米国3社のHV/EV計画:GMは2017年までに米国で累計50万台を計画

Fordは2013年に6車種で前年比2.5倍の8.8万台を販売、大型HVも開発

2014/01/28

要 約

Ford C-Max Energi/C-Max HV
正面がFord C-Max Energi (PHV)、右奥はC-Max HV
(Detroitオートショー2014から)

 本レポートは、米国3社(GM、Ford、Fiat-Chrysler)のHybrid Vehicle (HV)、Plug-in Hybrid Vehicle (PHV)およびElectric Vehicle (EV)の計画について報告する。

 GMの電動車両計画は、Two-mode HVの次期型システム開発を中止し、マイルドHVであるeAssist、PHVとEVに集中する。GMは、2017年までに米国で電動車両累計50万台販売を達成するとしている。

 PHVについては、2014 Chevrolet Voltの価格を5,000ドル値下げし、また2015年後半に投入する次期型車ではさらに1万ドル程度コストを下げて、需要を喚起する方針とされる。

 Fordは、2012年に新世代のHV、PHV、EVを投入し、2013年に米国で87,776台(前年比2.5倍)販売した。また2020年までに、フルサイズピックアップとSUVにHVを設定する。Fordは、開発技術者を増員し設備にも投資して、HV/EV開発を加速する。

 Chryslerは、現在Fiat 500eを米国California州で販売している。これまでは、電動車両への本格参入は技術や市場が成熟するまで待つとしていたが、2013年秋からカナダのMcMaster大学との共同研究を開始、技術者を募集して電動車両開発体制を強化している。

 なお、Tesla Motorsなどの新興メーカーの計画については、別途レポートする。


関連レポート:
トヨタのHV/EV計画:新規HVを積極投入し、更にラインアップを拡充 (2013年9月掲載)
日産、ホンダ、三菱自、スズキのHV/PHV/EV計画 (2013年10月掲載)

米国でのメーカー別HV/PHV/EV販売台数

自動車メーカー 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
GM HV 5,175 11,454 14,536 6,760 5,049 33,979 25,066
PHV 326 7,671 23,461 23,100
EV 539
5,175 11,454 14,536 7,086 12,720 57,440 48,705
Ford HV 25,108 19,502 33,502 35,496 27,114 32,543 72,795
PHV 2,374 13,243
EV 685 1,738
25,108 19,502 33,502 35,496 27,114 35,602 87,776
Fiat-Chrysler HV 46 42
EV 405
46 42 405
Tesla Motors EV 2,400 18,650
トヨタ HV 277,623 241,382 195,545 189,187 178,587 314,480 331,708
PHV 12,750 12,088
EV 192 1,096
277,623 241,382 195,545 189,187 178,587 327,422 344,892
ホンダ HV 35,983 31,495 35,692 33,547 31,582 18,166 20,037
EV 93 569
FCV 10 11 5 17 2 5 10
35,993 31,506 35,697 33,564 31,584 18,264 20,616
日産 HV 8,388 8,819 9,357 6,710 3,614 794 1,792
EV 19 9,674 9,819 22,610
8,388 8,819 9,357 6,729 13,288 10,613 24,402
三菱自動車 EV 80 588 1,029
マツダ HV 570 484 90
VW HV 206 2,013 2,432 7,320
PHV 86
206 2,013 2,432 7,406
Daimler HV 1,428 310 141 357
EV 1 388 139 943
1,429 698 280 1,300
BMW HV 307 381 1,712 1,456
現代自動車 HV 19,673 30,838 35,680
総合計 352,287 312,709 288,679 274,574 286,622 487,681 592,317
タイプ別 HV 352,277 312,698 288,674 274,211 268,807 435,175 496,211
PHV 0 0 0 326 7,671 38,585 48,517
EV 0 0 0 20 10,142 13,916 47,579
FCV 10 11 5 17 2 5 10

 資料:MarkLines Data Center



GM:マイルドHV、PHV、EVに集中、2017年までに米国で累計50万台を販売

 GMは、中大型乗用車にマイルドHVシステムであるeAssist、フルサイズピックアップとSUVにTwo-mode HVシステムを搭載、またPHVのVoltを販売している。2013年夏にGM初のEVであるChevrolet Spark EVを発売した。

 また2013年秋に、フルモデルチェンジしたChevrolet ImpalaにeAssist搭載車を設定、2014年初めにPHV第二弾となるCadillac ELRを発売した。

 GMはTwo-mode HVの次期型システムを開発していたが、販売低迷から開発を中止した。2013~2015年に投入されるフルサイズピックアップとSUVの新型車にはTwo-mode HVは設定していない。

 電動車両分野ではマイルドHVシステムのeAssist、PHVとEVに集中する。特にeAssistをより多くの車種に搭載する方針。

 またGMは、2012年11月、2017年までに米国で何らかの電動化をした車両の累計50万台販売を達成すると発表し、2013年7月に公表した"2012 Sustainability Report"においてもその目標を確認した。

GM:HV/EVの米国販売台数

モデル名 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
マイルドHV
(eAssist)
Buick LaCrosse - - - - 1,801 12,010 7,133
Buick Regal - - - - 123 2,564 2,893
Chevrolet Impala - - - - - - 56
Chevrolet Malibu - - - - - 16,664 13,779
マイルドHV
(Belt-alternator
starter system)
Chevrolet Malibu - 2,093 4,162 405 24 - -
Saturn(モデル名不詳) - - - 105 - - -
Saturn Aura 772 285 527 - - - -
Saturn Vue 4,403 2,920 2,656 - - - -
Two-mode Hybrid Cadillac Escalade - 801 1,958 1,210 819 708 372
Chevrolet Silverado - - n.a. 1,960 1,001 469 104
Chevrolet Tahoe - 3,745 3,300 1,426 519 533 376
GMC Sierra - - n.a. 433 164 471 65
GMC Yukon - 1,610 1,933 1,221 598 560 288
HV合計 5,175 11,454 14,536 6,760 5,049 33,979 25,066
PHV Chevrolet Volt - - - 326 7,671 23,461 23,094
Cadillac ELR - - - - - - 6
PHV合計 - - - 326 7,671 23,461 23,100
EV Chevrolet Spark - - - - - - 539
総合計 5,175 11,454 14,536 7,086 12,720 57,440 48,705
(注) 1. 2014 Chevrolet Impalaは、Buick LaCrosseとプラットフォームを共有してフルモデルチェンジし、2400ccエンジン + eAssist車(Ecoモデル)を設定した。
2-1. GMは販売が低迷したTwo-mode HVの次期型開発を中止し、2013年後半~2014年に投入される新型フルサイズピックアップとSUVには設定していない。 今後のフルサイズピックアップとSUVの電動化計画は発表されていない。
2-2. Two-mode HVをGMと共同開発したBMW、Daimler、Chryslerも、Two-mode HVの販売を終了している。
3. Cadillac ELRは、Chevrolet Voltとパワートレインを共有するPHVだが、クーペのスタイルで(Voltは5ドアハッチバック)、サスペンションや内装を高級化して、価格は75,995ドルから(Voltは34,995ドルから)。北米のみで年間3,000台程度の販売を見込み、Cadillacブランドのイメージアップが主な狙い。
4. GMは2013年夏に、Chevrolet Spark EVを韓国で生産し、当初EVへの優遇施策が多い米国California州とOregon州で発売、韓国市場にも投入した。1回の充電による走行距離は82マイル。

 

 



次期型Chevrolet Voltのコストを10,000ドル削減、需要拡大を目指す

 GMは2014 Chevrolet Voltの価格を5,000ドル値下げした。また2015年後半に発売する次期型車では、コストを10,000ドル削減する計画とされる。

 EVとPHVの販売は、3年ほど前にVoltや日産Leafの投入時に期待されたほど伸びていない。EVについては、価格、航続距離、充電インフラの不足などの問題がある。またPHVについては、価格に加え、PHVとEVの違いがユーザーに十分理解されていないことが販売のネックになっており、燃費に優れしかも航続距離の心配がない車両特性をより丁寧に説明・PRすることにより、潜在需要を顕在化できるとしている。

 一方、日産Leafが6,400ドル値下げしたことにより、2013年の米国販売が前年比2.3倍増した例も出てきている。GM(その他のEV/PHVを投入する自動車メーカーも含めて)は、技術の革新と充電インフラの拡充によりどこかの時点で需要が大幅拡大するとの見通しでEV/PHVの開発を進めるとされている。

次期型Chevrolet Voltのコストを10,000ドル削減

2014モデルイヤーを
5,000ドル値下げ
 2013年夏に投入した2014 Chevrolet Voltは、スペックはほとんどそのままで5,000ドル値下げし、ベース車価格を34,995ドルとした。連邦政府の補助金7,500ドルを差し引くと27,495ドルになる。
 Voltは発売後3年半経過し、この間に時間をかけてコストダウンを積み上げてきた。またPHVは全くの新製品なので、発売時のコストは高いが、長く生産を続けている車種よりコストダウンの余地は大きいとしている。
次期型車のコストを
1万ドル削減
 2015年後半に投入される予定の次期型Voltは、台あたり約10,000ドルのコストダウンを図るとされている。現在搭載している発電用4気筒1400ccガソリンエンジンを3気筒1200ccまたは1000ccエンジンに変更することも検討している。

(注) 日産Leafは、2013年から北米向け車両とリチウムイオン電池の生産を米国Smryna工場に移し、モーターをDecherd工場で内製化、およびナビゲーションシステムとCarwingsを装備から外すことでベース車価格を6,400ドル下げて28,800ドルとし(連邦政府の補助金7,500ドルを差し引いて21,300ドル)、ガソリン・コンパクト車と競合可能な価格にした。その結果2013年の米国販売台数は、2012年の9,819台から22,610台へ2.3倍増した。

 

 



Ford:2013年に米国で8.8万台のHV/EVを販売、開発体制をさらに拡充

 Fordは、2012年に現在のHV/EVラインアップ6車種(Fusion HV/PHV、C-MAX HV/PHV、Focus EV、Lincoln MKZ HV)を一斉に発売し、2013年米国市場において前年比2.5倍となる87,776台を販売した。C-Max HV販売では、トヨタPriusからの代替が多いとしている。HV市場でトヨタが圧倒的なシェアを持つ構造に変わりはないが、FordはフルHVの市場でトヨタに対抗する地位を固めつつある。

 後輪駆動大型HVについてトヨタと共同開発する提携は解消したが、2020年までにフルサイズピックアップとSUVのHVを開発する計画。後輪駆動HVを独自開発することにより、新たなセグメントにHVを提供できるとしている。

 Fordは、電動車両の充実を商品ラインアップ計画の重要な一環としており、2013年には電動車両開発技術者を5割増強して500人体制とし(将来は1,000人体制とする構想)、開発・試験設備に50百万ドル(約50億円)を追加投資した。HV/EVの開発を加速し、ラインアップをさらに拡充するとしている。

Ford:HV/EVの米国販売台数

モデル名 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
Hybrid Ford Escape 21,386 17,173 14,787 11,182 10,089 1,441 -
Ford C-MAX - - - - - 10,935 28,056
Ford Fusion - - 15,554 20,816 11,286 14,100 37,270
Lincoln MKZ - - - 1,192 5,739 6,067 7,469
Mercury Milan - - 1,468 1,416 - - -
Mercury Mariner 3,722 2,329 1,693 890 - - -
HV合計 25,108 19,502 33,502 35,496 27,114 32,543 72,795
PHV Ford C-MAX - - - - - 2,374 7,154
Ford Fusion - - - - - - 6,089
PHV合計 - - - - - 2,374 13,243
EV Ford Focus - - - - - 685 1,738
総合計 25,108 19,502 33,502 35,496 27,114 35,602 87,776
(注) 1. Fordとトヨタは、2011年8月に後輪駆動のLight truck向けハイブリッドシステムの共同開発で合意したが、2013年7月に共同開発計画を中止し、両社はそれぞれ独自に開発を進めることとなった。
2. このためFordの後輪駆動大型HVの投入は大幅に遅れることとなるが、EPAの2025 MY Light vehicle平均燃費を54.5mpgとする規制に対応するために、2020年までにフルサイズピックアップ(F-150)とSUVにHVを設定する計画。トヨタは2016年以降に投入する。

 

 



Fiat-Chrysler:カナダのMcMaster大学とのHV/EV共同研究を開始

 Chryslerの電動車両としては、2012年12月にFiat 500eの生産をメキシコ工場で開始し、現在米国California州のみで販売している。Fiat 500eの2013年実績は405台で、台あたり1万ドルの損失とされている。California州では、2025MYで各OEMの販売台数の15.4%をzero-emission車とする規制を決定している。

 Chryslerは2008年にChrysler AspenとDodge Durango HV(GMと共同開発したTwo-mode HVシステムを搭載)の販売を中止し、その後現在の市場では電動車両の電池・モーターや充電設備などへのコストが評価されないと判断し、むしろFiatのディーゼルエンジンやターボエンジンの搭載を拡大するとしていた。

 しかしChryslerは、2013年10月に、カナダのMcMaster大学と共同の5年間のプロジェクトで電動車両のパワートレインと部品の研究を開始した。

 また2013年9月23日付Automotive Newsやその他の報道によると、Chryslerは電動車両関連技術者の募集を開始した。人材募集は、商品計画に沿ったものであり、今後欧米で強化される燃費規制に対応するため、"Belt starter generator"式のStop-startシステムから始めて、plug-in Hybrid、EVと幅広く投入していくとしている。

ChryslerがカナダのMcMaster大学とHV/EVを共同研究

背景  法規制と社会環境から、自動車メーカーは、電動車両について短期間で早急な技術上の進歩を迫られている。
目的  幅広い電動車両に向いた、エネルギー効率の高い次世代パワートレインとパワートレイン部品を開発する。パワートレインの構造、エレクトロニクス、モーター、ソフトウエアなど幅広く研究し、試作品を製作する。コストの低減が今後の電動車両普及のポイントであり、高価なレアメタルの使用を減少させたモ-ターも開発する。
出資  Chryslerが9.25百万米ドル出資、カナダ政府が8.93百万米ドルを出資し、合計18.2百万ドルのプロジェクトとして行う(期間は5年間)。
研究施設と技術者  McMaster大学を中心の拠点とし、Chryslerの研究所やテスト車両も使用する。Chryslerの技術者20人、大学の技術者7人、学部スタッフ、学生が参加する。またイタリアTrento大学とFiatの中央研究所のスタッフも参加する。



資料:各社広報資料、各紙報道

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>