ハノーバーショー:第66回IAA国際商用車ショー報告(下)

マン、ボルボ、ルノー、ダフ、主要サプライヤーの展示概要

2016/11/18

概要

 2016年のハノーバー商用車ショーの取材レポートの第2弾。以下では、フォルクスワーゲングループの商用車メーカー「マン」、スウェーデンの商用車メーカー「ボルボ」、その傘下の「ルノー・トラックス」、米国商用車メーカー「パッカー」傘下の「ダフ」、そして、主なサプライヤーの展示概要を報告する。

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「マ ン」[VWグループ] :大型トラックのフェイスリフトと小型トラック「TGE」を初披露

 前回のIAAでは、新しい大型エンジンの発表一色であった「マン」であるが、今回のIAAでは2016年7月頃に公式HPで、女性による展示プロデュースが発表された。また、車両では「マン」ブランドの小型トラックの発表と大型系トラックのフェイスリフトが予告され、期待を持って「マン」の会場に出向いた。フォルクスワーゲングループのホールでは大中型トラック/エンジン及び「マン」傘下の「ネオプラン」バス、「ブラジル フォルクスワーゲントラック」等の車両も数多く出展された。



旗艦トラック マン「TGX」4x2トラクター「パフォーマンス ライン」(IAAエディション)

 大型系トラックの「TGX〜TGS」、中型系トラックの「TGM〜TGL」とも大きな話題はなく、若干の内外装のフェイスリフトを行った。メインテーブルにはメッキ外装仕様のパーツ類を施したTGX IAAエディションを出展。TGXの外装ではアッパーグリルのライオンマークをより鮮明にし、また、ロアグリルには2本のルーバーを設けた。

TGX 「パフォーマンスライン」エディション
限定100台生産(シリアル番号付与、特別招待あり)、
キャブタイプ=XXL ハイルーフ、フラットフロア、
外装メッキパーツ、内装カーテン等を青色にアクセントした 。

GVW 18ton、フェイスリフトでグリル開口穴を拡大。

エンジンD38 L6、15L、640ps/3,000Nm。
上記エンジン+下記システムにより6.35%の燃費低減を図った。

  • GPSアシストクルーズコントロール(MAN EfficientCruise)
  • MAN TipMatic 12段AMT
TGX系搭載エンジン(他にD20 66 10.5L、360ps/1,800Nmも用意)          


 TGX系始め全てのシリーズの内装シート&トリムの配色変更した。現行のウオームグレイ色から、ダークグレイ色とベージュ色のツートンカラーとなる。


大きくなったメーター内ディスプレイと多機能ステアリング。「パフォーマンスライン」には
・(写真にはないが)青色カーテンや青のシートベルトを組込んだ革とベロア調のシート、
・サウンドパッケージとインテリジェント情報を持つ5〜7インチディスプレイ、を採用。


MAN Tipmatic 12段AMT。現在は主にZF製を使っているが、
2016年中にはスカニアと新規トランスミッションを開発予定。



「Connectivity & Assistance」=デジタル化する接続とドライバー支援

 トラックと輸送のネットワーク構築の新しいアプローチを、デジタル化の技術革新を盛り込んだトラックと併せて出展。「マン」が考えるインテリジェントなネットワーキングを通じて、より効率的にコントロールできる今後の輸送の新しいデジタルサービスのコンセプトをトレーラー荷台に提示。(当レポートその1の「スカニア」でも報告した通り、各社とも「接続」をキーワードに展示を行ってた)。当展示車のキャブは、ミラーレスでドライバー安全運転支援システムが盛り込まれている


トレーラー荷台にはデジタル輸送サービスの説明パネルがある。

ミラーレス安全運転支援システム


 サイドミラーを無くしてデジタルミラーにし、車両の左右やキャブの周囲や間近の様子を表示して、後退時やステアリング時に視界の確保。レーンチェンジ警報等にも利用。5〜7インチのディスプレイには車両情報や輸送情報を表示。



e-Mobility コンセプト  Ⅰ.「都市内集配用EVトラクター」


 「マン」は電動化車両を継続して研究開発をしており、2012年のIAAにEVのコンセプトトラクターを初出展した。現行車両をベースに毎回地味であるが発表を続けており、今回も現行車両ベースに、都市内や都市近郊の食品小売店舗への集配車を出展した。環境排出量(CO2、NOx、騒音)ゼロ。

 TGSナローキャブ4x2トラクター、GVW18ton、モーター250kw/2,700Nm、プロペラシャフト駆動。



e-Mobility コンセプトⅡ. 18.75m長のEV連接バス‥‥都市内路線バス「ライオン」


2019年のEVバスシリーズの生産開始を目指して研究開発中のEV路線バスコンセプト。2019年には自社の路線バスの売上高の50%をEVにする計画とのこと。



小型トラック「TGE シリーズ」をワールドプレミア

 ドイツ市場で大型車はメルセデス・ベンツと市場を二分する「マン」であるが、製品シリーズとして唯一持ち得なかった小型トラック領域に進出。親会社「フォルクスワーゲン」の小型商業車のベストセラーである「クラフター」をベースとした小型トラック「TGE」シリーズを世界初披露した。トラック1台、 窓付きバン1台、ユティリティーワゴン1台を出展。


 フロントは「マン」の特徴であるライオンマークモールとブラックアッパーグリルを採用。バンが主体だが、トラック系は2種類のキャブ(シングル&クルーキャブ)があり、キャブ付きシャシーで販売。バン及びキャブ付きシャシーは2017年4月より生産して出荷開始。下写真は4枚ドア クルーキャブ アルミパネルゲートのフラットデッキ。 GVW 3〜5.5ton、牽引能力3.5ton、エンジン2L(102/122/140/170hp)、FF、FR、4WD 、6段MT/8段AT。(バン系も同一の仕様)。


 「TGE」の主力製品であるバン。窓付きバン(下写真左)とユティリティークーロズドワゴン(同右)。 2種類のホイールベース、3種類のルーフ高さ、3種類の全長を用意。日本のような小径タイヤのフラットフロアのバンは現在では無い。全長は5.9、6.8、7.3m、全高は2.3、2.5、2.8mの設定がある。



南アフリカ/オーストラリア向け 「GTX 6x4 トラクター」

 メルセデス・ベンツ、ボルボと同様に、今回のIAAの傾向である右ハンドル車(主に南ア向け)を出展。 キャブは XLXハイルーフ、 エンジン D26(L6、13L、540Hp/2,500Nm)、ZF 12段MT、GVW 28ton。



「ネオプラン ツアーライナー 観光バス」 ワールドプレミア

「マン」傘下のバスメーカーネオプランは老舗だが、そのデザインは各車種とも革新的である。
全長12m、全幅2.5m、全高3.8m、乗客44名、エンジンD26(L6,13L、420Hp/2,100Nm)、ZF12段AMT。



「ボルボ」:大型トラクター、重トラクター、トラックレース車などを展示

 前回のIAAではモデルチェンジして間もない「FH」トラクターを、採用した新しい機構と併せて大々的に展示したが、今回の展示では、ボルボは大型トラクターやダンプ車、そしてトラックレース車などの珍しい車両を含め合計8台を出展した。ボルボらしく、機構部位と出展車を合わせた展示が目立った。


「FH パフォーマンス エディション」

グローブトロッターXL 4x2トラクター


 「その先へ!」とのキャッチフレーズで母国スウェーデンの国旗柄をあしらった旗艦トラック「FH」を出展。2015年に発表されたがショーでは初公開。車体下部の空気抵抗低減の為にバンパー下にエアロカバーを装着。エンジンD13K(L6、13L、551ps/2,652Nm)、I-Shift12段AMT、フロントサスペンションは独立懸架のフルエアサスペンション、GCW44ton、前軸重7.5〜後軸重13ton。

 「パフォーマンス エディション」のキャブ内装は青色をシートサイドに施した皮革張り。(右 写真)



「FH 後々駆動軸リフトアップ 6x4フルエアサストラクター」

 6x2車の後々軸リフトアップ車は各社共に標準装備としてあるが、後々駆動軸のトラクターリフトアップ車は初めて。キャブ側面に「タンデムアクスルリフト」と表記。空車時のタイヤ磨耗の軽減、回転半径の縮小、4%の燃費削減を訴求。リフトアップダウンは運転席インパネスイッチを用いて15秒で操作できる。エンジン D13K (L6,13L,510ps/2,550Nm)、GVW100ton、前軸重8〜後軸重21ton


 タンデムアクスルシャシーカットモデル。おそらく他社開発陣であろう来場者が、懸命に観察し討議する様子が伺えた。こういう機構部品の同時展示は欧州トラックショーならではのもの。



「FH16 グローブトロッターXL 8x4フルエアサス重トラクター」

 欧州では「マン」や「スカニア」でも好評な、4軸の重トラクター(2軸目リフトアップ可)。キャブ背面には2,000L燃料タンクや補機類が美しくレイアウトされた独POPP社の架装が目立つ。


 今春、埠頭で750ton、長さ300mの連結コンテナの牽引を試行したビデオが公開されたが、I-Shift+2段クローラ歯車を採用した、快適な操作環境下で停止状態時から最大GCW325tonの牽引ができる。


エンジン L6、16L、750ps/3,550Nm、

2段超低速クローラ歯車付I-Shift



「FM11 4x2 軽量トラクター」

 中近距離向けとして軽量化を図った軽量トラクターを展示。FM型中型トラック相当のキャブを用いて最適な軽量化を行った。メルセデス・ベンツも同様の車種を出展。 車両質量は6ton(乗員含まず)を切る。燃料タンク300L、エンジン D11K(L6、11L、450ps/2,193Nm)、GCW44ton迄可能、 前軸重7.1〜後軸重11.7ton。


前後4輪を天秤に乗せて重量を計測。乗車時は6.7ton位になる、

アルミ軽量カプラー



「ザ アイアンナイト=鉄の騎士」 トラックスピードレース用チューンアップ FHトラクター

 欧州では各種トラックのサーキットレースが盛んであり、そのスピードとエンジン音が響き渡る迫力ある光景が見られる。いつもは、展示車はプロのトラックビジネス客向けのものに絞っているボルボが、トラックで最速記録を持つレース仕様の車両を展示。


 ベース車はキャビン及びシャシーをFH4x2トラクターで、運転席は本格レーシング仕様に改造。 エンジン D13 (下写真)をチューンアップして、ターボチャージャー+スーパーチャージャーを装備。 2,400ps/6,000Nm、車両質量4.5ton。ドライバーは「Boije Ovebrink」。



「ルノー・トラックス」 [ボルボグループ]:旗艦トラック「T」型の「ハイエディション」、大型ラリートラックを出展

 いつものように会場北入口の右側、「ボルボブース」に隣接してダイヤモンドの「ルノー」ブランドが ボルボと横並びに来客を迎えた。小型車の大部分は別会場で展示し、大型中型トラックは合計8台を出展した。


 今回ルノー・トラックは「堅牢性とアドベンチャー」をテーマに長距離、都市内配送、建設系車両を展示。話題性が乏しいなか「旧マグナム」に代わり2013年にモデルチェンジした大型旗艦トラック「T」型の「ハイエディション」及び、大型ラリートラックを出展し華を添えた。



ルノー・トラック T520 マキシスペースキャブ4x2トラクター 「ハイエディション」

 欧州初のフルフラットフロアーキャブを採用し好評を得た先代「マグナム」の構成を引き継いだ革新的な内外装デザインの「T」シリーズの旗艦モデル。今回のIAAでは「マン」や「ボルボ」等と同様に、旗艦トラックを「特別車」に仕立て上げて、製品アピールと拡販を狙った。


 キャブはフラットフロア、ハイルーフの「マキシースペース キャブ」 エンジン DTI 13(ボルボD13相当:L6、13L、520ps/2,550Nm)、12段AMTオプティドライバー、 フォイト(Voith)のリターダー及び700kWのエンジンリターダーオプティブレーキ、GVW18ton、GCW44ton。


 「ハイエディション」:すっきりしたフラットフロアに革張りシートで、助手シートは回転式。速度計はデジタル表記、インフォテインメント7インチディスプレイを採用。12段AMTの操作はスカニア同様ステアリングコラムに設置。フロントグリル、インパネ等内外装随所にカーボンファイバー強化樹脂を使用した。



「T 460 スワップボデー車」

 スワップボデー(脱着ボデー)車は日本では若干の輸送業者が使用しているが、欧州では定番の積載装置であり、IAAには車両メーカー全社がコンテナーツイストロック(締結装置)付きシャシー車を出展している。T460は他社と同様に低床車だが各種コンテナに合うよう5段階の地上高を持つ締結装置を用意。キャブはフロアトンネル有りのミドルルーフ、6x2フルエアサス。


エンジンDTI 11 (L6、11L、460ps/2,200Nm)、12段AMTオプティドライバー、300kWのエンジン リターダー、 GVW26ton、後々軸シングルタイヤステアリング機能付きリフトアップタイプ。

「K 480 8x4ダンプ」

480ps/2,400Nm、4軸リーフサスペンション、GVW32ton、12段AMT、

「C 460 4x2軽量トラクター」
460ps/2,200Nm,後軸エアサスペンション、GVW18ton、12段AMT、

「K 520 4x4 MKR アドベンチャー」ラリートラック (MKRは改造メーカー)
エンジン DTI13改1,050ps/4,200Nm、モロッコ、ダカール、シルクウエイラリー等に参加。



「ダフ トラック」 [米国パッカーグループ]:旗艦トラック「XF」スーパースペースキャブなどを展示

 IAAの常連である「ダフ トラック」は「低い運用コストとキロ当たり最高の利益!」をテーマに11台の大型/中型トラックとエンジン等を出展した。長距離用大型トラクター「XF」は角形スタイルで「スカニア」と共にドライバーに人気があると言われている。


ダフ XF 510

XF510「スペシャル エディション」4x2 トラクター


 2014年にフロント周りをマイナーチェンジしたダフトラックシリーズの旗艦トラック「XF」スーパースペースキャブ(サイドスカート含む)を「IAAスペシャルエディション オリジナル外装カラーリング」(右写真)仕様にして出展。 エンジン パッカーMX-13(L6、13L、510ps/2,500Nm)、GVW18ton、GCW44ton、 後軸エアサス、ZF AS-トロニック16段AMT、フロアはトンネル有り、5〜7インチのモニターを採用。


フロントインナーダッシュパネル内側に オイル補充口や給油口等など補機類をレイアウト、 キャブティルトは手動式。 

パッカー「MX-13系のパワートレイン」 エンジンMX13/510ps+ZF16段AMT+新リアアクスル、 アクスルデフは低騒音、油脂類の低減化、


 ダフの売り物の一つ「サイレントトラックシリーズ」の中型トラックと大型トラック(2012年より)を展示。 エンジン、各種ギア類、変速機等を低騒音化。最大ノイズレベルを72デシベルのサイレントモード にした。


中型「LF150 サイレント トラック」

大型「XF440 サイレント 4x2トラクター」


 「最低地上高カプラー装備」XF460 4x2 トラクター 各社低床トラクターを製品化しているが「ダフ」は地上高91cmのカプラー高車を毎回出展し 、大容量低床トレーラーに対応している。



大手サプライヤーの展示例:ZF、ボッシュ、コンチネンタル等

 車両メーカーに機構部品、装置や電装品などを提供している欧州部品メーカーは自社の得意分野の製品展示に加え、安全性確保等のためのドライバー支援装置としてのデジタルミラーや3Dバーチャル映像表示装置を可視化して訴求した。

「ZFのシースルーモデル」


 自動車業界の重要傾向といわれる「安全、高効率と自動運転」に焦点を当て、「見て、考えて、行動する! See Think Act」のテーマで展示。電子制御の機構部品展示のほか、ショーの主役は透明アクリル板で作成した先進機構部品を組込んだシースルーモデルを展示。安全性向上、自動化など運転支援システムを3Dバーチャル映像で提案した。なお、屋外にはセンサーから取得した走行条件と操舵系のデータを、インターネット上の情報と組み合わせることでの安全性向上を図るシステムなどを盛込んだトレーラートラックを使った走行デモを前回のIAAと同様に実施。


車間距離センサー、車線逸脱警報、居眠り防止など安全性向上策は日本車では既に実用化している!


 (右写真)大型用最新モジュラートランスミッション「新トラクソン」12〜16段AMT。 堅牢性、静粛性、強い高トルク能力、GPSアシストが特徴。



「ボッシュ ビジョンX 」 原寸大モデルによる安全性対応や自動化運転のバーチャル体験


 今回のショーでは、大手サプライヤーは原寸大のモデルを使い自社技術を提案するという展示でショーを盛り上げていた。「ボッシュ」は「ビジョン-X」コンセプトと名付けたモデル内のフロントウインドウ上に3Dバーチャル映像を表示して、「自動化、隊列走行、安全性向上技術」などの自社技術を提案した。全体では輸送効率向上と10%の燃料消費量削減できるとしている。

 訪問客は10人位で30分毎に入れ替えて体験させる。実際の助手席相当の場所でウインドスクリーンを見ることができる。現実感は一応、体験できる。


隊列走行に接近し、隊列接続。

トラックターミナルでの後退走行とトレーラーの切り離し。
  • いずれも3つのモニターで確認操作し、自動自律運転状態を演出。



「ワブコ」


 世界的ブレーキメーカーの「WABCO」は長さ10mほどの簡易トラックモデルで、部品やモニターを使った説明を実施。自動車技術会社「ペロトン社」や「モバイルアイ」とコラボレーションしている先進自動車技術(自動自律運転、隊列走行、安全運転支援)を運転席からの視点で可視化している。



「コンチネンタル」


 タイヤメーカーから自動車部品全般のサプライヤーになった「コンチネンタル」からもデジタルミラー、ヘッドアップディスプレイや、自動運転支援用のインパネ上のモニターツールが出展された。



「ストーンリッジ」

 米国電子機器メーカーが出展した「インテリジェントミラーシステム」。

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キーワード
IAA、ハノーバー、トラック、バス、マン、ダフ、ルノー、ボルボ

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