(株) デンソー 2017年3月期の動向

業績

(IFRS基準、単位:百万円)

2017年
3月期
2016年
3月期
増減率 (%) 要因
全社
売上収益 4,527,148 4,524,522 0.1 1)
営業利益 330,551 315,728 4.7 -
税引前利益 360,858 347,293 3.9 -
当期利益 273,895 260,565 5.1 -
日本
売上収益 1,871,838 1,801,547 3.9 -為替の影響あるものの、車両生産の増加により増収
営業利益 130,154 154,531 (15.8) -車両生産増加や合理化努力なるも円高影響により減益
北米
売上収益 1,050,460 1,081,058 (2.8) -車両生産の増加
営業利益 59,959 47,706 25.6 -操業度差益等
欧州
売上収益 550,244 568,183 (3.2) -車両生産の増加なるも円高影響で減収
営業利益 20,168 14,417 39.8 -操業度差益等
アジア
売上収益 989,505 1,014,708 (2.5) -車両生産の増加なるも円高影響で減収
営業利益 112,740 96,585 16.7 -操業度差益等

-2016年3月期から国際会計基準 (IFRS) に準拠した連結財務諸表を開示。

要因
1)売上収益 (為替除く前年比は[ ]内)   
得意先別(現地通貨ベース)では;
-トヨタグループ向けは前年比1.3%増。要因として、日本、北米、アジアでの車両生産の増加。
-トヨタグループ以外では、売上減少が多い。

  • ホンダ (前年比6.8%減)[+3.4%] 
  • マツダ (同1.9%減)  [+0.0%]
  • FCA (同5.6%減)  [+5.9%]
  • Ford (同5.3%減)  [+7.0%]

製品別では

  • パワートレイン (前年比1.1%減) [+6.2%]
  • 熱機器 (同3.8%減) [+5.1%]
  • 情報安全 (同9.2%増)  [+15.3%]
  • 電子システム (同1.3%増) [+6.5%]
  • モーター (同1.0%減) [+5.4%]

2017年3月期のハイライト

-同社は14日、「セキュリティー」「情報ソリューション」「バイオ」など、新事業8分野の取り組みについて名古屋と東京で記者会見を開いた。新事業の狙いは「新車販売の動向に左右されにくい事業構造の実現」。デンソーは2008年のリーマンショックの後、「クルマ一本足から少しでも新しい分野にチャレンジしようと」(伊藤取締役)11年1月に新事業推進室を発足させた。15年度連結売上高4兆5245億円のうち、新事業は650億円と、その比率は1.5%にとどまる。20年度にはこれを1千億円に増やすとともに、八つの事業領域がそれぞれ安定的に黒字が見込める「自立化」の状態を目指す。かつて洗濯機売上ナンバーワンだったこともあるデンソーだが、今は消費者に直接販売する製品は限られる。良い製品の供給に集中すればいいBtoBの部品事業とちがい、BtoCを主体とする新事業の成否は販売に負うところが大きい。(2016年9月15日付日刊自動車新聞より)

-同社と東芝は17日、車載用画像認識システム向けの人工知能技術を共同開発することで基本合意したと発表した。人の脳の神経回路を模したアルゴリズム(計算手法)、ディープニューラルネットワーク(DNN)技術を画像処理に使うことにより、人間と同等以上の高精度な認識処理が可能になる。DNNを用いた画像認識技術を実用化し、運転支援システムの高度化や自動運転技術の実現につなげる。自動運転の実現には多様な障害物や標示、車が走るためのフリースペース、危険が予想されるシーンの認識など、様々なシーンの認識が必要になる。従来のパターン認識や機械学習による画像認識は、認識が必要な対象物を人為的に特徴付け、あらかじめ学習させる必要があった。これに対し、DNNを使った画像認識は、自ら対象物の特徴を抽出して学習できるため、多様な対象物を認識でき、検知精度も飛躍的に高まる。(2016年10月18日付日刊自動車新聞より)

-同社とNECは26日、高度運転支援(ADAS)、自動運転、生産の分野で協業を開始したと発表した。ADASと自動運転の領域では、デンソーの先進安全に関する技術と、NECが開発した危険予知につながる人工知能(AI)を組み合わせた製品を共同で開発する。両社は、NECグループが持つシステム開発要員を活用した柔軟な開発体制を構築するという。また、IoT(モノのインターネット)が普及しても高度な情報セキュリティーを確保できる製品開発の仕組みの構築や、デンソーの生産におけるNECのIoT技術の活用についても協業を検討していく。(2016年12月27日付日刊自動車新聞より)

合弁・投資・資本業務提携

<日本>
-同社、トヨタ自動車、富士通は9日、カーナビメーカーの富士通テン(神戸市兵庫区)の資本構成を変更し、デンソーが51%を出資し筆頭株主になる方向で検討することに基本合意したと発表した。2016年度中の最終的な契約締結を目指す。資本構成の見直しにより、高度運転支援(ADAS)や自動運転のカギであるヒューマンマシンインターフェース(HMI)開発を加速する狙い。富士通テンの現在の資本構成は富士通55%、トヨタ35%、デンソー10%。これをデンソー51%、トヨタ35%、富士通14%に変更する方向で検討する。(2016年9月10日付日刊自動車新聞より)

-同社は2日、自動車燃料噴射系部品の製造・販売を手がける連結子会社の大信精機を完全子会社化すると発表した。グループ内での運営の機動性を高め、経営資源を活用した事業の持続的成長と企業価値の向上を目指す。デンソーは現在、大信精機に99.35%出資している。株式交換により、残りの株式を取得する。株式交換比率は、大信精機1株に対してデンソー株式7.9株を割り当てる。2日に契約を締結し、3月17日に完全子会社化する。(2017年2月3日付日刊自動車新聞より)

-同社は29日、完全子会社のデンソー岩手(岩手県金ケ崎町)が自動車メーターなどを生産する工場を新設すると発表した。今年10月に着工し、18年10月に完成、19年5月に生産を始める。20年までに約100億円を投資し、従業員を現在の616人から約1千人に増やす計画だ。半導体ウエハー事業専業拠点から、自動車部品に領域を広げる。(2017年3月30日付日刊自動車新聞より)

<北米>
-同社の米国子会社Denso International Americaは、米国の新興企業THINCIへ出資すると発表した。THINCIは、自動車向けにディープラーニングやビジョンプロセッシングを可能にする機械学習技術を開発している。デンソーは、THINCIのシリコンやソフトウェアの技術の最終開発を加速し、電子システムに統合することでADASや自動運転システムのサポート、サーマルシステムの効率アップ、パワートレインの出力最適化を目指す。THINCIはカリフォルニア州El Dorado Hillsを本拠とし、同州のほかにインドHyderabadに拠点を持つ。人間と同様の速さで大量のデータ処理が可能なシリコンアーキテクチャや、このデータを処理するシリコンに必要なソフトウェアインフラの開発を行っている。(2016年10月6日付プレスリリースより)

販売体制

<アジア>
-DENSO Sales (Thailand) (DSTH) は28日、バンコクYannawa区のL.P.N.タワーに新しい支店を開設した。ネットワークを広げ、バンコク市内の顧客ニーズに応える。開業式にはDSTH、DENSO International Asia Co., Ltd.、DENSO Thailand Workers' Union (従業員組合) の幹部および社員と、顧客企業が出席した。(2016年9月28日付プレスリリースより)

受注

-トヨタ自動車は22日、中心部と周辺部で断面積が異なるセルを一体成形した世界初の触媒基材を、今年春に発売するレクサス「LC500h」を皮切りに順次、新型車に搭載すると発表した。排ガスが多く通る中心部のセルを高密度に、通過量が少ない周辺部のセルを低密度に成形することで、セルの内側に塗布する触媒貴金属を従来比で約20%低減し、触媒の容量も約20%小型化する。共同開発したデンソーが量産を担当する。(2017年2月23日付日刊自動車新聞より)

-同社は27日、車載製品としては世界最小のステレオ画像センサーを開発し、ダイハツ工業が11月に発売した軽自動車「タント」の衝突回避支援システム「スマートアシスト3」に採用されたと発表した。製品のサイズは幅125ミリ×高さ35ミリ×奥行き85ミリ。左右二つのカメラにより道路上の白線や前方の物体を識別する。ステレオカメラにより対象物までの距離測定の正確性を高め、対車両、対歩行者の自動ブレーキや車線逸脱警報、オートハイビームなどを実現した。スペースの限られる軽自動車に搭載するため、二つのカメラの幅を80ミリと、従来比で半減した。二つのカメラを近づけて配置すると比例して測定距離も短くなってしまうが、高精度なレンズ歪み補正とステレオマッチング技術を組み合わせてクリアしたという。(2016年12月28日付日刊自動車新聞より)

今後の注力分野

-自動車業界の電動化・自動運転・コネクティド・シェアリングなど「100年に一度のイノベーション」と言われるパラダイムチェンジの中、同社はモビリティの新たな価値創造を目指していく「第二の創業期」を迎えていると捉え、モビリティ社会への新たな価値提供の実現に向け、自動車事業関連で「電動化」「ADAS/AD」「コネクテッド」の4つを注力分野として取り組む。

電動化分野
-インバーター、モーター、電池ECUなどハイブリッド車向けの鍵となる製品での小型化、高性能化を実現しその実績を積み上げ、ハイブリッド車の低コスト化と普及に貢献する。
-これまで培ってきた電動化製品を、更に磨き上げ最適なエネルギーマネジメントを構築し飛躍的な燃費性能の向上・省電力化を実現する。

環境分野
-電動領域の市場の伸びを確実に捉え、2025年にパワートレイン分野の売上を3兆円を目指す。

安心・安全分野
-ADAS・自動運転の分野において、走行環境認識などのスピード感を持って開発を進めるため、パートナーとの連携も強化し、「安心・安全に移動できるモビリティ社会」を実現する。
-ECU一体化の世界最小のステレオ画像センサーの開発
-周辺情報との連携による「見えない相手」との衝突回避の実現への取り組み。
-「安心・安全」分野の着実な推進で2020年度で1兆円売上を目指す。またADAS分野でも2020年度で1,800億円のを受注を見込み、2,000億円の売上を目指す。

コネクティッド分野
-車・人・道路・モノ・サービスなどがつながるモビリティ社会の変化の中でOut-Car領域でのビジネス拡大のため「省エネ走行アシストサービス」や「安全向上システムサービス」などCO2排出量の削減や車両情報やドライバーの体調情報などトータルに管理し交通事故の抑制につなげる。

2018年3月期の見通し

(IFRS基準、単位:百万円)

2018年3月期
(予測)
2017年3月期
(実績)
増減 (%)
売上収益 4,610,000 4,527,148 1.8
営業利益 327,000 330,551 (1.1)
税引前利益 360,000 360,858 (0.2)
親会社の所有者に帰属する当期利益 260,000 257,619 0.9

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

研究開発費

(単位:百万円)

2017年3月期 2016年3月期 2015年3月期
日本 344,459 336,648 335,686
北米 31,124 27,015 23,982
欧州 13,739 13,407 14,768
アジア 18,702 20,813 21,124
その他 1,199 1,355 880
合計 409,223 399,238 396,440

-2017年3月期の研究開発費において、日本セグメントが占める比率は約84%で研究開発活動の中心を担っているが、海外セグメントのリサーチ機能強化などを通じて、グローバルな先進モビリティ社会の実現を目指す。

研究開発体制

-世界7地域にテクニカルセンターを整備し、グローバル開発体制を強化。

地域 コアテクニカルセンター サテライト拠点
日本 愛知県日進市 日本国内グループ会社、韓国
北米 米国ミシガン州 米国テネシー州、カリフォルニア州
欧州 ドイツ アーヘン 英国、イタリア、スウェーデン
豪亜 タイ バンコク ベトナム、フィリピン、オーストラリア
中国 上海 北京、西安、台湾
インド デリー -
南米 ブラジル サンタバーバラ -

主な国内研究開発拠点

名称 所在地 主な事業内容
デンソー基礎研究所 愛知県日進市 シリコンおよび次世代半導体、先端機能材料、ヒューマンマシンインターフェース等の研究
額田テストセンター 愛知県岡崎市 実車走行試験
岩手事業所 岩手県胆沢郡 半導体製品の研究・開発
東京事業所 東京都港区 車載半導体回路の開発・設計

<日本>
-同社の有馬浩二社長は28日の決算会見で、研究開発費について「売上収益に対して9%を死守する」と述べ、高水準の研究開発投資を継続する姿勢を示した。2017年3月期(国際会計基準)の売上収益は4兆3800億円で、研究開発費は9.5%に当たる4150億円を計画している。近年、開発競争が激しくなっている自動運転領域については、このうち30%、1245億円程度を投じる。デンソーの売上収益に占める研究開発費比率は16年3月期が8.8%、15年3月期が9.2%と、9%前後で推移している。有馬社長は「技術進化がすべて。それがないと生きていけない」と述べ、今後、売り上げが拡大しても比例して研究開発費を積み増していく方針を示した。(2016年10月29日付日刊自動車新聞より)

-同社は8日、愛知県岡崎市の額田テストセンターを報道公開した。国内で唯一、走行状態で雨天や夜間を再現できる屋内施設「自然環境試験路」を2014年に敷地内に新設。天候などに左右されずに条件を設定して実走行テストできるようにした。先進運転支援システム(ADAS)や、自動運転技術などのセンサーが現実世界で正確に作動するよう、品質を向上するのに活用している。(2016年12月9日付日刊自動車新聞より)

<欧州>
-同社は14日、英イマジネーションテクノロジーズと、プロセッサ(CPU)内で複数の処理を並行して進めることができる「ハードウエア・マルチスレッド機能」を共同研究すると発表した。同機能そのものはパソコンなどですでに実用化されているが、車載CPUに実装できる耐久性能を確保するのが目的。自動運転用途などで2020年後半に共同研究の成果を実用化する。イマジネーションテクノロジーズは、コンピューター集積回路の設計開発とライセンス供与を軸とするメーカーで、マルチスレッド機能の開発で実績を持つ。同社とはすでに10年来の協業関係にあるという。(2016年11月15日付日刊自動車新聞より)

製品開発

<環境分野>
植物由来の樹脂2種の開発
-同社は21日、植物由来の樹脂2種を開発し、自社製品の一部に採用したと発表した。化石燃料を使用しない植物由来の樹脂は、非枯渇資源でサーマルリサイクルしても大気中に排出される二酸化炭素総量を増やさない環境対応素材で、同社では開発・製品化に注力している。今回、デンプン由来のバイオポリカーボネート(バイオPC)を開発した。表面硬度や発色性の高さを生かし、塗装なしでトヨタ自動車向け純正カーナビゲーションの樹脂パネルに採用、石油由来のPCから置き換えた。また、ひまし油の分子構造を工夫したウレタン樹脂を、排ガスセンサーの接続部の保護材に採用した。排ガスセンサーの制御ユニットに使用される樹脂は通常、高価なシリコーン系樹脂を使用している。今回開発したウレタン樹脂は摂氏150度までの耐熱性を世界で初めて実現すると同時に、コストを引き下げた。(2017年3月22日付日刊自動車新聞より)

<安心・安全分野>
世界最小ステレオ画像センサー
-同社は27日、車載製品としては世界最小のステレオ画像センサーを開発し、ダイハツ工業が11月に発売した軽自動車「タント」の衝突回避支援システム「スマートアシスト3」に採用されたと発表した。製品のサイズは幅125ミリ×高さ35ミリ×奥行き85ミリ。左右二つのカメラにより道路上の白線や前方の物体を識別する。ステレオカメラにより対象物までの距離測定の正確性を高め、対車両、対歩行者の自動ブレーキや車線逸脱警報、オートハイビームなどを実現した。スペースの限られる軽自動車に搭載するため、二つのカメラの幅を80ミリと、従来比で半減した。二つのカメラを近づけて配置すると比例して測定距離も短くなってしまうが、高精度なレンズ歪み補正とステレオマッチング技術を組み合わせてクリアしたという。(2016年12月28日付日刊自動車新聞より)

前方識別車載用画像センサー
-同社は25日、カメラで前方の物体や白線を識別する車載用の画像センサーに、ソニーセミコンダクタソリューションズのイメージセンサーを搭載することで、夜間の歩行者認識を可能にしたと発表した。日本と欧州の自動車アセスメント(NCAP)では、2018年に自動ブレーキによる衝突回避の対象に夜間の歩行者が追加される見通しで、これに対応するデバイスを先行して確立したことになる。ソニーのイメージセンサーは、家電製品を含む全市場で世界トップシェア。光量の少ない夜間でも被写体を正確に撮影する性能を持つという。デンソーはこれを採用し、搭載性、耐熱性、耐振性などを高め、車両搭載を可能にした。(2016年10月26日付日刊自動車新聞より)

設備投資額

(単位:百万円)

2017年3月期 2016年3月期 2015年3月期
日本 215,740 191,030 188,958
北米 51,825 45,577 48,465
欧州 23,588 30,896 29,192
アジア 44,045 64,941 83,107
その他 2,158 1,660 4,444
合計 337,356 334,104 354,166

-2017年3月期は、生産拡大対応、次期型化、新製品切替および新製品開発のための研究開発投資を重点的に推進。

設備投資額 2018年3月期の見通し

(単位:百万円)

2018年3月期
(予測)
2017年3月期
(実績)
増減 (%)
日本 211,000 215,740 (2.2)
北米 57,000 51,825 10.0
欧州 20,000 23,588 (15.2)
アジア 55,000 44,045 24.9
その他 2,000 2,158 (7.3)
合計 345,000 337,356 2.3

-2018年3月期は引き続き、投資の効率化に取り組む一方、合理化投資を推進していく。