株式会社デンソー 2008年3月期の動向

ハイライト

業績
(単位:億円) 2008年
3月期
2007年
3月期
増減率 (%) 主な要因
全社
売上高 40,251 36,097 11.5 好調な中近東・ロシア向け日系完成車輸出、中国を含む豪亜地域での好調な海外日系車生産。
経常利益 3,683 3,221 14.3 売上増加による操業度差益、コスト低減努力など経営全般に渡る合理化・効率化、受取配当金の増加。
当期純利益 2,444 2,052 19.1 -
自動車部門
売上高 39,111 34,890 12.1 下記製品グループ別売上高を参照

自動車分野・製品グループ別売上高
(単位:億円) 2008年
3月期
2007年
3月期
増減率 (%) 主な要因
熱機器 12,879 11,380 13.2 日系カーメーカーの車両生産の増加、海外カーメーカー向けエアコンの新規拡販。
パワトレイン機器 9,402 8,301 13.3

欧州でのディーゼルコモンレールシステムの販売好調。

情報安全 6,500 5,839 11.3 日系カーメーカーの車両生産の増加、海外カーメーカー向けカーナビの販売拡大。
電気機器 3,680 3,300 11.5 オルタネータ等電装品に加え、ハイブリッド関連製品の拡販。
電子機器 3,497 3,107 12.5 国内の輸出向け車両生産増、車のエレクトロニクス化の進展に伴う各種ECU、センサ等が好調。
モータ 2,708 2,488 8.9 輸出車両増に伴うワイパシステム、パワーシート用モータ、スライドドアクローザー用モータ等の好調や拡販。
その他 444 475 (6.5) -
合計 39,111 34,890 12.1 -

地域別売上高
(単位:億円) 2008年
3月期
2007年
3月期
増減率 (%) 主な要因
日本
売上高 27,259 25,413 7.3

中近東やロシアなどの新興国輸出向け車両生産台数の増加および拡販。

営業利益 1,975 2,153 (8.3) 税制改正に伴う償却費の増加、急激な円高進行に伴う為替差益の減少。
北中南米
売上高 8,323 7,691 8.2 堅調な日系車両生産台数および拡販。
営業利益 415 292 42.1 売上増加による操業度差益、合理化努力。
欧州
売上高 6,203 5,193 19.4 日系車および欧州車への拡販。
営業利益 265 122 117.2 売上増加による操業度差益、合理化努力。
豪亜
売上高 6,162 4,802 28.3 アセアンや中国での日系車両生産台数の増加および拡販。
営業利益 804 459 75.2 売上増加による操業度差益、中国事業の順調な立ち上がり、合理化努力。

受注

ハイブリッド車用の高出力パワーコントロールユニット(PCU)と電池冷却システムを開発し、トヨタ自動車のレクサス「LS600h」「LS600hL」に搭載。

カーエアコンとクールボックス(冷蔵庫)の冷却性能を高いレベルで両立する新冷媒循環システムを開発。トヨタ自動車の新型「ランドクルーザー」から搭載されている。

>>> 詳細は 開発動向 参照


会社設立


-国内

2007年4月、北海道千歳市に車載用半導体製品を生産する新会社を設立。新会社の社名は(株)デンソーエレクトロニクスで、資本金は20億円。

2008年3月、福島県田村市にカーエアコンの生産子会社「デンソー東日本」を設立。関東、東北地区で自動車生産が拡大することに対応するもので、2009年1月に着工し2010年1月から生産を開始する。

-中国

2007年6月、江蘇省常州市にコモンレールシステム(ディーゼルエンジン用燃料噴射装置)の生産会社を開設。

2008年2月、江蘇省の揚州杰信車用空調有限公司と、バス用エアコンを生産する合弁会社を設立することで合意。

-ポーランド

2007年7月、ディーゼル排出ガス浄化フィルター(DPF)の開発・生産を行う子会社を、ドイツのRobert Boschとの合弁でポーランドに設立。新会社の社名は「Advanced Diesel Particulate Filters Sp.z o.o.」で、資本金(約13億円)は両社が50%ずつ出資。

>>> 詳細は 設備投資 参照


国内動向

-生産体制の再編

カーエアコンなどを生産する広島工場(広島市安芸区)を分離し、子会社のデンソー北九州製作所(北九州市八幡西区)へ統合。西日本地域の車両生産の拡大に対応した生産体制を整え、地域密着の経営を推進する。(2007年10月2日付日刊自動車新聞より)

2009年から中国で販売を開始する、ディーゼルエンジン(DE)用コモンレールシステムの主要部品であるインジェクター(燃料噴射装置)の全量を、九州子会社から供給する。インジェクター用部品は当面日本で集中生産する方針で、主力の愛知県と九州の生産能力を活用し、グローバルな需要拡大に対応していく。九州では2010年に年間60万台分のインジェクターを生産する計画で、このうち30万台分が中国向け。(2008年2月1日付日刊自動車新聞より)

愛知県刈谷市の本社地区で生産している触媒用セラミック(モノリス)の生産を、三重県いなべ市の大安製作所に全量移管する。2008年4月から順次移管作業を進め、同7月から本格生産を開始。既存工場が手狭になったため新工場での生産に切り替え、今後の増産要請に対応する。(2008年3月7日付日刊自動車新聞より)

-株式公開買付(TOB)

愛三工業の普通株式を公開買付(TOB)する。買付代金は74億円。買付後の同社出資比率は9.95%。愛三工業は流体制御技術をベースに、燃料噴射制御部品、排ガス制御部品、エンジンバルブなどエンジン部品に関する機能部品大手。同社とは競合関係にもあるが、2000年にスロットルボディの共同開発・生産を開始したのを皮切りに、協業製品をインジェクター、フューエルポンプなどに拡大するなど、関係を強化しつつある。(2007年5月12日付日刊自動車新聞より)


海外動向

-エアバッグ用ECU生産 (インド)

2007年10月、エアバッグ用ECU(電子制御ユニット)をインドのハリアナ工場で現地生産する方針を発表。自動車の普及に伴い、インドでもエアバッグ装着車が増えると見られることから、現地での製品供給力を高める。また、ECUの仕様を共通化することで大幅なコストダウンを図る。(2007年10月24日付日刊自動車新聞より)

-資本関係解消 (韓国)


韓国の斗源空調との資本関係を解消。同社は「両社を取り巻く事業環境が大きく変化した」として、保有する全株式(33.4%)を斗源空調に売却する。売却額は約20億円。同社は韓国内のカーエアコン生産拠点を失うことになるが、今後については「グローバルな供給体制の一環として、具体的な方法を検討していきたい」としている。(2008年2月22日付日刊自動車新聞より)

事業計画

2015年までの10ヶ年経営指針「デンソー・ビジョン2015」を達成するため、今後5年間の活動計画をまとめた「2010長期構想」を2006年7月に策定。2010年までに売上高4兆円以上、ROE10%以上を目指す。(2006年7月29日付日刊自動車新聞より)

カーエアコンの世界販売シェアを、2010年度に2005年度実績の30%から35%に引き上げる。新興国や米国など海外での日本メーカー車の販売が大幅に増加する見通し。それに伴い、カーエアコン販売台数も2005年度実績の1,628万台から、2010年度には2,200万台に増加すると見ている。(2007年2月19日付日刊自動車新聞より)

開発動向

研究開発体制
 
1991年、愛知県に「デンソー基礎研究所」を設立。半導体エレクトロニクス、情報通信、ヒューマンマシンインターフェイス等の研究を行っている。2008年3月31日現在、従業員は382名。

2010年までに、全世界の開発人員を2004年時点に比べて3,590人増員する方針。内訳は国内で2,700人、海外で890人。国内での基礎研究開発を強化する一方、アプリケーション開発を現地化し、海外で事業を拡大する日系自動車メーカーなどのニーズに対応していく。(2006年12月8日付日刊自動車新聞より)

2007年2月、中国やインドを始めとした新興市場の拡大に伴い、地域のニーズにきめ細かく対応した製品開発を強化するため、タイのバンコク近郊にテクニカルセンターを設立すると決定。

研究開発費用

(単位:億円) 2008年
3月期
2007年
3月期
2006年
3月期
全社 3,115 2,799 2,563
自動車分野 3,025 2,707 2,492


新製品開発 (2008年3月期)

-高出力パワーコントロールユニット(PCU)および電池冷却システム

ハイブリッド車用の高出力パワーコントロールユニット(PCU)と電池冷却システムを開発し、トヨタ自動車のレクサス「LS600h」「LS600hL」に搭載。PCUの高出力化に必要な半導体パワー素子の大電力化を実現するため、素子の冷却性能を大幅に向上させた。パワー素子を従来の平面配置から積層配置とし、素子の両面から冷却できるようにした。これにより、従来の平面配置型の冷却構造に比べ冷却効率が大幅に向上。同社従来比で、PCUの単位体積当たりの出力を約60%向上させることができた。また、積層構造の採用により小型化も可能になり、同じ出力で比較すると体積を30%、重量を20%低減できる。(2007年5月24日付日刊自動車新聞より)

-エジェクターを使った冷媒循環システム

カーエアコンとクールボックス(冷蔵庫)の冷却性能を高いレベルで両立する新冷媒循環システムを開発。クールボックス使用時でも、エアコンの冷房性能に影響を与えない。エジェクターを使った冷媒循環システムは、乗用車用では世界で初めての製品化となる。トヨタ自動車の新型「ランドクルーザー」から搭載されており、2007年10月からは輸出向け車両にも搭載される。従来の冷媒循環システムでは、冷房用とクールボックス用の冷媒の流れを電磁弁で切り替えていた。このため、クールボックスを使用すると、冷房性能が低下することがあった。新システムは、高圧冷媒を勢いよく噴出、膨張させる機能を持つエジェクターをシステムに組み込むことにより、クールボックス使用時でも、高い冷房性能と冷蔵性能を両立できるようにした。従来システムに比べ、冷房性能を15%、冷蔵性能を20%向上させた。(2007年10月4日付日刊自動車新聞より)

主な技術契約 (2008年3月31日現在)

会社名
(国名)
契約品目 契約内容 契約期間
Robert Bosch GmbH
(ドイツ)
-アンチロックブレーキ
-トラクションコントロールシステム
-ビークルスタビリティコントロール
-パワーアシストブレーキ
特許実施権の受諾 2005年5月~
2020年3月
(株)日立製作所
(日本)
-ガソリンEMS 特許実施権の許諾 2006年1月~
2012年12月
Delphi Corporation
(米国)
-ガソリンEMS 特許実施権の許諾 2006年5月~
2026年5月
日本精機(株)
(日本)
-計器装置 特許実施権の許諾 2007年3月~
2022年12月
Advanced Diesel Particulate Filters Sp.z o.o.
(ポーランド)
-ディーゼルパーティキュレートフィルター 特許およびノウハウ実施権の許諾 2007年9月~
合弁契約終了
斗源重工業
(韓国)
-A/Cシステム 特許およびノウハウ実施権の許諾 2008年2月~
2013年2月
Delphi Corporation
(米国)
-バリアブルバルブタイミング 特許実施権の許諾 2008年2月~
2018年4月

設備投資

設備投資額
(単位:億円) 2008年
3月期
2007年
3月期
2006年
3月期
全社 3,438 3,125 2,887
自動車分野 3,385 3,101 2,844


国内投資 (2008年3月期)

北海道千歳市に車載用半導体製品を生産する新会社を設立。新会社の社名は、株式会社デンソーエレクトロニクスで、資本金は20億円。2009年4月から生産を開始する予定。 2015年度までに累計で約240億円を投資し、2015年度に約1千億円の売上を見込む。(2007年4月26日付プレスリリースより)

九州の生産子会社、デンソー北九州製作所(福岡県北九州市)の工場を拡張する。敷地内に約2万2千平方メートルの工場を建設。トヨタ自動車とダイハツ工業の九州での生産拡大に対応し、カーエアコン、ディーゼル燃料噴射装置用インジェクター部品、エンジンクーリングモジュールを増産する。また、新規部品としてフューエルポンプモジュール、ワイパーリングなどの生産も開始。2007年8月に着工し、2008年3月完成予定、同年5月から順次生産を開始。総投資額は、2010年度までの累計で約200億円を計画している。(2007年7月20日付日刊自動車新聞より)

愛知県の安城製作所を拡張するための工場用地を取得することで、安城市、安城市土地開発公社と合意。需要拡大が見込まれる、環境対応製品などの工場用地として活用する。具体的な生産品目、操業開始時期は未定。(2007年12月25日付日刊自動車新聞より)

福島県田村市にカーエアコンの生産子会社「デンソー東日本」を設立。関東、東北地区で自動車生産が拡大することに対応するもので、2009年1月に着工し、2010年1月から生産開始。2015年度には売上高300億円を見込む。トヨタ系車体メーカーの関東自動車工業岩手工場とセントラル自動車(宮城県に2010年移転予定)を始め、ホンダの埼玉製作所(埼玉県狭山市)、寄居新工場(埼玉県寄居町、2010年稼働予定)、富士重工業の群馬製作所向けのカーエアコンなどを生産する。新会社はデンソーが資本金26億円を全額出資し、2008年4月に設立。2015年度までに合計160億円を土地、工場建屋、設備に投資する。(2008年3月21日付日刊自動車新聞より)

海外投資 (2008年3月期)

-中国

江蘇省常州市にコモンレールシステム(ディーゼルエンジン用燃料噴射装置)の生産会社を開設。総投資額は約40億円で、2009年7月に生産を開始、2012年度には売上高180億円を見込んでいる。海外のコモンレールシステム生産拠点としては、ハンガリーとタイに次ぎ3ヶ所目。新会社の名称は「電装(常州)燃油噴射系統有限公司」で、資本金約28億円は同社グループが全額出資する。中国の排出ガス規制動向を踏まえ、大型ディーゼルエンジン向けのコモンレールシステムを生産。(2007年6月19日付日刊自動車新聞より)

江蘇省の揚州杰信車用空調有限公司(杰信空調)と、バス用エアコン生産の合弁会社を設立することで合意。2008年4月から中国国内のバスメーカー向けにエアコンの供給を開始する。2010年に約50億円の売上を目指す。新会社「揚州杰信電装空調有限公司(仮称)」の資本金は180万米ドル(約2億円)。出資比率は杰信空調が50%、同社の中国統括会社の電装(中国)投資有限公司が30%、デンソーが出資する自動車用・業務用空調機器生産会社、GAC(長野県安曇野市)が20%。(2008年2月26日付日刊自動車新聞より)

-カナダ

デンソー・マニュファクチャリング・カナダ(DMCN、オンタリオ州ゲルフ市)の工場を2万平方メートルの規模で拡張、新たに熱交換器や電動冷却ファン、これらを一体化したクーリングモジュールなどの生産を開始。2007年7月に着工、2009年1月に操業開始する。総投資額は約78億円。2010年度を目処に、現状の2倍弱に当たる293億円の売上達成を目指す。現在生産しているエアコンユニットに加え、ラジエーターやコンデンサー、電動ファン、エンジンクーリングモジュールなども生産する。(2007年6月22日付日刊自動車新聞より)

-ポーランド

ドイツのRobert Boschとの2006年10月の合意に基づき、ポーランドのヴロツワフ(Wroclaw)にディーゼル排出ガス浄化フィルター(DPF)の開発・生産を行う合弁会社を設立。新会社の社名は「Advanced Diesel Particulate Filters Sp.zo.o.」で、資本金(約13億円)は両社が50%ずつ出資。2009年からコージェライト製DPFの生産に着手する見通し。(2007年7月23日付プレスリリースより)


設備投資計画 (2009年3月期)

-2009年3月期の設備投資計画は全社で3,220億円。
-そのうち自動車分野では3,180億円を投資予定。 生産拡大、次期型化および新製品切替対応を主な目的とする。