日産の新中期計画:2016年度に世界シェア8%、営業利益率8%を目指す

ルノーと共同でロシア最大手アフトワズを買収、ブラジルに年産20万台の工場を新設

2011/07/12

要 約

 日産は2011年6月27日、2011~2016年度6カ年中期経営計画「日産パワー88(エイティエイト)」を発表した。2016年度までに、世界シェアと売上高営業利益率をそれぞれ8%に伸ばすことを目指す。日産の世界販売台数は720万台以上となり、6年間で300万台の拡販を目指している。

 日産は、シェア・販売台数と営業利益率を同時に高めるために、販売台数増を効率的に進める仕組みを発表した。

 販売台数増の大部分は、BRICs諸国やアセアン5カ国をはじめとする新興国市場で見込む。ロシアではルノーと共同で最大手のアフトワズを買収。ブラジルに年産20万台の新工場を建設する。中国ではシェア10%を目指し、生産能力を増強する。また先進国地域でも、米国は回復の余地があるとし、メキシコを含む北米の生産を170万台規模に拡大する。

 これらの地域を中心に、効率の高いVプラットフォーム車の販売を100万台規模に拡大し、エントリー・プライスのセグメントも投入する。また日産は、ロシアのアフトワズ、インドのアショック・レイランド、先進国ではダイムラーなどと広範囲に戦略的な協力関係を構築しており、日産の競争優位性を支えるとしている。

 6カ年間で合計51車種の新型車を投入する一方、車種統合等により、6年間に13車種を削減して、2016年度の車種数は、2010年度比2車種プラスの66車種にとどめ、1ボディータイプ当りの販売台数を2007年度の5.5万台から15万台に引き上げ、効率をアップする方針。

 コスト面では、研究開発から車両輸送までのトータルコストを毎年5%低減する。為替影響を回避するため、LCC部品活用を促進し、円建てコストを2011年度の1兆8,000億円から2016年度8,000億円に低減する。

 また、九州工場を分社化して人件費を抑え、アジア製部品の調達を拡大するなどに努め、国内生産の5割強を九州地区に集中させて、日本国内生産100万台を維持するとしている。

中国で、2011年1月に発売した「サニーセダン」
中国で、2011年1月に発売した「サニーセダン」
(Vプラットフォームベースの第2弾、北米で「ヴァーサセダン」として発売するのを始め世界170カ国で販売する)

新中期計画「日産パワー88」の目標と背景

世界シェア  2016年度までに、世界シェア8%を目指す(2010年度実績は5.8%)。販売台数の目標は発表していないが、2016年度の世界需要は9,000万台以上と予測し、シェア8%は720万台相当で、2010年度実績419万台から300万台増となる。
営業利益率  安定的に営業利益率8%を目指す(2010年度実績は6.1%)。基本的には販売台数増加が営業利益率向上に大きく貢献するとし、その上で外部要因によるコストアップや固定費増を毎年のコスト削減で吸収する。
資料:日産の新中期計画発表 (2011.6.27)
(注) 1. ルノー・日産アライアンスは、ロシア・アフトワズ株式の50%超を買収する意向を表明しており、アライアンスの2010年グローバル販売台数を、アフトワズの"LADA"ブランド57万台を含め7,276,398台と発表した。VWの小売販売台数 720.3万台を超え、2010年実績で世界第3位であったことになる。
2. グローバル全需は、2007年度には先進国市場が60%、新興国市場が40%であったが、日産は、2016年度には40%、60%に逆転すると予測している。新中期計画の成長は大部分を新興国市場で想定し、そうした地域で生産能力を拡充する。
3. 新中期計画期間中の為替レート見通しは、2011年度は80円/ドル、2012~2016年度は85円/ドル。
4. ゴーン社長は、「日産パワー88」は、初めてハンディキャップなしでスタートできる中期計画であり、手元資金、技術、商品計画に弱点はなく、最初から攻勢をかけることができるとしている。

新車投入計画

(括弧内はインフィニティ・ブランド車で内数)
  2011年度 2012年度 2013~2014年度 2015~2016年度 合計
米国 1 (1) 2 9 (4) 18 (5) 51 (13)
日本 1 1 2
中国 1 2 (1) 1
欧州 2 3 5 (2)
その他   1 2
合計 5 9 19
資料:日産の新中期計画発表 (2011.6.27)
(注) 1. 6カ年で新型車合計51車種は、平均6週間に1車種の割合で投入することになり、販売をリードする。また中国、北米、ブラジルを中心とした生産能力拡大への投資が、販売増を支えるとしている。
2. 6カ年の間に、各年15、合計90の先進技術を採用する。
商品ラインアップとセグメントカバー率
  1999年度 2010年度 2016年度
車種数 49 64 (+15)
(-13)
66
セグメントカバー率 77% 80% 92%

資料:日産の新中期計画発表 (2011.6.27)
(注)2011~2016年度の"マイナス13車種"は、重複する車種を統合する等により車種数を削減する。例として、次期型クエストと次期型エルグランドを統合(両モデルは既に2010年からDプラットフォームを共有)、同じくアルティマとティアナを統合する。



商品ラインアップを強化

 商品ラインアップでは、「インフィニティ・ブランド」、「Vプラットフォーム車」、「小型商用車」を強化し、「エントリー・プライスのセグメント」に参入する計画。

 エントリー・プライスのセグメントは、世界戦略車を一律に投入するのではなく、中国では自主ブランドとして投入するなど、各地域のパートナーと協力して投入する。また上記の他に、新中期計画期間中に発売する新型車として、2011年前半に中国で発売した新型ティーダ、今後発売する新型アルティマ/ティアナ、新型キャシュカイが、グローバルでの成長を支えるとしている。

商品ラインアップの強化

インフィニティ・
ブランド車
 車種と市場を拡大する。1999年度に10市場で4車種を販売し、2010年度は36市場で7車種を販売したが、2016年度には71市場で10車種を販売し、世界販売を15万台から50万台(世界のラグジュアリー・カー市場の10%に相当)に拡大する。
 2012年春にインフィニティ JXクロスオーバーを、インフィニティ・ブランドとしては初めて米国で生産し発売、2013年にインフィニティ専用のEVを投入する。
Vプラットフォーム車  2010年度2車種(ハッチバックとセダン)で年販13万台から、2016年度までにMPVを加えた3車種で年販100万台以上に拡大する。タイ、中国、インド、メキシコで、現地調達率90%以上を維持し生産する。(次項ご参照ください)
小型商用車  長期的に小型商用車事業の強化に取り組み、日産は2016年度までに世界をリードする小型商用車メーカーになる。対象は、小型トラック、バン、タクシー、バス、SUV、ピックアップなどを含む。(注1)
エントリー・プライス・
セグメント車
 BRICs諸国をはじめとする新興国市場の需要拡大に対応すべく、パートナー各社と協力し開発・投入する。中国では、日産の旧型車をベースに開発し、自主ブランドで発売する。
 1992年発売のマーチ旧モデルをベースに、5,000ドル程度の戦略小型車を開発し、ロシア・アフトワズの工場で生産して、「ダットサン」ブランドでロシア、インド、東南アジアで販売する計画とされる(ロシアでは、アフトワズの既存のLADAの車体を活用し、LADAブランドで発売する計画との報道もある)。
 インドでは、小型商用車で提携しているアショック・レイランドと低価格乗用車分野でも提携し、タタ社のナノに対抗する超低価格車を開発するとされる。なお、ルノー・日産は、これまでインドの二輪車メーカー"バジャジ・オート"と共同で2500ドルの超低価格車開発を進めてきたが、価格やデザインに関して意見が分かれ、開発プロジェクトは暗礁に乗り上げた模様、と報道されている(2011年5月報道)。
資料:日産の新中期計画発表 (2011.6.27)、日本経済新聞 1011.7.1、日刊工業新聞 2011.6.29
(注) 1. 2011年5月、日産の多目的小型商用車NV200が、ニューヨーク市の次世代タクシーに選定され、2013年後半から、約13,000台の全車両を独占供給することが決定した。メキシコの日産クエルナバカ工場で生産する。
2-1. 日産は、新型ティーダハッチバックを、2011年4月上海モーターショーに出展、花都工場で生産し、5月末に中国で発売した。前モデル比で全長を45mm拡大し4295mm、全幅を65mm拡大し1760mmとした。1600cc自然吸気エンジンと副変速機付CVTを搭載する。また1600cc直噴ターボMR16DDTエンジンを搭載するGTSを設定した。新型ティーダハッチバックはBプラットフォームベースで、2010年に発売したVプラットフォームベースのマーチハッチバック(全長3779mm、全幅1666mm、1500ccエンジンを搭載)より一回り大きい。
2-2. 中国に続き、新型ティーダハッチバックを2014年までに世界約130カ国に投入する。新中期計画期間中に発売するグローバル成長モデルの第一弾としている。

Vプラットフォームベース車を、2016年度に世界で100万台以上販売

 Vプラットフォームは、「用途の広い(versatile)」プラットフォームとされる。2010年にマーチ/マイクラのハッチバックの生産・販売を開始し、2番目の車種としてセダンを、中国で「サニー」として、北米で「ヴァーサ」の車名で生産・販売する。"グローバルセダン"の位置づけで、世界170カ国で発売する。

 2016年度までにもう1車種追加して3車種構成とし、Vプラットフォームベース車を年間100万台以上販売する計画。

Vプラットフォームベース車の投入計画

マーチ/マイクラ
ハッチバック
2010~2011年  Vプラットフォームベース車は、2010年に、タイ、インド、中国で、2011年3月にメキシコで、マーチ/マイクラ ハッチバックの生産を開始した。
2011年10月  10月に、ブラジルで、FFV(Flex fuel vehicles)として1000cc/1600ccのエンジンを搭載し、発売する。
サニーセダン
(中国)
2011年1月  2010年12月の広州モーターショーに、新型"グローバルセダン"を出展した。中国では花都工場で生産し、サニーの車名で2011年1月に発売した(従来からのティーダ3ボックスは販売を終了)。
 新型グローバルセダンは、順次世界170カ国で、それぞれのブランド、車名で発売する。
ヴァーサセダン
(米国)
2011年夏  2011年4月ニューヨークモーターショーに、新型ヴァーサセダンを出展し、夏に発売する。後席足元の広さは多くの中型車を凌ぐとアピールする。1600ccエンジンとCVTを搭載し、EPA燃費は30 mpg city/37 mpg highway/33 mpg combined。ベース車価格は10,990ドルの低価格とした。メキシコのアグアスカリエンテス工場で南北アメリカ向けに生産する。

 資料:日産の新中期計画発表 (2011.6.27)、広報資料 2010.12.20/2011.4.19、日本経済新聞 2011.6.9
(注)次期型ノートは、従来のBプラットフォームベースからVプラットフォームベースに変更すると見られ、燃費性能をアピールする。生産は追浜工場から九州工場に移すとされる(欧州は英国工場での生産を継続する)。ノートは、2010年に国内でセレナ(7.5万台)に次ぐ6.6万台を販売した。

 



6つの戦略をテコに、新中期計画の目標を達成

 日産は、(1)ブランドパワー、(2)セールスパワーなど6つの戦略をテコに、新中期計画「日産パワー88」の目標達成を目指す。

 (4)ゼロ・エミッション リーダーシップの有効活用では、2016年度までの6年間に、ルノーと合わせて合計150万台のEVを販売する計画。

 (6)コスト面では、物流費を含めたトータルコストの年間5%低減を継続していく。

 (5)「事業の拡大」の地域別計画の詳細は、次項の「世界重点地域」に記載する。

新中期計画目標達成のテコとなる6つの戦略

(1) ブランドパワー  ニッサンとインフィニティ・ブランドを、技術力と、日産リーフに象徴される環境配慮により、力強いブランドとして確立する。(シェアと利益率を同時に向上させるために必須)
(2) セールスパワー  中期計画期間中に、世界約6,000店の販売網を、約7,500店に拡大する。
 日産は、既に中国、ロシア、メキシコで、ナンバーワンの日系ブランドになったが、2016年度までに、欧州でナンバーワンのアジア・ブランドになることを目指す。
 日本、米国、アセアン5カ国でセールスパワー向上に取り組む。
(3) クオリティの向上  ニッサン・ブランド:グローバル自動車業界のトップ・グループになる。
 インフィニティ・ブランド:ラグジュアリー・ブランドのリーダーになる。
(4) ゼロ・エミッション
でのリーダーシップ
 再生可能エネルギーの活用や、電池のリサイクルを含め、持続可能なモビリティ社会を推進する包括的な活動を進める。日産はEVに放電機能を追加し、家庭の補助電源として利用できる技術を開発し、早ければ年内にも発売する。(注1)
 2016年度までの6年間に、EVをルノーと合わせて合計150万台販売する。(注2)
 100%電気のEVと、日産が"PURE DRIVE"と呼ぶ低燃費技術(ハイブリッド、CVT、クリーンディーゼル、アイドリングストップなど)を組み合わせる。(注3)
(5) 事業の拡大  世界シェアの目標:2016年度までに8%(1999年度に240万台販売し4.6%、2010年度は418.5万台販売し5.8%)。(各地域の強化策は次項に記載)
(6) コストリーダーシップ  購入部品・生産から納車整備センターまでの物流費を含めたトータルコストを年間5%低減していく。生産面では、1ボディータイプの年間販売台数を5.5万台から15万台に引き上げ、また車種間・新旧モデル間の部品とシステムの共用化率を高めるなど効率をあげて達成する。
 為替対策として、国内市場で拡販し、円建て売上高増大を図る。またLCC部品採用の促進、海外生産用部品の現地調達率向上により、円建てコストを2011年度1兆8,000億円から2016年度8,000億円に削減する。
 九州の2工場に国内生産の5割強を集約、賃金を地域水準に合わせ抑制し、立地を生かしてアジア製部品の調達を増やし、国内生産100万台を維持する。(注4)
資料:日産の新中期計画発表 (2011.6.27)、広報資料 2011.4.22
(注) 1. リーフが搭載するリチウムイオン電池は24kWhの容量があり、一般家庭の2日分の電力を供給できる。価格も、量産と政府補助金の効果により、蓄電容量からすると市販されている家庭用蓄電池より割安とのメリットがある。
2. 2012年に、商用車NV200ベースのEV、2013年にインフィニティ専用EVと、前後2人乗り"ランドグライダー"コンセプトをベースとするコミューターEVを投入する。
3. 2012年にも、フーガハイブリッドで採用した"1 モーター・2 クラッチ"方式のハイブリッドシステムを、アルティマ/ティアナなどの中型前輪駆動乗用車に設定するとされる。
4-1. 日産は2011年4月、日産自動車九州株式会社を設立し、8月から事業を開始すると発表した。組合と協議を重ね、労働条件を含めて合意した。当面は現行賃金水準を維持するが、今後地域の水準に合わせて賃金を抑制する方針とされる。
4-2. また、九州工場は従来中大型車の輸出拠点であったが、2010年秋から国内向けミニバン・セレナの生産を開始し、今後小型車も生産して生産台数を増やす。立地を活かしてアジア製部品の調達を増やしてコストを下げ、同じ敷地内の日産車体九州工場と合わせて国内生産の5割強を集中し、国内生産100万台を維持する構想とされる。

 



中国、インド、ブラジル、ロシアなどの新興国地域を強化

 日産は、2016年度には、新興国市場が世界全需の60%を占めるとし、中国、ブラジル、ロシア、インド、アセアン諸国などを強化する計画。中国でシェア10%を目指し、ブラジルに年産能力20万台の新工場を建設、ロシアでは、ルノーと共同でロシア最大手アフトワズの経営権を取得してロシアでの3社合計シェアを40%に高める計画。

 一方、先進国市場でも、米国は市場が回復する余地があるとし、メキシコを含む北米の生産を110万台規模から170万台規模に拡大する。また日本で、ゆるぎないナンバー2の地位を確立するとしている

世界重点地域の強化策

中国  2010年度の市場シェアは6.2%。2012年に花都第2工場が稼働し、生産能力は120万台に増強される。さらに将来の成長に向けて生産能力を増強し、市場シェア10%を目指す。7月に、日産の中国事業を担う東風汽車有限公司が、今後の増産に向けた計画を発表する予定。
 2012年に、東風日産の自主ブランドであるヴェヌーシア(Venucia、金星の意、中国名は「啓辰」)ブランドの2車種を発売する。
 中国政府のEV支援政策を確認した上で、早ければ2012年にもEVの現地生産を開始する計画。
メキシコ  2010年度の市場シェアは23.1%。生産能力の増強に投資し、市場シェアトップを維持。(注1)
ブラジル  ブラジルは、日産の新興国攻略で唯一抜けていた市場とされ、2010年度の市場シェアは1.2%。2011年内にも着工して新工場を建設し、まず20万台の年産能力を確保。市場シェア5%以上を目指す。(注2)
欧州  欧州で最大の販売台数を誇るアジア・ブランドになる。
ロシア  日産・ルノー・アフトワズの3社合計で40%の市場シェアを目指し、商品開発、現地生産、現地調達への投資を行っている。日産単独で、ロシアでの市場シェア7%を目指す。(注3)
インド  チェンナイ工場で新型車5車種を立ち上げる(5車種は、Vプラットフォームベースの3車種(ハッチバック、セダン、MPV)、および小型商用車NV200などとされる)。現在輸入販売しているエクストレイルのKD生産も検討する。
アセアン5カ国  2010年度の、日産のアセアン5カ国での市場シェアは6%。タイが日産の生産・輸出のハブ拠点だが、インドネシアの年産能力を、2011年9月に5万台から10万台に増強。アセアン5カ国での市場シェア15%を目指す。
資料:日産の新中期計画発表 (2011.6.27)、ルノー・日産広報資料 2011.1.28、日経産業新聞 2011.7.6
(注)1-1. 日産はメキシコの生産拠点に、サプライヤーによる投資を含め10.5億ドル(約862億円)を投資し、2011年3月にアグアスカリエンテス工場で、新開発Vプラットフォームベースのマーチの生産を開始した。Vプラットフォームベースの小型車を年30万台生産する計画。うちマーチを年間 6万台生産し、30%をメキシコ国内で販売し、70%をブラジルを中心に中南米で販売する。次いでVプラットフォームベースのセダン、MPVなどを生産する。
1-2. なお米国では、テネシー州Smyrna工場で、2012年以降インフィニティ JX、次期型ローグ(九州工場から移管)、EVリーフなどを相次いで生産する。日産は、北米販売における現地(メキシコを含む)生産比率を現状の70%弱から85%に高めて円高の影響を回避し、また北米における生産台数を、2010年度107万台から170万台規模に拡大する計画。
2. ブラジルの2010年新車販売は352万台で、中国、米国、日本に次ぐ世界第4位の市場に成長した。日産の2010年販売は37,276台。現在、ルノーのクリチバ工場に委託してピックアップトラック フロンティアとリヴィナを生産し、その他は主にメキシコ工場から輸入している。
3-1. ロシアのアフトワズには、既にルノーが25% + 1株を出資しているが、ロシア政府はルノー・日産が株式の50%超を保有することを認める方針で、調整が進んでいる。出資はルノーが中心で、日産もアフトワズの工場を利用するので15%程度出資するとされる。
3-2. ルノー・日産・アフトワズは、3社の生産能力合計を2012年に130万台、2015年までに160万台に増強し、3社合計のシェア40%を目指す。
3-3. 日産は、ロシアでエンジンを生産する計画。サンクトペテルブルクに日産が単独で建設した工場内にラインを新設し、同工場で生産するムラーノ、エクストレイルとティアナに搭載するエンジンを、当初年5万基程度生産するとされる。

 



戦略的なパートナーシップが、日産の競争優位性を支える

 日産は、自前主義ではなく、他に類を見ない戦略的な協力関係を各社と実現しており、これが21世紀の自動車業界のリーダーを決める競争優位性につながるとしている。

 ダイムラー、東風汽車、アショック・レイランド、三菱自動車、アフトワズの5社を重要なパートナーとして挙げている。

 ダイムラーとは、ディーゼルエンジンとパワートレインで協力する。アショック・レイランドとは、2011年3月に、小型商用車共同開発第1号を発表し、近く発売する。

 日本国内では、軽自動車が今後も新車販売台数の1/3以上を占めると見込んで、三菱自動車と共同で軽自動車の商品企画を行う株式会社 NMKVを設立した。

アライアンスとパートナーシップ

(◎は現在の事業、○は今後の事業)
  対象企業 相互出資 共同開発 共同生産 OEM供給
アライアンス ルノー
パートナーシップ ダイムラー(注1)
東風汽車    
アショック・レイランド(注2)    
三菱自動車(注3)  
アフトワズ      
資料:日産の新中期計画発表 (2011.6.27)、広報資料 2011.6.20
(注) 1. ルノー・日産アライアンスとダイムラーは2010年4月に、相互出資を含め、幅広い分野で戦略的協力をすることで合意。Mercedes-Benzエンジンのインフィニティ・モデルへの供給を始め、ディーゼルエンジンとパワートレイン技術で協力する。また小型乗用車と小型商用車分野で協力する。燃料電池車も共同開発中としている。
2-1. 日産とインドのアショック・レイランドは2008年5月に、小型商用車事業について、(1)車両製造会社、(2)パワートレイン製造会社、(3)研究開発会社、の3合弁会社を設立すると発表した。
2-2. リーマンショックの影響で計画が遅れたが、2011年3月、共同開発した最初のモデルである"Ashok Leyland Dost"を発表し、近く発売する。積載量は1.25t、最高出力55hpの3気筒ターボ・コモンレールディーゼルエンジンを搭載する。
2-3. 景気後退のため当初計画した新工場建設を延期し、当面アショック・レイランドのTamil Nadu州Hosur工場で生産する。また延期した新工場建設開始を検討中とされる。
3-1. 日産と三菱自動車は、2010年12月、OEMの拡大、海外での生産協力、日本での軽自動車事業における協力などについて合意した。
3-2. 2011年6月に、日本市場向けの軽自動車の商品企画・開発等を行う株式会社 NMKVを折半出資で設立した。車両の設計・開発、部品調達等の領域でも協力する。軽自動車は、将来的にも国内新車販売の1/3以上を安定的に占めると見て、2010年度に両社合わせて15%のシェアを、将来20%まで高める構想。軽自動車ベースのEV共同開発も検討するとされる。
4. 上記の表以外で、2011年に、日産とマレーシアのプロトンは、新規ビジネス機会を探る事業化調査に関する覚書きを締結した。日産がパワートレインやプラットフォームを供給してプロトン車を強化し、また資本提携に発展することもありうると報道されている。

 



2010年度世界販売台数は過去最高の419万台、中国が102万台で国別最大市場

 日産の2010年度グローバル販売台数は過去最高の418.5万台(19.1%増)で、中国で102.4万台を販売し日系自動車メーカーで初めて100万台を超え、また米国での販売96.6万台を超え、日産の国別最大市場になった。

 日産の2010年度連結売上高は3期ぶりの増収で、16.7%増加し8兆7,731億円。営業利益は、販売台数増や車種構成の改善による4,331億円の効果などで5,375億円(72.5%増)、当期純利益は7.5倍の3,192億円。

東日本大震災後、国内他社より早く生産が回復

 日産は6月23日に、2011年度業績見通しを発表した。日産は、3月11日の東日本大震災の前に世界生産の大幅増加を見込んで半導体部品を大量発注し、在庫を多く持っていたことが幸いしたとされ、トヨタ、ホンダに比べ生産の回復が早く、国内生産は5月に既にフル操業に近いレベルに回復した(5月の国内生産は80,036台で0.8%増、グローバル生産は368,914台で19.3%増)。2011年度第1四半期(4~6月期)から前年を超える生産・販売を見込み、また10月には国内外の全工場で全く制約のないフル生産を再開できるとしている。

 



2011年度世界販売見通しは9.9%増の460万台

 他社に比べ順調な再スタートが切れたこともあり、2011年度グローバル販売台数見通しは9.9%増の460万台(トヨタの連結販売台数は0.9%減、ホンダの売上台数は6.0%減の見込み)。世界の主要市場で拡大し、2010年度・2011年度の2年間でグローバル販売108.5万台の増加を見込んでいる。

 2011年度連結決算の見通しは、販売台数増加により7.1%増加し9兆4,000億円を見込むが、為替影響(1,350億円)、原材料・エネルギーコスト増(1,550億円)、販売費増(1,120億円)などの減益要因により、営業利益が14.4%減の4,600億円にとどまるとしている。

日産のグローバル販売台数

(1,000台)
  2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度
見通し
日本(軽を含む) 842 740 721 612 630 600 610
北米
(内米国)
1,380
1,075
1,334
1,035
1,352
1,059
1,133
856
1,067
824
1,245
966
1,330
1,040
欧州 541 540 636 530 509 607 670
中国 806 869 458 545 756 1,024 1,150
その他 603 591 553 709 840
合計 3,569 3,483 3,770 3,411 3,515 4,185 4,600

日産のグローバル生産台数

(1,000台)
  2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度
見通し
日本 1,365 1,192 1,263 1,050 1,025 1,073 1,155
北米(メキシコを含む) 1,171 1,123 1,151 868 837 1,073 1,166
欧州 509 507 594 450 445 571 576
中国 465 472 650 716 975 1,433 1,135
その他 581
合計 3,510 3,294 3,658 3,084 3,282 4,150 4,613

資料:日産の2010年度決算資料、広報資料 2011.6.23

 

日産の連結業績

(100万円)
  2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度見通し
計画 増減率
売上高 10,468,583 10,824,238 8,436,974 7,517,277 8,773,093 9,400,000 7.1%
営業利益 776,939 790,830 (137,921) 311,609 537,467 460,000 -14.4%
経常利益 761,051 766,400 (172,740) 207,747 537,814 441,000 -18.0%
当期純利益 460,796 482,261 (233,709) 42,390 319,221 270,000 -15.4%
設備投資 509,000 428,900 383,600 273,600 312,000 410,000 31.4%
研究開発費 464,800 457,500 455,500 385,500 399,300 460,000 15.2%
為替レート (US$) 117.0円 114.4円 100.7円 92.9円 85.7円 80円  
為替レート (EUR) 148.2円 161.6円 144.1円 131.2円 113.1円 115.0円  
資料:日産の2010年度決算資料、広報資料 2011.6.23
(注) 1. 日産の自動車事業の有利子負債は、2期連続で手元資金を上回ったが、2010年度のフリー・キャッシュフロー(4,593億円)が貢献し、有利子負債を完済し、期末時点で2,933億円のキャッシュポジションとなった(販売金融事業は除く)。
2. 東日本大震災の影響は、3月の国内生産が5.5万台減少、卸売り販売台数が約3万台減少、この他、震災による生産停止に伴う固定費負担、被災施設の修繕費などで 396億円の特別損失を計上した。

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>