BYD:中国EVのトップランナー、バッテリーの資源開発も推進

新エネルギー車の技術を活かし、全方位での電動化を目指す

2017/10/06

要約

 比亜迪股肦有限公司(以下、BYDグループ)は、経済特区深セン市に本部を置く従業員19.4万人の大手民営グループ企業である。主要事業は、自動車、二次電池/太陽光発電、携帯/スマートフォンの受託生産で構成されている。グループの前身は、1995年に創業者でグループトップの王傅福 氏が始めた携帯電話用バッテリー製造会社。2000年代初頭に大手携帯電話メーカーのバッテリーに採用され業績を伸ばした。2002年7月に香港H株、2011年6月に深センA株に上場。自動車事業には2003年に参入している。

 グループの自動車事業を担うBYD Autoは、2008年に世界初のPHVを発表。中国で新エネルギー車のトップランナーとして名高い。2016年のBYDグループの年次報告書によれば、新エネルギー車販売台数は、9.6万台(乗用車8.6万台/EVバス1万台)で市場シェアは23%でトップ。2017年上半期は、1月からの新エネルギー車補助金減額の影響や新エネルギー車市場の競争激化により新エネルギー車市場でシェアを落とした。

 BYD AutoはEVバスを中心に商用車領域にも力を入れており、2015年の新エネルギー車市場戦略発表以降は、次々とEVバスの生産拠点を拡充。また中国国内のみならず、北米、欧州、南米などにも進出している。さらに、近年ではモノレールの開発製造にも取り組んでいる。

 英国やフランスに続き、2017年9月上旬に中国でもガソリン車及びディーゼル車の禁止を検討する動きがあった。中国政府は9月27日に「乗用車企業平均燃費と新エネルギー車のクレジット制度同時管理方法」を公布。これにより、2018年4月1日より中国国内で乗用車を生産するメーカー及び輸入乗用車を販売する企業は、一定割合で新エネルギー車の製造・販売が義務づけられる。バッテリー事業に豊富な経験を持つBYD Autoは、リチウムイオンの資源開発にも着手していることから、新エネルギー車の量産を加速させる企業へのバッテリー供給なども視野に入れる可能性がある。



関連レポート:
上海モーターショー2017(4):吉利、長城、BYD、奇瑞、江淮、衆泰、力帆、新興EVメーカーの取材(2017年6月)
中国の技術ロードマップ:2030年に向けた省エネルギー/新エネルギー車の数値目標と方向性(2016年12月)

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BYDグループの概要:自動車事業は自主ブランドとDaimlerとの合弁ブランドを展開

 BYDグループは、経済特区深セン市に本部を置く従業員19.4万人(2016年12月31日現在)を擁する民営グループ企業である。グループ子会社の主要事業は、自動車、二次電池/太陽光発電、携帯/スマートフォンの受託生産で、グループの技術力を活かし新エネルギー領域に積極的に進出している。現在のBYDグループの前身は、1995年に創業者でグループトップの王傅福 氏が始めた携帯電話用バッテリー製造会社。2000年代初頭に大手携帯電話メーカーのバッテリーに採用され業績を伸ばした。2002年7月に香港H株に上場、2011年6月には深センA株に上場している。

 2003年に西安秦川汽車有限責任公司を買収し、社名を比亜迪汽車有限公司(以下、BYD Auto)に変更後、自動車事業に参入。二次電地の製造で培った技術力で、いち早く自動車用車載バッテリーの開発に着手し、2008年12月に世界初のPHV「F3 DM」を発表した。2011年にはDaimlerと合弁会社を設立しEVモデルを展開している。

 BYD Autoの2016年販売台数は前年比13.5%増の51万台(以下、工場出荷台数*)で、うち約2割を新エネルギー車が占める。また、2016年の年次報告書によると新エネルギー車乗用車の販売台数は8.6万台で中国最大手EVメーカーでもある。

*本レポートにおける台数は、注釈がない限り工場出荷台数。

BYD Autoおよび合弁メーカーの主要ブランド

主なメーカー名 2016年販売台数(台) 前年比(%) 主なブランド
比亜迪汽車 (BYD) 507,639 13.5 自主ブランド:Fシリーズ、Sシリーズ、eシリーズ、王朝シリーズ等
深圳騰勢新能源汽車(Denza) 2,287 -22.7 Daimlerとの合弁:Denza
広州広汽比亜迪新能源客車
(広汽BYD新エネルギーバス)
178 - 広汽集団との合弁:Kシリーズ、Cシリーズ等
(資料:MarkLinesデータベースより作成)


自主ブランド:10万元以下の新エネルギー車投入計画、EVバス工場の生産拠点を拡充

 BYD Autoの2016年販売台数は前年比13.5%増の50.7万台で2013年以来の二桁増となった。しかしながら、2017年は王朝シリーズの新型SUV「宋」のEVとPHVを投入したにもかかわらず、1-8月は前年同期比16.5%減の24.6万台と不振。2017年9月発売の王朝シリーズ初となる7人乗りファミリー向けMPV「宋MAX」で巻き返しを図る。

 販売台数に占める車型別の割合を見ると、2015年以前は他メーカーと比較して基本型乗用車(セダン・ハッチバック)が高い。2014年から徐々に新型SUVを投入することでSUVの販売が伸びて、2016年はSUVと基本型乗用車の割合はほぼ同率となっている。

王朝コンセプト
王朝コンセプト

 

 中国人のための車とうたう乗用車モデル元、唐、秦、宋などの「王朝シリーズ」は、値ごろ感のある価格設定で大都市のみならず中小都市の消費者に普及させる狙いがある。2017年4月に開催された上海モーターショーでは王朝シリーズの今後の方向性を示すモデルとして、元欧州メーカーデザイナー監修による「王朝コンセプト」が発表された。2018年は10万元以下の新エネルギー車やガソリン車を投入する計画。

 商用車では、2015年4月に発表された新エネルギー車市場戦略「7+4戦略」*にそって都市部を中心に積極的にEVバスやタクシーを展開するとともに、組立工場の拡充を図っている。

 BYD Autoは2008年に世界初のPHVを発表以降、中国新エネルギー車のトップを走り続けてきた。しかしながら、近年既存OEMはもとよりスタートアップ企業など多くの企業が新エネルギー車事業に参入しており競争が激化。また、2017年1月1日より政府による新エネルギー車補助金の減額が行われたこともあり、2017年上半期(1-6月)報告書によると、新エネルギー車の乗用車における市場シェアは、前年同期の36%から21.7%に減少している。

*「7+4戦略」:7つの領域(都市バス、タクシー、旅客輸送(中長距離バス等)、都市部での商品物流、都市部での建築関連物流、ごみ収集/清掃車、自家用車)と4つの特殊領域(物流倉庫、鉱山、飛行場、港湾)の全領域を新エネルギー車でカバーする戦略。

 



BYD Autoの新エネルギー乗用車販売台数推移

(台)

モデル名 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2016年
1-8月
2017年
1-8月
EV BYD e5 0 0 0 0 0 0 1,426 15,639 7,069 15,975
BYD e6 0 63 401 1,690 1,544 3,560 8,125 20,605 11,649 3,809
BYD T3 0 0 0 0 0 0 66 5 5 0
秦 (Qin) 0 0 0 0 0 0 0 10,656 5,264 4,531
宋 (Song) 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3,029
EV合計 0 63 401 1,690 1,544 3,560 9,617 46,905 23,987 27,344
PHV F3DM 48 417 613 1,201 1,005 0 0 0 0 0
秦 (Qin) 0 0 0 0 142 14,747 29,707 21,868 15,266 4,281
唐 (Tang) 0 0 0 0 0 0 18,169 31,405 24,668 9,384
宋 (Song) DM 0 0 0 0 0 0 0 0 0 16,101
PHV合計 48 417 613 1,201 1,147 14,747 47,876 53,273 39,934 29,766
総計 48 480 1,014 2,891 2,691 18,307 57,493 100,178 63,921 57,110

(資料:MarkLinesデータベースより作成)



BYD Autoの乗用車計画及び新モデル

モデル計画

・2018年に10万元以下の価格帯に新エネルギー車及び小型車を投入予定。多くのEVモデルを多数投入。

・ガソリンエンジン車の価格帯相当のPHV投入を将来的に計画。
・BYDは、十三五計画期間(2016-2020年)の末頃にタクシーと大型バスの全面的なEV化を図る。

宋MAX MPV ガソリン車 ・2017年9月発売の7人乗りMPV。一人っ子政策廃止による家族構成の変化を考慮したファミリー向けモデル。シートは、2+3+2の3列で、シートアレンジは8通り。
・パワートレインは、1.5Lターボエンジンと6速MTまたは6速ATの組み合わせ。最高出力113kW、最大トルク240N・m。
・全長4,680mm、全幅1,810mm、全高1,680mm、ホイールベース2,785mm。価格は7.99万元より。
宋DM SUV PHV ・2017年4月発売の小型SUV。パワートレインは、1.5L直噴ターボエンジンとツインモーター、6速ATの組み合わせ。エンジンの最大定格出力113kW、最大トルク240N・m。電動4WDシステムを搭載。
・前方及び後方モーターともに、最高出力110kW、最大トルク250N・m。EV航続距離80km、1.4L/100kmの燃費。最高時速180km、0-100km/h到達時間は4.9秒。全長4,565mm、全幅1,870mm、全高1,700mm、ホイールベース2,660mm。
・価格は21.59万元(16.99万元*)-24.59万元(19.99万元*)。
宋EV300 SUV EV ・2017年4月発売の小型SUV。モーターの最高出力160kW、最大トルク310N・m。航続距離300km、最高時速140km、0-60km/h到達時間は4.8秒。全長4,565mm、全幅1,870mm、全高1,720mm、ホイールベース2,660mm。
・価格は26.59万元(18.99万元*)-27.9万元(19.99万元*)。

(資料: BYD Autoのサイト及び各種報道をもとに作成)
*補助金適用後の価格。

宋 EV300
宋EV300



新設及び拡充された主な中国国内生産拠点

浙江省
杭州市
・2014年6月から建設が開始された杭州工場で、2015年9月にEVバスがラインオフされた。総面積18.49万㎡、総投資額60億元、EVバス3,000台の年間生産能力。
江蘇省
南京市
・2014年に南京市溧水の経済開発区にEV商用車生産拠点が建設された。プロジェクトの総投資額は30億元。生産能力は、EV大型バス5,000台、EV軽型バス1,000台。
・2016年に総投資額12.5億元の第2期プロジェクトを発表。敷地面積10万㎡、EV軽型トラック1万台の生産能力。
内モンゴル自治区
包頭市
・2014年11月、包頭市で電動鉱業車の生産プロジェクトが調印された。建屋面積20万㎡、総投資額25億元、年間5,000台の生産能力を備える。2016年に電動鉱業車がラインオフ。
河北省
承徳市
・2015年4月に着工された承徳市ハイテク産業パークにあるBYD新エネルギー車生産拠点で、2016年4月にラインオフ式典が行われた。
・第1期はEVトラック年産2,000台(二直)及び部品で、第3期は年産5,000台の生産能力。
湖北省
武漢市
・2015年4月に武漢市黄陂区で新エネルギー商用車の生産拠点の起工式が行われた。本工場は、BYDにとって華中地区で要となる工場。
・総投資額50億元で3期に分けて建設。第3期完成後の生産能力はEVバス3,000台、EV特装車5,000台。完成車の生産以外に、部品関連の研究開発や生産も展開。
・2016年11月、湖北省発展・改革委員会により「新エネルギーバス製造プロジェクト」が批准された。建設期間は1年間。総投資額1.8億元。完成後の生産能力は年産2,000台。
湖南省
長沙市
・2015年5月、長沙市雨花区経済区で総投資額50億元の第2期のEVトラック及び特装車の生産プロジェクトの調印が市政府と行われた。2020年に5,000台、2025年に1万台の年産計画。
・2016年8月にEV特装車の生産ラインが稼働。EV特装車の製造センターの役割を担う。EVトラックや特装車以外に、電動アクスル、シャシーなどコアとなる部品も製造。
天津市 ・2015年8月に天津市の新エネルギー工場でEVバスがラインオフされた。総投資額13億元。第1期の生産能力はEVバス年産3,000台。2016年第1四半期より第2期工事が開始され、2017年の完成後は年産1万台の生産能力。
陝西省
西安市
・2015年9月西安第二工場が稼働。総投資額50億元、年産40万台。
広東省
汕尾市
・2015年11月汕尾市と新エネルギー車6大プロジェクトに関する調印が行われた。
・2016年4月に汕尾市陸河工業パークの第1期生産拠点でEVバスがラインオフされた。
山東省
青島市
・2016年6月、青島市新エネルギー拠点でラインオフ式典が行われた。総投資額30億元で、第1期はEVバス1,000台の生産能力。第3期完成後は年産5,000万台の生産能力を備える。
山西省
太原市
・2016年6月、太原市でEV新工場拠点の設立が発表された。総投資額40億元で、生産能力はEVバス5,000台、工事用などの特殊車両5,000台。
・2017年7月、軽量化設計のEVバス「K8」がラインオフされた。
寧夏回族自治区
銀川市
・銀川市政府との産業パーク建設プロジェクトの調印式が2017年4月に行われた。
・総投資額20億元、EVバスとモノレールの生産を行う。EVバスの年間生産能力は2,000台を計画。
浙江省
寧波市奉化
・2016年5月に奉化市での新エネルギー車プロジェクトの調印が行われた。プロジェクトの総投資額は35億元。第1期は2016年6月に着工、2017年に主に溶接、シャシー製造、大型EVバスの生産ラインの建設を行い、EV大型バス年産2,000台の生産ラインが実現。

・2018年下半期には、EV大型バスの生産能力を年間1,000台に拡大。また、EV大型バス以外にコンテナトラックや港湾用車両なども生産する計画。

広西チワン族自治区
桂林市
・2017年8月に桂林市でEVバスがラインオフされた。BYDは投資額20億元をかけたモノレールと新エネルギー5,000台バスプロジェクトを推進している。
(資料:各種報道をもとに作成)


Denzaブランドの強化:ディーラー網拡大とブランド認知向上、新型EVの投入を計画

 BYDグループは2011年にDaimlerとの折半出資による合弁会社を設立し、2014年には共同で開発した小型EV「騰勢(Denza)」の発売を開始した。「騰勢(Denza)」は、中国国産の他のEVと比べ価格が高く、商品ラインナップも少ない。また、販売網が少ないこともあり、2015年の販売台数は約3,000台、2016年は約2,300台と低調。現在販売網の充実を図り、大都市の一部のベンツ販売代理店で購入可能となっている。

 2017年6月に外資合弁規制の改定が公布され、EVの完成車製造に限り外資合弁2社までの規制が緩和された。これにより欧米のOEMを中心にEV製造に特化した3社目の合弁企業設立の動きが活発化している。このような中、「深圳騰勢新能源汽車有限公司」は、DaimlerはBYDとの提携を強化し、中国で新型EVの投入も視野に入れることを発表。一方で新型EVの具体的な時期については表明をしていない。



Denzaの販売台数及び生産台数

(台)

  2014年 2015年 2016年 2016年
1-8月
2017年
1-8月
販売台数 132 2,958 2,287 1,130 1,574
生産台数 181 3,155 3,349 2,211 2,277
(資料:MarkLinesデータベースより作成)



合弁会社「深圳騰勢新能源汽車(Denza)」の動向

社名変更 ・2016年11月に「深圳比亜迪戴姆勒新技術有限公司(深センBYD-Daimler)」から「深圳騰勢新能源汽車有限公司(深センDenza新エネルギー車)」に社名が変更となる。
増資

・2013年に増資され、資本金が15億元から23.6億元に増額。

・2017年5月の5億元増資により、ディーラー網拡大及びブランド認知向上を図る。
提携強化を発表 ・2017年9月、Daimlerとの提携を強化し、中国で新型EVの投入も視野に入れていることを発表。なお、具体的な計画については表明されていない。
Denza Denzaの内装
騰勢(Denza) 騰勢(Denza)の内装


バッテリー事業拡大と資源開発

 中国政府は、短中期目標として、新エネルギー車発展の需要に合わせリチウムイオン駆動用バッテリー技術を向上すると同時に、新型のリチウムイオン電池駆動用バッテリーの開発研究に重点を置いている。

 二次電池/太陽発電の事業展開を行っているBYDグループは、「自動車動力蓄電池業規範条件」の適合企業として、2016年1月にグループ傘下の「恵州比亜迪電池有限公司」が政府より認証を受けた。新エネルギー車に搭載されるバッテリーは政府より認証を受ける必要がある。2017年8月には、リチウムイオン電池製造大手の合肥国軒高科等と合弁を締結し、リチウムイオン電池三元系正極材料前駆体*の生産工場を設立。バッテリー事業では、資源開発も着手し、鉱物資源に恵まれた中国西部青海省で国有企業との合弁会社「青海塩湖BYD資源開発有限公司」を設立している。

*前駆体:該当物質が生成する前の段階の物質



合弁会社設立 ・資本金93,684万元のリチウムイオン電池関連の合弁会社(中国冶金科工集団(MCC/51%)、国軒高科(Guoxuan High-Tech/30%)、BYD(10%)、唐山曹妃甸発展投資(9%))を2017年8月設立。
・新会社は、リチウムイオン電池三元系正極材料前駆体を生産する工場を運営する。2期に分けて建設され、第1期はNCM523三元材料の前駆体4.8万トン及びNCM622三元材料の前駆体4万トンの生産ラインを建設、市場の需要に応じて2種類の製品の生産量を調整する予定。第2期ではさらに同等の処理能力を有する生産ラインを増設する計画。
プロジェクト推進 ・2015年6月、リン酸リチウム電池プロジェクト、新エネルギー車の研究開発プロジェクト等のために、150億元を調達。
・リン酸リチウム電池プロジェクトの総投資額は60.23億元で、調達資金はリチウム電池及び関連原材料の生産などに充てられる。立地は深セン市坪山新区。
青海省での資源開発 ・地下資源が豊富な青海省に炭酸リチウムイオン及び水酸化リチウムイオンの資源開発及びその製品に関わる生産、販売を行う「青海塩湖BYD資源開発有限公司」が2017年3月に設立された。資本金5億元、出資比率は青海塩湖工業股份有限会社49.5%、BYD49%、深セン卓域成投資有限公司1.5%。
・新会社設立により、BYDはリチウム電池の原材料供給へつなげる。なお、すでに青海省で建設が進んでいるバッテリー工場は、10GWhの能力を備える計画。
(資料: 比亜迪股份の資料及び各種報道をもとに作成)


海外展開: 欧州、北米、南米でEVバスの生産拠点を拡充

 BYD Autoの海外展開の特長は、EVバスやタクシーなどの公共交通機関にも進出していることである。一帯一路の地域に該当する中東やアフリカのみならず、欧米や日本などの自動車先進国などでも採用されている。

 生産拠点については、欧州、北米、南米が現在稼働中。具体的には、2017年4月にハンガリーで欧州初の商用車工場が稼働。さらにフランスでのEVバス組立工場の建設も予定されている。米国では、2017年10月に第2期のEVバス工場の拡張工事が完了することで、年産1,500台の生産能力を備える。南米では、ブラジルで2015年にEVバスの工場が設立されている。なお、ブラジルでは、2014年にリン酸鉄リチウムイオン電池のプロジェクトに調印、バッテリー工場も稼働中。

 以下は、2014年下期以降に大きな動きのあった輸出や受注/納入状況を取り上げた。



BYDの海外事業:輸出、受注/納入状況

イランにEVを輸出

・イランでの民営最大の自動車製造会社Kerman Khodroの子会社「Karmania」と2016年11月に戦略的パートナーシップを締結。BYDはイランで最初にEVを供給。
・イランに向けて、ハイブリッド車(HV)、EV、二次電池を輸出する。
・2015年には既にガソリン車「S6」をラインオフ。

スーダンに乗用車を輸出 ・2015年9月にスーダンに向けて1万台(小型セダン「L3」、SUV「S7」)が輸出された。
ウルグアイでEVタクシーを納入 ・ゼロエミッション輸送システムを構築することを目標にしているウルグアイで、2015年にEVのe6が首都Montebideoのタクシーに採用された。2017年5月には追加20台を納入。
米国カリフォルニアでEV連節バスを納入 ・2017年5月、北米初となる60フィートEV連節バスを、カリフォルニア州ロサンゼルスのAntelope Valley Transit Authority (AVTA)に納入。
・2030年までに公共バスの100%電動化を目指すロサンゼルスで、ロサンゼルス郡都市圏交通局(LA Metro)が12m長のEVバス60台(総額約4,496万ドル)の購入を発表した。
インドネシアでEVバスを受注 ・インドネシア政府の公共交通サービス関連機構の「Transjakarta」と7年間の運営サービス協定及びEVバス150台の供給に関する取り決めを2015年9月に締結。
イタリアでEVバスを受注 ・2016年12月、トリノ交通局の入札(12mの大型EVバス19台と関連サービス)を1,000万ユーロで受注。
イスラエルでEVバスを受注 ・BYDにとってイスラエルにおける初めてのEVバスの大口受注が2017年7月に契約された。イスラエル最大のバス運行会社Eggedにより、12mのシングルデッキ電動バス17台が、イスラエルで3番目に大きい北部港湾都市のHaifaで運行される。
南アフリカでEVバスを受注 ・2020年までにCO2排出量の3.2%低減を目標にしているケープタウン市の公共交通機関の入札でEVバス11台を受注。
英国でカーシェアリング ・2016年9月、ロンドンでUberによるカーシェアリングでBYDのEV「e6」50台が採用された。
日本でEVバス運行開始 ・2015年2月、京都急行バスにEVバス「K9」5台が納車され運行開始。
オーストラリアでEVバス運行開始 ・2017年8月、ACT(Australian Capital Territory)でEVバスが運行開始。
(資料: 比亜迪股份の資料及び各種報道をもとに作成)



主な海外生産拠点の動向

生産拠点 米国  ・Lancaster工場の第2期拡張が2016年3月に発表された。
・2017年10月に拡張工事が完成予定。完成後はEVバス年産1,500台、従業員700人規模となる。将来的には、第3期拡張で1,400人規模の計画。
フランス ・2017年3月、パリ北方のBeauvais近郊のAllonneに投資額1,000万ユーロ、敷地面積32,000㎡の工場建設を発表。EVバス生産の他、メンテナンス及び物流センター、バッテリーのテストセンターなどを併設。
・第1フェーズでは年間最大200台のシングルデッキバスの生産を計画する。新工場は2018年上半期操業開始予定。
ハンガリー ・ハンガリー北部のKomarrom市に、EVバス、フォークリフト、軽型商用車を生産する新工場が2017年4月に稼働。欧州向けの車両を生産。
・総投資額2,000万ユーロ、敷地面積66,000㎡で年産400台の生産能力を計画。R&Dセンターやバッテリーテスト施設も設置。
ブラジル ・2015年にCampinas工場(年産1,000台)生産のEVバスが完成。2017年7月運行開始。
・2017年7月に太陽光パネルと年産720台のEVバスシャシー工場の拡張を発表。
アルゼンチン ・BYD AutoおよびCTS AutoがアルゼンチンでEVメーカーとして2017年5月認可された。
・2017年7月、アルゼンチンのサルタ州政府とEV新工場の建設合意書に署名。総投資額1億ドル超で、約600人の雇用創出が予定されている。
・新工場をサルタのGeneral Guemes Industrial Parkに建設する計画。戦略的地域であることとすでに建設済みのバッテリー生産工場に近いことが選定理由。
エクアドル ・2017年5月、エクアドル工業生産部とEV工場建設の了解覚書(MOU)に署名。生産モデルは、EVバスと小型EVトラック。投資額6,000万ドル、年産300台、従業員数300人規模。
・2017年9月、BYDエクアドル分公司とエクアドル国家理工学院が戦略協定に調印。双方はEVに関しての協業を強化し、EV領域におけるエンジニア教育などを行う。
(資料: 比亜迪股份の資料及び各種報道をもとに作成)


BYDグループの業績:売上高の5割以上が自動車事業、グループ全体の営業利益率は19%

 BYDグループは、自動車、二次電池/太陽光発電、携帯/スマートフォンの受託生産の3事業に分かれている。グループの売上高は上昇傾向で2016年に1,000億元を超え、営業利益率は過去5年で最高の19.0%を達成した。

 自動車事業がグループ全体に占める売上高の割合は、2012年からほぼ5割前後でグループの主力事業となっている。2016年は550億元で55%を占めた。

 2017年上半期(1-6月)は、グループ全体の売上高は前年同期比0.2%増の438億元だが、自動車事業は前年比4.1%減の224億元となった。

(百万元)

2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2016年1-6月 2017年1-6月
Revenue 44,381 49,768 55,366 77,612 100,208 43,745 43,817
Automobile 22,551 25,291 26,270 38,934 55,022 23,392 22,433
Handset and Assembly Services* 17,155 19,459 24,116 32,928 38,083 16,293 17,963
Rechargeable Battery and Photovoltaic 4,675 5,018 4,980 5,750 7,103 4,061 3,421
Gross profit 5,126 6,516 7,623 11,859 19,018 8,523 8,169
Gross profit margin % 11.6% 13.1% 13.8% 15.3% 19.0% 19.5% 18.6%
Government grants and subsidies 550 677 798 581 711 212 612
Pre-tax Profit 291 832 874 3795 6568 3,009 2,650
Profit for the period 213 776 740 3,138 5,480 2,469 2,165
Equity holders of the parent 81 553 434 2,823 5,052 2,260 1,723
Minority interests 132 223 306 315 428 209,371 442,249
Research & development 1,150 1,279 1,865 1,998 3,172 1,154 1,383
% revenue 2.6% 2.6% 3.4% 2.6% 3.2% 2.6% 3.2%

 (資料:比亜迪股份の年次報告書より作成)

*Handset and Assembly Services:携帯/スマートフォンの受託生産事業



BYDの主な中国工場の生産能力

(台)

工場 2017年 計画
広東省深圳工場 40万 40万
陜西省西安工場 第1工場 30万 30万
第2工場
(新エネルギー車工場)
40万 40万
合計 70万 70万
湖南省長沙工場 EVバス 0.25万* EVバス1万*
PV 15万 PV 25万
天津新エネルギーバス工場 1万* 1万*
遼寧省大連工場 EVバス0.1万* EVバス0.5万*
浙江省杭州工場 0.3万* 0.3万*
湖北省武漢工場 EVバス0.3万* EVバス0.3万*
EV特装車0.5万* EV特装車0.5万*
承徳新エネルギーバス工場 0.2万* 0.5万*
汕尾新エネルギーバス工場 1万* 1万*
青島新エネルギーバス工場 0.1万* 0.5万*
南京新エネルギー車工場 EVバス0.1万* EVバス0.5万*
EV軽型トラック0.1万*
寧波新エネルギー車工場 EVバス0.3万* EVバス0.3万*、コンテナトラック、港湾用車両
河北省太原工場 EVバス0.5万* EVバス0.5万*
EV特装車0.5万* EV特装車0.5万*
鉱業用車輌0.2万* 鉱業用車輌0.2万*
包頭鉱業車工場 鉱業車、物流車、特装車0.5万* 鉱業車、物流車、特装車0.5万*
銀川工場 - EVバス0.2万*
桂林新エネルギー車工場 EVバス0.5万* EVバス0.5万*
広州広汽BYD新エネルギーバス工場 EVバス、中型バス0.5万* EVバス、中型バス0.5万*
(資料:各種報道を元に作成 2017.9)
注)*印の付いたデータは商用車を含む生産能力。


BYDの中国販売台数(工場出荷台数)

(台)

メーカー 車種 モデル 2014年 2015年 2016年  2016年
1-8月
2017年
1-8月
比亜迪汽車 (BYD) MPV BYD M6 6,356 2,420 1,189 835 380
BYD T3 0 66 5 5 0
SUV BYD S6 98,720 18,439 1,935 1,928 0
BYD S7 6,549 105,080 65,353 52,029 17,655
元 (Yuan) 0 0 45,838 25,709 16,263
宋 (Song) 0 13,569 100,042 40,083 46,058
宋 (Song) DM - - - 0 16,101
唐 (Tang) 0 18,169 31,405 24,668 9,384
基本型乗用車
(セダン・ハッチバック)
BYD e5 0 1,426 15,639 7,069 15,975
BYD e6 3,560 8,125 20,605 11,649 3,809
BYD G3 2,854 1,521 0 0 0
BYD G5 12,687 17,246 4,562 3,271 442
BYD G6 8,112 552 0 0 1,928
BYD L3 54,531 9,907 746 0 0
F0 38,179 16,028 10,865 7,234 8,967
F3 110,296 138,944 130,114 72,337 84,730
思鋭 (Si Rui) 7,865 250 0 0 0
秦 (Qin) 14,747 29,707 32,524 20,530 8,812
速鋭 (Surui) 73,269 60,481 33,539 21,152 9,968
重型トラック 0 25 0 0 0
大型バス 0 2,792 10,676 4,583 4,301
中型バス 0 2,583 2,602 863 799
合計 437,725 447,330 507,639 293,945 245,572
深圳騰勢新能源汽車 基本型乗用車
(セダン・ハッチバック)
騰勢 (Denza) 132 2,958 2,287 1,130 1,574
広州広汽比亜迪新能源客車 軽型バス 0 0 75 10 7
大型バス 0 0 78 0 3
中型バス 0 0 25 0 8
合計 0 0 178 10 18
長沙比亜迪客車 大型バス 2,533 0 0 0 0
総合計 440,390 450,288 510,104 295,085 247,164
(資料:MarkLinesデータセンター)


LMC Automotive 販売予測: BYD グループの販売は2019年に回復、2020年には45万台

LMC Automotive 2017年第3四半期)

 LMC Automotiveの販売予測(2017年第3四半期)によると、BYDグループの2017年のライトビークル販売は、前年比19.3%減の40.3万台になる見込み。販売台数は2019年以降に回復し、2020年は2017年比12.6%増の45.4万台と予測している。

 2017年の中国ライトビークル市場は弱含みで推移したが、第2四半期からは上昇傾向にある。中国ライトビークルの販売台数は7月が194万台で前年同月比3.4%増、1-7月は前年同期比2.5%増となった。

 卸売及び小売セクターにおける最近の持続的な成長から、通常は今後数ヵ月に市場全体が回復すると見られるが、LMCA Automotiveは上昇傾向が持続することを保証する要因にはならないと考える。2016年下半期に非常に高い販売実績を記録したことから、2017年8-12月はわずかに下落すると予想される。

 BYDのSUVラインナップは、グループの成長の主な原動力となっており、宋と元はBYD全体の販売に多大な貢献が期待されている。これとは対照的に、ほとんどの自動車メーカーの乗用車は2017年1-7月は大幅に減少し、BYDの2017年の見通しも落ち込んでいる。

 BYDは短期的に複数の課題に直面している。しかしながら、いくつかの新エネルギー車の導入が下支えとなり、BYDの市場シェアは上昇し始め、そして2018年からは安定した水準となるだろう。



BYD グループの市場・ブランド別販売予測

(台)

COUNTRY GLOBAL
MAKE
2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020
BYD Group BYD 445,290 446,543 497,322 401,127 398,066 426,191 450,920
Denza 132 3,154 2,287 2,104 2,284 2,609 2,983
BYD Group Total 445,422 449,697 499,609 403,231 400,350 428,800 453,903
China BYD 437,725 441,930 494,380 397,420 395,323 423,339 447,952
Denza 132 3,154 2,287 2,104 2,284 2,609 2,983
China sub-total 437,857 445,084 496,667 399,524 397,607 425,948 450,935
Peru BYD 1,149 1,163 1,073 1,108 1,149 1,135 1,165
Uruguay BYD 2,213 1,535 1,025 712 730 779 794
Ecuador BYD 272 171 168 255 259 268 278
Philippines BYD 0 67 15 134 123 130 135
Colombia BYD 375 357 107 44 49 49 52
Spain BYD 16 2 4 4 23 30 42
Chile BYD 2,439 584 160 23 26 28 37
Netherlands BYD 3 3 0 0 8 14 19
Luxembourg BYD 0 2 0 0 7 10 14
France BYD 0 2 0 0 8 11 12
Ukraine BYD 606 225 6 0 0 0 0
Iran BYD 0 0 0 1,098 0 0 0
Belgium BYD 36 0 0 0 0 0 0
Russia BYD 5 0 0 0 0 0 0
Singapore BYD 0 0 7 31 0 0 0
Source: LMC Automotive "Global Automotive Sales Forecast (Quarter 3, 2017)"
*国名は一部抜粋のため、各国の合計値は表中のBYD Group Totalと一致しません。
 (注) 1.データは、小型車(乗用車+車両総重量 6t以下の小型商用車)の数値。
2. 本表の無断転載を禁じます。転載には LMC Automotive 社の許諾が必要になります。
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キーワード
BYD、新エネルギー車、EV、PHV、バス、リチウム電池、バッテリー

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