インドネシア:市場の成長性を見込み、各社が事業強化

トヨタ、日産、ホンダ、スズキ、日野、いすゞは生産能力拡充、GMは生産再開

2013/03/06

要 約

インドネシアの自動車生産・販売台数

インドネシアの自動車市場シェア (2012)

 
 インドネシアの2012年の生産台数は前年比27.2%増の107万台、販売は24.8%増の112万台で、初めて生産・販売とも100万台を超えた。3年連続6%超という高いGDP成長率に支えられ、2012年6月に導入されたローン規制にもかかわらず、自動車の需要拡大は続いている。インドネシア政府は、2015年の生産目標を160万台、販売目標を150万台としているとされる (2012年報道)。

 2012年の自動車市場 (大型商用車を除く) における日本メーカーのシェアは95.3%。シェアトップのトヨタは37.1%、第2位のダイハツは15.1%で、トヨタグループが引き続き5割超を占めた。

 インドネシア市場では、大人数が乗れる3列シートのMPV (多目的車)が6割を占めるが、トヨタグループはToyota Avanza/Daihatsu Xenia、Toyota Innovaの3モデルでこのセグメントの上位を独占している。

 MPVに続いて、今後市場拡大が予想されるのが、インドネシア政府が導入を検討中のローコストグリーンカー計画 (LCGC)に対応する低価格・低燃費の小型車。同計画は、発表が再三延期され、2013年3月初頭現在、まだ正式な発表はなされていないが、多数のメーカーが新たに小型車の投入を計画している。

 インドネシアの人口は2.4億人で世界第4位。一人当たりのGDPは着実に増加する一方、車の保有率は1,000人当たり40台とまだ少ない。今後の需要拡大を見込んで、トヨタ、日産、ホンダ、スズキ、日野、いすゞは既存工場の生産能力増強、また、トヨタ、スズキ、日野はエンジン工場の新設、GMは現地での生産再開を計画している。

 一方、LMC Automotive社によれば、インドネシアの2013年のライトビークル販売(GVW6トン以下)は前年比8.8%増の約108万台と予測(2013年1月時点)。2012年の増加幅24.5%からは減速するとしている。同社は、ルピー安、ローン規制強化のため、”今後数ヶ月、インドネシアの販売が現在の想定より低迷し、我々の販売予測を下方修正する可能性がある”と指摘している。

 
関連レポート

 トヨタのインドネシアなどでの動向 (2013年2月)
インドネシアでの日系サプライヤー動向 (2013年2月)



2012年の生産は27%増の107万台、販売は25%増の112万台

 インドネシアの2012年の生産台数は前年比27.2%増の107万台、販売は24.8%増の112万台。メーカー別の販売台数では、トヨタグループが依然として市場の5割超を占める。また、スズキが前年比34.1%増でシェアを10.9%から11.7%へ、ホンダが49.4%増でシェアを5.2%から6.3%へ拡大した。

 政府は2015年に自動車生産を160万台に引き上げ、中期的には同国を生産・輸出拠点とすることを目指している (2012年4月報道)。そのため、2011年から電力や物流などインフラ整備計画を開始した。また、インドネシア工業省は国内の新車販売台数が2015年に150万台、2018年に200万台となると予測している (2012年12月報道)。

インドネシア:自動車国内生産/国内販売/輸出台数

(台)
2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2015年
(計画)
国内生産 411,638 600,628 464,816 702,508 837,948 1,065,557 1,600,000
国内販売 433,341 603,774 483,548 764,710 894,164 1,116,230 1,500,000
輸出 CBU 60,267 100,982 56,669 85,796 107,932 173,368
CKD 105,642 103,710 53,140 55,624 83,709 100,122
資料:インドネシア自動車製造業者協会 (GAIKINDO)
(注) 1. 2015年計画はインドネシア政府の目標で、生産台数はPresidential Regulation 28/2008による目標 (2012年4月報道)、販売台数は工業省の目標 (2012年12月報道)。
2. インドネシア政府は2012年6月15日、不良債権拡大の防止等を目的として、自動車・二輪車のローン頭金規制を導入した。頭金の下限は、銀行の場合が商用車20%、乗用車30%、二輪車25%、ノンバンクが自動車25%、二輪車20% (同国では新車販売の約65%がローンを利用しており、従来の頭金は10-15%)。当初は影響が心配されたが、2012年の自動車販売は堅調で、あまり影響が見られなかった (二輪車販売は前年比11.8%減少)。

 

インドネシアでの自動車メーカー別販売台数 (乗用車+小型トラック)

(台)
販売台数 シェア
2010年 2011年 2012年 2010年 2011年 2012年
Toyota 280,989 311,136 401,231 37.9% 35.8% 37.1%
Daihatsu 118,591 139,544 163,582 16.0% 16.1% 15.1%
Toyota Group 399,580 450,680 564,813 53.8% 51.8% 52.3%
Suzuki 71,210 94,569 126,808 9.6% 10.9% 11.7%
Mitsubishi 55,652 74,390 85,823 7.5% 8.6% 7.9%
Nissan 37,542 56,193 70,991 5.1% 6.5% 6.6%
Honda 61,336 45,416 67,843 8.3% 5.2% 6.3%
Mazda 4,503 8,933 12,137 0.6% 1.0% 1.1%
Subaru - 252 296 - 0.0% 0.0%
Isuzu 23,923 27,924 31,237 3.2% 3.2% 2.9%
Hino 8,604 10,482 15,987 1.2% 1.2% 1.5%
Mitsubishi Fuso 45,968 54,066 53,298 6.2% 6.2% 4.9%
Japanese OEM total 708,318 822,905 1,029,233 95.5% 94.7% 95.3%
Hyundai Group 11,591 14,632 19,218 1.6% 1.7% 1.8%
Ford 8,877 15,670 13,038 1.2% 1.8% 1.2%
GM 4,508 4,658 5,398 0.6% 0.5% 0.5%
Daimler Group 3,952 4,405 4,442 0.5% 0.5% 0.4%
BMW Group 1,240 1,588 2,528 0.2% 0.2% 0.2%
Proton 2,126 1,926 2,435 0.3% 0.2% 0.2%
VW Group 534 1,030 1,472 0.1% 0.1% 0.1%
Geely - 1,036 1,196 - 0.1% 0.1%
Fiat-Chrysler 120 882 550 0.0% 0.1% 0.1%
PSA 110 188 360 0.0% 0.0% 0.0%
Chery 528 185 271 0.1% 0.0% 0.0%
Tata 93 104 111 0.0% 0.0% 0.0%
北汽福田汽車 37 12 34 0.0% 0.0% 0.0%
Total 742,034 869,221 1,080,286 100.0% 100.0% 100.0%
資料:インドネシア自動車製造業者協会 (GAIKINDO)
(注) 1. 販売台数の対象は乗用車とGVW3.5トンまでの小型トラックで、大型トラックは含まない。
2. Mitsubishi Fusoは日本メーカーであった時代からインドネシアで販売しているので、ここでは日本車にカウントした。

 

 



導入検討中のローコストグリーンカー計画に対応し、各社が小型車投入を計画

インドネシア政府:ローコストグリーンカー計画 (LCGC) を検討中

概要  インドネシア政府は、タイのエコカープロジェクトと同様の "ローコストグリーンカー計画"の実施を2009年から検討しているが、発表は繰り返し延期され、2013年3月初頭現在、まだ公式の発表はなされていない。計画の概要は、低価格・低燃費の小型車を現地生産・販売するメーカーに対し、付加価値税や奢侈税を減免し、自動車の普及や自動車産業の育成を目指すというもの。
対象  対象となるのは、排気量1000-1200cc、燃費 20-22km/L、価格 8,000万~1億ルピア以下の小型車と想定される。部品の現地調達率は 当初は40%、3-5年後に80% まで引き上げると予測されるが、「エンジンを当初から現地化する条件が入る」との見方もある。
延期の理由  インドネシア政府はガソリンの補助金に多くの財源を配分しており、LCGCの予算が確保しにくく、工業省と財務省の間で調整が難航しているとされる。低価格・低燃費の小型車以外に、HVやEVを含めた計画に替わる可能性もある。

(注) 100ルピアは0.96円 (2013年3月初頭現在)

 

LCGC計画に適合させる予定の各社のモデル
Daihatsu Ayla/
Toyota Agya
 ダイハツがMira e:S をベースに開発した 5ドアハッチバック で、トヨタにも OEM供給する。1.0L エンジンを搭載。Mira e:Sで培った低燃費・低価格な小型車づくりのノウハウをベースに、現地子会社のAstra Daihatsu Motorが開発に参画し、インドネシアでのニーズを追求したモデル。部品の現地調達率は8割超。
Datsunブランド車
(日産)
 日産は Datsun ブランドを復活させ、同ブランドの低価格エコカーを開発して2014年に投入し、新たな市場を創出する。
Honda Brio  ホンダが、タイ、インドに続き、2012年8月にインドネシアに投入した小型ハッチバック 。当面はタイから完成車輸入するが、2013年からは既存のKarawang工場で、2014年からは新工場で現地生産する予定。4気筒 1.3Lガソリンエンジンと5速AT/MTを搭載、価格は1億4,900万~1億7,000万ルピア。
Suzuki  スズキは軽自動車をベースに、LCGC計画適合車を数年内に開発・投入する予定。
Tata Nano  Tata MotorsはLCGC適合車として、2013年初めに超小型車 Nano を投入すると見られる。同年に現地生産を開始する予定。
Geely (Gleagle) Panda  Geelyは2012年9月に小型ハッチバックのPandaをインドネシアモーターショーに出展。998ccのVVTIエンジンを搭載し、燃費は18-22km/L、価格は9.800万ルピア。(Fiat Panda とは無関係)

 

 



トヨタグループ:トヨタの年産能力は2014年に25万台、ダイハツは2012年に45万台

トヨタグループ:6社で今後5年間に13兆ルピアを投資し、インドネシア事業を強化

 トヨタ自動車とトヨタグループ企業5社(トヨタ車体、豊田通商、アイシン精機、デンソー、ダイハツ)は2012年11月、今後のインドネシア事業の強化のため、新工場の建設や既存生産拠点の能力拡充を行うと発表。今後5年以内にグループ6社で13兆ルピアを投資し、従業員数を4.1万人 (現在は3.2万人) にまで増やすことを目指す。
トヨタ:年産能力を11万台から25万台に拡大
第2工場建設  トヨタはインドネシアのKarawang県で第2工場を建設中。2013年初めに稼働予定。当初の年産能力は7万台で、現地でのトヨタの年産能力は11万台から18万台に増加する。
第2工場の能力増強  トヨタは建設中の第2工場の年産能力を、2014年初めには12万台に増強すると発表 (2012年 2月)。投資額は150億円増やし、合計413億円。第2工場では、Etiosベースの小型車を含む新型乗用車を生産し、輸出も拡大する方針。
第1工場の能力増強  Kijang Innova や Fortuner 等を生産する既存のKarawang第1工場の生産能力も、2013年9月を目処に11万台から13万台に引き上げる (2012年11月発表)。第1・第2工場の能力増強により、2014年までの現地の年産能力を25万台に拡大する。
エンジン工場  既存のKarawang工場の近くに150ヘクタールの用地を取得し、エンジン工場の新設を決定した(2012年11月発表)。
投入モデル  2016年度までにインドネシア市場に新型車を4車種以上投入予定。ダイハツからOEM供給を受けるAgyaや、新興国向け戦略車の Etios ベースとされる小型車を含む。

 

トヨタ車体:2013年1月からNoahベースのミニバンNAV1のCKD生産開始
 2013年1月、トヨタ車体は、インドネシアのSugity Creatives (SC:トヨタ車体、トヨタ・インドネシア等の合弁会社) で Noah ベースのミニバン NAV1 のCKD生産を開始したと発表した。SCは2010年1月に、Toyota Dyna/Hino Dutro の生産を日野のインドネシア工場に移管。今回は乗用車の組み立てを行うために約20億円を投じて体制を整備した。年6,000台を生産する。
 NAV1 はKijang Innova と Alphard の中間モデル。販売価格は3億7,800万~3億9,800万ルピアで、年間2,400台の販売を目指す。
ダイハツ:第2工場を稼働したが、ローコストグリーンカー計画が未定で新小型車の本格生産できず
 ダイハツは2012年10月に、現地子会社Astra Daihatsu Motor (ADM) の2つ目の工場、Karawang工場の稼働を開始。年産能力は12万台。LCGC計画に適合する新小型車 Daihatsu Ayla/Toyota Agya を生産する予定だったが、同計画が未発表であるため、現在は Daihatsu Xenia/Toyota Avanzaを生産。テストコースとデザインセンターも付設する。同工場の稼働により、ダイハツの現地生産能力は33万台から45万台に拡大した。

 

 



スズキ、三菱、日産、ホンダ、マツダ、富士重のインドネシアでの動向

スズキ:2014年に年産能力10万基のエンジン工場を稼働予定

エンジン工場を建設  スズキは2012年1月、インドネシアに四輪車用エンジンの新工場を建設すると発表した。ジャカルタ東方に取得した約130万平方メートルの用地に建設する。土地代を含めた総投資額は400億円。2014年中に生産開始予定で、年産能力は10万基。これにより同国でのエンジン年産能力は計15万基に増える。
 今回の土地取得により、将来的な工場の集約や車両の生産能力増強も可能だとしている。
Ertiga を投入  スズキは2012年4月、3列シートのMPV Ertiga のインドネシアでの生産・販売を開始した。年間約 5万台の生産・販売を計画。Ertiga はインドネシアに先行してインドでも発売している戦略車。2012年のインドネシアでの販売は34,399台で、MPVでは第5位。また、スズキのインドネシアでの乗用車販売7.0万台の5割弱を占めた。

 

三菱自動車:小型SUVのOutlander Sport の生産・販売開始

 三菱は2012年7月、インドネシアにコンパクトSUV Outlander Sport (日本名: RVR)を投入したと発表した。同モデルの海外生産は初めて。車両組立委託先であるKrama Yudha Ratu Motorのジャカルタ工場で生産する。価格は2億8,900万~3億2,500万ルピア。

 

日産:2014年までに生産能力を10万台から25万台に増強

インドネシア
での事業強化
(2012年3月発表)
・商品ラインアップの強化を含めて 330億円を投資し、生産拠点強化と販売力向上を図る。
・2014年までに年産能力を10万台から25万台に増強し、従業員数を3,300名に増員する。
・2015年までに販売店を150店に倍増させる。(ジャワ島以外の周辺地域への出店を増やす)
・Datsun ブランドを復活させ、LCGC計画適合車を開発して2014年に投入する。
Evalia を投入  2012年6月に多目的車 Evalia をインドネシアに投入。発売初年度の現地調達率は75%、2年以内に90%に引き上げる計画。

 

ホンダ:2014年に年産能力12万台の新工場を稼働予定

新四輪車工場を
建設
 ホンダは2012年6月、既存の Karawang工場の敷地内で新四輪車工場の建設を開始したと発表した。投資額は約 3.1兆ルピア。2014年中の稼動を目指し、年産能力は12万台。 ハッチバック Brio に加え、Brioベースの多目的車の生産を行う。既存工場と合わせ、インドネシアにおけるホンダの四輪車年産能力は2014年に18万台となる予定。
 さらに、現地での開発力を高め、高効率な生産体制を構築し、部品の現地調達率を約80%まで高める計画 (2012年6月時点では約50%)。
小型車用CVTの
生産開始
 ホンダは2013年春に、インドネシアで小型車用 CVT の生産を開始する (2012年5月報道)。同 CVT の海外生産は初めて。投資規模は50億円程度、年産規模は約50万基とみられ、タイなど周辺国にも輸出する。ジャカルタ市郊外にある連結子会社 PT Honda Precision Parts Manufacturing で、既存のAT工場に併設する新工場で生産する。
HVのCR-Zを投入  ホンダは2013年初めに、インドネシア市場にHV車を初投入する。HVスポーツ車の CR―Z で、東南アジアで同車を販売するのは、タイ、マレーシア、シンガポールに続いて4カ国目。インドネシアでは、2012年9月末に日本で発売したマイナーチェンジ車 (リチウムイオン電池を搭載) を投入する。

 

マツダ:ラインアップ拡充により2015年に3万台販売を目指す

 マツダは2012年7月、2015年のインドネシアでの年販目標を3万台とすることを明らかにした(2012年実績は1.2万台)。ラインアップの拡充を図っており、2012年5月に次世代環境技術 SKYACTIV を採用したSUV CX-5を、9月にミニバン Biante を投入した。

 

富士重:マレーシアでKD生産する SUBARU XV をインドネシアにも投入

 富士重工業は、2012年12月にマレーシアでKD生産を開始したクロスオーバーSUVのSUBARU XVを、インドネシアにも投入する。同モデルは2011年末に欧州、2012年9月に日本に投入され、同月、インドネシアモーターショーに出展された。マレーシアでの年間生産台数は5,300台の見込み。

 

 



GM、Daimler、BMW、VW、Tata 、奇瑞汽車のインドネシアでの動向

GM:2013年にインドネシアで生産再開、MPVのChevrolet Spinを生産へ

インドネシアでの
生産再開
 GMは、2005年3月より生産を停止していた西ジャワ州 Bekasi工場に、1億5,000万ドルを投資して施設を整備し、2013年に生産を再開する。年産能力は4万台。MPV や SUV を生産する。
Chevrolet
Spinを生産
 GMはChevroletブランドの新型MPV Spinを、2013年初めからBekasi工場で生産し、インドネシアやタイで販売する。Spinは5人/7人乗りで、積荷スペースを最大で1,668L確保できる。
Chevrolet
TrailBlazer を投入
 GMは2012年8月、Chevrolet ブランドのSUV TrailBlazer の販売を開始したと発表した。SUV Captiva と同様に、タイからの完成車輸入と見られる。同モデルは7人乗りで、価格は3億6,080万~5億7,880万ルピア。

 

Daimler:SUVのM-Class, GL-Class の SKD生産を開始

 Daimler は2012年8月、Mercedes-Benz の SUV をアジア各国で SKD生産すると発表した。SUVの生産拠点国以外でのSKD生産は初めて。米国アラバマ州の Tuscaloosa 工場から SKDキットを輸出し、2012年にインド、タイ、インドネシアで M-Class、2013年にはインドとインドネシアで GL-Class の生産を開始する予定。エンジンやトランスミッションは独シュツットガルトにあるパワートレイン工場から配送する。

 

BMW:小型SUVのX3を投入

 BMWは2012年4月、小型SUVのX3をインドネシアで発売、5月からは現地でのKD生産も開始した。生産は、Astra International 傘下のGaya Motorが請け負う。

 

VW:商用・乗用バン T5 のインドネシアでの組立開始

 VWは2012年1月、インドネシアのIndomobil Groupとの合弁会社 Garuda Mataram Motor のJakarta工場で、商用・乗用バン T5 の SKD生産を開始し、2月に国内市場に投入した。2012年は年220台、2015年までに累計1,200台を生産する計画。

 

Tata Motors:インドネシア市場に参入へ、2013年初めに超小型車 Nano の投入を計画

販売網を構築  Tata Motors は2012年9月、インドネシア市場に参入することを表明 (現在は傘下のJaguar/Land Roverブランド車のみ販売)。製品投入に先立ち、ジャカルタで設立した全額出資の子会社 PT Tata Motors Indonesia が、乗用車/商用車の販売網を構築する。
2013年に製品投入  2013年初めには超小型車 Nano 、同年上期に小型トラック Ace や Super Ace を投入すると見られる。同年に現地生産を開始する予定。

 

奇瑞汽車:インドネシア社と合弁で輸入販売会社を設立

 奇瑞汽車は2012年2月、現地パートナーの PT Gaya Motor と合弁で、ジャカルタに自社モデルの輸入販売を行う PT Chery Mobil Indonesia を設立した (2012年2月報道)。奇瑞汽車は新会社設立に伴い、インドネシア市場向けに3モデルを発表。7シートMPV 東方之子 (Eastar Cross)、SUV 瑞虎 (Tiggo)、ピックアップ Transcab で、価格はそれぞれ1.99億ルピア、1.59億ルピア、8,800万ルピア。

 

 



大型商用車メーカー:いすゞは新工場建設、日野はエンジン工場建設

いすゞ:インドネシアを新興国向けCVの拠点とし、新工場を2014年に稼働

新興国向け
CVの拠点へ
 いすゞは、2011年11月に発表した2014年3月までの中期経営計画で、インドネシアを新興国向け商用車の拠点にすると表明。日本を先進国向け商用車、タイを小型ピックアップの拠点とし、グローバル3極体制とする。
新工場建設  いすゞは西ジャワ州 Karawangに約 1.5兆ルピアを投じて、新商用車工場を建設する。2014年に稼働予定。これにより、いすゞのインドネシアでの年産能力は4.2万台から8万台に増強される。2013年には新たに13種類の新型トラックの生産を開始する計画。

日野自動車:生産能力を3.5万台から5.5万台に拡充、エンジン工場を建設

年産能力を5.5万台へ  日野自動車は西ジャワ州Karawangの既存工場の敷地内に新工場棟を建設し、2012年末までにインドネシアでの年産能力を3.5万台から5.5万台に増強した。投資額は約1.07億ドル。同社は2013年末までに中型トラック Ranger の新モデル Cruising Ranger FM285JD など12の新モデルを投入し、インドネシア国内のほか、他の新興国にも供給する計画。
エンジン工場建設  日野自動車は既存のKarawang工場の隣接地を取得して、2013年3月期中に小型エンジンの機械加工と組み立てを開始する。投資額は約80億円。将来は中型エンジンの生産も手掛ける計画。年産能力は7万基。インドネシアだけでなく周辺国へも供給する。

 

中国重型汽車集団 (Sinotruk):インドネシア社と提携し、組立工場建設を計画

 中国・山東省の大型トラックメーカー、中国重型汽車集団 (China National Heavy Duty Truck Group Corporation) は2012年3月、インドネシアの PT Intraco Penta と提携覚書を締結した。覚書によると、両社はインドネシアに組立工場を建設し、大型・軽型トラックなど同集団の商用車全シリーズを投入する計画。

 



(参考) インドネシア:主要自動車メーカーの生産拠点

出資比率 組立工場 年産能力
(1,000台)
生産車種
Toyota Motor
Manufacturing
Indonesia
Toyota 95% 第1
Karawang
110→130
(2013年9月)
Toyota Kijang Innova, Fortuner
第2
Karawang
0→70 (2013年初)
→120 (2014年初)
Etiosベースとされる新型小型車など
Sugity Creatives Toyota Auto
Body 88.52%
Bekasi 0→6 (2013年1月) 09年12月に Toyota Dyna/Hino Dutro の
生産を日野工場に移管、
13年1月から Toyota NAV1 を生産
Astra Daihatsu
Motor
Daihatsu
61.75%
Sunter 330 Daihatsu Terios/Toyota Rush,
Daihatsu Xenia/Toyota Avanza,
Daihatsu Gran Max/Toyota Lite Ace/
Hiace/Town Ace, Daihatsu Luxio
Karawang 120 (2012年10月) Daihatsu Xenia/Toyota Avanza,
Daihatsu Ayla/Toyota Agya
Hino Motors
Manufacturing
Indonesia
Hino 90% Purwakarta 35→50 (2012年末) Hino Dutro/Toyota Dyna
Hino Super Ranger, Jumbo Ranger,
大型バスシャシー
Nissan Motor
Indonesia
Nissan 83.3% Purwakarta 100→250 (2014年) Nissan Grand Livina, Livina,
X-Trail, Serena, March, Juke,
2012年に Evalia を追加
Honda
Prospect Motor
Honda 51% 第1
Karawang
60 Honda Jazz (Fit), CR-V, Freed
第2
Karawang
0→120 (2014年) 2014年からBrio, Brioベースの
MPVの生産開始
Suzuki
Indomobil Motor
Suzuki 90% Bekasi 80→200 (詳細不明) Suzuki SX4, Neo Baleno (SX4 Sedan),
Grand Vitara (Escudo), Karimun (Wagon R),
Carry, Suzuki APV/Mitsubishi Maven
2012年から Ertiga を追加
Isuzu Astra
Motor Indonesia
Isuzu 44.94% Bekasi 42 Isuzu Panther, N series (Elf),
F series (Forward)
Karawang 未定 2014年から稼働開始
Mercedes-Benz
Indonesia
Daimler 89.21% Bogor 20 M-Benz C-Class, E-Class, S-Class,
M-Benz 商用車
2012年からA-Class, B-Class, M-Classを、2013年からGL-Classを追加
General Motors
Indonesia
GM 100% Bekasi 0→40 (2013年) 2005年 3月に操業停止。2013年に生産を
再開し、Chevrolet Spin を生産する予定。
Garuda Mataram
Motor
(Volkswagen Indonesia)
VW Groupと
Indomobil
Groupの合弁
Jakarta n.a. VW Golf, Polo, T5; Audi A4, A6
Kia Mobil Indonesia Kia と
Artha Graha
Group の合弁
Sunter 5 Kia Carens
Krama Yudha Ratu Motor Krama Yudha
100%
Jakarta 70 Mitsubishi Fuso Colt Diesel (Canter),
Mitsubishi Colt 120SS, Colt L300,
2012年から Mitsubishi Outlander Sport を追加
Hyundai Indonesia Motor Bimantara
Group 100%
Bekasi 12 Hyundai Atoz (Atos), Accent,
Excel, Avega, H-1 (Starex)
Korindo Heavy Industry Korindo Group Balaraja 4.5 Hyundai Mighty Truck, 大型バス;
Korindo 大型バス
Gaya Motor Astra 100% Jakarta
(BMW)
16台/日 BMW 3 Series, 5 Series,
2012年5月から X3 を追加
Jakarta
(その他)
60 Geely MK, MK2; Foton View, MP-X, AUMARK, Midi; UD Trucks 中・大型トラック;
2012年Q4からPeugeot 車の生産再開 (Peugeot 3008)
National Assmblers Indomobil
Group 100%
Bekasi 30 Chery QQ, Tiggo; VW Touran; Great Wall Wingle; Mazda Baby Boomer, Van Trend
(注) 1. 出資比率は、自動車メーカーの出資比率。
2. 青字表記した下段の 5社は現地資本メーカーで、Gaya Motor と National Assemblers は受託組立会社。Krama Yudha Ratu Motor は三菱ふそうと三菱自動車の生産拠点だが、両社とも直接出資していない (現地生産車用部品の製造会社と車両販売会社には出資している)。

参考資料:各社広報資料、各種報道

 



LMC Automotive 生産予測:インドネシアのブランド別生産予測

(LMC Automotive社、2013年2月)

LMC Automotive社によれば、インドネシアの2013年のライトビークル生産(GVW6トン以下)は、2012年の前年比28.4%増からは減速するものの、同16.2%増の約112万台と予測(2013年2月時点)。

2016年までのインドネシアのブランド別・ライトビークル生産予測

(台)
SALES GROUP GLOBAL MAKE 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
Total 634,571 750,329 963,328 1,119,689 1,287,313 1,433,210 1,514,633
Beiqi Foton Foton 37 727 810 744 781 903 830
BMW Group BMW 838 989 2,416 2,122 2,628 2,611 2,755
Chery Group Chery 514 435 692 897 219 321 431
Daimler Group Fuso 11,800 12,465 3,445 14,080 12,633 14,764 16,177
Mercedes-Benz 2,665 4,805 5,224 2,048 2,501 2,676 2,980
Daimler Group Sub-total 14,465 17,270 8,669 16,128 15,134 17,440 19,157
Geely Group Geely 210 822 1,195 1,314 641 766 785
General Motors Group Chevrolet/Daewoo 0 0 0 32,450 51,636 49,100 54,545
Honda Group Honda 52,544 43,984 64,261 96,874 139,554 207,570 221,506
Hyundai Group Hyundai 6,104 5,173 7,885 9,375 10,706 7,122 7,842
Isuzu Motors Isuzu 16,994 18,179 41,203 27,035 27,086 28,786 33,169
Mitsubishi Motors Mitsubishi 46,614 60,197 63,671 79,342 88,863 97,338 103,865
PSA Group Peugeot 0 0 90 307 317 308 321
Renault-Nissan Group Datsun 0 0 0 0 8,237 26,937 34,840
Nissan 34,572 43,606 88,255 106,722 115,901 116,305 124,754
Renault-Nissan Group Sub-total 34,572 43,606 88,255 106,722 124,138 143,242 159,594
Suzuki Group Maruti 0 0 17,708 36,100 35,527 35,334 36,112
Suzuki 89,468 103,094 123,804 116,098 125,853 139,349 143,710
Suzuki Group Sub-total 89,468 103,094 141,512 152,198 161,380 174,683 179,822
Tata Group Tata 0 0 0 12,517 42,089 52,552 55,770
Toyota Group Daihatsu 118,075 132,126 173,258 193,023 205,553 208,151 216,243
Hino 1,479 1,858 12,955 11,996 12,817 13,170 14,167
Toyota 252,318 319,993 354,024 374,769 401,921 427,177 441,563
Toyota Group Sub-total 371,872 453,977 540,237 579,788 620,291 648,498 671,973
Volkswagen Group  Audi 0 687 509 395 394 404 412
Volkswagen 339 1,189 1,923 1,481 1,456 1,566 1,856
Volkswagen Group Sub-total 339 1,876 2,432 1,876 1,850 1,970 2,268
資料:LMC Automotive "Global Automotive Production Forecast (February, 2013)"
(注) 1. データは、小型車(乗用車+車両総重量 6t以下の小型商用車)の数値。
2. 本表の無断転載を禁じます。転載には LMC Automotive 社の許諾が必要となります。
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