応のブレーキディスクはバーストに強い鍛鋼製だが、熱害でヘアークラックが入ったり、チューリップのように開いたりする。400km/h対応の新幹線車両では表面に耐熱材料を接合するのかもしれない。

新幹線ブレーキディスク 赤熱するブレーキディスク
試作:400km/h新幹線ブレーキディスク
緑色の部分は耐熱合金の溶接状態。
表面研削前を展示用に残している。
真っ赤に赤熱するブレーキディスク
400km/hからの制動では1000度Cに達する。
制動時間は約2分と過酷。
車輪側ディスク パネル
外径755mmの車輪側ディスク

 

ピストン&コンロッド
試作:鍛造マグネシウム合金 ピストン&コンロッド
上:鍛造スチール  下:鍛造マグネシウム合金

鍛造マグネシウム合金ピストン (ゴーシュー)

 平成24年度の支援事業。経済産業省もマグネシウムを日本の差別化技術に育成したい戦略があり、マグネシウム開発案件には毎年助成している。

 ゴーシュー社が得意としているのは自動車部品だが、今注力しているのは鍛造マグネシウムである。展示品は二輪車の鍛造マグネシウム合金製のピストン&コンロッドでモータースポーツ用で採用されている。マグネシウムは比重1.7でアルミの2/3、鉄の1/4と軽く、強度もアルミ合金以上で軽量化には最適な素材である。しかし、マグネシウムのコストは地金の状態ではアルミニウムより安価だが、鍛造に使用するピレット素材になると高価になる。それは、空気に触れると発火するので、溶解工程で溶湯表面と空気とを遮断するための保護ガスに六フッ化硫黄(SF6)ガスを使用していることに起因する。ゴーシュー社では空気に触れずに直接棒材を作成する技術によりコスト面でブレークスルーしている。

 

車載リチウムイオン電池用・バリレス端子(日伸工業)

 平成27年度の支援事業はABSブレーキ用ピストンを事例とした「厚板小物高精度絞り部品の製造押し込み絞りプレス加工技術の確立」だったが、今回の展示は車載リチウムイオン電池(LiB)用のバリレス端子。日伸工業ではこのように自動車用途に注力している。

 日伸工業が得意としているのは小物の冷間鍛造の順送加工。今回のバリレス端子は車載リチウムイオン電池に使用されている量産流動品。車載用リチウムイオン電池は使用時の変形や製造工程の異物で発火事故にもなる乱用性の乏しい商品。そのため、バリやエッジは不可という厳格な品質要求が課せられる。

 従来のプレス加工では切断時に、どうしても微細なバリが発生するため、後工程での処理が必要だった。ただ、材質は銅製で構造的に弱い端子は、バレル研磨など従来のバリ処理工程が使えず手作業に頼ることも多かった。日伸工業が開発したバリレス切断技術「ラウンドトリム®」は、切断前にV溝加工とR付け加工を施すことで、切断面がプレス成形面と破断面のみとなり、バリが発生しない。

車載リチウムイオン電池用端子 金型
車載リチウムイオン電池用端子
左:銅製   右:アルミ製
最終工程型
尖った歯が全周に立っている。
銅やアルミは弱い材料なので切断できる。


自動車部品の展示:1/1,000mm公差ベーン、熱鍛ロッカーアーム、焼結合金二輪車パーツ、薄層カーボン織布など

 今回の展示会では日本各地の工業振興会の展示ブースも多くあり、13都道府県、27市町村の出展があった。その中から関西地区の特徴ある自動車部品を出展していた会社を取材した。

 

(出展会社概要)

会社名 展示品 特徴・工法
㈱守谷刃物研究所
(島根県安来市)
量産:ベーン・パワステポンプ
試作:積層コア・モーター
1/1,000mmミクロン公差
機械加工
㈱大宮日進
(京都府京丹後市)
量産:ローカーアーム・二輪車 小物熱間鍛造自動化ライン
㈱大成モナック
(大阪府東大阪市)
量産:フランジ・二輪車
量産:ストレーナー・二輪車
焼結合金
サカイオーベックス㈱
(福井県越前町)
量産:薄層カーボン織布・CFRP CFRP、CFRTPの高強度化または薄肉化が図れる

 

1/1000mm公差ベーン・ポンプ(守谷刃物研究所)

 守谷刃物研究所が最も得意とするのは、自動車ではあまり要求されない超高精度の部品。これを機械加工で仕上げている。主力製品は油圧式パワーステアリングのベーンポンプのベーン。月産100万個とのこと。ベーンポンプは通常10枚のベーンが毎分3000回転以上の高回転で回転する。

 ベーンは偏心ローターのスリットに挿入され、遠心力で常に移動する。表面もツルツルに磨くことで偏摩耗や破壊を防いでいる。また、図面公差で厚み1,000分の1ミリのミクロン公差を守るためには10,000分の1ミリのサブミクロンの工程能力が必要になる。

 サブミクロンの加工とそれに準ずる精度の平面度、直角度が要求される。1000分の1ミリ公差にどのように対応しているのか尋ねてみたが、「選別対応」とのこと。自動車業界の将来を考えると、製造できないような公差の図面が出てくることが問題で、工程能力を考慮したもっとラフな寸法公差で成立するポンプの設計が出来て、真の設計技術力といえる。

 パワーステアリングは油圧式から電動式へとシフトし、守谷刃物研究所の事業としては主力のベーンは生産が減少する。生産設備を生かすためにも、高精度部品の受注を急いでいる。

ベーン・パワステ油圧ポンプ 金型

量産:ベーン・パワステ油圧ポンプ
鋼種:工具鋼ほか
硬さ:約HRC60 
精度:真直度:3μm 平行度:4μm 直角度:5μm
面粗さ:Ra0.2 平均0.2μm準鏡面

試作:積層コア・モーター

0.1mmの板材を重ねて作成される。
機械加工は得意だが、接着が難しいとのこと。

 

熱間鍛造ロッカーアーム(大宮日進)

 大宮日進の最も得意とするのは、ネットシェイプ、機械加工レスによる生産コストの低減。

 熱間精密鍛造技術をベースに自動車・バイクのエンジン部品の鍛造から機械加工までの生産を行っている。特に異形小物と呼ばれる分野に強い。最近では、熱間鍛造によるシャープコーナー工法を確立し、機械加工を少しでも減らせるように努力している。

二輪車ロッカーアーム 全自動量産ライン

量産:二輪車ロッカーアーム
材質:SCr420H 低炭素クロム肌焼鋼

全自動量産ライン
高周波加熱による熱間鍛造

 

焼結合金 カム(大成モナック)

 大成モナックの最も得意とするのは焼結合金技術。自動車関係では二輪の焼結合金部品を量産している。主力製品は農業機械向けの遠心クラッチASSY。そのほか、単品から組立品まで実に様々な部品に対応しており、小回りが利く会社である。農業機械の生産数は少ないが、多様な部品を集めることにより事業を展開している。

鉄系焼結合金製・二輪車パーツ データシート 鉄系焼結合金製ストレーナー

量産:鉄系焼結合金製・二輪車パーツ
複雑な形状でも高精度に対応。
ギアの場合は6級程度の低回転用精度なら、追加の機械加工なしで対応できる。

材質:SMF5040相当
密度:6.8g/cm3以上(鋼材7.8の87%)
硬度:HRA60 以上

量産:銅系焼結合金製ストレーナー・二輪車
目で見てわかる細かい均一なメッシュになっている。

 

薄層カーボン織布(サカイオーベックス)

 サカイオーベックスが最も得意とするのは、カーボンの織物技術。福井県が保有する特許技術を活用した製品を製造している。福井県の特許技術は炭素繊維の開繊法。大手メーカーから販売されているカーボン織物の厚さは0.2mmだが、サカイオーベックスの厚さは0.085mmと半分以下の厚さとなる。そのため、カーボン繊維強化樹脂CFRPの成形体に仕上げると2倍の枚数の織物を重ねることになり、強度は1.49倍になる。

 または、強度に不足がなければ、67%の厚さで強度は同等となり、33%の軽量化が達成できる。

カーボン繊維強化樹脂CFRP カーボン織物

カーボン繊維強化樹脂CFRP成形状態
<特徴>・深絞り成形が可能
・大きい曲率でも成形できる

カーボン織物の状態
<特徴>・繊維が薄く柔軟
・表面平滑性が良好
・機械的強度に優れる
パネル 厚みを撮影
<2mm近傍品で比較>
市販品10枚 (1.93mm) 基準
サカイ24枚 (1.83mm) 強度アップ49%
市販品10枚+サカイ2枚 (2.02mm) 強度アップ20%
厚みを撮影
極薄:厚さ0.085mm(85μm)



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キーワード
ものづくり、関西機械要素技術展、戦略的基盤技術高度化支援事業、耐熱、溶接、レーザークラッディング、鍛造、マグネシウム、Mg、成形、プレス、バリレス、機械加工、熱間鍛造、焼結合金、炭素繊維、カーボン、CFRP、CFRTP、軽量化、高強度

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