(株) デンソー 2010年3月期の動向

ハイライト

業績

(単位:億円)
  2010年
3月期
2009年
3月期
増減率 (%) 要因
全社
売上高 29,767 31,427 (5.3) 1)
営業利益 1,366 (373) - -
経常利益 1,527 (353) - -
当期純利益 734 (841) - -
自動車部門
売上高 29,277 30,427 (37.8) 2)
営業利益 1,420 (115) - -

要因
1)
-各国の経済政策の奏功や、中国を中心とするアジア市場が順調に回復したものの、為替差損などにより減少。

<日本>
-日本の売上高は、海外生産用部品などの輸出が増加したものの、国内車両生産の減少および為替差損により、前年比4.9%減の2兆413億円。

<北中南米>
-北中南米地域の売上高は、米国の車両生産減少により、前年比4.9%減の5,322億円。

<欧州>
-欧州地域の売上高は、車両生産減少により、前年比11.1%減の4,111億円。

<豪亜>
-豪亜地域の売上高は、中国で日系車生産が増加したことに加え、ASEAN諸国でも回復したため、前年比5.2%増の5,341億円。

2)
熱機器
-熱機器の売上高は、トヨタおよび欧州カーメーカー向けエアコン・コンプレッサの拡販等があったものの、他日系カーメーカーおよび海外カーメーカーの車両生産の減少により、前年比10.4%減の9,017億円。

パワトレイン機器
-パワトレイン機器の売上高は、主に日系カーメーカーおよび海外カーメーカーの車両生産の減少に加え、欧州でのディーゼルコモンレールシステムの売上も減少に転じ、前年比7.8%減の6,844億円。

情報安全
-情報安全の売上高は、主にトヨタ向けカーナビゲーション等の販売増加により、前年比11.7%増の5,268億円。

電気機器
-電気機器の売上高は、主に日系カーメーカーの車両生産縮小によるスタータ、オルタネータ等の販売減少により、前年比9.5%減の2,658億円。

電子機器
-電子機器の売上高は、主にトヨタ向けECU等の販売好調により、前年比8.9%増の2,973億円。

モータ
-モータの売上高は、主にトヨタ向けワイパシステム、パワーウィンドモータ等の販売増加により、前年比1.9%増の2,225億円。

受注

-小型の冷媒噴射装置のエジェクターを採用した世界初のカーエアコンシステムを開発。トヨタの新型「プリウス」に搭載された。

-車載用リチウムイオン電池の監視ユニットを開発。トヨタの「プリウス プラグインハイブリッド」に搭載された。
>>>詳細は、開発動向へ

国内動向

-フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン、TRWオートモーティブジャパンと車載安全システム用通信規格「DSI(ディストリビューテッド・システムズ・インターフェース)」の普及を目指し、協力団体「DSIコンソーシアム」を設立したと発表した。 DSI規格の性能向上や用途拡大に向けて、自動車業界を中心にメンバーの募集を行う。DSIは主にエアバッグ用の通信システムとして仕様が策定されたもので、DSIがECUと各所のエアバッグセンサーを結ぶ通信規格となって、各エアバッグの安全な作動を実現する。また、接続性の向上とワイヤーハーネス重量の軽減も可能になる。(2009年9月10日付日刊自動車新聞より)

-車載用半導体の生産改革を推進する。工程の見直しなどにより生産性を高め、需要変動に強い体質を構築する。これまで同社の半導体工場では、他の製品の工場に比べ生産改革が比較的進んでいなかった。今後、車載用半導体は制御系に加え、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)など、駆動の電動化に伴ってパワー系の需要が増加する見通し。同社は自社製品に組み込む半導体を幸田製作所(愛知県額田郡幸田町)や子会社のデンソーエレクトロニクス(北海道千歳市)で生産しているほか、LSI(大規模集積回路)は高棚製作所(愛知県安城市)でも生産している。これら半導体生産拠点の生産革新活動を強化することで、需要が膨らむ半導体の内製力を高める。(2009年9月18日付日刊自動車新聞より)

海外動向

<ポーランド>
-独Robert Bosch GmbHと合弁で設立したDPF(ディーゼル微粒子除去フィルター)の開発・生産会社を解散することで合意。両社は2007年7月に折半出資で新会社「Advanced Diesel Particulate Filters Sp.zo.o.」(ポーランド・ヴロツワフ市)を設立し、2009年からコージェライト製DPFを生産する予定だった。しかし2008年秋からの世界同時不況による欧州市場の低迷で、合弁会社で見込んでいた量の需要が見込めなくなった。Boschは建設中の工場建屋を引き取るが、単独でのDPFの生産も行わない見通し。(2009年5月21日付日刊自動車新聞より)

<オーストラリア>
-豪州の生産、持ち株会社2社の営業・サービス・物流機能を2010年4月1日付けで集約。豪州は2010年から輸入車の関税が引き下げられ、輸入車の販売割合が増加する見通し。現地マネジメント体制を効率化しながら、顧客である現地完成車工場への対応力を向上する。カーエアコン、ラジエーター、メーターを製造する生産子会社と持ち株会社(ビクトリア州クロイドン)の営業、サービス、物流機能を生産子会社に集約し、機能集約を機に生産子会社の名称をAustralian Automotive Air Pty. Ltd. (AAA)から「Denso Automotive Systems Australia Pty. Ltd.」(DNAU)に変更。統括会社のDenso International Australia Pty. Ltd.は持ち株会社として存続する。(2009年11月19日付日刊自動車新聞より)

会社設立

-アフリカのモロッコにカーエアコン生産会社を設立すると発表。2011年4月に工場を完成、同12月に生産を開始する。設立するのはDenso Thermal Systems Morocco S.A.R.L.。資本金250万ユーロ(3億300万円)で、Denso International Europe B.V. が全額出資する。モロッコ北部のタンジール市に本社・工場を置く。2011年度までに1140万ユーロ(13億8100万円)を投資、2013年度に1200万ユーロ(14億5400万円)の売り上げを目指す。(2010年3月24日付日刊自動車新聞より)

>>>次年度業績予想(売上、営業利益等)

2011年3月期の見通し

(単位:億円)
  2011年3月期 2010年3月期 増減
売上高 30,600 29,767 833
営業利益 1,380 1,366 14
経常利益 1,500 1,527 (27)
当期純利益 980 734 246
研究開発費 2,850 2,701 149
設備投資額 1,430 1,114 316
-日本 920 750 170
-北中南米 130 102 28
-欧州 130 130 0
-豪亜 250 163 87

 

所在地別売上高

(単位:億円)
  2011年3月期 2010年3月期 増減
日本 20,750 20,413 337
北米 5,440 5,322 118
欧州 4,040 4,111 (71)
豪亜 5,620 5,341 279

開発動向

研究開発費

(単位:億円)
  2010年3月期 2009年3月期 2008年3月期
全社 2,700 2,971 3,115
自動車分野 2,636 2,883 3,025

-2011年3月期の研究開発費について、2010年3月期並の水準を維持する考えを固めた。同社は従来から、売上高に対する研究開発費の比率を8%程度に収める方針を持っていたが、環境や安全に対するニーズが強いことに加え、将来の技術革新に向けた取り組みを強化する必要があるため、売上高連動型の予算設定方式を見直して、今後はテーマごとの積み上げ式で対応していく。(2010年1月5日付日刊自動車新聞より)

研究開発体制

-1991年、愛知県に「デンソー基礎研究所」を設立。半導体エレクトロニクス、情報通信、ヒューマンマシンインターフェイス等の研究を行っている。2010年3月31日現在、従業員は420名。

研究開発活動

-車両全体の効率的なエネルギー使用を「効率向上」「負荷低減」「回生利用」の3つの観点から統合制御する「エネルギーマネジメント」技術を開発。各システム・製品が融合的に働き、より高い省燃費効果の創出を可能にした。

-ガソリン車の燃費で2013-15年をめどに、現状に比べ約20%の向上を目指す方針を明らかにした。燃費向上に役立つ複数のシステムを使い、エネルギー効率を車全体で最適化することで大幅な燃費向上を図る。燃料の持つエネルギーの80%が熱などとして廃棄されていることに着目。減速回生システムやナビ協調システム、蓄冷システムを使ったエネルギーマネジメントの技術に取り組む。(2009年10月23日付日刊自動車新聞より)

製品開発

排気温センサー
-温度検出精度を高めた排気温センサーを開発。新製品は感温部に新開発の素子を採用。温度検出精度が従来品のプラスマイナス30度に比べ、新製品はプラスマイナス10度に向上した。2009年秋に米国で発売予定のディーゼルエンジン商用車に搭載が決まっているほか、2010年以降、日本と欧州で発売される車両にも搭載される予定。新製品は、排気管の中に突出する部分の長さを従来品の約2倍に延長。振動を抑制するパイプを用いることで耐振性を高めた。DPFでもっとも高温となる中心部付近の詳細な温度検出が可能になり、排ガス浄化性能の向上やDPF再生時の燃料低減などを実現する。同社はターボシステム用の排気温センサーにも今回開発した高耐振技術を適用する。(2009年4月22日付日刊自動車新聞より)

カーエアコンシステム
-小型の冷媒噴射装置のエジェクターを採用した世界初のカーエアコンシステムを開発。トヨタ自動車の新型「プリウス」に搭載された。エジェクターによる冷媒の昇圧効果を活用し、エアコンが消費するエネルギーの約6割を占めるコンプレッサー(圧縮機)の動力を最大で約25%低減。新システムに搭載したエジェクターは、長さ約20センチメートル、直径1センチメートル程度の円筒形の装置。コンデンサー(冷却器)を通り液化した冷媒の一部を同装置に通し、直径約1.5ミリメートルのノズルから噴射させることで冷媒を昇圧化する。エアコンの冷媒は通常、コンプレッサーで昇圧するが、新システムではエジェクターを通すことで、コンプレッサーの手前で一定の圧力にまで高めることができる。(2009年5月20日付日刊自動車新聞より)

デュアルインジェクター
-日産自動車とガソリンエンジンの燃費を向上する技術「デュアルインジェクター」を共同開発し、2010年初頭から2リットル以下の小排気量エンジンに採用されると発表。日産によると、1気筒当たり2本のインジェクターを持つ量産エンジンは、直噴ではない一般的なポート噴射エンジンでは世界初と見られる。燃料が微粒化でき燃焼が安定するため、排気バルブと吸気バルブの開くタイミングを長めに重複(オーバーラップ)させて吸気抵抗を減らすことが可能になる。同排気量のエンジンに比べ燃費は約4%改善。排出ガス中の炭化水素(HC)の発生も低減するため、触媒中の貴金属使用量を2分の1に削減できる。(2009年7月15日付日刊自動車新聞より)

次世代アイドリングストップ技術
-小型ハイブリッドトラック用に国内初の次世代アイドリングストップ技術を確立した。駐停車の際にハイブリッド車(HV)用電池から電力を供給し冷凍機などの架装物を作動させるもので、トヨタ、トヨタ車体の商用車部門と連携し開発。同システムによりドライバーは積み荷の品質を維持しながら、アイドリングストップを活用できる。今後は最適仕様を詰めながら、2、3年後の商品化を目指す。(2009年11月10日付日刊自動車新聞より)

リチウムイオン電池監視ユニット
-車載用リチウムイオン電池の監視ユニットを開発。高電圧の電池を安全かつ効率的に使用するために電池の電圧、電流、温度などを検出する。リチウムイオン電池の電圧制御において、独自開発することにより、回路の簡素化とコストの低減を実現した。今回開発した監視ユニットはトヨタの「プリウス プラグインハイブリッド」に搭載。新開発した電圧制御方式は、全セルの平均電圧を検出し、平均より電圧の高いセルを論理回路で判定し放電する仕組みを採用。これにより、従来のアナログデータをデジタル変換して放電する仕組みと同等の性能を実現しながら、回路の簡素化を実現した。(2009年1月13日付日刊自動車新聞より)

技術提携

-同社とその米国子会社に、Honeywellが車載マルチメディアおよびGPSカーナビゲーションの特許技術を供与することで合意。(2009年4月7日付プレスリリースより)

主な技術契約

(2010年3月31日現在)

会社名
(国名)
契約品目 契約内容 契約期間
Robert Bosch GmbH
(ドイツ)
-アンチロックブレーキ
-トラクションコントロールシステム
-ビークルスタビリティコントロール
-パワーアシストブレーキ
特許実施権の受諾 2005年5月8日 -
2020年3月15日
(株)日立製作所
(日本)
-ガソリンEMS 特許実施権の許諾 2006年1月1日 -
2012年12月31日
Delphi Corporation
(米国)
-ガソリンEMS 特許実施権の許諾 2006年5月10日 -
2026年5月10日
日本精機(株)
(日本)
-計器装置 特許実施権の許諾 2007年3月21日 -
2022年12月26日
斗源重工業
(韓国)
-A/Cシステム 特許およびノウハウ実施権の許諾 2008年2月19日 -
2013年2月18日
Delphi Corporation
(米国)
-バリアブルバルブタイミング 特許実施権の許諾 2008年2月26日 -
2018年4月23日

設備投資

設備投資額

(単位:億円)
  2010年3月期 2009年3月期 2008年3月期
全社 1,144 3,144 3,438
自動車分野 1,135 3,099 3,385

国内投資

-新車需要減退の影響で延期していた福島県での新工場建設に着手すると発表。子会社のデンソー東日本が約50億円を投資して、カーエアコンなどを生産する工場を設け、2011年5月の操業開始を目指す。新工場の所在地は福島県田村市にある田村西部工業団地内。敷地面積は約23万7千平方メートルで、建屋の延べ床面積は操業開始時で約1万600平方メートル。2011年度の売り上げは約60億円を見込んでいる。(2010年1月22日付日刊自動車新聞より)

海外投資

<インド>
-インドのカーエアコン工場を拡張する。同社がインドに持つエアコン工場は「Denso Kirloskar Industries Pvt. Ltd.」で、同社が89%を出資して1998年に設立した。累計で約25億円を投資し、延べ床面積を現在の約5400平方メートルから2・5倍以上に拡張。拡張後は計1万4400平方メートルになる。トヨタ自動車が2010年末に生産を開始する予定の低価格戦略車「エントリー・ファミリー・カー」(EFC)用エアコンの生産設備で、2010年後半の稼働開始を計画している。現在の従業員数は270人。カーエアコンとその関連部品のほか、ラジエーターなどの製造販売を手掛けており、トヨタのほか、ホンダやスズキの現地工場に製品を供給している。(2009年12月7日付日刊自動車新聞より)

<ブラジル>
-ブラジルにカーエアコンの新工場を建設すると発表。6500万レアル(約32億円)を投じ2011年1月から生産を開始する。自動車需要の拡大にあわせて既存製品の拡販と新規製品の受注に向けた生産能力を増強するのが狙い。新工場はブラジル子会社であるDenso do Brasil Ltda. (DNBR)の拠点として、ブラジル・サンパウロ州のサンタバーバラ・ドゥ・オエステ市に建設。敷地面積は30万平方メートル、従業員数は315人を予定している。また新工場の立ち上げにあわせて分工場として展開しているピンダ工場の生産を移管する。(2010年3月17日付日刊自動車新聞より)

設備の新設

(2010年3月31日現在)

-2011年3月期の設備投資計画は全社で1,430億円。
-そのうち自動車分野では1,420億円を投資予定。 生産拡大、次期型化および新製品切替対応を主な目的とする。