Michelin 2008年度の動向

ハイライト

業績
(単位:百万ユーロ) 2008年度 2007年度 対前年比(%) 要因
全社
売上高 16,408 16,867 (3.0)  
営業利益 920 1,645

(44.0)

 
乗用車及び小型トラックタイヤ部門
売上高 8,668 9,041 (4.1) (1)
営業利益 370 830 (55.4)
トラックタイヤ部門
売上高 5,433 5,639 (3.7) (2)
営業利益 138 427 (67.7)

要因

(1)乗用車及び小型トラックタイヤ部門の売上高は4.1%減少。販社が在庫調整を行ったことを受け市場環境が悪化したことが売上減の背景。営業利益は2007年度の8億3,000万ユーロから3億7,000万ユーロに減少。マイナスとなった要因には、原材料費の高騰、販売量の減少、生産ラインがフル稼働しなかったこと、第4四半期の需要減、為替のマイナス要因などがあげられる。年度内を通して全市場での小売価格改定を行い、さらに製品ミックスの改善があったもののマイナス分を補うことはできなかった。

(2)トラックタイヤ部門の売上高は3.7%減少。Michelin Durable Technologiesタイヤを導入したことで市場占有率はアジアと北米で上昇。特にアジアは中国の好調に支えられた。この傾向は欧州地域でも見られた。営業利益率は、負の要因が重なり5.1ポンイント下がり2.5%。原材料費のインフレが一例で特に下半期の影響が大であった。年度内を通して小売価格を上げたもののコストアップ分を相殺できたのは一部にとどまった。年度後半の市場不況は販売活動の足かせとなり、下半期に実施した生産調整により人件費を押し上げる結果となった。加えて、為替レートも負の要因となった。


受注
-2008年4月、乗用車用スポーツタイヤ「パイロットスポーツPS2」がアウディの新型A4とAA5に新車装着用タイヤとして採用されたと発表。乗用車用ラグジュアリータイヤ「プライマシーHP」も新型A4に採用された。(2008年4月11日付日刊自動車新聞より)。

-2008年8月、乗用車用ラグジュアリータイヤ「プライマシーHP」が新型シトロエンC5の標準装着タイヤとして採用されたと発表した。供給するのは225/55・R17と245/45・R18の2サイズ。(2008年8月30日付日刊自動車新聞より)。

-2008年9月、Kiaの新型「cee'd」に新車装着用タイヤを独占供給すると発表。同社とKiaは、2006年、同社製タイヤ(サイズ:15インチ/16インチ/17インチ)を「cee'd」装着用タイヤとして供給する独占契約を締結している。(2008年9月18日付プレスリリースより)。

-2008年12月、プライマシーHPが、ホンダの新型アコードとアコードツアラーに採用されたと発表した。同社はすでに北米市場向けのアコードに18インチのオールシーズンタイヤを納入しており、今回の日本向けアコードへの採用により全世界で販売するアコードの18インチタイヤに同社製のタイヤが使用されることになった。(2008年12月6日付日刊自動車新聞より)。


企業買収
-2008年6月、提携関係にある韓国のHankook Tyres(ハンコックタイヤ)の持株比率を8.9%に引き上げた。2006年3月にハンコックタイヤの株式を追加取得、保有比率を6.3%としていた。両社は、2003年、Michelin側が将来的にハンコックタイヤ株を最大10%まで買い進めることで合意しており、今回の株式追加取得もその方針に沿ったもの。(2008年6月18日付プレスリリースより)。

開発動向

研究開発費
(単位:百万ユーロ) 2008年度 2007年度 2006年度
合計 499 561 591
対売上比率 3.0% 3.3% 3.6%

研究開発体制

-欧州、北米、アジアに4000名のリサーチ・エンジニアスタッフ。

製品開発
-同社にとって第4世代のグリーンタイヤとなる「Energy Saver」を開発、2008年初から欧州、中東、南アフリカ、南米で販売を開始している。Energy Saverを使用することで、市街地走行および高速道路走行での平均で100kmあたり約0.2Lの燃料を節約できるとしている。これをCO2排出量に換算すると、4g/kmの削減に相当する。環境性能に加え安全性にも優れることから、既に複数の自動車メーカーがEnergy Saverを新車装着用タイヤとして選定している。Peugeotは、このタイヤを、1.6LHDiエンジンを搭載する新型「308」に採用する。その他の採用メーカー(および搭載モデル)は、Mercedes-Benz(「Bクラス」「Cクラス」)、Volvo(「C30 Efficiency」「S80」「V70」)、Fiat (「500シリーズ」「Fiorino」)、Renault(「Clio」「Twingo」)、Toyota(「Yaris」)。 (2008年3月4日付プレスリリースより)。

-Agilisタイヤのアップグレードモデルを本格投入。 2008年3月に欧州で先行販売を開始、既にアジア、アフリカ中近東、南米にまで販売地域を拡大。Ford 「Transit」、Mercedes 「Sprinter」、Volkswagen 「LT46」、Renault 「Master」などの多目的車に採用される予定。初期テストデータによると、「Agilis」搭載車は航続距離30%アップを達成。新型「Agilis」は、先行モデルと同様にサイドウォールプロテクターで縁石などによる衝撃やこすれに対する耐性を発揮、かつ、ウエット路面でのブレーキ距離を3m短縮したという。(2008年4月7日付プレスリリースより)。

設備投資

設備投資費(部門別)
(単位:百万ユーロ) FY2008 FY2007
乗用車及び小型トラックタイヤ部門 635 579
トラックタイヤ部門 353 436
その他 283 325
合計 1,271 1,340

設備投資費(地域別)
(単位:百万ユーロ) FY2008 FY2007
欧州 709 699
北米 280 280
その他 282 361
合計 1,271 1,340


-同社では、中・東欧・南米・アジアなどの地域を分割しそれぞれのタイヤ市場に応じた形で、ビジネス展開を加速。地域需要に応じた生産活動を行うことと、活力ある経済地域での市場占有率向上を目的としている。これらの地域に投じた設備投資の総額は2008年度は4億5,000万ユーロ。

<中欧・東欧>
-ハンガリーの工場で高性能乗用車タイヤの生産ラインを増強した。

<南アメリカ>
-2007年に竣工したブルドーザー用タイヤなどの生産を行うブラジルのCampo Grande工場は計画通り生産を開始した。同社によればメルコスール地域内の乗用車・小型トラック市場にタイヤを供給する目的の工場の建設計画を発表した。一方で北米市場にタイヤを供給する目的のメキシコの新工場建設計画の中止を発表している。

<アジア>
-中国で乗用車・大小トラック用のタイヤを増産生。アジアの第2番目のトラック市場であり今後ラジアルタイヤの拡大化が期待できるインドでのトラック・ブルドーザー用タイヤの生産工場を建設する。2003年に合弁契約を結んだ韓国タイヤメーカー Hanklook Tire社(世界第8位のメーカー)への持ち株比率を10%近くまで増加した。