トヨタのTNGAコンセプトによる新型パワートレーン
2.0Lガソリンエンジン、THSⅡ、CVT、6速MTを新開発
2018/05/14
概要
トヨタはグローバル販売の主力である2.0Lクラスの新しいTNGA(Toyota New Global Architecture)パワートレーンを開発した。直列4気筒2.5Lガソリンエンジン中心のTNGA第1弾に続き、2.0Lガソリンエンジンを中心とするTNGA第2弾を市場投入することで、燃費、動力性能の向上に大きく貢献する。
新型FF用無段変速機(CVT)には世界初の「発進用ギア」機構を採用し、走行性能と環境性能を大幅に向上している。また、加工、組み付け等の基準統一により、異なる機種をフレキシブルに高速で生産できる生産ラインを開発、ユーザーにこれまでよりも早く商品を提供できるようにした。
2023年にはTNGAによるパワートレーン搭載車をトヨタの車両販売台数の約80%に拡大し(日本、米国、欧州、中国が対象)、CO2排出量を約18%削減するとしている。
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新型パワートレーン | 新型パワートレーンラインナップ |
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パワートレーンのラインナップ拡充
トヨタ環境チャレンジ2050(2050年までに新車CO2排出量を90%削減)の一環として、新型パワートレーンの投入に取り組んでいる。販売量のマジョリティはエンジン搭載車であり、CO2排出量90%削減のためにはパワートレーン全体での燃費向上が必要である。トヨタは環境への対応(省エネルギー、燃料多様化への対応、エコカーの普及)とクルマの楽しさを追求することの両立を図っていく。
トヨタは多様なニーズに応える新型パワートレーンラインナップに向けて、モジュール開発により19機種37バリエーションを2021年までの5年間で一気に導入する。エンジンの生産効率を向上させるため、異なる機種を高速でフレキシブルに生産できるラインを開発するとともに、異なる機種の工程・設備の仕様を統一し、グローバル展開を迅速化している。また、エンジン開発の効率を向上するとともに、生産性向上にも貢献。採用する構造・要素技術を統一化し、エンジン開発をモジュール化することで開発効率を向上し、エンジンの種類を整理統合していく。
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トヨタ環境チャレンジ2050 | 新型パワートレーンラインナップ | 開発効率向上 |
新型直列4気筒2.0L直噴ガソリンエンジン
新型直列4気筒2.0L直噴ガソリンエンジンは、TNGA第1弾の2.5Lエンジンの熟成を進め、新開発のDirect Shift-CVTとの組み合わせで、自然吸気でありながら2.0L過給エンジンと互角以上の動力性能とこれらを凌駕する燃費性能を実現した。
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新型直列4気筒2.0L直噴ガソリンエンジン | エンジン概要 |
ストレート吸気ポートやレーザークラッドバルブシートの採用により、強いタンブル(縦スワール)と高流量の両立を実現。これにより広い領域で急速燃焼を実現して低燃費領域を低負荷域まで拡大した。
また、筒内圧力波形などの物理量をコモンアーキテクチャー(共通技術)化することで、それぞれのエンジンの個別開発を極力減らして効率化した。
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エンジン比出力と熱効率 | エンジン性能 |
ハイブリッドシステム (THSⅡ)
新型2.0Lエンジン用のハイブリッドシステム(THSⅡ)は、エンジン回転速度をリニアに上昇させることで伸びのある加速感を演出。出足の加速はモーターで補い、その後エンジンの回転上昇を車速の伸びと比例させることで、マニュアルミッション車のようにリニアな加速感を実現した。
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新型2.0Lエンジン用THSⅡ | 伸びのあるリニアな加速感 |
新型パワーコントロールユニット(PCU)は従来の1.8Lエンジン用PCU比で20%小型化、10%軽量化することでトランスアクスル上に搭載可能とした。新型トランスアクスルはリダクションギアの平行軸歯車採用などにより伝達効率を向上。Ni-MHバッテリーは2Lエンジン専用に小型化した。
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新型パワーコントロールユニット(PCU) | 新型トランスアクスル、新型Ni-MHバッテリー |
新型FF用ワイドレンジCVT
新型CVTはロー側に発進専用ギアを採用し、ベルト駆動をハイ側にシフトすることで、伝達効率とワイドレンジ化(+15%)の両立を実現した。
発進用ギアを採用することで、小径プーリーによるベルト効率の悪化が無くなり、変速比幅を15%拡大した。また、ベルト角度を11度から9度に狭角化して変速速度を向上した。
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新型FF用ワイドレンジCVT | 新型CVT性能 | 新型CVT採用技術の詳細 |
この発進ギアの採用によりエンジン回転速度とともに車速が上がり、CVT特有のラバーバンドフィール(エンジン回転が先に上がってから一呼吸おいて加速する)を払拭した。実際の発進時の加速Gでみても、全域で従来型を上回っている。
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ワイドレンジ化したCVT | 発進性能向上 |