最新のヘッドアップディスプレイ/ライティング技術
人とくるまのテクノロジー展2015から:カルソニックカンセイ、日本精機、三菱電機、矢崎総業、小糸製作所、市光工業、Hella
2015/06/29
要 約
2015年5月20~22日に開催された「人とくるまのテクノロジー展2015(公益社団法人 自動車技術会主催)」では、ヘッドアップディスプレイ(HUD)の展示が注目を集めていた。カルソニックカンセイは、HUDを搭載したコックピットモジュールのコンセプトを展示。日本精機は2画面HUDを、三菱電機はレーザー方式/液晶方式の2つの方法によるHUD技術を、矢崎総業は開発中の次世代HUDの展示を行った。
ランプメーカー各社はそれぞれの最新技術をアピール。小糸製作所はレーザー/有機ELを使ったランプコンセプトを、市光工業は最新のヘッドランプシステムと汎用型LEDユニットを、HellaはAudi A7に採用されているマトリックスヘッドライトを展示した。
また、Continentalは次世代コンビメーターを、Valeoはサイドミラーに代わるカメラモニタリングシステムを出展。
本レポートでは、これらのサプライヤーの展示概要をまとめる。
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ヘッドアップディスプレイ:カルソニックカンセイ、日本精機、三菱電機、矢崎総業
カルソニックカンセイ:コックピットモジュールHMIシステムコンセプト
HUD、フルカラー液晶メーター、二つの機能を持ったステアリングスイッチ、タッチパッドなどからなるコックピットモジュールのコンセプト。運転手の視覚/操作/思考を楽にするのが狙い。それぞれの技術はまだ開発段階であるが、HUDは2018年に生産が可能になるとのこと。 |
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コックピットモジュールHMIシステムコンセプトのヘッドアップディスプレイとフルカラー液晶メーター | コックピットモジュールHMIシステムコンセプトの全体図(資料:カルソニックカンセイ) |
日本精機:2画面ヘッドアップディスプレイ
日本精機は、表示領域を遠近2画面にした次世代HUDを開発。遠方側の画面は、(投影距離が)3-5m先と可変で、且つ傾斜面となっている。表示画面を斜めにすることで実風景との親和性を高めた。ルート案内や各種警告などの運転支援情報を表示させる。近傍画面は車速、標識情報などステータス情報を表示し、2.5m先に映る。 |
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ルート案内の矢印が遠方側画面に、車速表示などが近傍画面に表示される。 |
三菱電機:レーザー方式と液晶方式のヘッドアップディスプレイを展示
三菱電機は、レーザー方式と液晶方式の、2つのHUDを出展。現段階では、現在主流の液晶方式の方が、視野範囲が大きく見やすい。レーザー方式には、映し出された文字などの見え方、消費電力面での優位性があるとのことで、基本的な研究を行っている段階。 |
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レーザー方式のHUDの表示 | 液晶方式のHUDの表示 |
レーザー | 液晶 | |
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外観 | 2.1m前方に17インチの虚像を投影。 | |
解像度 | 1280×320 | 800×200 |
色再現性 | 145%(RGB三色レーザーを用いるため色域が広くなる)。 | 41% |
コントラスト | 7000:1 (夜間での視認性に優れる) | 1000:1 |
視野範囲 | 小 | 大 |
消費電力 | 液晶方式の10分の1。表示部(文字や矢印)のみにレーザーを照射する。 | 表示領域全体をLEDバックライトで照射するため、レーザー方式より消費電力が大きい。(枠が浮き出るように見える)。 |
商品化時期 | 2019ー2020年の商品化を狙って開発中 | 2016年に商品化予定 |
矢崎総業:次世代ヘッドアップディスプレイ
矢崎総業は現行トヨタ プリウスにHUDを供給しており、今回は開発中の次世代製品を展示。表示色をフルカラー化した上、表示面積を11倍にしながら、筐体の体積を40%増に抑えた。 |
開発品 | 従来品(プリウス向け) | |
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表示寸法 | 240x90mm | 62.8x31.4mm |
筐体寸法 | 270(W)x240(D)x130(H)mm | 252(W)x223(D)x105(H)mm |
表示ディバイス | TFT LCD (Thin Film Transistor Liquid Crystal Display) | VFD (Vacuum Fluorescent Display:蛍光表示管) dot |
表示色 | RGB(フルカラー) | ブルー、グリーン |
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フルカラー化した次世代ヘッドアップディスプレイ |
次世代ライティングシステム:小糸製作所、市光工業、Hella
小糸製作所:レーザー光/有機ELを使ったランプコンセプト
小糸製作所は、次世代の光源であるレーザーとOLED(有機EL)を使った、ランプのコンセプトを提示。レーザー光は高輝度であるという特長があり、遠方(600m以上)の視認性と小型化を両立する。OLEDは面発光、超薄型、軽量の特長を有し、形状の曲面化と消灯時の透明化も可能。 |
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次世代ヘッドランプ "KANADE": ハイビーム、ロービームに白色レーザー光を使い、ターンシグナルランプにOLEDを使っている。 | "Ray Motion II": 停止ランプが光っている状態(レーザー光源と光ファイバーを利用している)。菱形模様が並ぶ透明の部分がOLEDを用いた方向指示器。 |
小糸製作所による動画解説 |
市光工業:アダプティブ・ドライビング・ビームと汎用LEDソケット
Adaptive Driving Beam (ADB) | ハイビームを自動遮光し、前方車/対向車を眩惑させないようにするヘッドライトシステム。バックミラー近くにあるカメラで前方車のテールランプ、対向車のヘッドランプを判別して、ハイビームの照射範囲を自動的/連続的に変化させる。その変化には、ライトの向き、シェードを動かすことで行う。 |
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MonoLED unit (ソケット型標準LED光源ユニット) | LED光源、LED駆動回路、放熱部品(樹脂製)、光源ソケットが一体となった、汎用型LEDユニット。ソケット型であるため、車種ごとの専用設計が不要で、様々なライトに適用可能。トヨタアルファード/ヴェルファイアのポジションランプ(車の前面に設置する、車幅を知らせるランプ)に採用。今後、フォグランプ、テールランプなどへの展開を狙う。 |
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Adaptive Driving Beam (ADB) | MonoLED unit (ソケット型標準LED光源ユニット) |
市光工業による動画解説 |
Hella:マトリクスヘッドランプ
次世代表示装置:Continental、Valeo
Continentalの次世代コンビメーター Next Gen HEC
全面に液晶画面を用いた、次世代 コンビネーションメーターのコンセプト。ソフトウエアを変更するだけで、デザインを変更することが出来る。画面の一部に、ナビゲーション画面を映したり、さらに拡大したり出来る。Wi-Fi経由でタブレットPCやスマートフォンと接続可能でその画面を映すことも出来る。欧州メーカーと共同開発中。 |
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Continentalの次世代コンビメーター Next Gen HEC メーター内にナビゲーションの案内表示が映し出されている。 | 交差点に近づくと、周りのビルの様子も映し出す。 |
Valeoのカメラモニタリングシステム Sightstream
従来のリア及びサイドミラーの機能を、カメラと室内のディスプレイに置き換えた。そのことで、室内にバックミラーをつける必要がなくなり、リアウインドーを狭く取ることも出来るようになり、エクステリア/インテリアデザインの可能性が広がる。また、サイドミラーが無くなることで、空気抵抗が減り、CO2排出量を最大1.3g/km削減することが出来る。 |
EUの規則では2016年にミラーをカメラに置き換えることが認められる見込み。同社は2016年後半から商品化予定。 |
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Valeoのカメラモニタリングシステム Sightstream |
<自動車産業ポータル、マークラインズ>