トヨタと日野のFC技術開発:水素社会推進への貢献を目指す

第18回水素・燃料電池展セミナーの講演より

2022/05/10

要約

トヨタと日野が共同開発しているFCEV大型トラック
トヨタと日野が共同開発しているFCEV大型トラック
(出典:トヨタ/日野共同リリース)

  本レポートは、2022年3月に開催された第18回水素・燃料電池展セミナーにおける、トヨタ自動車および日野自動車の講演の主要なポイントを報告する。


  トヨタ自動車株式会社 トヨタZEVファクトリー 商用ZEV製品開発部長 吉田 耕平氏から「FC技術はどのように水素社会に貢献できるか?」と題した講演があった。

  水素技術は、今後カーボンニュートラルに向けて重要な役割りを果たすと期待されているが、吉田氏によるとまだ身近な技術になっていないため、水素使用量も限定されている。トヨタは、様々な機会を捉えて、用途拡大に努めている。CNP(カーボンニュートラルポート)検討会、福島県での水素・技術を活用した新たな未来のまちづくり、FC小型トラックによる物流プロジェクトなどを紹介した。顧客や現場からの学びを、よい商品の開発へ結びつけていくことを強調している。FC技術開発の考え方としては、第2世代MIRAIの開発で培ってきた燃料電池の技術を、いったんコンポーネント、モジュールとして捉え直し、それを再度パッケージングして多くの顧客に利用可能にしていく。そこで見つかった技術課題を解決していくことにより、さらに需要を拡大する。こうしたサイクルを回して燃料電池の技術開発を進めていくとしている。


  日野自動車株式会社 先進技術本部 先進パワートレーン領域長 大畑 光一 氏より「水素社会への日野の貢献と商用FCEVの実用化に向けて」と題した講演があった。

  日野自動車は、2050年のカーボンニュートラル実現を目指し、3つの方向性でチャレンジしていく。1つ目は、「次世代の車」づくりで、既存のラインアップをモーター駆動車(PHEV、BEV、FCEV)に置き換えていく。2つ目は「既存技術の向上」で、内燃エンジンを使う車でHEVやe-fuel、バイオ燃料を活用する。3つ目は「物流全体の効率化」を掲げている。

  大型FC商用車としては、トヨタと日野は2018年にFCEV大型バスSORAを発売。またFC大型トラックを共同開発中で、航続距離600kmを目指している。今後商用FCEVを普及させるためには、ディーゼル車と同等以上の「経済性」や「利便性」を提供する必要があり、重量・長さなど車両規制の緩和、水素価格低減やインフラの整備などの課題解決が必須であると指摘して講演を終了した。

 

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