第4回 EV・HEV 駆動システム技術展 取材報告

安川電機が脱レアアースモーターを開発、Magnaがマイクロハイブリッドシステムを展示

2013/01/31

要 約

 第4回 EV・HEV 駆動システム技術展が、2013年1月16日-18日にかけて東京ビッグサイトで開催された。その展示概要を、報告する。

 安川電機はモータードライブシステムQMET-IIのラインナップを展示したほか、高価なネオジム磁石を用いない脱レアアースモーターの説明パネルを展示し、来場者の注目を浴びていた。モーター関連では、三菱自のOutlander PHEV向けのモーター/インバーターを供給する明電舎がモーターと・ギアボックスを一体化したEV用ドライブユニットを展示し、現代自/起亜自に駆動モーターを供給するHYOSUNGも出展。

 Magnaは、マイクロ(低価格)ハイブリッドシステムなどを初めとしたEV/HEV向けパワートレインシステムを披露。日本ケミコンは、マツダ アテンザに搭載されている減速エネルギー回生システムi-ELOOP向けの電気二重層キャパシター/モジュールを展示した。

 その他に展示会場では、三菱自動車 Outlander PHEV、EVベンチャー SIM-DriveがPSAと開発したコンバートEV Citroen DS3 Electrum等のPHV/EVの実車も展示されていた。



モーター:安川電機は脱レアアースモーターを開発


安川電機:ネオジム磁石を用いないEV用モーターを開発

脱レアアース
モーター
 安川電機は、高価で調達が不安定なネオジムを用いないEV駆動用モーターを開発。安価なフェライト磁石をローターに用いたIPM(Interior Permanent Magnet)構造を採用。フェライト磁石はネオジム磁石に比べて1/10程度の磁力しかない。磁石やローターの形状と配置を最適化することで、トルク特性の向上と、耐低温減磁特性を改善した。さらに、ステーターのコイル巻線に平角線を用い、占積率(コイルの密度)を従来より30%向上させ、コイルエンド形状を改善してコンパクト化。これらの工夫で、同社の従来品と同等の大きさで同等性能を実現。
 同社の巻線切替え型モーターを採用したモータードライブシステムQMET-IIに適用させる。2013年9月よりサンプル出荷する予定。今回、開発した平角線を用いたステーターにネオジム磁石を使用したローターを組み合わせることで、より高性能で高付加価値なモーターを提供することも可能。
最高回転速度 12,000 min-1 脱レアースモーターの展示パネル
連続出力 45kW
最大出力 80kW
最大トルク 200N・m
質量 約60kg
外形寸法 250W x 194H x 355L 安川電機が開発した脱レアースモーターの展示パネル(パネルのみの展示)

 

安川電機のモータードライブシステムラインアップ

特徴 クラス 適用車
QMET-II モーターに巻線切り替える仕組み(電子式巻線切替え技術)を導入することで、低速と高速モーターの2つの特性をもち、高トルクと高回転が可能となり、効率範囲が広い。 120kW 2.0Lクラス乗用車、トラック・バス
80kW 小型車(1.3~1.5L クラス)
YMEV 小型・軽量のシステムで、軽負荷領域で高効率を実現。巻線切替え式を採用していないモーターを用いている。 50kW 小型車(1.0~1.3L クラス)
30kW 軽自動車

 

製品仕様 モーター インバーター
QMET-II
120kW
QMET-II
80kW
YMEV
35kW

 

デミオEVに安川電機のモータードライブシステムが採用

マツダ
デミオEV
 マツダが2012年10月にリース販売を開始したデミオEVに、安川電機のQMET-IIのシステムをカスタム化したモータードライブが採用された。最大出力は75kW、最大トルクは150N・m。

 

マツダ デミオEV 安川電機製モーター
マツダ デミオEV 前輪を駆動する安川電機製モーター。
安川電機製インバーター
ボンネット下に納められた安川電機製インバーター

明電舎:開発中のEV用ドライブユニットを展示

EV用ドライブ
ユニット
 明電舎は駆動モーターとギアボックスを一体化した、小型/軽量のEV用ドライブユニットを開発している。試作品では、別体構造に対して軸長で35%減(モーター/ギアボックスを合わせた軸長: 520mm→350mm)。ギアボックスの潤滑油でモーターの巻線/鉄心を直接冷却し、モーターの小型化と高効率化を図っている。
開発中のモーター/
インバーター
 開発中のEV/PHV/HV向けのモーター/インバーターも展示。中型車クラスのモーターは、昨年の展示に比べて最大定格出力が80kWから100kWへ引き上げられていた。同社は三菱自動車のOutlander PHEVと軽商用車EV MINICAB-MiEVにモーターとインバーターを供給している。


明電舎のEV用ドライブユニット
明電舎のモーターとギアボックスを一体化したEV用ドライブユニット

 

開発中のモーター/インバーターの諸元(参考値)

モーター インバーター
質量 最大定格 最大回転数 体積
軽自動車クラス(30-40kW) 25kg 30kW-75Nm-3,820rpm 12,000rpm 3.5L
小型車クラス(50-60kW) 35kg 60kW-150Nm-3,820rpm 12,000rpm 4.6L
中型車クラス(100kW) 40kg 100kW-230Nm-4,150rpm 12,000rpm 7.2L

 

明電舎が開発中の中型クラス向けモーター 明電舎が開発中の中型クラス向けインバーター
明電舎が開発中の中型クラス向けモーター 明電舎が開発中の中型クラス向けインバーター

 

HYOSUNG Corporation(暁星):駆動用モーターを展示

 HYOSUNG Corporation(暁星)は自動車関連ではタイヤ補強剤メーカーとして知られている韓国の複合企業で、産業向けの原動機も取り扱っている。今まで、誘導モーターを、現代自のi10 BlueOn(最高出力61kW) と起亜自のRay EV(同 50kW)へ供給した実績がある。自動車メーカーの要望に応じて、最高出力30kWから150kWまでの誘導モーターや永久磁石同期モーターなどを提供するとのこと。

HYOSUNGのEV用モーターラインアップ

モータータイプ 誘導モーター 永久磁石同期モーター
組み込み式(IPM) Spoke-type IPM
特徴 現代自/起亜自に提供実績のある、安価な誘導モーター。 EV/HEV向けに世界で利用されている永久磁石同期モーター。 レアアースを用いない次世代型の永久磁石同期モーター。
最高出力 30kW - 150kW
出力密度 1.1kW/kg以上 1.5kW/kg以上 1.3kW/kg以上
効率性 94%以上 97%以上 96%以上
コスト
騒音・振動

 

HYOSUNGは現代自/起亜自にモーターを供給 最高出力80kW/最大トルク280Nmの永久磁石同期モーター
HYOSUNGは現代自/起亜自にモーターを供給 最高出力80kW/最大トルク280Nmの永久磁石同期モーター。

 

ACR:PHV向けの小型クリーンディーゼル発電システムを展示

 ACRは排ガス浄化装置事業などを行っている神奈川県の企業。同社は新たな事業として、クリーンディーゼル発電機を利用したPHVとEVコンポーネントの開発に取り組んでいる。2013年9月にはEVコンポーネントを、2014年9月にはHEVコンポーネントの発売を計画している。
EVコンポーネント  軽自動車クラスのモーターとインバーターを自社開発。EV用モーターは水冷方式を採用し、他社製に比べて出力あたり体積を約3分の2と小型化した。
クリーンディーゼル
発電システム
 1気筒330ccディーゼルエンジン(定格出力10kW)と出力8.5kWの発電機を用いた発電システム。自社開発した超小型のターボチャージャーも搭載。

 

ACRのEV用コンポーネント

EV用モーター
出力 定格15kW(瞬時30kW)
最高回転 7500rpm
駆動電圧 600V(DC/DC)
モーター構造 IPMモーター
インバーター
出力 30kW(瞬時)、15kW(定格)
バス電圧 DC420V
パワー素子 IPM(600V/300A)
冷却方法 水冷
平滑コンデンサ フィルムコンデンサ
制御方式 トルク制御/速度制御
保護機能 電圧/電流/温度/回転数
監視による保護
通信方式 CAN通信(ISO11898準拠) 写真奥が新しい開発品。製品化の際はサイズを
3分の2程度に小さくして販売する予定。

 

 



EV・HEV関連システム:Magnaがマイクロ(低価格)ハイブリッドシステムを展示

 

MagnaのEV/HEV向けパワートレインシステム

マイクロ(低価格)ハイブリッドシステム  MagnaがCost Efficient Hybridと呼ぶ、エンジン横置きの前輪駆動車向けのマイクロハイブリッドシステム。エンジンとトランスミッションの間にモーターで回転するベルトを通して駆動を助ける。アイドリングストップ機能も備えている。時速50kmまでは電動走行可能。電動のみで走行可能距離は数百メートル(バッテリー容量による)。
 A、B、Cセグメント向けに開発しており、発売までにはまだ数年かかる見込み。
小型商用EV向け
2スピード駆動
システム
 開発中の小型商用電気自動車向けのフロントアクスルモジュール。最高出力は105kW、最大トルクは280Nm(@360V)。2速自動変速機を採用することで、トルクを押さえたモーターを搭載しても、駆動に必要なトルクを確保することができ、コストを抑えられる。ブレーキエネルギーの回生効率にも優れている(特定の配送パターンを利用した、Magnaのシミュレーションによれば100%回収も可能とのこと)。
EV用駆動システム  駆動用モーターとインバーターを一体化した、EV用駆動システム。米国の自動車メーカーに提供している。EV、レンジエクステンダー式EV、燃料電池車への適用が可能。モーターの最高出力は105kW、最大トルクは282Nmであり、最高回転は10,000rpm。インバーターの入力電圧範囲は250V-420V、ピーク出力は120kW。
電動リアアクスル
ドライブ
 モーター、ギアボックスを一体化した、後輪を電動で駆動するモジュール。車輪の軸とモーターの駆動力を切り離すディスコネクトシステムを備えている。2012年10月よりオーストリアの工場で生産開始し、Volvo V60 Plug-in Hybridに採用されている。

 

Magnaの展示品

マイクロハイブリッドシステム 小型商用車向け2スピード電動駆動システム
マイクロハイブリッドシステム 小型商用EV向け2スピード駆動システム
EV用駆動システム 電動リアアクスルドライブ
EV用駆動システム 電動リアアクスルドライブ

 

日本ケミコン

車載用電気
二重層キャパシター
DLCAP
 マツダの減速エネルギー回生システム i-ELOOP(注)向けに供給するキャパシターDLCAPとモジュールを展示。モジュール内には上下2段に5本ずつ計10本の電気二重層キャパシターが納められている。従来製品に比べて、内部抵抗値を3分の1に抑えて大電流の蓄放電能力を高めた。また、耐熱性も60度から70度に高めて、エンジンルーム内に納めることを可能とした。
DXE シリーズ  同社は、マツダ向けに開発した上記のキャパシターを、汎用化して第3世代 DXEシリーズとして発売している。自動車メーカーへ提案中。
 さらに、耐熱性を85度までに高めたキャパシターも車載向けを想定して開発している。
開発中の
次世代キャパシタ
ナノハイブリッド
キャパシタ
 nc-Li4Ti5O12/カーボンナノファイバー複合体を負極に用いたハイブリッドキャパシタ。従来の活性炭キャパシターの約3倍のエネルギー密度(30WhL-1級)と同程度の出力性能(6kWL-1級)を実現。東京農工大学、ケー・アンド・ダブルとの協同研究。
カーボンナノ
チューブキャパシタ
 単層カーボンナノチューブを正極・負極に用いた電気二重層キャパシター。キャパシターの寿命性能向上に寄与する、バインダー・接着剤を使わない電極を使用。10kWL-1級の超高出力性能を実現。NEDO技術開発機構からの委託研究。

 

電気二重層キャパシターモジュール DXE シリーズ
日本ケミコンがマツダ向けに供給する、
電気二重層キャパシターモジュール
車載用電気二重層キャパシター DLCAP

 

 



展示された主な車両

三菱自動車:Outlander PHEV

三菱自動車が2013年1月に発売したSUV OutlanderのPHEV版。前/後輪にそれぞれモーターを備えた「ツインモーター4WD」システム採用。エンジンは主に発電用に用いられ、高速走行時には車輪に駆動力を伝える。
容量12kWhのリチウムイオン電池を搭載(トヨタ プリウス PHVのリチウムイオン電池は4.4kWh)。EV走行の航続距離は60.2km(JC08モード)で、複合燃費は67.0km/L(JC08モード)






PSA/SIM- Drive:Citroen DS3 Electrum

 日本のEVベンチャーSIM-Driveが、PSAのCitroen DS3をベースに改造したEV。SIM-Driveの先行開発車でインホイールモーターとして利用したモーター2個をボンネット内に納め、シャフトを通じて左右の前輪を駆動させる。モーター、インバーター、リチウムイオン電池(17.5kWh)などは車室/トランクスペースに影響を与えないように搭載されている。ベース車と比べて95kgの重量アップ。
航続距離は154km(JC08モード)、エネルギー消費効率は113.6Wh/km。なお、本モデルはチャデモ方式の急速充電に対応しており、普通充電用の充電器は搭載していない。






マツダ:デミオEV

 マツダが2012年10月に公官庁/企業向けに、約100台をリース販売開始したデミオEV。容量20kWhのリチウムイオン電池を搭載し、航続距離は200km(JC08モード: マツダ測定)。ベース車と比べて190kgの重量アップ。

ZMP/日本マイクロソフト:RoboCar PHV

 ZMP/日本マイクロソフトが共同で開発した実験用車両。運転支援技術や、自動走行技術の研究開発での利用を想定。車載ネットワークCANを通じて各種センサーのデータを取得することができ、PCなどでリアルタイムに走行情報を把握できる。また、マイクロソフトのクラウドシステム(Windows Azure)を使って、データを蓄積でき、データ分析を行いやすくしている。
上位モデル(PHV)では、車両の外からリモートコントロール可能。下位モデル(PHV Primitive)は、ドライバーが運転を行うタイプで公道走行でのデータ取得を狙いとする。
 なお、ベース車はトヨタ プリウス PHVであるが、搭載したシステム自体は他のモデルでも適用可能。

MEGA:Multitruck AC Power

 フランスのMEGA社製の小型商用EV。鉛電池の容量、モータータイプ(交流または直流)、架装方法(ピックアップタイプ、バンタイプなど)を選ぶことができる。なお同社は、Mega Cityという乗用車タイプの小型2人乗りEVも発売している。

wheego IRIE

 アメリカのwheego社製の全長3.01mの小型2人乗りEV(現地名LiFE)。エアバッグやタイヤプレッシャー監視システムなど安全装備も充実している。

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>