VW Polo 分解調査 (上)

サプライヤーリストとエンジンルーム、運転席周りの分解

2014/11/28

要 約

VW Polo
分解中のVW Polo
*写真はクリックすると拡大されます

 VW Poloの車両分解見学会が、2014年11月5日と6日の2日間開催された。公益財団法人埼玉県産業振興公社 次世代自動車支援センター埼玉と、一般社団法人日本自動車部品工業会の共催で、分解作業は埼玉自動車大学校内整備工場において行われた。2014年11月19日には、埼玉県産業技術総合センターにて分解部品の一般公開が行われた。

 今回分解されたPoloは、日本では販売されていない1.2Lディーゼルエンジンを搭載した英国仕様の2012年モデル。
 PoloはBセグメントの中でも小さいサイズであるにも関わらず、優れた快適性(性能、広さ)を高く評価され、それを理由にヨーロッパカーオブザイヤー を2010年に受賞している。その他に、同年の世界カーオブザイヤー、日本インポートカーオブザイヤー、RJCインポートカーオブザイヤーを受賞している。
 今回のレポートは、その快適 性を着眼点としたエンジンルーム/運転席周りの構造と、主要部品のサプライヤーリストを紹介する。

 分解作業は、初日にエンジンおよびトランスミッションの取り外しを、2日目は主に取り外したエンジンの分解が行われた。見学会後は、内装部品などの分解が行われ、その後の部品展示会で展示された。また、Poloに搭載されている1.2Lガソリンエンジン(2011年製造)の分解部品の展示も同時に行われた。


過去の分解レポート:

日産 ノート (2014年9月掲載)
  (上):主要安全技術と先進運転支援システム
  (下):スーパーチャージャーを採用したドライブユニット

ホンダ アコードハイブリッド (2014年2月掲載)
  (上):PCUとシャシ関連部品
  (中):電池関連部品と電動サーボブレーキシステム
  (下):ドライブユニット

ホンダ フィットハイブリッド (2013年12月掲載)
  (1) 電池関連部品と電動サーボブレーキシステム
  (2) エンジンとモーター内蔵7速デュアルクラッチトランスミッション

トヨタ アクア (2012年11月掲載)
  (1) 主要部品サプライヤーと電池関連部品
  (2) 燃費35.4km/Lを達成したハイブリッドシステム

日産 リーフ
  (1) 分解調査(2012年2月掲載)
  (2) 主要部品の分解展示報告 (2012年9月掲載)
  (3) カットボディーの展示取材報告(2012年11月掲載)

トヨタ プリウス (2010年3月掲載)
  プリウスの分解実験



VW Polo (2012年モデル、英国仕様)のスペック

車両 VW Polo 2012年英国仕様(右ハンドル車)
車両サイズ 全長 3,970 X 全幅 1,682 X 全高 1,462 mm、ホイールベース 2,470mm
車両重量 1,132kg
燃費 (NEDC) Combined 26.3, Urban 21.7, Extra-urban 30.3 (km/L)
ディーゼルエンジン 1.2L 直列3気筒(インタークーラー付直噴ターボ)、
DOHC 12バルブ、圧縮比16.5、
最高出力55kW(75PS)/4200rpm、
最大トルク180Nm/2000rpm。
トランスミッション 5速マニュアル
価格 13,634ポンド(英国ロンドン)
生産拠点 南アフリカ Uitenhage工場

資料:(公財)埼玉県産業振興公社 次世代自動車支援センター埼玉 「平成26年度 車両分解研究会」資料より、MarkLines作成

 



主要部品サプライヤー一覧(104部品)

 

部品名 サプライヤー 生産国

ディーゼル
エンジン
関連

(1.2L
直列3気筒
DOHC)

ピストン MAHLE -
シリンダーヘッドカバー インド
シリンダーヘッド KS Aluminium-Technologie -
コモンレール Bosch -
コモンレール用高圧ポンプ Delphi ルーマニア
インジェクター -
エンジンECU ハンガリー
インテークマニホールド MANN+HUMMEL -
スワールコントロールバルブ HELLA -
ターボチャージャー/エキゾーストマニホールド Honeywell -
スターターモーター Bosch 南ア
エアフローメーター ドイツ
エアクリーナー -
エアクリーナー用フィルター UFI FILTERS チュニジア
エアコン用コンプレッサー サンデン ポーランド
エンジンベルト 三ツ星ベルト インドネシア
オイルフィルター/クーラー MAHLE オーストリア
オルタネーター Valeo -
クラッチカバー/ディスク トルコ
スロットルバルブ VDO (Continental) -
タイミングベルト Dayco イタリア
ダクト(ターボチャージャーからインタークーラーへ) ETM Engineering Technologie Marketing ドイツ
ベルトテンショナー Litens Automotive カナダ
テンショナー用ベアリング 光洋精工(現 JTEKT) 日本
鉛バッテリー VARTA ドイツ
燃料フィルター UFI FILTERS -
酸化触媒 EMCON Technologies (Faurecia) -
広帯域空燃比センサー NTKセラミック (日本特殊陶業) 日本
DPF EMCON Technologies (Faurecia) -
排気温センサー EPIQ ブルガリア
EGRバルブ Wahler (BorgWarner) -
空調
関連
HVACシステム Behr (MAHLE Behr) 南ア
エアコンスイッチ ポルトガル
エアコンスイッチハウジング PREH (均勝集団) ポルトガル
サイドベンチレーター IBER-OLEFF ポルトガル
フロント・センターベンチレーター ポルトガル
インスト中央部スイッチ(ハザードスイッチなど) TRW Automotive ドイツ
安全
装備
関連
ESP Bosch -
運転席エアバッグ タカタ-Petri 南ア/ドイツ
エアバッグインフレーター タカタ -
エアバッグコントロールユニット Bosch ドイツ
助手席用エアバッグ TRW Automotive 南ア
シートベルト 南ア
ブレーキマスターシリンダー -
ブレーキブースター Ate (Continental) -
ブレーキパッド(前輪) GALFER -
ホーン Clarton Horn スペイン
フロントエンドモジュール ラジエーター/インタークーラー Behr (MAHLE Behr) 南ア
ラジコアサポート Simoldes Plasticos -
ヘッドライト HELLA チェコ
ターンシグナルライト -
フォグランプ スロベニア
フォグランプバルブ Osram ドイツ
フロントバンパーフェイシア/フロントグリル Rehau 南ア
内外装
関連
インストルメントパネル Faurecia -
センターコンソール Venture -
シフトレバーブーツ Detlef Bingen -
オーディオ(イギリス向け) Bosch ポルトガル
オーディオ(日本向け) BLAUPUNKT ポルトガル
キー HELLA -
計器板 VDO スペイン
マルチ メディア インターフェイス ミツミ ドイツ
ナンバープレートランプ CML (Grupo Antolin) -
ライトスイッチ TRW Automotive スペイン
サイドミラー ランプ Olsa -
フロントインナーフェンダー Venture 南ア
ドアトリム Grupo Antolin 南ア
トランクの内装トリム 南ア (Uitenhage)
防振・防音インシュレーター Feltex Automotive (KAP Manufacturing Proprietary/KAP International Holdings) 南ア
フロントガラス Saint-Gobain Sekurit -
フロントドアガラス 福耀玻璃工業集団(Fuyao Glass Industry Group) -
リアサイドガラス -
リアドアガラス Armourplate (Shatterprufe) 南ア
リアゲートのガスショック Stabilus ドイツ
ウインドーレギュレーターモーター Bosch ドイツ
ワイパーシステム 南ア
ワイパーモーター ドイツ
ワイパーアーム Champion (Federal-Mogul Motorparts) -
その他 パワステ電動油圧ポンプ TRW Automotive -
パワステオイルタンク -
パワーステアリングギア -
タイヤ Continental -
アルミホイール BORBET 南ア
スペアタイヤホイール Podhoran Lukov a.s. -
燃料ポンプ Continental -

 

1.2Lガソリンエンジン 直列4気筒 SOHC (インタークーラー付直噴ターボ)

部品名 サプライヤー 生産国
ターボチャージャー IHI -
ウェイストゲートアクチュエーター MAHLE オーストリア
エアクリーナーボックス UFI Filters イタリア
エアクリーナーフィルター 中国
点火装置 NGK (日本特殊陶業) -
イグニッションコイルアセンブリー ELDOR トルコ
エアコン用コンプレッサー サンデン ポーランド
エアコン用コンプレッサー配管 ブリヂストン -
エンジンベルト Optibelt -
フライホイール LUK(Schaeffler) -
エンジンウォーターポンプ GPM -
ジェネレーター Bosch スペイン
スターターモーター Valeo ポーランド
スロットルボディ Magneti Marelli -
クランクシャフトベアリング FKG (浙江福可吉精密机械/Zhejiang FKG Precision Machinery) ドイツ
エアフローメーター Bosch ドイツ
ノックコントロールセンサー Siemens -
吸気ダクト ETM Engineering Technologie Marketing ドイツ
ベルト用アイドラープーリー Litens Automotive カナダ

(注)当該ガソリンエンジンは、2011年製造

 



分解作業前

 

VW Polo 分解作業前1 VW Polo 分解作業前2
今回の分解調査レポートは、VW POLOの評価が高い静粛性、乗り心地、操縦安定性に関連する要素として、エンジン・ミッションのマウント構造、ステアリングメンバー構造、シートレール取り付け構造を解説する。エンジン、サスペンション関係は次回レポートにて解説する予定。

 



エンジンルームの分解:フロントエンドモジュールとエンジンマウント構造

 

エンジンルーム全体レイアウト
エンジンルーム1 エンジンルーム2
写真はエンジンカバーを外した状態。エンジン吸気系が車両前側、排気系が車両後側に配置されている。可変ノズルターボチャージャーは、ターボハウジングに一体化されたエキゾーストマニホールドを介し、シリンダーヘッドに取り付けられ、エンジン本体とダッシュパネルの間に配置されている。ターボチャージャーの直後には酸化触媒が配置されている。空冷インタークーラー付きディーゼルターボのため、エアダクトや配管が多いが、無理のない配管レイアウトになっている。

 

フロントエンドモジュール

フロントエンドモジュール装着状態

フロントエンドモジュール装着状態

フロントエンドモジュール取り外し状態

フロントエンドモジュール取り外し状態

フロントエンドモジュール(後面)

フロントエンドモジュール(後面)

フロントエンドモジュールには、ラジエーター、エアコンコンデンサー、空冷インタークーラー、ヘッドランプが樹脂製のラジコアサポートとフロントバンパーレインフォースに組み込まれて、サブアッセンブリーされた状態で、エンジンルーム前端にドッキングする構造となっている。右の写真はヘッドランプを先に外し、エンジンルームからフロントエンドモジュールを切り離した状態。フロントエンドモジュールは簡単に脱着ができるため、外すとエンジン脱着時は、作業スペースが確保されて作業性が良い。

 

エンジンマウント構造
Poloのディーゼルエンジン車はBセグメントではトップレベルの静粛性となっており、エンジン本体の音・振動の低減だけでなく、車体へのマウント構造にも振動低減の工夫が織り込まれている。
エンジンの取り外し前 エンジンの取り外し後
エンジン・ミッション脱着はエンジンを上方へ釣り上げることが可能な構造だが、今回は、フロントサスペンションメンバーとアンダーカバーを取り外し後、下方へ降ろした。
取り外されたエンジン1 取り外されたエンジン2
エンジンマウントの配置は、エンジン・ミッションユニットの振動レベルが一番小さい部位にマウントすることで、振動の伝達を抑制している。

右側エンジンマウント

車両右側エンジンルーム

左側エンジン(ミッション)マウント

車両左側エンジンルーム

エンジンルームの主要骨格であるサイドメンバーは、衝突時にフロントバンパーからの衝撃入力、エンジンマウントからのエンジン振動入力及びサスペンションメンバーからサスペンションの衝撃や振動入力を受ける。それらの入力に対する強度や振動の対応として、サイドメンバーは高い剛性を確保する必要がある。そのため、Poloのサイドメンバー基本形状は、それぞれの入力点からのオフセット(ズレ)を小さくすることと、かつ形状をスムーズなカーブでつなぐことによって、サイドメンバーの高い剛性を確保する形状としている。
ストラットハウジングはダッシュパネルに近く、またカウルトップ前側パネルによって左右ストラットハウジングを繋ぐことで、効率よく剛性の高い車体骨格となっている(写真ではカウルトップ前側パネルは外された状態)。左右のエンジンマウントはサイドメンバーからのオフセットを小さく抑えた位置とし、振動伝達を減らしている。

右側エンジンマウント車体取り付け部

車両右側エンジンマウント車体取り付け部

右側エンジンマウント単品

車両右側エンジンマウント単品

荷重分担が大きく、またエンジンの振動入力の大きい車両右側エンジンマウントは流体入りエンジンマウウント。

左側エンジン(ミッション)マウント車体取り付け部

車両左側エンジン(ミッション)マウント車体取り付け部

左側エンジン(ミッション)マウント単品

車両左側エンジン(ミッション)マウント単品

車両左側エンジン(ミッション)マウントはソリッドマウント。エンジンマウントゴム部中央からでているアルミ製ブラケットの下方に、トランスミッション側からのブラケットを結合する。

 

 



運転席周り:ステアリングメンバーとフロントシートの取り付け構造

 

ステアリングメンバーと車体取り付け部構造
ディーゼル車の振動課題の一つであるアイドル時のステアリング振動や、高速走行時のステアリング振動への対応として、ステアリングコラムの支持剛性を高くする工夫がされている。ステアリングコラムを支持するステアリングメンバー及びステアリングメンバーの車体取り付け部の剛性を確保し、振動の低減を図っている。ただし、ステアリングメンバーは、最近では真っすぐな1本のメンバーで左右のAピラーを直線で繋ぐ構造の車両が多いが、本車両はオフセットした2本のスチールパイプを中央部で溶接した構造となっている。
ステアリングメンバー Aピラーへの取り付け部
運転席側パイプは充分な口径を確保し、ステアリングコラムとのオフセットを小さくするレイアウトをとって、ステアリングコラムの支持剛性を高めている。 Aピラーへの取り付け部は、充分な断面形状の車体側ブラケットに取り付けることによって、取り付け部剛性が高くなっている。
また、ステアリングメンバー取り付け構造は、車体左右寸法のばらつきを吸収できる構造となっている。(車体の左右Aピラー間の寸法は、フロアやルーフ等多くの部品の寸法ばらつきが集積するため、ステアリングメンバーを取り付ける左右のAピラー側取り付け穴の間隔寸法はばらつきが大きくなってしまう。そのため、左側Aピラー側の取り付け穴を長穴(左右方向に長い穴形状)とすることで、寸法ばらつきを吸収できる構造としている)
ステイへの取り付け 左側Aピラーの取り付け部
運転席側パイプはセンターコンソール部分に突き当たった部位で、フロアへのステイを介して、左側パイプと接合している。左右のパイプは、それぞれ曲がりのない一直線のパイプを使用することで剛性を高めている。 左側Aピラーの取り付け部は右側と同じ構造で、取り付け部剛性が高い構造となっている。Aピラー取り付け穴は長穴化(左右方向に長い穴形状)とすることで、寸法ばらつきを吸収できる。

 

フロントフロアのシート取り付け部構造
シートレール間隔の幅が広く後席足元が広い 剛性の高いシートレール取り付け部車体構造
シートレール間隔の幅が広く、前席クッション下のスペースを広く確保している。これにより、後席乗員の足元のスペースが広くなっている。 フロアトンネルの付け根の剛性の高い部位に、シンプルな形状で効率よくシートレール取り付け用メンバーの剛性を高めている。
シートレール取り付けメンバー シート側シートレール構造
サイドシルとフロアトンネルに沿ってシンプルな構造のシートレール取り付けメンバー。トンネル側は、触媒等の余分な出っ張りがなく、サイドシル側も含め、直線的な形状で効率よく高い剛性をとりやすい形状としている。 シート側シートレール構造。マニュアルシートであるが、リフター機能を備える。

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>