トヨタ・新型MIRAIに搭載された燃料電池(FC)の技術
自動車技術会・2021年春季大会学術講演会予稿集 ~トヨタの講演から~
2021/09/01
- 要約
- 新型MIRAI搭載FCシステムの概要
- FCユニット
- FCスタックとセル
- 高圧水素貯蔵システム
- 高圧水素タンク
要約
自動車技術会2021年 春季大会が2021年5月にオンラインで開催され、コロナ禍でオンライン開催となった2020年秋季大会の3,408名を上回る4,035名の聴講者があった。
トヨタ自動車からは新型MIRAIに搭載された燃料電池自動車(FCV)について多数の講演があり、さまざまな要素技術の開発内容について紹介があった。本稿ではその一部を紹介する。
- 2020年12月にトヨタが発売した新型MIRAIはスタックを小型化してフード内に収納し、高圧水素タンクをセンタートンネルにも搭載して3本とすることによる水素搭載量の増加や、燃費向上によって航続距離を650kmから850kmに30%向上している。
- FCユニットの構成部品については、水素合流配管のような補機部品においてもシミュレーションを活用して最適化を図り、主止弁、ポンプ、コンプレッサー等の作動音を低減して静粛性を向上させて、小型化、低コスト化とともに商品性を向上している。
- FCスタックでセル積層体を保護するスタックケースは構造や工法を見直して小型化を進め、セルは電極材料物性の向上による発電量の向上や貴金属使用量低減で低コスト化するとともにセルの構造を見直して量産性を向上している。
- 高圧水素貯蔵システムを構成する高圧バルブ、高圧減圧弁、高圧温度センサー等についても小型化とともに質量低減、コスト低減を図っている。
- 高圧水素タンクは高強度化、高弾性化したカーボンファイバーを採用してCFRP層の積層を7%削減してタンクの容積拡大、軽量化を図るとともに、巻き付け工程の高速化、タンクの品質測定の自動化等によって生産性を高めながら、高圧水素タンクの質量効率を5%向上して6.0wt%を達成している。
2020年12月発売 新型MIRAI | 新型MIRAIのFCシステム |
(出典:トヨタ)
参考文献
本稿で参照した講演の文献番号、タイトル、講演者名は以下の通りである。(講演者の所属はいずれもトヨタ自動車)
20215124 「新型FCV向け高性能燃料電池電極の開発」壷阪 健二氏
20215125 「発電シミュレーションによるFC流路設計」林 大甫氏
20215126 「新型FCV向け 高速生産を可能にするFCセル設計」桑原 大樹氏
20215127 「新型FCV向けFCスタック構造・搭載設計」高畠 悠真氏
20215128 「FCシステムの物理モデル開発と制御設計への適用」水野 伸和氏
20215130 「二相流シミュレーションを用いた新型FCV向け水素合流配管の開発」新井 英行氏
20215131 「新型FCVの騒音低減開発」赤星 良多氏
20215133 「新型FCVに向けた高圧水素タンクの開発」後藤 荘吾氏
20215134 「CFRP破壊モードを考慮した高圧水素タンク疲労破壊予測モデル開発」西原 寅史氏
20215135 「新型FCV向け高圧水素貯蔵システム部品の開発」木田 浩司氏
関連レポート:
燃料電池自動車(FCV)の開発と用途拡大への展開(2021年4月)
スマートエネルギーWeek 2021:電動化関連技術(FC編)(2021年3月)
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