Mahle GmbH 2008年度の動向

ハイライト

業績
連結(単位:百万ユーロ) 2008年度 2007年度 増減率(%) 要 因
売上高 5,013.7 5,060.4 -0.9  
営業利益
21.8 223.0 -90.2  
セグメント別売上高
ピストン システム 1,210.4 1,296 -6.6 下記1)参照
シリンダー部品 765.8 752 1.8 下記2)参照
バルブ トレイン システム 618.3 655 -5.6 下記3)参照
エアマネージメントシステム 799.0 819 -2.4 下記4)参照
リキッドマネージメントシステム 504.5 535 -5.7 下記5)参照

要因

1) ピストン システム
-欧州・北米の自動車業界は不況を極め、上半期の事業は好調であったピストンシステム事業に大きな負担を与えた。これとは対照的に、日本と中国では対前年比で売上げは伸張。
-商用車向けの売上は好調。乗用車と小型商用車向けの販売は減少。第4四半期になると、すべての地域と部門で販売はマイナスに陥った。
-利益は上半期にはプラスであったが、下半期になると需要の減少とともにマイナスに転じた。この結果、前年の利益レベルを確保することはできなかった。世界各地で納品先への価格譲歩を行ったこと、人件費とエネルギー費用の上昇などの影響を受けたことなどが利益幅を圧迫した要因。南アメリカでは前年を超える利益を計上できた。

2)シリンダー部品
-企業買収によってもたらされた売上額の大幅増は、為替レートの効果を斟酌しても、製品本体の販売の4%減少分を補うことができた。ベアリングとピストンリング製品部門はこれまでで最高の売り上げの伸びを記録。
-2007年3月に買収したDana社のエンジン部品部門を統合したがこれには複数の領域でのリストラ策が織り込まれている。リストラ施策は予定通り実施されたもの利益面にプラスの影響を及ぼすまでには至らなかった。尚、リストラ計画には工場の完全閉鎖及び部分閉鎖も含まれる。
- 鉄鋼及び合金製品などの原材料費は年度内上昇を続けた。コスト上昇分を納品先へ価格転嫁できたものは一部にとどまった。シリンダー製品事業のすべての営業部門でこうした原材料費高騰の影響をまともに受けることになった。
-第4四半期には販売量の激減を経験した結果、利益貢献度が不十分であったことを物語っている。利益幅の落ち込み部分に関しては、残業時間削減とフレックスタイム の導入などで短期的な生産調整により一部影響を吸収できた。さらに、納品先の工場の数多くが閉鎖したことに対応するため、同社のほぼ全ての工場で操業停止期間の延長を実施。また、期間労働者の斡旋会社とは契約の更新を行わなかった。こうした対策と生産効率向上運動にもかかわらず、原材料費の高騰と販売量の減少は利益額を前年比較で大幅に減少させる結果となった。

3)バルブ トレイン システム部品
-ほぼ全製品の売上げが減少。特に第4四半期の販売実績は激減し対前年比較においても売上高は大幅な減少となった。焼結製品、カムシャフト、シリンダーヘッドなどの部品の販売は落ち込んでいるが、バルブ製品は前年比較で伸びている。
-販売量の減少と人件費の高騰は全ての工場施設の営業利益に影響を及ぼした。各工場では生産性向上活動などを行ってはいるがこうした原価高騰要素をカバーするには至っていない。鉄鋼・合金製品の材料費は年度内を通じて上昇し、エンドユーザーへの価格転嫁が実施できたのは部分的であった。
-一部の地域では早くも第3四半期から始まった売上台数の減少により、時間外労働や未消化有給休暇の削減、フレックスタイムの採用などの短期的な生産調整が必要となった。人件費削減には、非定期労働者の削減からまず手がつけられた。各種対策が施されたものの、経済環境厳しく前年に比べて利益額をおとす結果となった。

4)気体マネージメントシステム
-気体マネージメントシステムは北米と欧州の市場不況の影響を大きく受けた。2大市場での自動車需要の激減が同事業部門の販売を大きく減らす要因となった。前年に買収したSiemens VDOの気体マネージメント事業を連結したことでマイナス部分の一部を相殺することができた。同じように、アジアでの販売は好調であったが全体のマイナス分を埋め合わせることはできなかった。
-利益額は北米と欧州の販売不振を受けて昨年を下回った。価格圧力が依然と続いていることと樹脂製品とその関連プラスチック製品の原材料費のコストが特に下期になっても上昇基調であることなどで収益回復は難しい。 アジア・パシフィック地域の高い水準の市場成長分があるものの、マイナス部分の相殺することはできなかった。
-原価削減や生産工程最適化などの活動を加速し、対象規模も拡大。北米と欧州の生産ネットワークの応用化を視野に入れたいくつかの対策を実行。例えば、北米のWindsor工場(カナダ)が10月初頭に閉鎖し、その代替としてメキシコの工場で生産能力を増強し、他の北米内の工場から新規プロジェクトも受け入れる体制を敷いた。欧州では英国工場の連結化を進め、その他欧州地域の工場生産効率化も計画に従って推進した。

5)リキッドマネージメントシステム
-特に2008年度後半の数か月に発生した世界経済不況の結果、予定されていなかった売上の減少が全営業地域で発生。
-欧州と北米では、販売量の減少、各方面での大幅な値引き要求、活性炭と樹脂製品用の原材料費の大幅増などを背景として前年レベルの利益額を確保できなかった。南米は、為替レートが輸出に対して不安定に推移したため利益額に影響を及ぼした。日本での効率化計画と組織変更は、販売量は減少したものの利益幅を増加することに寄与。韓国ではウオン安が利益額を圧迫した。自動車業界を取り巻くネガティブな環境を考慮した生産工程最適化と原価低減の活動は下半期に入って更に強化した。米国工場のメキシコへの移管もこのリストラ運動の一環で実施した。


合弁事業
-Robert Bosch GmbH社との折半出資による合弁会社を設立することで合意。Bosch Mahle Turbo Systems、本社:ドイツ・Stuttgartは共同でガソリン/ディーゼルエンジン向けターボチャージャーを開発・製造し、全世界で販売する計画。2010年に量産開始予定という。(2008年2月1日付プレスリリースより)

-ブラジルの子会社Brazilian subsidiary MAHLE Metal Leve S.A.とHirschvogel Umformtechnik GmbHは、ブラジルに新合弁会社MAHLE HIRSCHVOGEL FORJAS S.A.を設立したと発表。同社の連結子会社となる新会社の従業員は約600名、2007年の売上は約75百万ユーロ。鍛造事業を手掛ける企業としてはブラジルで3番目の規模で、主要製造品目は自動車用各種コネクティングロッド、インジェクションシステム部品など。(2008年5月21日付プレスリリースより)

-Boschとの合弁会社Bosch Mahle Turbo Systemsは、オーストリアで新工場を着工する。St. Michael ob Bleiburg(Carinthia州)に建設する新工場では、2011年から、年間最大150万基のターボチャージャーの生産・組立を行う。2011年には150名以上の雇用を予定。(2008年9月18日付プレスリリースより)


企業買収
-Clemex Mexico S.A. de C.V.及びLermalにある子会社の全株式を取得したと発表。2009年前半には傘下企業としてグループに組入れられる予定で、当面は、現社名で事業を継続。Clemex Mexicoでは、OEM市場及びアフターマーケット向けに、エンジン用ベアリング、ブッシングを製造。2007年の売上高は約10.3百万ユーロ、従業員数は約400名。(2008年6月9日付プレスリリースより)

-ENTEC GmbH (本社:Thuringia)の全株式を取得したと発表。ENTECは燃焼型エンジン用の電子制御式オイルポンプメーカーで、受注開発、プロトタイプ生産や特殊/モータースポーツ向け小口受注生産などを手掛ける。07年度の売上高は約7百万ユーロ。従業員数は約60名。現在Crock/Thuringia拠点が開発業務を一手に担い、Brattendorf/Thuringia拠点は生産事業主体。(2008年7月1日付プレスリリースより)

開発動向

研究開発体制
研究開発は下記8拠点
-Stuttgart (ドイツ)
-Northampton (英国)
-Farmington Hills (米国・デトロイト近郊)
-Novi (米国・デトロイト近郊)
-Jundiai (ブラジル・サンパウロ市)
-埼玉県川越市(日本)
-埼玉県桶川市(日本)
-Shanghai(中国)

-2008年6月にブラジルのJundiai(サンパウロ近郊)に技術センターを新設。R&D機能を備えた同センターは、研究棟や試験施設などで構成され、総建屋面積16,800 m2。この新規技術センターでは、研究・開発機能を保有するほか、南米向けのエンジニアリング業務や販売業務も担う。約260名体制で、ブラジル国内外の自動車メーカー及びエンジンメーカー向けに包括的なサービスを提供。(2008年6月26日付プレスリリースより)

研究開発費

 (単位:百万ユーロ) 2008年度 ?2007年度
合計 285.9 277.7

製品開発
パワートレイン部門でシステム開発
-熱力学(直噴・ターボ・可変バルブタイミング)とエンジン工学に関する開発を続ける同社ではIAA2007にて1.2リッターの小型エンジンに搭載したシステムを発表した。部分付加範囲地点での最大化の初期成果として大きな可能性として、同様の性能を有する2.4リッターのNAエンジンとの比較で燃費とCO2排気ガスを30%以上削減できる。代替燃料の利用もCO2の排出を永久に削減するひとつの方法である。この実験は、4気筒の試験用エンジンと特別の単気筒研究用エンジンを利用して行われている。後者のエンジンの特徴として焼室への光アクセスを採用したことで、代替燃料の使用に際して、燃料混合と燃焼過程の変化を正確に検知し分析することが可能となった。

ピストン製品
-ガソリンエンジン仕様の乗用車では排気ガスターボチャージャーと直噴式のエンジンを合体させることで効率のよいエンジン性能を生み出すが、数年前までにはこうした性能は高性能エンジンかレース仕様のエンジンでしか達成できなかった。高い耐熱機能を有したアルミシリコン製のピストン合金は同社が開発したものでEvoTecRの軽量化コンセプト製品との合体でエンジン性能をあげてほしいというユーザーの様々な要望に応えることができる。こうしたピストンはさらなる軽量化や高いストレス抵抗性を追求する国際標準になってきた。新しく開発されたADC(最新ディーゼル鋳造)製造方法により、鋳造工程でアルミ製ピストンの特定部位の微細構造の調整を行うことが可能となる。この工程開発の結果、温度変動負荷に対する抵抗力が著しく増進し、製品寿命を延ばすことにも成功した。動力を更に増やし燃費と排気ガスをなお一層削減するためにMonoXcomp(R)の次期型ピストンを採用した高応力下の商用車用エンジン向けのテストが続けられている。 このマルチ・パート鉄製ピストンの製品コンセプトは、魅力的な価格で高いストレス抵抗性を有する優れたクーリング機能が特徴である。大型エンジン向けには、MONOBOLT(R)ピストンが、量産に対応した将来型のデザインといった特徴を持っている。MonoXcomp(R)ピストンに似たこの製品は、頭の部分とスカートの部分がピストン上部に成型された短尺の抗疲労ボルトにより結合されている。こうしたコンセプトを採用して、鉄製の頭部分はアルミ、ノジュラー鋳鉄、あるいは鉄製などのスカートと結合することができる。

シリンダーライナー
-高応力シリンダーライナーの量産に対応する最適な高力かつ廉価なねずみ合金の開発を行う。シートメタル製研磨防止リングの採用で、シリンダーの摩耗と焼き付きを防止する最先端技術でかつ廉価な製品を送りだすことに成功。従来型の鋳鉄リングとは異なるこの耐摩耗性に優れたリング(パテント取得済)は、シリンダーライナーの強度に負の効果を与えることはない。この粗い外周をもつアルミニウム シリコン合金のシリンダーライナーについては現在でも開発が続いている。この製品の開発が進めばアルミ製クランクケースを使用した乗用車用エンジンの軽量化が可能となる。現状ではほとんどのシリンダーは鋳鉄製である。コンパウンド鋳造法を使用して生成されているALBOND(R)シリンダーライナーはシリンダー間隔を狭めることを可能とするばかりかエンジンの全体重量の大幅削減に貢献できるとされる。

CamInCam(R)カムシャフト
-カムシャフトタイミングの調整は燃費・排気ガス対策に関する時代の要請に応えるための必須要件となっている。同社のCamInCam(R)は二本のカムシャフトをひとつのスペースの同軸上に並べるという長点がある。独自に開発されたこの可変式カムシャフトすべてのタイプのエンジンに対して効果を付与している。俊敏なトルク応答特性、低燃費、低排出ガスがその結果となっている。特に、出力を10%以上向上させながら燃費が3%から5%程度削減させることが可能とし、NOX排気ガスの値は大幅に削減できた。

エアマネージメント
-エアバイパスバルブと新規開発のアクチュエーターを使用してスィッチ式エア変更チャンネルを使用するとターボエンジン用チャージエアクーラーをバイパスするので低温始動時に一酸化炭素と炭化水素の排出量の削減を促す。ターボエンジン用シリンダーヘッドカバーと吸気マニホルドに使用されているアルミニウムを樹脂に変更することで重量を50%まで軽減できる。同社は更なる軽量化を狙った新製品の開発を行っている。壁面中央部分に樹脂を形成することでエアフィルターハウジングとシリンダーヘッドカバーが約10%の軽量化が可能となる。吹き抜けラインに油分離システムを集中したことでオイルの消費を抑えることができた。同社により新たに開発された圧力調整オイルミスト分離機はさらなるオイル消費量の削減をもたらした。また、エンジン回転が安定することで燃費とCO2の削減に貢献できた。

制御式クーラントポンプ
-冷却サーキット内の制御式ポンプを利用することで燃費とCO2を削減することができる。必要に応じて流量をコントロールすることにより、エンジンの急速加熱及び冷却に影響が与えられる。同社ではこうした要請に対応するため現在新型ポンプを開発中。

BlueDrain(R)システム
-最新のディーゼルエンジンの噴射システム対策として自動的に分離水分を除去する機能は、燃料フィルターの重要な要件となっているが、同社ではBlueDrain(R)システムを水分含有量が高いディーゼル燃料対策として開発した。このシステムは吸・排両サイドに設置できる。この自動水処理システムは一体型水浄化装置で、どのような運転状況にも対応が可能。また、マーレ・フィルター・モジュール製品のひとつとして単独で入手できる。

設備投資

設備投資額
(単位:百万ユーロ) 2008年度 2007年度 2006年度
ピストン システム 122 78 75
シリンダー部品 104 69 47
バルブ トレイン システム 45 44 27
エアマネージメントシステム 47 37 35
リキッドマネージメントシステム 36 33 42


セグメント別

<ピストン システム>
-2008年度の固定資産設備投資費用は、顧客側の新プロジェクト案件に数多く対応したため前年度に比べて大幅に増額し122百万ユーロ。
-欧州ではポーランドのピストン工場を増設、イタリアではピストン生産を拡大した。トルコでは合弁企業MAHLE Mopisan Izmir 社とMAHLE Mopisan Konya社の2社の株式の大半を2008年1月に取得。
-北米と南米では稼働中の全生産工場の最適化を目的とした設備投資を実施。
-中国と日本などアジア地域では商用車向けピストンの生産能力拡大を推進。

<シリンダー部品>
-ベアリングとピストンリング製品事業の生産ラインの一部を南北米の生産効率の良い工場へのシフトないしは生産設備の刷新など、新規に取得した事業の再構築に大規模威な投資を行なった。
-アジアでは、中国市場向けと米国に輸出されるコネクティングロッドの最終仕上げラインの建設工事が進行中。
-北米では、シリンダーライナー需要が旺盛でこれに対応するためメキシコの生産ラインを整備した。さらに、生産設備の合理化投資も前年に引き続き実施。

<バルブトレーンシステム>
-2008年度は顧客のプロジェクト対応で生産能力拡張と技術的調整を中心に投資。
-焼結製品事業では、ポンプローターの加工処理能力拡張、ターボ部品生産の拡大、バルブのプレス加工処理能力増強などに集中的に投資。
-カムシャフト事業が運営するインドの工場では、鋳造・加工能力を増強。 新製品立ち上げと精密焼結カムローブから鍛造カムローブへのシフトが必要とされたので、複合カムシャフトの生産能力も拡張した。
-上半期に需要が増えたため、バルブ事業部門はほぼすべての工場で生産能力の拡張に努めた。主たる投資対象となったのは、バルブ生産ラインの新設、原材料加工ラインの拡張、新たな機械加工ラインの設営など。

<エアマネジメントシステム>
-アマネージメントシステム部門は前年比で5.5%のアップとなる投資を2008年度に実施。主な対象地域は引き続きアジアで、中でも特に新規製品を立ち上げた中国の生産工場とその関連施設に投資が行われた。
-北米ではメキシコを中心として投資を実施。こちらの地域では顧客側の新規プロジェクトに対する投資とは別に、北米地域の生産ネットワークを見直し最適化を図る目的でMonterrey工場が投資対象。一方、西欧地域が不況に見舞われているという環境を鑑み欧州での投資は低い水準に抑えられた。

<リキッドマネジメントシステム>
-この部門の2008年度の設備投資は前年度比較で増え売上比率で5.8%。
-欧州地域での最大の投資対象はオイルフィルターモジュール、オイルパン、厳格な環境基準に対応したディーゼルエンジン用燃料フィルターなどの生産立ち上げ。 また、物流の最適化に関する大きなプロジェクトの展開を目的とした初期投資も行った。
-北米では活性炭キャニスターの生産立ち上げ対策として、アジアではオイルフィルターモジュールとエレメントの生産拡張及び生産の現地化などを対象とした投資を実施。