分析レポート EV/HV駆動モーター(日本市場編)

主要サプライヤーの事業動向

2021/09/02

関連企業

日本電産 トヨタ内製 デンソー
アイシン BluE Nexus 日産内製
ジヤトコ ホンダ内製 日立Astemo
日立Astemo電動機システムズ 東芝 TOP
明電舎 安川電機 澤藤電機
三菱電機 シンフォニアテクノロジー

EV駆動モーター/ハイブリッド発電モーター (欧州市場編)をみる



はじめに

  このレポートでは車両が走行可能な48V、10 kW以上のモーターを扱う。これらモーターはハイブリッドシステムのなかで発電も行うことが多くモーター・ジェネレーターとも呼ばれる。同様の構成と出力をもち発電専用のものが主にシリーズハイブリッドシステムに採用されており、この発電機(発電モーターと呼ぶOEMもある)も扱う。ベルト駆動で補器類とともにエンジン前部に搭載するオルタネーター/スターター応用製品は含んでいない。



Ⅰ.主要駆動モーター企業の世界展開(全体動向)

1 国内:
  HEV/BEVの主要メーカーは内製あるいは系列メーカー(アイシン、デンソー、日立Astemo電動機システムズ)が固定化している。また、国内で急進的なEV化や超小型など新しいカテゴリーの市場形成はまだ見込めない。そこで、モーターメーカーは海外への展開にビジネスチャンスを見出す必要がある。現在相応の数量ベースで国内流動している製品は顧客OEM固有のHEVシステムに特化しており、これを汎用性の高いラインナップに転換してゆく戦略が求められる。

2 欧米:
  日立がGMのハイブリッド、三菱電機の48VモーターがDaimler、アイシンがStellantis - PSA、東芝がFordに採用されてきており、各社独自の技術力が買われたものと思われる。しかし全面展開に至らず数量的な伸びに欠け、欧米サプライヤーを脅かすには至っていない。欧米OEMにおいても電動化の主戦場は中国と考えられ、今後の対応をどの地域で行うか日系モーターメーカーの戦略が問われる。

3 中国:
・海外メガサプライヤー: そろって設計・製造拠点を持ち、昨年・本年量産立ち上がりの製品も多数を数える。その製品は標準化・一体化(eアクスル形態が多い)されており、それら既存製品の生産拡大のため日本での拡販も狙っている。サプライヤーの例にはBosch、BorgWarner、DANA(モーターは英Ashwoods、伊SME、加TM4を使用)、Continental、Mahle、Magna、Schaeffler、Valeo、ZFがある。
・日系モーターサプライヤー: 中国進出による大規模ビジネスで先行するのは日本電産で、eアクスルをフルラインアップし急成長を見込む。eアクスルの生産は他地域に先がけ中国3工場を先行させており、GACに続きGeelyなど現地での採用も拡大している。また超小型カテゴリーも今後成長の主戦場として重視するが、小型低コストを得意とする日本電産の競争力が有利にはたらくものと考えられる。
 他の日系各社も、戦略説明や長期計画のなかでEV市場急成長への対応を成長の重点においているが、そのフォーカスする地域については日本電産のように明瞭ではない。日系OEMの現地車には国内と同じサプライヤーが対応していることが多いが、系列の枠外では上記日本電産の他には安川電機のChery(奇瑞)との合弁が目を引く程度である。明電舎の中国工場は年産能力17万個で本年立ち上がる予定である。



Ⅱ.主要駆動モーター企業と納入先OEMマトリックス

他社製造のOEM車は除く
生産会社 トヨタ 日産 ホンダ マツダ 三菱
自動車
SUBARU スズキ ダイハツ 日野 Daimler PSA GM Ford GAC Geely Chery
トヨタ内製
日産内製
ホンダ内製
デンソー 〇※
アイシン
ジヤトコ トランスミッション部のみ
日立Astemo
日立Astemo電動機システムズ
TOP
東芝
明電舎
安川電機 (〇)
澤藤電機
日本電産
三菱電機

※ステーターコアを供給    ( )は過去採用例



Ⅲ.主要駆動モーター企業別 売上と戦略

トヨタグループ

【デンソー】

▶ 最近の動向

資本金 単独 1,875億円 総売上5兆1535億円(うち自動車部門売上4兆9739億円)-2020年3月期

【アイシン精機 2021年4月より株式会社アイシン(アイシン・エイ・ダブリュ統合に伴う)】

▶ 最近の動向

資本金 単独450億円 総売上3兆7846億円(うちドライブトレイン関連売上1兆6863億円)
-2020年3月期
関係会社数(連結子会社):国内79 海外136(うち中国37)国内HEVトランスミッション製造拠点 西尾・小川工場

【BluE Nexus】
資本金 5000万円 株主:デンソー/アイシン/トヨタの45/45/10%
モーターの開発・製造は行わなずアイシンに委託する。

[企業動向]

90%以上を自動車関連売上とする巨大な企業グループであり、その中で駆動モーターの存在は大きくない。しかしその技術はトヨタ・ハイブリッドとともに業界をリードしてきた存在で、量産規模も年間100万基を超えるグループ内需要をまかなってきた。トヨタ自動車への売上依存度はデンソー50%、アイシン60%程度で、両社とも近年その比率はさらに微増している。駆動モーターに関連してはHEV用を含むモーター/トランスミッションのサプライヤーはアイシンに集中する。デンソーはグループ向け駆動用モーターの製造を担当しないが、モーターステーターの開発を長年トヨタと共同で行ってきた経緯からステーターの製造を分担している。BluE Nexusはeアクスルの開発、適合、販売を行い、モーター部分の製造はアイシンに委託し量産開始は2020年である。

これまではHEV化で先行するトヨタ自動車の需要をビジネスの核としてきた上記各社だが、グローバルなeアクスルの需要への対応と強力な海外サプライヤーに対する競争力強化のため、BluE Nexusが設立された。一方アイシングループは、これとは別に従来から多数抱えるFR、FF用トランスミッション応用製品(1モーター、2モーター)の維持・拡販と48Vレンジへの参入も戦略として検討している。1モーター品はStellantis-PSAグループへの採用を獲得し、トヨタ以外への販路拡大も進められている。

[製品の特徴]
トヨタハイブリッドシステムTHS-Ⅱ用および4WD HEVの後輪駆動用モーターを主力とし、技術的にもグループ内の開発力を結集したトヨタ独自の製品である。後者は駆動モーターとしては珍しい誘導モーターを使用する。ただし、これら製品はトヨタ以外への販路が限られるため両社とも独自技術の開発を進めている:

  • デンソー:社内にモーター先行開発部やマテリアル研究部をもち、THS-Ⅱより低電圧域での使用を前提に、ネオジムを用いない鉄系磁石材料(フェライトはVVTモーターなどで量産済み、新たに鉄‐ニッケル系材料を開発中)や、ローターの永久磁石を電磁石に変えステーターから非接触励磁する同期モーター(誘導モーターではない)などの開発成果が発表されている。
  • アイシン:BluE Nexusのe-Axle向けに、50~300 kWへのモーターラインナップ拡充を進めている。また、産学官共同による超電(伝)導モーターの開発を進めている。必要な低温技術は欧州でトラックが車載するLNGや液体水素によって進んでおり、このモーターも実用化の期待が高まっている。

 

ジヤトコ

▶ 最近の動向

資本金 299億円 総売上6,492億円(すべて自動車部門) -2020年3月期
関係会社数:国内3 海外9(うち中国2) 国内トランスミッション製造拠点 静岡・富士・富士宮・掛川・京都・南丹各市

[企業動向]

日産自動車および三菱自動車が株式の90%を所有(残10%はスズキ)し、取引先も概ねその3社とルノー日産関係会社のみである。

日産の駆動モーターは日産内製であり、ジヤトコはHEV用トランスミッションのみを製造している。これはATからトルクコンバーターを取り去りその位置にモーターを搭載する応用製品である。
新たにBEVへの展開を目論み100 kW級の2種のeアクスルを開発中で、コンセプトレベルの製品を展示会などで積極的にアピールしている。ただし市販化の具体的予定はまだない模様である。

 

日立 / ホンダグループ

【日立Astemo】

▶ 最近の動向

資本金 515億円 株主:日立製作所/ホンダ 66.6/33.4%
総売上8,116億円(すべて自動車部門)-旧 日立オートモティブシステムズ2020年3月期

日立オートモティブシステムズ、ケーヒン、ショーワ、日信工業統合により旧各社の拠点・関連企業約140か所を継承・今後統合見込み。xEV駆動系は佐和工場。

【日立Astemo電動機システムズ】

資本金 49.5億円+資本準備金49.5億円 株主:日立Astemo/ホンダ 51/49%
総売上70.7億円(すべて自動車部門) -2020年
関係会社数:米国 1、中国1; 日立汽車馬達系統(広州)有限公司
国内モーター製造拠点 本社(日立Astemo本店内)

日立製作所および日立オートモティブシステムズは、トヨタ、日産、マツダなどに電動4WDモーターを中心として供給してきた。また、ハイブリッド車用駆動モーターとしては米国GM、中国GM(SAIC)、Ford、国内ではいすゞ(エルフハイブリッド)に供給してきたが、各社とも一部の電動車にとどまり大きなビジネスとはならなかった。

日立およびホンダ系部品メーカーの統合は、モーターに関しては
2017年7月 日立オートモティブ電動機システムズがホンダ、日立グループの駆動モーター開発能力を集中する狙いで設立され、2019年には拠点内の開発・試験センター(事業費100億円、従業員140名)が稼働を始めた。この動きに引き続き2021年には日立Astemoが設立され、1月に発表された事業戦略によれば、ADASおよびシャシー統合制御とともにxEV駆動システムを四輪部門における3大優先投資項目とすることが謳われている。

[製品の特徴]

ホンダは、NSX、レジェンド以外のHEVシステムを2モーターシステムに統一した。この2モーター(1つは発電機)は体格がやや異なるものの類似設計で、非常に効率のよいラインナップとなっている。さらに、日立Astemoの事業戦略によれば、インバーターやソフトウェアとの統合によって同社の強み(分野の広い日立・ホンダグループの技術)を織り込んだ製品となる。

 

TOP

資本金 2700万円 総売上113億円(うち自動車部門 不明) -2019年3月期
関係会社数:国内1 海外0(うち中国0) 国内モーター製造拠点 本社(福井県越前市)

[企業動向]

限定販売されたプラグインステラ(EV)以来SUBARUの駆動モーターに深く関わってきたメーカーで、現在はSUBARU独自のハイブリッドシステム e-BOXER向けモーターを供給する(米国向けのPHEV版XVはトヨタシステムである)。その他、民生用モーターも製造しているが、5~10 kW範囲と小型である。TOPへのインタビューでは「当社のニッチな領域を探しモーターメーカーとして存続する」戦略との説明を受けた。SUBARU向けより大型のモーターや中国向けeアクスルなどは手掛けず、小型産業車両や構内車(AGV)用の需要に注目している。

[製品の特徴]

SUBARU向けは118Vシステム用であり駆動力が限られるが、e-BOXERではその体格の小ささをフルにメリットとして活用している。ただし今後の本格的EVには小さすぎること、また企業規模から見て大量生産ができないことから、自動車向けにはモーター構成品やステアリングなど補機モーターの分野で製品開発を進めるものとみられる。

 

東芝

【東芝インフラシステムズ】

資本金 100億円 株主:東芝 100% 総売上7,350億円 -2019年度 インフラシステムソリューションズ連結
関連会社数:国内 20 海外なし
国内製造拠点3 府中、川崎各市および三重県朝日町 US Ford向けは東芝100%所有の別会社(東芝インターナショナル米国)で生産

【東芝産業機器システム】東芝インフラシステムズの上記関連会社20社の1社。HEV用モーター製造。
資本金 28.7億円 株主:東芝 100% 単独売上 不明

[企業動向]

インフラシステムソリューション(社会インフラ事業領域)のなかで駆動モーターの存在は小さく、乗用車ではFordの数車種に供給してきた程度である。しかしハイブリッドの草分けである大型バス用日野HIMRのモーターを1991年以来担当し(2016年に中止)、乗用車に先駆けてハイブリッド車の技術をけん引してきた。そのモーターは鉄道用で実績を積んだ誘導機で優秀であったが、後発の乗用車ハイブリッドで永久磁石同期モーターが効率や軽量化を飛躍的に高めるに伴い、日野向けもそちらに転換した。現在は日産のシリーズ・ハイブリッド e-Power用の大型発電機を供給しており、モデル増加に伴いビジネスは拡大している。また、Ford向けは発電機に加え駆動モーターも供給する。これらは東芝グループ既存の生産設備と実績ある設計を利用した製品で、市場で高い信頼性を示している(出荷開始以来2020年まで不良ゼロを維持 - 東芝調べ)。

[製品の特徴]

モーター最高回転数は徐々に高められており、e-Power初出の日産ノートでは10,000rpmであったものが最新のFord向け駆動モーターでは15,500rpmとなっている。また、(株)東芝と東芝マテリアル(株)は共同でネオジムを用いないサマリウムコバルト磁石でネオジムを凌駕する磁力と耐熱性を実現しており(商品名トスレックス®)、こうしたグループ内技術の応用が東芝の強みである。

日野HIMRと同様に鉄道用でも永久磁石同期モーターを供給するが、価格などの面で依然市場に食い込めないため、主流である誘導機の改良も進めている。ステーター構成品の磁気特性を向上することで誘導機の効率を永久磁石同期機並みに高められるとの技術発表を2020年末に行っており、自動車用モーターへの応用も可能とされる。

 

明電舎

資本金 171億円 総売上2,557億円(うち産業システム部門売上658億円)-2020年3月期
関係会社数:国内24 海外21(うち中国4) 国内モーター製造拠点 名古屋事業所、甲府明電舎

[企業動向]

明電舎の主要事業は過半数を占める社会インフラシステムであり、産業システムは売上の1/4である。その中には各種産業用電動力応用製品、通信機器、物流製品、モビリティを含み、さらにモビリティ製品はFEVと提携する自動車試験システム及びEVモーター・インバーターに分かれるため、モーターは売上面では小さい存在である。EV用モーター、インバーターは2019年、名古屋事業所と甲府明電舎(明電舎100%)にラインを新設し、好調なPHEVコンポーネント生産を受け能力を倍増した。詳細は次の通りである:

  • 名古屋事業所;インバーター一体型モーター(新製品)ライン新設(年産17万個)
  • 甲府明電舎; モーター、ジェネレーター建屋増設(年産20万→37万個に拡大)。

新型コロナ影響でEVビジネスは停滞しているものの、明電舎初となるモーターの中国生産は予定通り年産17万個の能力で2021年度に生産開始予定である。加えて名古屋第二ラインも2021年度中に新設(名古屋の総生産能力は34万個/年)され、モーター生産能力は大きく増強される。

[製品の特徴]

ここ数年、展示会などでアピールされているインバーター・モーター一体システム(写真)は、インバーターに次世代パワーデバイスを用いることでさらにコンパクト化される。モーターも丸から角線への変更等で小型化と効率改善が図られ、水冷により出力 100 kW、最高回転数 12,000rpmとする。

永久磁石にかえ、巻線を電磁石として磁界を形成する同期モーターも開発中である。ローター内の巻線へはブラシとスリップリングを介し直流で給電し、磁力を可変とすることで高回転での効率を向上する。2020年時点ではまだ実機でなく机上解析によるメリット確認の段階である。

 

安川電機

資本金 306億円 総売上4,110億円(うちその他-EVモータドライブシステム等-売上228億円)-2020年2月期
関係会社数:国内13 海外42(うち中国 6) 国内モーター製造拠点 八幡東事業所

[企業動向]

自動車用の駆動モーターには実績がなかったが、一時マツダと共同開発を行い、低/高速で巻線数を切り替える画期的なモーターを完成し自動車業界への参入を画策した。しかし搭載モデル DEMIO EVが限定販売にとどまったため、現在は国内で駆動モーターのビジネスをもたない。2019年度からはモーター生産機能を安川モートルから生産機器を扱うモーションコントロール事業セグメント内に移し、八幡東事業所での生産とした。また中国Chery(奇瑞)との合弁が開始され中国内のEVビジネス拡大に備えており、すでにChery車への採用展開が始まっている。一方、事業計画では車載モーターについては一切触れられていない。

[製品の特徴]

産業用、ロボット用ACサーボモーターでは世界シェア一位を誇るが、自動車用駆動モーターについてはここ数年、新しい提案が認められない。

 

澤藤電機

▶ 最近の動向

資本金 11億円 株主:日野自動車 30.29% デンソー 9.27% ホンダ 6.03% 他
総売上300億円(うち自動車向け電装品事業売上153億円)-2020年3月期
関係会社数:国内1 海外2(うち中国0) 国内モーター製造拠点 新田工場(日野自動車新田工場隣接)

[企業動向]

澤藤電機はオルタネーター/スターターのサプライヤーであるが、日野向けに大型商用車の駆動モーターを供給してきた。特に2016年に日野自動車から大型路線バスのハイブリッドモーターを受注し駆動モーターの供給を開始した。昨年はさらに日野小型・大型ハイブリッドトラックの駆動モーターを受注、数量が拡大することからIoT機能を加えた最新の生産ラインを新田工場に新設した。今後、欧州・中国の商用車電動化を狙い、事業の核としたい考えを示している。

[製品の特徴]

ハイブリッドトラック/バス用モーターは2種類で、小型が35 kW、大型が90 kW(写真)である。トラックとバス用はほぼ同一で油冷されるのも同じである。また、エンジンとトランスミッションを取り付けられるフランジをモーターケース一体で持っており、その意味からも日野HEV車に特化した製品となっている。

 

三菱重工業

資本金 2656億円 総売上4兆413億円(うち その他売上752億円)-2020年3月期
関係会社数:国内72(連結) 海外 163(連結)(うち中国9 - 自動車関連製造のみ)

[企業動向]

発電プラント、航空機、船舶などエネルギー応用製品も超大型が多く、自動車関連エネルギー製品はエンジン過給機(三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社)とエアコンユニット(三菱重工サーマルシステムズ株式会社)である。駆動モーターは子会社 三菱ロジスネクストの電動フォークリフト用があるが、高速走行しないので24~80V程度のものである。自動車との接点としては、ふそうキャンター・エコハイブリッド用走行モーターを三菱ふそうトラック・バスと共同開発し市場投入した実績がある。実質的な後継車 eキャンターの駆動モーターはBorgWarner製になった。

 

三菱電機

▶ 最近の動向

資本金 1758億円 総売上4兆4625億円(うち産業メカトロニクス部門売上1兆3494億円)-2020年3月期
関係会社数:国内117 海外 100社以上(うち中国29) 国内モーター製造拠点 姫路製作所

[企業動向]

2019年11月の経営戦略説明によれば、産業メカトロニクス部門の成長取り組みはチェコ、インドでの自動車機器の新工場稼働(予定)で、このうちチェコでは電動パワートレインを含むとしている。2021年のMITSUBISHI ELECTRIC AUTOMOTIVE CZECHのホームページには 48V ISGシステム用モーターが生産品目として掲げられている。

2020年11月の経営戦略説明では「研究開発」や「事業モデルの変革」のパートで自動車機器はADASのみに言及されており、高出力駆動モーターへの進出の兆しは認められない。

[製品の特徴]

自動車向け電動機はオルタネーター、スターター、パワーステアリングモーターなど小型低電圧のものに限られる。12Vおよび24V、ベルト駆動のオルタネーター応用製品(スタータージェネレータ)があるが通常走行できる出力ではなく、駆動モーターと呼べない。

一方、Daimler向けで上市された48V ISGシステム用モータ(16 kW、写真)はエンジンと変速機の間に搭載されており、通常のベルト駆動でなくクランク軸に直結されている。この方式では伝達可能トルクや回生エネルギーの利用率が高いが、エンジン最高回転数まで連れ回るため誘起電圧(逆起電力)損失が大きい。これを緩和するためステーターを集中巻としている。また、多極・多スロットとして(集中巻とあわせ)コイルのスペースを縮小している。

駆動モーターに関する新技術の研究開発にも注力しており、前進用途を優先した設計の非対称ローターと世界最高レベルの出力密度(23 kW/L)をもつ製品を準備中であるが製品化は2020年度以降としている。

 

ミツバ

▶ 最近の動向

資本金 99億円 総売上3,042億円(うち輸送機器関連 2874億円)-2020年3月期
関係会社数:国内17 海外32(うち中国7) 国内製造拠点 駆動モーター:赤城工場

12V小型モーターを用いた電装品のメーカーである。最近の事業説明会など、今後のビジョンの発表のなかにEV用駆動モーターは含まれていない。ホンダレジェンドの電動4WD用モーター(マークラインズ分類:e-4WD)を納入している。駆動モーターはカート程度の小車両向けに数Kw程度のものがある。

 

日本電産

▶ 最近の動向

資本金 878億円 総売上1兆5348億円(うち自動車向け売上3,332億円)-2020年3月期
関係会社数:主要グループ企業 国内 11 海外 11(内 中国 1)
製品別主要連結子会社 (下表追加)

主要な製品の内容 主要な会社
精密小型モータ HDD用モータ 日本電産(株)、タイ日本電産(株)、フィリピン日本電産(株)、日本電産(香港)有限公司、シンガポール日本電産(株)
その他小型モータ 日本電産(株)、日本電産サンキョー(株)、日本電産(香港)有限公司、日本電産(東莞)有限公司、日本電産コパル(株)、日電産(上海)国際貿易有限公司、Chaun-Choung Technology Corp
車載 日本電産(株)、日本電産トーソク(株)、日本電産トーソク・ベトナム会社、ドイツ日本電産モーターズアンドアクチュエーターズ(有)、日本電産GPM(有)、日本電産自動車モータ(浙江)有限公司、日本電産サンキョー(株)、日電産(上海)国際貿易有限公司、日本電産(大連)有限公司、日本電産モビリティ(株)
家電・商業・産業用 日本電産モータ(株)、日本電産ASI(株)、日本電産テクノモータ(株)、日本電産シバウラ(浙江)有限公司、日本電産ルロア・ソマーホールディング社、日本電産コントロール・テクニクス社、エンブラコ・ブラジル社
機器装置 日本電産サンキョー(株)、日本電産シンポ(株)、日本電産リード(株)、日本電産コパル(株)
電子・光学部品 日本電産コパル(株)、日本電産サンキョー(株)
その他 日本電産グローバルサービス(株)

連結子会社世界総数 332
駆動モーター製造拠点 中国3か所(建設中含む) フランス、セルビア、ポーランド、メキシコで計画中

[企業動向]

現在、国内における駆動モーター/eアクスルの納入はないが、中国でのビジネス獲得を機に、eアクスルのフルライン化に踏み切った:

ピーク出力 150 kW :GAC, Geely向け量産中(写真)D/E セグメント乗用車向け
ピーク出力 100 kW :2020年度量産開始 B/C セグメント乗用車向け
ピーク出力 70 kW :2021年量産予定 A/B セグメント乗用車向け
ピーク出力 50 kW :2022年量産予定 軽/A セグメント乗用車向け
ピーク出力 200 kW :2023年量産予定 D/E セグメント乗用車向け


日本電産は、この標準化とグループ内製率の高さから画期的な低価格を実現したと見られ、多数の引き合いを受けている。これを背景として世界3極(中国、欧州、北米)で生産や開発拠点に巨額の投資を行うとし、完了すれば年産能力は1000万台に達する。各地での駆動モーター(主にeアクスル)生産体制を、発表に基づきまとめる:

中国
  浙江(60 + 40万台 稼働中)、大連(360万台 2021年完成)、
  広州 Guangzhou Nidec Auto Drive System(GACグループ部品メーカーとの合弁)

欧州  セルビア(20~30万台 2023年目途)、ポーランド、フランス(Stellantis - PSAとの合弁)

北米  メキシコ

日本電産ではeアクスルを成長を担う基幹製品と位置づけており、2025年に250万台、2030年に1000万台生産をターゲットに今後も積極的な投資が予想される。また、内製率のいっそうの向上も図り、コスト・納期・調達リスクの改善を進める。

[製品の特徴]

日本電産は小型モーターを源流とする技術をボトムアップしてeアクスルに進出しており、製品の規格化と系列化において他のメーカーより急進的に織り込んでいる。また、同じ理由で小型軽量低コスト技術に長けていることもアピール点としている。駆動モーターは、基本的にeアクスルとして供給し、付加価値と売価の高い形態に絞り、そのためモーター周辺の技術力拡充にも注力している:

  • 熱マネジメント技術領域でサンデンホールディングスとの共同開発体制
  • 三菱重工工作機械の株式取得と工作機械事業の付加(本年5月を目途に事業譲受)

モーターおよびギアボックスにおいては高周波ノイズが課題であり、上記工作機械事業において歯形に関するノウハウを取得すれば商品性の高いeアクスル設計ができる。また、モーター冷却は油冷に統一しており、熱マネジメントの知見からその正当性を強化できる。

 

シンフォニアテクノロジー

資本金 102億円 総売上897億円(うちモーション機器348億円。自動車向けはほとんどない)-2019年3月期
関係会社数:国内6 海外10(うち中国5) 国内モーター製造拠点 鳥羽工場

[企業動向]

民生用各種アクチュエーターモーターや産業用電動車両のメーカーで、乗用車向けビジネスは基本的にない。中期経営計画 SINFONIA ABC 2020のなかでも「自動車の需要拡大と小型モビリティの商業化」については「中国等の低迷と小型モビリティの商業化遅れ」から、電装品とクラッチに取り組む旨、見直されており、その後の各種IR発表においても自動車関連は「試験システム」以外見当たらない。 5 kWのインホイールモーター(写真)をタイ生産の軽便車 FOMM(全長2.5m,車重460 kg)向けに供給しており、当初はバンコク付近にある自社工場で1万個/年の生産を想定していたが、FOMMは2021年1月までに400台程度を生産するに留まっており、実際のモーター生産がどのように行われたかは不明である。

[製品の特徴]

出典:シンフォニアテクノロジー

FOMMには出力 5 kW のものを左右前輪に1基ずつ搭載する。水に浮き水面移動できる車両であるため、完全水密構造になっている。

 

NTN

▶ 最近の動向

資本金 543億円 総売上6515億円 -2020年3月期
駆動モーターは製造していない。

[企業動向]

ベアリングや電動アクチュエーター大手 NTNは、軸受・ドライブシャフトの応用製品として48Vモーター/発電機を内蔵したホイールハブ(eHUB)やインホイールモーターを提案しており、2019年5月発表の中期経営計画「DRIVE NTN100」によれば「新たな領域への展開」項目のひとつとして挙げられていた。このうちインホイールモーターは中国の新興自動車メーカーFSATとライセンス契約を締結した(2018年4月)。内容は技術支援によるライセンス料であり、生産や納入については含まない(この事業は結局スタートしていない)。最新の中期経営計画(2021年2月発表の中期経営計画DRIVE NTN100 Phase 2)からは消えている。同計画のなかでeHUBについては2024年以降の事業化が謳われているが、具体的マイルストーンはない。この製品はMHEVシステムにアドオンして回生と動力補助を行うものであるが別途48V駆動モーターが必要である。

[製品の特徴]

インホイールモーターは 35 kWで1.3トンの乗用車の左右前輪に計2基搭載されるが、写真で見る限りホイールから車体内側に相当はみ出しており路面からの打撃リスクがあること、モーター重量も例えばコアレスモータ(後述)から出ているような新しい提案がないこと、などから見て特に抜きんでた技術的特長はなさそうである。

 

ジェイテクト

▶ 最近の動向

資本金 456億円 総売上1兆4189億円(うち小型モータなど駆動製品 1603億円)-2020年3月期
駆動モーターは製造していない

光洋精工ブランドのベアリングを擁するジェイテクトは、他のベアリングメーカー同様電動パワートレイン対応を行っているが、あわせて駆動モーターを含むeアクスル(写真)の開発・試作を行い展示会などでアピールしている。モーター軸、カウンター軸、デフ軸の3軸構成でインバーターも搭載する。ジェイテクトらしくデフ内にトルクコントロールデバイス(クラッチや差動制限機構など)を内蔵できると謳う。ただしモーターは80 kWまでとしており(写真の3軸式は50 kWまで)、小型車を守備範囲に想定している。

2019年人とくるまのテクノロジー展にて執筆者撮影

 

デルタ電子 DELTA ELECTRONICS(JAPAN)

資本金 2.8億円 日本年商 192億円 -2019年実績
関係会社数:台湾 デルタグループの日本法人。グループ企業は世界9か国(含台湾、日本)に12社
国内に製造拠点はない。

パワーエレクトロニクス、産業用自動化装置、充電/蓄電デバイスなどを業容とする台湾企業で、自動車との関連は地上充電器やインバーターなどにある。オートメーション用をベースに80~150 kWのEV用駆動モーターを「開発した」とするが、商品化へのマイルストーンなど具体的な動きは認められない。

 

コアレスモータ

資本金 2.3億円 株式非公開 2017年2月設立 駆動モーターは製造していない。

モーター種類としてのコアレスモーターは、巻線を金属コアに巻き付けるのでなく銅板などに巻き樹脂で固めてしまうものである。軽く、コアを廃止した部分の内部空間が減速機などに利用できるメリットはあるが大型機は作りづらく、コアレスモータ(企業)の現在のラインアップで 1 kWを超えるものはない。今後はEV事業を視野に入れ、インホイールモーターの開発も進めている(2020年1月のオートモーティブワールドにて)と述べられているが、乗用車でなく自転車や車椅子のホイール内に収めるものである。

 

ピューズ

一時、電動バイクおよびそのモーターを生産していたが、現在は治具型など生産設備を廃却しモーター生産から撤退しているが、開発受託やコンサルティングを継続する。

 



Ⅳ.モーター技術の動向

現状

駆動モーターはローターに永久磁石を内蔵する三相交流同期式で、ネオジム鉄ボロン(Nd-Fe-B)磁石を使用するものがデファクト・スタンダードである。Teslaやトヨタ 4WDハイブリッドの後輪駆動モーターなど、誘導モーター仕様例も一部にあったがごく少数である。また、市販車での使用電圧は概ね次表に示すグループを形成している:

電圧, V 電圧値の特徴と採用車例 メリット
(12) 軽と日産、スズキのマイクロ/マイルドHEVで例有り 12Vオルタ/スターター応用製品で安価。退避程度のEV走行ができる
(24) マツダ 2ℓMハイブリッドとSKYACTIV-Xで採用 低速でのエンジン効率低下を補うが、EV走行不可能(退避走行は可能)
48 電気安全規定の適用外で最高の電圧。10 kW出せる。 低コスト。比較的安全。通常MHEVだがBEVも例あり(nanoFlowcell)
100 小型モーター/バッテリー使用可能。SUBARU、スズキ 実用面でのコスト対効果が高い。モード燃費は250V以上よりやや劣る
250 - 450 車載バッテリーの電圧をそのまま適用 昇圧回路が不要。
650 現行量産モーターの最高電圧。トヨタ、ホンダが採用 高電圧による高い出力密度と効率が得られる(国産車における最大値)
≧800 相間絶縁紙を自動組立する技術が必要(高電圧化 参照) いっそうの高電圧化で電流低減、出力増大。欧州市販車で例有

( )付の電圧レンジは本レポートでは扱っていない。

出力密度向上や電流発熱損失低減などの目的で800V以上への昇圧が今後進むが、大量普及のためには高電圧の絶縁に必要な相間絶縁紙(写真で銅線の束を仕切る白紙が相間絶縁紙)の組み込みを自動化する等、自動車規模の量産技術を開発する必要がある―鉄道用は手組みで 1100 Vに対応している。

2020年オートモーティブワールドにて執筆者撮影

 

製造工程のバリエーション

ローター・ステーターコア:電磁鋼板をカシメコーキング、溶接または接着で積層するものでがある。鋼板打抜き時のバリ・反り特性が一か所に積層されることを防ぐため、一定枚数を積層したブロックを、さらに回転方向にずらしながら積み上げる。この際、電磁的トルクムラ(コギング)を緩和するスキュー角を与えることができる。電磁鋼板に換え、磁性鉄粉と樹脂を混合し加圧成形・焼鈍する圧粉コアを提案する材料/部品メーカーもある。

巻線:丸断面のエナメル被覆線を巻線機でコアに巻き付けるものが主流である。複雑形状のコアは巻線しづらい部分が生じるため、コア形状を分割するものも多い。一方、角断面(隙間なく巻線でき占積率が向上)・ヘアピン形状の短いコイル線をステーターに多数差し込み、突き出た側を2本ずつ溶接接合→被覆することで一連の巻線とする構造が2012年頃からトヨタ・ハイブリッド車で多量に採用されはじめた。

 

今後の技術動向

モーターの性能向上技術について、最近の発表例をトルク特性図の領域に分け列挙する。
モータートルクは基本的にアクセルペダル踏み代に応じて増減させるが、フルトルク特性は下図の各制御ゾーン①~➂の様にモーター制御システムで規定している。

  1. ① 定トルクゾーン
    発熱などを考慮し決めた最大電流でモーターを作動させる領域である。トルク向上にはステーター電流値の増加、電流による損失の低減、そしてモーター内の磁界強さを高める技術が有効である。
    • 冷却 最大電流は温度を考慮して設定されている。ステーター外周の水ジャケットに加えローター軸を中空とし冷却水を循環させる(Audi)など、冷却能力を高めることで出力が向上できる。
    • 巻線の熱発生 芯線断面積を増すことで抵抗発熱を抑えながら電流値が増加できる。占積率向上のため各社は丸断面から角断面に切り替えているが、さらに巻線の絶縁被膜に多孔質樹脂を採用し薄くする(ホンダ)方法などが考案されている。
    • 磁石 電流値が同じでも、磁界を強めればモータートルクは向上する。そのため磁石材料は現在最高水準にある希土類を使用している(後術 磁石材料開発の動向 参照)。
    • 鉄コア 磁界が切替ることでコア内を流れる渦電流に伴う発熱があり、回転数が上昇し切替り回数が増えると発熱も増加する。電磁鋼板ではできるだけ薄いものを積層すること、圧粉成形コアでは鉄粉粒子を微細化しさらに絶縁コーティング層で囲む組織構造とすることで渦電流は低減できるが、生産性(コスト)とのバランスで各材料・素材メーカーがさまざまな商品を市販している。
  2. ② 定出力(近似)ゾーン
    電圧値を固定すると誘導リアクタンス(交流の電気抵抗)が増加する分、電流値は減少する。その積、つまり出力は電気法則によれば一定であるが、ローターの磁石が磁界中で高速回転することで制御電圧に逆らう逆起電力が発生する。これを緩和するため制御された磁界弱め電流を印加するが、これが損失となり出力カーブは下にゆがむ。この損失を避けるためローターの磁石を高速で弱める技術がいくつか提案されている。
    • 磁石の形状を回転数によって変える(例えば安川電機 可変磁界ローター)
    • 磁石を永久磁石と電磁石で構成し、高速時には電磁石を電気的に切る(三菱電機 磁束可変ローター)
    • 磁石を電磁石のみとし、ブラシとスリップリングで給電し自在に磁界強さを変える(明電舎 巻線界磁形モーター)
    • 同じく電磁石による磁界を利用するが、ブラシを用いずローターへの給電をステーターからの励磁(非接触)で行う(デンソー 自励式巻線界磁型同期モーター)
    • 磁石材料自体に可変磁性をもたせる<注>(東芝マテリアル サマリウムコバルト磁石材料TS-28L, -32L)<注> 磁石を構成する多数のマイクロ磁区の方向を、外部磁界をかけることで揃えたりランダムにできる。磁石強さはマイクロ磁区のN-S方向の合算で、可変となる。
  3. ➂ 回転数制限ゾーン
    極めて高回転の領域では、上記損失と回転部分の機械負荷が甚だしくなり、限界点でモータートルクをカットする(現状は10,000~15,000rpm程度)。これは車速の制限につながるため、対策として次の2方向のアプローチがある:
    • 有段変速機と組合せ、モーター回転数を下げながら車速を向上してゆく(たとえばアイシン 2-Speed eAxle Offset Design)
    • 機械要素、特にベアリングの許容回転数を高める(各ベアリングメーカーから提案製品あり)。30,000rpmを許容するものもある。この場合、➁の対策も織り込む必要がある。

 

磁石材料開発の動向

駆動用モーターには現在最強の磁石が標準的に採用されており、将来動向はモーター性能向上でなく資源量との関連から代替材の開発提案が主となっている。

磁石主材料-希土類元素:Nd-Fe-B磁石に使用するネオジムは資源量が限られる高価な材料であり、コストが数分の一であるフェライトに代替したモーターも自動車に採用されている。フェライトは磁力が1/3であったが磁力を向上し、スポーク状配置(磁石面積を増加)あるいは多層円弧配置(リラクタンストルク=ローターの鉄部分がステーター磁力に引かれ発生するトルクを利用)も現れ、性能向上がすすんでいる。
フェライトほど安価ではないものの、ネオジムレスとし資源リスクを回避しつつ高性能を引き出せる磁石材料では、サマリウムコバルト磁石(例えば東芝 TS-34SSはEV駆動モーター用と謳われ、サンプル供給できる)や鉄-ニッケル磁石(デンソー モーター用に開発中)などが近年報告されている。

磁石添加材料-重希土類元素:Nd-Fe-B磁石は100℃程度の高温でも磁力が著しく低下するため、ジスプロシウムを添加し磁力の底上げをすることが標準的である。また、プラセオジム、テルビウム、イッテルビウムなど他の重希土類も同様の効果のあることが確認されている。しかし次表に示す様にいずれも資源量が乏しいため、この使用を削減あるいはゼロとする材料が輩出している(大同特殊鋼が2016年に世界初上市)。

地球の大陸性地殻における元素存在度(岩波 理化学辞典 第4版による)

元素名 記号 存在度 元素の用途
ケイ素 Si 28% 土の主成分元素
Fe 6% フェライト磁石の成分
ネオジム Nd 28 ppm ネオジム磁石の成分
ジスプロシウム Dy 3 ppm ネオジム磁石の磁力増大効果 
プラセオジム Pr 8 ppm ネオジム磁石の磁力増大効果 
テルビウム Tb 1 ppm ネオジム磁石の磁力増大効果 
イッテルビウム Yb 3 ppm ネオジム磁石の磁力増大効果 

地殻内での含有量。採掘の難易度は考慮していないため可採埋蔵量ではない。



Ⅴ.車両モデル別駆動モーターサプライヤー

地域 メーカー モデル モデルイヤー サプライヤー 部品名
日本 Toyota C+pod 2021 アイシン精機 (株) 駆動モーター
日本 Toyota MIRAI 2021 アイシン・エィ・ダブリュ (株) 駆動モーター
日本 Toyota Lexus UX250h (FF) 2019 トヨタ 駆動モーター(2.0L)(E-CVT)
日本 Toyota Lexus CT200h 2018 アイシン・エィ・ダブリュ (株) 駆動モーター(1.8L)(ECVT)
日本 Toyota Lexus ES 300h (FF) 2018 トヨタ 駆動モーター(2.5L)(ECVT)
日本 Toyota Lexus LC 500h (FR) 2018 トヨタ 駆動モーター(3.5L)(10E-CVT)
日本 Toyota Lexus LS 500h (FR) 2018 アイシン・エィ・ダブリュ (株) 駆動モーター(3.5L)(10E-CVT)
日本 Toyota Lexus NX300h Hybrid (AWD) 2018 トヨタ 駆動モーター(2.5L)(ECVT)
日本 Toyota Lexus NX300h Hybrid (FF) 2018 トヨタ 駆動モーター(2.5L)(ECVT)
日本 Toyota Alphard Hybrid 2016 トヨタ 駆動モーター
日本 Toyota Aqua 2016 トヨタ 駆動モーター
日本 Toyota Camry 2016 アイシン・エィ・ダブリュ (株) 駆動モーター
日本 Toyota Corolla Axio Hybrid 2016 トヨタ 駆動モーター
日本 Toyota Corolla Fielder Hybrid 2016 トヨタ 駆動モーター
日本 Toyota Crown Athlete Hybrid 2016 アイシン・エィ・ダブリュ (株) 駆動モーター
日本 Toyota Crown Hybrid Royal 2016 アイシン・エィ・ダブリュ (株) 駆動モーター
日本 Toyota Crown Hybrid Royal Saloon 2016 アイシン・エィ・ダブリュ (株) 駆動モーター
日本 Toyota Crown Majesta 2016 アイシン・エィ・ダブリュ (株) 駆動モーター
日本 Toyota Esquire Hybrid 2016 トヨタ 駆動モーター
日本 Toyota Estima Hybrid 2016 アイシン・エィ・ダブリュ (株) 駆動モーター
日本 Toyota Harrier Hybrid 2016 トヨタ 駆動モーター
日本 Toyota Lexus CT200h 2016 アイシン・エィ・ダブリュ (株) 駆動モーター
日本 Toyota Lexus CT200h 2016 トヨタ 駆動モーター
日本 Toyota Lexus GS300h 2016 アイシン・エィ・ダブリュ (株) 駆動モーター
日本 Toyota Lexus GS450h 2016 アイシン・エィ・ダブリュ (株) 駆動モーター
日本 Toyota Lexus HS250h 2016 トヨタ 駆動モーター
日本 Toyota Lexus IS300h 2016 アイシン・エィ・ダブリュ (株) 駆動モーター
日本 Toyota Lexus LS600h 2016 アイシン・エィ・ダブリュ (株) 駆動モーター
日本 Toyota Lexus LS600hL 2016 アイシン・エィ・ダブリュ (株) 駆動モーター
日本 Toyota Lexus NX300h 2016 トヨタ 駆動モーター
日本 Toyota Lexus RC300h 2016 アイシン・エィ・ダブリュ (株) 駆動モーター
日本 Toyota Lexus RX450h 2016 トヨタ 駆動モーター
日本 Toyota Noah Hybrid 2016 トヨタ 駆動モーター
日本 Toyota Prius 2016 トヨタ 駆動モーター
日本 Toyota Prius α 2016 トヨタ 駆動モーター
日本 Toyota SAI 2016 トヨタ 駆動モーター
日本 Toyota Sienta Hybrid 2016 トヨタ 駆動モーター
日本 Toyota Vellfire Hybrid 2016 トヨタ 駆動モーター
日本 Toyota Voxy Hybrid 2016 トヨタ 駆動モーター
日本 Toyota Aqua 2013 (株) デンソー 駆動モーター
日本 Toyota Aqua 2012 トヨタ 駆動モーター
日本 Toyota Camry Hybrid 2012 アイシン・エィ・ダブリュ (株) 駆動モーター
日本 Toyota Crown Hybrid 2012 アイシン・エィ・ダブリュ (株) 駆動モーター
日本 Toyota Dyna Hybrid (Hino "Dutro") 2012 (株) 東芝 駆動モーター
日本 Toyota Estima Hybrid 2012 トヨタ 駆動モーター
日本 Toyota FT-EV III 2012 トヨタ 駆動モーター
日本 Toyota Harrier Hybrid 2012 トヨタ 駆動モーター
日本 Toyota Lexus CT200h 2012 トヨタ 駆動モーター
日本 Toyota Lexus LS600h 2012 トヨタ 駆動モーター
日本 Toyota Lexus LS600hL 2012 トヨタ 駆動モーター
日本 Toyota Lexus RX450h 2012 トヨタ 駆動モーター
日本 Toyota Prius 2012 アイシン・エィ・ダブリュ (株) 駆動モーター
日本 Toyota Prius 2012 トヨタ 駆動モーター
日本 Toyota Prius PHV 2012 トヨタ 駆動モーター
日本 Toyota Prius α 2012 トヨタ 駆動モーター
日本 Toyota SAI 2012 トヨタ 駆動モーター
日本 Toyota Toyoace Hybrid (Hino "Dutro") 2012 (株) 東芝 駆動モーター
日本 Toyota Auto Body COMS 2012 (株)安川電機 駆動モーター
日本 Nissan Ariya 2021 日産 - 栃木工場 巻線界磁型モーター
日本 Nissan Cima Hybrid 2021 日産 - 横浜工場 駆動モーター(HM34)
日本 Nissan Fuga Hybrid 2021 日産 - 横浜工場 駆動モーター(HM34)
日本 Nissan Leaf 2021 日産 - 横浜工場 駆動モーター(EM57)
日本 Nissan Note e-POWER 2021 日産 - 横浜工場 駆動モーター(EM47)
日本 Nissan Serena e-POWER 2021 日産 - 横浜工場 駆動モーター(EM57)
日本 Nissan Skyline Hybrid 2021 日産 - 横浜工場 駆動モーター(HM34)
日本 Nissan X-Trail Hybrid 2021 日産 - 横浜工場 駆動モーター(RM31)
日本 Nissan Note e-POWER 2019 日産 - 横浜工場 駆動モーター(EM57)
日本 Nissan Leaf 2018 日産 駆動モーター
日本 Nissan Cima Hybrid 2016 日産 駆動モーター
日本 Nissan Fuga Hybrid 2016 日産 駆動モーター
日本 Nissan Leaf 2016 日産 駆動モーター
日本 Nissan Note e-POWER 2016 日産 駆動モーター(HR12DE EM57)
日本 Nissan Note e-POWER Medalist 2016 日産 駆動モーター(HR12DE EM57)
日本 Nissan Skyline 350GT Hybrid 2016 日産 駆動モーター
日本 Nissan X-Trail Hybrid 2016 日産 駆動モーター
日本 Nissan Cima Hybrid 2012 日産 駆動モーター
日本 Nissan Fuga Hybrid 2012 日産 駆動モーター
日本 Nissan Infiniti M Hybrid 2012 日産 駆動モーター
日本 Nissan Leaf 2012 日産 - 横浜工場 駆動モーター
日本 Honda Accord Hybrid 2016 ホンダ 駆動モーター
日本 Honda CR-Z 2016 ホンダ 駆動モーター
日本 Honda Fit Hybrid 2016 ホンダ 駆動モーター
日本 Honda Freed + Hybrid 2016 ホンダ 駆動モーター
日本 Honda Freed Hybrid 2016 ホンダ 駆動モーター
日本 Honda Grace Hybrid 2016 ホンダ 駆動モーター
日本 Honda Jade Hybrid 2016 ホンダ 駆動モーター
日本 Honda Legend Hybrid 2016 ホンダ 駆動モーター
日本 Honda Odyssey Hybrid 2016 ホンダ 駆動モーター
日本 Honda Shuttle Hybrid 2016 ホンダ 駆動モーター
日本 Honda Vezel Hybrid 2016 ホンダ 駆動モーター
日本 Honda Fit Hybrid 2014 ホンダ 駆動モーター
日本 Honda CR-Z 2012 ホンダ 駆動モーター
日本 Honda Civic Hybrid 2012 ホンダ 駆動モーター
日本 Honda Fit Hybrid 2012 ホンダ 駆動モーター
日本 Honda Fit Shuttle Hybrid 2012 ホンダ 駆動モーター
日本 Honda Freed Hybrid 2012 ホンダ 駆動モーター
日本 Honda Freed Spike Hybrid 2012 ホンダ 駆動モーター
日本 Honda Insight 2012 ホンダ 駆動モーター
日本 Mazda Axela Sedan Hybrid 2016 アイシン・エィ・ダブリュ (株) 駆動モーター
日本 Mazda Demio EV 2012 (株)安川電機 駆動モーター
日本 Mazda Premacy Hydrogen RE Hybrid 2012 (株)安川電機 駆動モーター
日本 Subaru XV Hybrid 2018 (株) TOP 駆動モーター
日本 Subaru XV Hybrid 2016 (株) TOP 駆動モーター
日本 Mitsubishi Outlander PHEV 2020 (株) 明電舎 前輪駆動モーター
日本 Mitsubishi Outlander PHEV 2020 (株) 明電舎 後輪駆動用モーター
日本 Mitsubishi i-MiEV 2020 (株) 明電舎 駆動モーター
日本 Mitsubishi Delica D:2 Hybrid 2016 三菱電機 (株) 駆動モーター
日本 Mitsubishi Dignity 2016 日産 駆動モーター
日本 Mitsubishi Outlander PHEV 2013 (株) 明電舎 駆動モーター
日本 Mitsubishi MINICAB-MiEV 2012 (株) 明電舎 駆動モーター
日本 Mitsubishi i-MiEV 2012 (株) 明電舎 駆動モーター
日本 Suzuki Solio Bandit Hybrid 2016 (株) デンソー 駆動モーター(K12C PB05A)(5AMT)
日本 Suzuki Solio Hybrid 2016 (株) デンソー 駆動モーター(K12C PB05A)(5AMT)
日本 Daihatsu Altis Hybrid 2016 アイシン・エィ・ダブリュ (株) 駆動モーター
日本 Daihatsu Mebius 2016 トヨタ 駆動モーター
日本 Daihatsu Altis (Toyota "Camry Hybrid") 2012 アイシン・エィ・ダブリュ (株) 駆動モーター
日本 Hino Dutro Hybrid 2019 澤藤電機 駆動モーター
日本 Hino Profia Hybrid 2019 澤藤電機 駆動モーター
日本 Hino Blue Ribbon Hybrid 2017 澤藤電機 駆動モーター
日本 Hino Blue Ribbon Hybrid Articulated Bus 2019 澤藤電機 駆動モーター
日本 Isuzu Erga Duo  2019 澤藤電機 駆動モーター
日本 Isuzu Elf Hybrid 2012 日立オートモティブシステムズ 駆動モーター
日本 Mitsubishi Fuso eCanter 2018 BorgWarner Inc. 電動モーター
日本 Mitsubishi Fuso Canter Eco Hybrid 2012 三菱重工共同開発 駆動モーター
米州 Ford Escape Sport Hybrid 2019 東芝インターナショナル米国 駆動モーター
米州 Ford Escape Sport Hybrid 2019 東芝インターナショナル米国 HEV発電機
欧州 PSA DS 7 Crossback E-Tense 4x4 2019 アイシン・エィ・ダブリュ (株) 駆動モーター

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