矢崎総業 (株) 2015年6月期までの動向

ハイライト

近年の動向

業績

-2015年6月期の売上高は、為替の好影響で、前年比6.8%増の16,623億円となった。一方、海外拠点における物流や生産準備の混乱、競争法違反などの影響があり、税引前利益は確保したものの、最終損益は赤字となった。

事業方針

コンバイナー式ヘッドアップディスプレイに参入
-2013年、コンバイナー方式のヘッドアップディスプレー (HUD) に参入すると発表。2015~16年の量産を目指し、新車組み付け用として自動車メーカーに提案する。同社はフロントガラスに車速などの情報を映し出すウインドシールドタイプのHUDをすでに製品化しており、トヨタ自動車の「Prius」に採用されている。これに対しコンバイナー方式は、ダッシュボード上に設置する専用の表示板に画像を映し出すもの。車種ごとに異なるフロントガラスの形状に合わせた調整や大型の表示装置が不要なため、小型車にもHUDを搭載できるようになる。コンバイナー方式のHUDは、マツダが新型「Axela」に日本精機製を採用した。BMWも2014年に発売予定の新型「MINI」に搭載するなど、小型車への搭載例が増え始めている。(2013年11月29日付日刊自動車新聞より)

急速充電器用DCコネクターを増産
-2013年、電気自動車 (EV) やプラグインハイブリッド車 (PHEV) を充電するための急速充電器用DCコネクターの生産量を倍増すると発表。サンプル出荷を始めた新型コネクターの生産本数を、旧型の2倍以上に当たる累計2万本以上に増やす。EV・PHV用充電器は、政府による補助金により、国内での設置が進む見通し。コネクターの需要も増加すると見て供給量を増やす。同社は、日本の急速充電規格であるチャデモ方式のDCコネクターを子会社の矢崎部品・大東工場 (静岡県掛川市) で生産している。(2013年10月16日付日刊自動車新聞より)

買収

-2012年、インドでワイヤーハーネスを製造する合弁会社タタ矢崎オートコンプ (TYA) の株式を取得し、完全子会社化すると発表。TYAの株式50%を保有するタタオートコンプシステムとの間で、矢崎が2日付で全株式を買い取ることで合意した。2013年1月をめどに株式取得を完了して新社名に変更、新体制によりワイヤーハーネスの製造販売を拡充する。TYAは1997年矢崎とタタオートコンプの折半出資で設立した。資本金は10億ルピー (約14億円) で、従業員数は約5,600人。(2012年11月6日付日刊自動車新聞より)

-2012年、ロシアの自動車用ワイヤーハーネスメーカーを買収。同社がロシアに生産拠点を持つのは初めてで、自動車市場が拡大するロシアでの事業拡大の足掛かりにする。現地資本のプロムイノバツィイ社所有のワイヤーハーネスメーカー、インダストリアル・ヴォルガ・カンパニー (ニジニー・ノブゴロド州ゴロデツ、略称=IVC) の全株式を取得し100%子会社にした。買収により8月をめどに社名を「ヤザキヴォルガ」に変更する。IVCはロシア最大の自動車メーカー、AvtoVAZ向けを中心にワイヤーハーネスを生産している。従業員数は約1,000人で、2012年は3,500万ユーロ (約35億円) の売り上げを見込んでいる。(2012年7月13日付日刊自動車新聞より)

製品開発

ヘッドアップディスプレー (HUD)
-2015年、表示面積を大型化するとともに、表示色をフルカラー化したヘッドアップディスプレー (HUD) を開発。光学系を高倍率化し、表示面積を同社従来品の11倍と大幅に拡大した。開発したのはフロントウィンドーに画像を表示するタイプのHUD。従来品は光源にVFD (蛍光表示管) を使い、緑色の単色表示だったが、開発品は液晶を採用することによりフルカラー化した。光学系を高倍率化し、非球面ミラーと表示デバイス間距離を短縮。ユ ニットサイズを従来品並みに抑えながら、表示面積を従来の縦31.4ミリメートル×横62.8ミリメートルから縦90ミリメートル×横240ミリメートル に拡大した。表示歪み補正非球面技術と表示デバイス画像補正により、鮮明な表示を可能にした。(2015年12月1日付日刊自動車新聞より)

Eコネクター
-2015年6月期、新たな室内照明ドライバー 「Eコネクター」 を開発した。主な特長・機能は以下のとおり。

  • 4つのパーソナルランプと2本のライン照明を制御し、パーソナルランプは3段階の調光、ライン照明は4段階の調光に加えて16色の選択が可能。
  • 照明をLED化することにより、同等の機能を持った従来のバルブ照明と比べ、87%の省電力化を実現。
  • 従来の電子制御ユニットから独立させ、小型化したことにより、車両システムを大きく変えることなく天井部分に配置することが可能。
  • 通信機能を搭載することにより、使用する電線を11本削減することができ、省資源化に貢献。

ロングスライドシート用ワイヤーハーネス
-2015年6月期、ロングスライドシートのレールと一体化させた新構造のワイヤーハーネスを開発したことにより、ワイヤーハーネスを格納するケースを従来の2分の1まで小型化した。また、ケースの材質を樹脂製に変更したことにより、従来品と比べ、重量を80%削減、車両1台あたり約5kgの軽量化となり、走行時の燃費向上に貢献している。

高電圧サービスプラグ
-2014年6月期、2つのロック構造を備えた高電圧サービスプラグを開発。2つのロック構造により、電源回路の接続・切断に時間差が生じることで、作業者が感電しないような仕組みを構築。さらに、部品点数の削減や薄肉化により従来比で約50%の軽量化を実現。

AC普通充電器
-2014年1月、電気自動車、プラグインハイブリッド車用のAC普通充電器を開発し、同月20日から受注を始めると発表。同社はコネクターやケーブルといった充電用製品を製造・販売しているが、充電器本体に参入するのは初めて。一戸建てや集合住宅で需要が高まると見て事業化する。設置方法は壁掛け式とし、電子回路を樹脂ケースに収納したことで設置時間の短縮を可能にした。3年間で5千台の販売を見込む。(2014年1月15日付日刊自動車新聞より)

「チャデモ1.0」仕様に対応する新型急速充電コネクター

-2012年、電気自動車 (EV) やプラグインハイブリッド車 (PHV) 向け 「チャデモ1.0」 仕様に対応する新型の急速充電コネクターを開発。2013年3月をめどに、日本、北米、欧州、ロシアの各地域に出荷を開始する。 (2012年5月24日付日刊自動車新聞より)

研究開発活動

難燃性樹脂材料 「TABWD」 製ワイヤーハーネスプロテクター
-2014年11月、難燃性樹脂材料 「TABWD (タブウッド)」 (Toyota Auto Body WooD plastic) の高い強度や耐熱性、難燃性の特長を活かし、エンジン回りのワイヤーハーネスプロテクターの製品化に成功、10%の軽量化を実現した。また、 「TABWD」 成型時の必要温度が従来よりも低温で済むため、製造工程における省電力にも貢献。同社は2011年よりスギ間伐材を利用した 「TABWD」 を使用する製品の開発に取り組んできた。

小型・軽量コネクターの製品化開発
-2014年、産業技術総合研究所と、自動車用コネクターの評価装置を共同で開発。走査型顕微鏡で金属同士の接触を確認しながら、コネクターの接触荷重や電気抵抗を 計測できる。コネクターの小型・軽量化の開発に役立てる。自動車用ワイヤーハーネスのコネクターは銅板にスズをめっきして作られている。性能や信頼性を維持しながら小型・軽量化するには、スズ酸化膜表面の金属接触と接触電気抵抗との関連を詳しく解析する必要があった。産総研は今後、装置のさらなる高精度化 を進めるとしている。矢崎総業は今回の開発成果を生かし、小型・軽量なコネクターの製品化を目指す。(2014年9月26日付日刊自動車新聞より)

-2014年6月期、コネクターの小型・軽量化を推進。従来品ではコネクターの結合にレバーを用いていたが、摩擦が少ない端子を採用することでレバーを廃止すること に成功。これにより、従来比で約50%の小型化、約30%の軽量化、製造時のCO2排出量の約40%の低減を実現した。

使用済みワイヤーハーネスのリサイクル技術
-2014年、同社、トヨタ自動車、豊田通商の3社は、銅資源を使用したワイヤーハーネスに関する新たなリサイクル技術を開発したと発表。この技術では、使用済みのワイヤーハーネスから銅純度99.96%の素材を生産することが可能としている。(2014年3月25日付プレスリリースより)

海外投資

<米国>
-2013年、米国ミシガン州の奨励プログラム「Michigan Strategic Fund」の支援により同社子会社Circuit Controls Corporation (CCC) が拡張計画を進めると発表。自動車用端子の新規受注の対応に向けてミシガン州Emmet Countyにある工場を拡張する。これに伴い、従業員36名を増員し、最大21.7百万ドルを投資する予定。

<パラグアイ>
-2013年6月、同社にとってパラグアイにおける初の拠点「Yazaki Paraguay S.R.L.」を設立。同年9月に操業を開始し、ブラジルの顧客向けに自動車ワイヤーハーネスを生産している。2014年5月時点の従業員数は280名だが、今後の増産や工場拡張に伴い、2018年には約2,000名まで増員する計画。