米国3社:北米のリコールと南米事業不振で2014年は収益悪化
FCAの世界販売台数は5.9%増、GMは2.1%増、フォードは0.1%減
2015/03/06
- 要 約
- GM:リコールで収益悪化、2015年の収益は大幅に改善へ
- フォード:「F-150」生産工場更新による供給減で収益悪化、2015年は税引前利益85億~95億ドルへ
- FCA:クライスラーの買収による特別費用で収益減、2015年は純利益10~12億ユーロ
- LMC Automotive 販売予測:米国ライトビークル販売は2018年に 1,720万台へ
要 約
2014年のキーワードは「リコール」と「ライトトラック販売」
2014年の米国市場は前年比で5.9%増の1,650万台となり、2008-2009年の「大不況」から回復してリーマンショック以前の需要レベルに戻った。このような米国自動車市場の回復の中で、2014年の特徴は「リコール」と「ライトトラック販売」である。
米国のリコール台数は2014年通年で全メーカーを合わせると、これまでの記録であった2004年の約3,080万台を更新し、その2倍以上の6,395万台となった。
車型別販売ではライトトラック、特に大型ピックアップと小型・中型SUVの販売が活況を呈したことであった。GMによれば、小型SUVセグメントは2014年17.4%増となって、ミッドサイズセダン・セグメントを初めて上回り、初めて米国最大のセグメントになった。
米国3社の販売実績
北米市場では、FCAが大きく販売を伸ばしグローバルでも5.9%増の販売増を達成した。特に米国では16.1%も販売台数を増加させ、マーケットシェアを1.1%ポイント向上させた。一方、リコール騒動の中心だったGMは米国で5.3%増、グローバル販売では2.1%増となった。フォードは北米での最量販車種で大黒柱のフルサイズピックアップ「F-150」のモデルチェンジでボディのアルミ化を実施したために生産中断期間が長くなり、米国販売で0.5%減、グローバル販売でも0.1%減にとどまった。
地域別販売では3社ともに北米の販売比率が大きいが、その中でGMは2014年中国で12.0%増の354万台を販売、北米の販売を上回る実績となった。
不振の南米市場では、GMが前年比15.3%減の87.8万台、Fordは13.9%減の46.3万台、FCAも12.9%減の82.7万台となった。欧州市場ではFordとFCAは販売増となったが、GMはChevroletブランド廃止で19.3%の大幅減となった。
米国3社の財務実績
2014年 米国3社損益比較表 (単位:100万ドル)
1EUR=1.21 USD 2014年12月末日為替レートで換算 出所:各社広報資料 |
||||||||||||||||||||
2014年の米国3社の財務実績は、基本的な収益力は北米市場に大きく依存しているものの強固である。しかしながら、2014年はさまざまな一時的要因による費用が発生し、2013年比大幅減となった。
GMは米国で2,700万台、グローバルでは3,000万台超のリコール費用が収益を圧迫した。欧州事業の収益改善も進まなかった上に、南米でも収益が赤字になった。
Fordはグローバルで23モデル、北米だけで16の新型/マイナーチェンジ車を投入したために発売費用は発生したが、本格販売は2015年にずれ込むモデルが大半で収益が悪化した。特に収益の大半を稼ぐというフルサイズピックアップの「F-150」の供給不足が響いた。Fordの欧州事業はまだ赤字ではあるが少し改善した。一方で、南米事業の損益は大きく悪化している。
フィアット・クライスラーは、UAW の退職者向け信託基金 (VEBA)が持つ、残りの41.5%のクライスラー株式の買い取り交渉を成就させて、2014年1月にようやく完全買収が完了した。同社は1月末に役員会を開催して、新統合会社 (親会社)の名前をFiat Chrysler Automobiles (FCA)と決定した。FCAはこの買収にかかわる一時的費用として11.76億ドルを計上、このために純利益は67.6%減となった。
関連レポート
デトロイトモーターショー2015:米国メーカーの展示
市場回復に自信を示す米国メーカーは高級車と高性能車を出展
米国市場:2014年は5.9%増の1,652万台、不況から完全に回復、FCA/日産/スバルが躍進、フォード/VW/ホンダのシェア低下
無料会員登録により、期間限定で続きをお読みいただけます。