ブラジル政府が輸入車の税率をアップ、メキシコからの無関税輸入を3割減

アルゼンチン政府は、自動車メーカーに輸出促進を要請

2012/04/27

要 約

 以下は、ブラジルとアルゼンチンの、ここ1年間を中心とした動向である。両国政府の保護主義的な政策が、自動車産業に大きな影響を及ぼしている。

 2011年のブラジル国内販売台数は、363.3万台で前年比3.4%増加した。しかし10~12月期から国内販売は前年割れで、2012年1~3月期も0.8%減少した。2011年の輸入車販売は、レアル高の影響もあり85.8万台に30.0%増加し、輸入車比率は23.6%に上昇した。また輸入車のうちでも、現地生産していない韓国と中国を中心とする自動車メーカーの輸入車が増加し20万台を超えた。

 ブラジル政府は、輸入車増加を抑制し国内の雇用と投資を保護するために、輸入車についての工業品税 "IPI"の税率を2011年12月から30%引き上げた。

 またブラジル政府は、メキシコ政府に、急増しているメキシコからの輸入の制限を求め、2012年3月に合意した。2012年3月~2015年3月の3年間メキシコからの無関税輸入に上限金額(2012年の上限は2011年実績の3割減)を設定する。

 2011年に、韓国と中国の自動車メーカーがブラジルへの輸入販売を大幅に増やしたが、輸入車の工業品税が引き上げられたため、複数の自動車メーカーがブラジル国内での生産を計画している。

 アルゼンチンの2011年生産は82.9万台、販売は88.4万台で、いずれも過去最高。生産台数の6割強を輸出し、国内販売の6割強を輸入車が占める構造が続いている。アルゼンチン政府は、現地生産する自動車メーカーに輸出拡大を求め、またメキシコ政府にブラジルに対するのと同様の輸出抑制措置を要請している。

関連レポート:ブラジル:Fiat/VW/GMが、2014年にそれぞれ100万台販売を計画 (2011年1月)
         メキシコ/ブラジルの日系部品メーカー (2011年12月)



ブラジルの販売は、2011年10月以降前年割れ、輸入車販売が拡大

 2011年のブラジル国内販売台数は、363.3万台で前年比3.4%増加した。しかし10~12月期は、融資規制強化などの景気過熱防止策の影響で国内販売は前年を下回り、2012年1~3月期も0.8%減少した。国産車と輸入車の内訳では、レアル高(対ドルで、2009年初めから32%高くなった)の影響もあり、輸入車販売が85.8万台に30.0%増加したが、国産車販売は277.5万台に2.8%減少し、輸入車比率は23.6%に上昇した。

 輸入車のなかでも、現地生産せず輸入車のみを販売する自動車メーカー(ブラジル自動車工業会ANFAVEAの非会員企業で、韓国と中国の自動車メーカーが中心)の販売が、20.2万台にほぼ倍増した。

 国産車の販売減少のため、2011年のブラジルでの生産は0.7%の微増、2012年1~3月期は10.9%減少した。

ブラジルの生産・輸出台数

(台)
2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2011年
1~3月
2012年
1~3月
完成車生産 2,811,695 3,054,725 3,077,761 3,381,728 3,406,150 828,621 738,106
完成車輸出 634,557 568,582 368,023 502,754 541,568 119,799 111,761
輸出/生産 22.6% 18.6% 12.0% 14.9% 15.9% 14.5% 15.1%

(注)輸出の約3/4はアルゼンチン向け。

ブラジルの販売台数
(台)
2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2011年
1~3月
2012年
1~3月
新車販売台数 2,487,701 2,864,482 3,141,240 3,515,064 3,633,248 825,161 818,364
(内)国産車 2,227,136 2,493,178 2,652,366 2,854,923 2,775,221 643,274 618,362
(内)輸入車 260,565 371,304 488,874 660,141 858,027 181,887 200,002
輸入車/販売 10.5% 13.0% 15.6% 18.8% 23.6% 22.0% 24.4%
輸入車の内訳
現地生産メーカー 235,182 330,462 434,444 549,537 656,095 145,144 163,971
生産していないメーカー 25,383 40,842 54,430 110,604 201,932 36,743 36,031

資料:ブラジル自動車工業会(ANFAVEA)

 



ブラジル政府が、輸入車への税率アップとメキシコからの無関税輸入制限を実施

 ブラジル政府は、輸入車と現地調達率65%未満の現地生産車について、工業品税 "IPI"の税率を30%引き上げ、2011年12月から実施した。輸入車増加を抑制し、国内の雇用と投資を保護することが目的。

 輸入車の4台中3台を占める、ブラジルで現地生産する自動車メーカーの輸入車は、30%の税率引き上げを免除されるので、今回の措置は現地生産している上位欧米4社などを保護し、現地生産をしないで輸入車を急増させている韓国や中国の自動車メーカーを狙い撃ちにした色彩が濃いとされている。

 またブラジル政府は、急増しているメキシコからの輸入制限と、関税をゼロとする現地調達率基準の引き上げを求め、2012年3月にメキシコ政府と合意し19日に発効した(2012年の上限は2011年実績の3割減)。

 日本の自動車メーカーでは、メキシコからブラジルへの輸出増加を計画している、日産、マツダ、ホンダに影響するとされる(トヨタは、メキシコからブラジルへの輸出をしていない)。

2011年12月から、工業品税"IPI"の税率を30%引き上げ

 ブラジルでは、関税(35%)課税後輸入価格や工場出荷額に、工業品税"IPI"が課せられている。これまでの税率はエンジン排気量に応じて7~25%であったが、当面2011年12月から2012年12月までの措置として、輸入車や現地調達率が65%に満たない現地生産車に対する税率を30%引き上げ、37~55%にすると発表した。
 メルコスル地域(ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ)製の部品を65%使用するとともに、当該自動車メーカーがブラジル国内に一定のR&D機能を持つなどの条件を満たせば、引き上げ措置は免除される。従って、ブラジルで現地生産する主要自動車メーカーは、現地生産車・輸入車とも、引き上げを免除される。今後ブラジルに新工場を建設する自動車メーカーについては、個別に協議し定める。
 2012年4月、ブラジル政府は、2013年以降、IPIの税率引き上げを、条件をより厳しくして継続すると発表した。(1)現在は現地調達率"65%"に広告費など製造に直接かかわらない費用も含まれているが、これを直接製造に関わる費用のみに限定する。(2)「研究開発・イノベーションへの投資」、「エンジニアリング・基礎工業技術への投資」など4項目についての基準を定め、4項目のうち3項目の条件を満たすことが必要となる。

メキシコ政府と、乗用車の無関税輸出を2012年から3年間制限することで合意

 ブラジルとメキシコは、2002年に乗用車の貿易を完全自由化し、互いに関税をゼロにしている。その結果、近年生産効率に勝るメキシコからブラジルへの輸出が、2009年9.3億ドル、2010年12.6億ドル、2011年20.7億ドルと急増した。2011年のブラジルからメキシコへの輸出は3.7億ドルで、ブラジル側の17億ドルの輸入超過。
 ブラジル政府は、国内の自動車生産を保護するために、メキシコ政府に無関税輸入の制限と、メキシコ生産車のうち、関税をゼロとする現地調達率の条件を引き上げることを求め3月15日に合意に達し19日に発効した。
(1)メキシコからブラジルへの無関税輸出の上限枠を、初年度(2012年3月19日~2013年3月18日)は14.5億ドル、2年目は15.6億ドル、3年目は16.4億ドルとし、その後は上限枠を撤廃する。
(2)関税ゼロの対象とするメキシコ生産車の現地調達率を、現在の30%から2013年3月19日までに35%、2016年3月19日までに40%に引き上げる(ブラジルからメキシコへの無関税輸出車の現地調達率基準は65%)。45%への引き上げの可能性についても両国政府で検証する。
資料:日本経済新聞 2011.9.17/2012.3.17/2012.3.29、JETRO資料 2012.3.19/2012.4.13
(注) 1. メキシコは、NAFTA (North American Free-Trade Agreement)やブラジルなどとの自由貿易協定により、世界の自動車メーカーの輸出基地となっている。現地調達率の引き上げは、各自動車メーカーの投資の前提条件に関わるので、早急な引き上げは困難としている。
2. 一方ブラジル政府は、国内に設置された生産拠点を保護し、部品の現地調達率を高め、自国の大きな自動車市場に安定して車を供給できるよう努めてきた。
3. メキシコからの輸入が急増した背景には、上記のような両国政府の自動車産業政策の違いと、生産効率の違い(メキシコが勝る)があるとされている。

 



ブラジル市場での、メーカー別販売台数

 2011年のブラジル販売では、Renault・日産の販売が躍進し、また現地生産していない自動車メーカーの輸入車が急増した。ブラジルの上位4社(Fiat、VW、GM、Ford)の、乗用車・小型商用車での合計シェアは、2009年77.2%から、2011年70.2%、2012年1~3月期も70.4%と縮小している。

ブラジルの自動車メーカー別販売台数(全車種)

(台)
2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2011年
1~3月
2012年
1~3月
Agrale 4,124 6,773 4,529 5,245 5,253 1,281 1,089
Mercedes-Benz 48,993 57,718 53,982 68,251 73,036 16,229 16,210
Fiat 612,703 665,614 736,969 760,495 754,275 172,002 173,529
Ford 258,484 296,833 325,504 363,990 344,382 81,464 78,897
GM 519,199 560,849 595,491 657,707 632,255 142,741 136,771
ホンダ 87,956 121,725 125,869 126,439 92,901 27,786 23,209
Hyundai 18,098 42,261 71,049 106,012 114,931 25,089 21,521
Iveco 6,356 11,957 10,587 15,925 20,585 4,738 4,965
MMC Automores 31,164 44,031 37,504 44,608 55,533 11,552 12,094
日産 5,636 15,704 23,225 35,874 67,268 13,380 27,299
Renault 76,674 115,363 117,521 160,299 194,294 38,331 52,317
Renault + 日産 82,310 131,067 140,746 196,173 261,562 51,711 79,616
PSA 132,345 152,803 151,159 174,383 175,862 42,107 32,026
Scania 7,524 8,831 9,097 16,298 14,878 3,059 2,702
トヨタ 68,811 81,162 93,506 99,585 99,236 22,021 21,172
VW 539,658 586,549 686,408 700,621 703,863 167,774 160,830
MAN-VW 36,455 44,974 41,068 52,804 61,954 14,898 13,376
Volvo Truck 8,138 10,493 9,007 15,876 20,419 3,898 4,182
International 48 391 68 144
小計(注1) 2,462,318 2,823,640 3,092,475 3,404,460 3,431,316 788,418 782,333
その他(注2) 25,383 40,842 54,430 110,604 201,932 36,743 36,031
合計 2,487,701 2,864,482 3,146,905 3,515,064 3,633,248 825,161 818,364
資料:ブラジル自動車工業会(ANFAVEA)
(注) 1. 「小計」までの自動車メーカーは、ブラジルに生産拠点を持つ、ANFAVEA(ブラジル自動車工業会)会員企業。販売台数は、それぞれのメーカーの輸入車を含む。
2. 「その他」は、現地生産していない、ANFAVEA非会員企業による輸入車販売。スズキ、韓国の起亜自動車、中国の奇瑞汽車と安徽江淮汽車などの販売はここに分類されている。
3. Mercedes-Benzの2011年販売では、販売の79%が中型以上のトラックとバス。

 



上位4社、Fiat、VW、GM、Fordは、大幅な投資を計画

 ブラジルの乗用車 + 小型トラック市場の上位4社、Fiat、VW、GM、Fordは、ここ数年の間に24~60億ドルを投資し、特にFiat、VW、GMは、2014年に100万台規模の販売を目指すと発表している。

 ここ1年間の発表では、Fiatは、ブラジル北東部Pernambuco州Goiana市に建設するブラジル第2工場計画の概要を発表した(2011年8月発表)。30~35億レアルを投資し、2014年初めから年間20~25万台を生産する。ブラジル市場の乗用車・小型商用車市場は2014年に470万台に達すると見込み、Fiatは110万台の販売を目指す。また、ブラジル政府の輸入車に対する工業品税率アップは、現地生産をしていない自動車メーカーの輸入を抑制するだろうと歓迎している。

 VWは、2009~2014年の間に、ブラジルに23億ユーロを投資するとしてきたが、2011年10月に、2016年までに34億ユーロを投資すると発表した。

 GMは、新トランスミッション工場を建設し、2014年から年間15万基の6速トランスミッションを生産する(2012年2月発表)。半数は、これまでの輸入品に代替して現地生産車に搭載し、半数は欧州に輸出する。

 Fordは、4億レアル(2.14億ドル)を投資して、ブラジル北東部Bahia州に年産21万基のエンジン工場を建設する(2011年12月発表)。また8億レアルを投資し、新しいグローバルモデル(Ka後継車とされる)を開発して2014年初めまでに発売する(2012年4月発表)。Fordは、2015年までに、ブラジルで販売するモデルを全てグローバルモデルとする計画。

 



韓国・中国の自動車メーカーが現地生産を計画

 韓国の現代・起亜自動車と中国の自動車メーカーは、2011年に輸入車販売を急増させた。

 韓国・中国自動車メーカー各社は、ブラジル現地生産を推進する方針で、現代自動車と奇瑞汽車は既に工場建設を開始している。江淮汽車が新工場建設を発表した。長城汽車、力帆集団も現地生産する計画とされる。

現代自動車:2012年後半にブラジル工場を稼働

 2011年2月、年産能力15万台のブラジル工場建設を開始した。現代自が建設する海外7番目の工場になる。6億ドルを投資し、2012年後半に、中米・南米向け仕様の小型ハッチバック車の生産を開始する。ガソリン・エタノールいずれでも走行できるflex-fuel車とする。サプライヤー8社も進出し、合わせて3,800人を雇用する計画。
資料:現代自動車広報資料 2011.2.28
(注) 1-1. 現代自動車は、現在販売台数の約2割を現地の組立メーカーで生産し、残りは輸入販売している。現代自動車はANFAVEAの会員企業だが、輸入車の工業品税 30%アップを全面的に免除されるのではなく、ブラジル政府との個別交渉の対象になっている。詳細は未詳。
1-2. 現代自動車の2012年1~3月期の販売台数は、前年比14.2%減少し21,521台。

 

中国の自動車メーカーのブラジル進出

安徽江淮汽車
(JAC)
 安徽江淮汽車(JAC)は、2010年12月に、SUVや軽型トラックの輸出販売を開始した。2020年までに累計62万台を輸出販売する計画と発表した。2011年に23,752台販売した。
 2011年11月、ブラジルのSNS(ブラジル最大の自動車ディーラーであるSHCの子会社)と合弁会社を設立する枠組みに調印した。510百万ドルを投資して年産10万台の工場を建設し、2014年に生産開始する。
奇瑞汽車
(Chery Automobile)
 奇瑞汽車は、1.43億ドルを投資して2011年7月に新工場建設を開始し、2013年3月までに年産5万台体制を確立し生産を開始。さらに4億ドルを追加投資して、最終的には年産15万台まで拡張する計画。
長城汽車  長城汽車は、2011年10月、ブラジルに年産10万台の工場を建設すると表明した。建設開始時期など詳細は未詳。
力帆集団  力帆汽車は、ブラジルの販売代理店であるEffa Motorsと提携し、ブラジル販売を拡大する計画。当初、Effa Motorsのウルグアイ工場での力帆汽車モデル生産を拡大する。次いでブラジルに組立工場を建設し、2014年にも生産を開始する計画とされている。

資料:各紙報道
(注)上記の他に、吉利集団、BYD、Foton、Sinotruckもブラジルでの生産を検討中とされている。

 

中国・韓国主要自動車メーカーの、2011年ブラジル販売台数

現代
自動車
起亜
自動車
奇瑞汽車 江淮汽車 東風日産
乗用車
Volvo
Cars
力帆汽車 哈飛汽車 長安汽車 昌河汽車
114,931 77,199 21,684 23,752 4,777 5,218 2,003 16,725 2,805 702

資料:現代自動車はANFAVEA、その他の自動車メーカーはMarklines Data Center。
(注)Volvo carsは、中国の吉利集団が所有。

 



日産・Renaultの販売が躍進、さらに大型投資を発表

 日産は新工場を建設し、2014年前半から年産20万台体制で生産開始する。日産のブラジル販売は、Frontierなど既存モデルの増販と、2011年秋に投入したMarch/Versa(メキシコから輸入)が貢献し、2011年に67,268台(2010年は35,874台)。2012年1~3月の販売も27,299台に倍増している。

 Renaultは、Curitiba工場の生産能力を28万台から2013年38万台に増強する。Renaultの販売も、LoganベースのハッチバックSanderoや秋に発売したSUV Dusterが貢献し、2010年160,299台から2011年194,294台に、2012年1~3月期は前年同期の38,331台から52,317台に拡大した。

 2012年1~3月期の乗用車・小型商用車販売では、Renault・日産合計79,616台がFordの72,619台を上回った(Fordは、他に中型トラック6,278台を販売した)。

日産・Renaultが大型投資を発表

日産  日産は2011年10月、ブラジルに26億レアル(15億ドル)を投資して新工場を建設し、Vプラットフォーム車20万台(ハッチバックのMarchとセダンVersa)の生産能力を構築し、2014年前半に生産を開始すると発表した。2016年までに10車種を投入して、セグメントカバー率を87%以上に引き上げ、ブラジル市場でアジア系自動車ブランドとしてNo.1となり、2016年に少なくともシェア5%獲得を目指す。
 現在は、RenaultのCuritiba工場に日産車の生産能力59,000台を有し、Livina、Grand Livina、X-Gear、Frontierを生産している。ブラジル新工場稼動後も継続する。
Renault  Renaultは、2010年~2015年のブラジル投資計画を見直し、投資額を従来計画の10億レアルから15億レアルに増額し、生産能力を28万台から2013年38万台に増強する。2011年のシェア5.7%を2016年までに8%以上に拡大する計画。
 またRenaultはブラジルを中南米向け車両開発拠点と位置づけ、既にDacia LoganベースのSUV Dusterのブラジル仕様を開発して2011年10月に発売し、またLoganベースの中南米市場向けピックアップトラックを開発する計画。

資料:日産広報資料 2011.10.6、Renault広報資料 2011.10.5、日本経済新聞 2011.10.10
(注)日産は、ブラジル政府がメキシコからの輸入を制限するとの決定を受け、ブラジル新工場の生産立ち上げを当初計画より早めることを検討している。

 

その他の日本の自動車メーカー

 その他の日本自動車メーカーでは、トヨタ、ホンダが現地生産し、三菱自動車はMMC Automotores do Brasilに生産を委託している。トヨタはブラジル第2工場を建設し、2012年から、インドに投入したEtiosをベースとする小型車を生産する。

 マツダは、ブラジル市場に参入し、2012年度から輸入販売を開始すると発表した。メキシコに建設中の新工場稼働(2013年度の予定)後は、同工場からも出荷する計画。

 



大型トラック:Paccarが新工場を建設、DaimlerとMANは生産能力増強

 ブラジルでは、農業、鉱業、建設業などの発展に伴い、大型トラックの需要が拡大している。

 Paccarは、新工場を建設し、2013年にDAFブランド車の生産を開始する。

 Daimlerは、ブラジルのGVW 6トン超大型トラック市場は、2010年の16.2万台から2020年までに年20万台へ拡大すると見込んでいる。ブラジルとアルゼンチンの大型車完成車工場で、1,250人の従業員を新たに雇用し、ブラジルのSao Bernardo do Campo工場に第3シフトを導入する。

 MANは、生産能力とR&Dの強化に4億ドルを投資すると発表した。

MAN Latin America:2012~2016年に4億ドルを投資

 MAN Latin Americaは、2011年10月、2012~2016年の間に、Resende工場の生産能力増強、R&Dに、(VWの時代も含めてかってない)4億ドルを投資すると発表した。従来からのVWブランド車の商品領域の拡大や新セグメント商品の開発を進める他、MANブランド商品も開発し、Resende工場に専用の組立ラインを建設して2012年から生産し、中南米市場で販売する。
 MAN Latin Americaは、2008年12月に、MANがVWのブラジル大型商用車部門を購入して設立された。従業員数は約7,000人で、最大82,000台の大型トラックとバスシャシーの生産能力を有する。VWは、MANの議決権の55.9%を保有する(2011年11月9日現在)。VWは、大型商用車事業を傘下のMANとScaniaを通して行う方針。

資料:MAN広報資料 2011.10.21

 



アルゼンチンの動向:2011年に、生産、販売とも過去最高

 2011年アルゼンチンでの生産は、前年の716,540台から828,771台に15.7%増加し、販売は698,404台から883,350台に26.5%増加。生産台数、販売台数とも過去最高を更新した。生産台数の6割強を輸出し、国内販売の6割強を輸入車が占めるという構造が続いている。

 2011年3月に、ホンダが新工場で生産を開始し、トヨタは11月に年産能力を増強した。またGMは、2012年に生産能力を25%拡大すると発表した。

 

アルゼンチン政府は、自動車メーカーに輸出促進を要請

 アルゼンチンでは、2010年、2011年に輸入車が急増し、2010年にアルゼンチン自動車産業として60億ドルの輸入超過となった。アルゼンチン政府は、2012年に40億ドルの輸出超過を目指し、アルゼンチンで生産する各自動車メーカーに輸入した部品や完成車相当金額を輸出するよう要請している。既にGM、VW、Fiat、PSAなどの自動車メーカーが合意し、2011年にFordも合意書に調印した。Fordは、2009年に250百万ドルの輸入超過だったが、2012年には、輸出を70%拡大する一方、輸入増加を30%以下に抑えて、90百万ドルの輸出超過とする計画。

 各メーカーは、輸出の大半を隣国ブラジル向けに出荷している。

 なおアルゼンチン政府は、ブラジルに対して貿易赤字で、ブラジルに自動車部品を含めアルゼンチン製工業製品の輸入拡大を求め、またメキシコ政府にブラジルに対するのと同様な輸出抑制を要請している。

アルゼンチンの生産・輸出台数

(台)
2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年
生産 319,755 432,101 544,647 597,086 512,924 716,540 828,771
輸出 181,581 236,789 316,410 351,092 322,495 447,953 506,715
輸出/生産 56.8% 54.8% 58.1% 58.8% 62.9% 62.5% 61.1%
アルゼンチンの販売台数
2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年
新車販売台数 402,690 460,478 564,926 611,770 487,142 698,404 883,350
(内)国産車 143,282 188,479 234,354 238,465 198,732 262,532 324,795
(内)輸入車 259,408 271,999 330,572 373,305 288,410 435,872 558,555
輸入車/販売 64.4% 59.1% 58.5% 61.0% 59.2% 62.4% 63.2%

資料:アルゼンチン自動車工業会(ADEFA)

 

ホンダ:2011年3月に、新工場で生産を開始

 ホンダは、2011年3月、250百万ドルを投資しブエノスアイレス州Campanaに建設した新工場で、Cityの生産を開始した。年産能力は3万台。生産の6割を輸出する計画。
 ホンダは、2007年7月にアルゼンチン工場建設を発表し、2009年後半の稼働を目指すとしていたが、世界規模の金融危機から建設を延期していた。

トヨタ:アルゼンチン工場の生産能力を増強

 トヨタは約126百万ドルを投資し、2011年11月、IMVシリーズのHiluxとFortunerを生産するアルゼンチンZarate工場の生産能力を、6.5万台から9.2万台に引き上げた。これまで生産台数の70%程度を、ブラジルを初め中南米10カ国に輸出してきたが、今後は生産の75%を輸出するとしている。

GM:アルゼンチン工場の生産能力を25%増強

 GMは150百万ドルを投資し、2012年にアルゼンチンのRosario工場の生産能力(Chevrolet ClassicとChevrolet Agileを生産)を25%増強すると発表した(2011年10月発表)。GMアルゼンチンの生産は、2010年に127,818台、2011年は136,428台。

 同時に部品の現地調達率を上昇させ、部品の輸入額を年間150百万ドル低減する。これらを通して、アルゼンチン政府と契約したアルゼンチンの貿易収支改善に貢献するとしている。

資料:トヨタ広報資料 2011.12.16、ホンダ広報資料2011.7.18、GM広報資料 2011.10.27、Reuters 2011.1.21

 

アルゼンチンの自動車メーカー別販売台数

(台)
2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年
Fiat 44,080 43,751 56,621 65,605 47,902 69,145 92,127
Ford
Mazda
Jaguar
Volvo
Land Rover
61,851
18
20
175
213
65,867

17
203
244
77,472

12
443
227
78,460

4
425
187
65,598 85,518 106,691
GM
Suzuki
Isuzu
72,782
11,194
747
76,228
9,391
21
94,399
9,618
96,634
9,330
78,078
7,385
112,213
6,060
146,814
1,860
Iveco 3,424 3,005 3,629 4,699 2,272 5,011 7,122
DaimlerChrysler
Mercedes
Chrysler
12,058
10,747
1,311
13,823
12,023
1,800
16,980
13,943
3,037

15,049

9,321

14,366

15,621
PSA 52,761 64,978 83,728 77,732 64,725 87,124 112,790
Renault
日産
43,255
3,652
58,988
2,932
68,740
3,933
74,591
5,795
64,372
4,155
97,369
10,942
124,162
13,775
Scania 1,795 1,580 1,722 1,723 716 1,702 2,962
トヨタ 17,035 23,563 28,057 31,837 27,913 33,012 36,197
VW 83,934 93,950 112,713 125,370 96,045 145,869 195,020
ホンダ 15,990
小計 392,975 445,733 544,061 571,700 456,942 651,329 871,131
その他 9,715 14,745 20,865 40,070 30,200 47,075 27,854
合計 402,690 460,478 564,926 611,770 487,142 698,404 883,350
資料:アルゼンチン自動車工業会(ADEFA)
(注) 1-1. 「小計」までの自動車メーカーは、アルゼンチンに生産拠点を持つ、ADEFA(アルゼンチン自動車工業会)会員企業。販売台数は、それぞれのメーカーの輸入車を含む。
1-2. 「その他」は、現地生産していない、ADEFA非会員企業による輸入車販売。
1-3. ホンダは2010年まで現地生産していなかったため、その間の販売台数は「その他」に含まれている。
2. Mazda/Jaguar/Volvo/Land RoverはFordの内数。SuzukiとIsuzuはGMの内数。日産はRenaultの内数。2007年までのMercedesとChryslerは、DaimlerChryslerの内数。

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