日産リーフ 分解調査

電気自動車を構成する主要なシステムと部品

2012/02/09

要 約

財団法人埼玉県産業振興公社 次世代自動車支援センター埼玉の主催で、2011年12月12日に埼玉県北足立郡伊奈町にある埼玉自動車大学校内整備工場において、量産電気自動車 日産リーフを分解し考察するベンチマーク活動が行われた。

分解作業ではEVシステムに関与する部品を車両から下ろし、各ユニット・コンポーネントのレベルまでの分解・取外しまでを実施した。取外された個々の部品内部分解、ならびに内装部品などEVシステムに直接関与しない部位の取外しについては実施していない。

本レポートでは分解作業の流れに沿って、システム・部品の解説をする。


関連レポート: 新型プリウスの分解実験(2010年3月掲載)


日産リーフの仕様概要

車名型式: ニッサンZAA-ZE0
サイズ: 全長 4,445 全幅 1,770 全高 1,545mm、ホイールベース 2,700mm
車重: 車両重量:1,520kg、車両総重量:1,795kg
車体: 5ドアハッチバック
性能: JC08モード交流電力量消費率:124Wh/km、JC08モード充電走行距離:200km


主要部品とサプライヤー

部品名サプライヤー搭載箇所

電気自動車システム関連部品

動力モーター(三相交流同期モーター 最高出力80kW、最大トルク:280N・m)型式:EM61型 日産自動車横浜工場内製 モータールーム搭載
インバーター (IGBT x 6) 日産自動車内製 /
カルソニックカンセイ
モータールーム搭載
DC-DCコンバーター (ジャンクションボックス兼用) デンソー モータールーム搭載
動力伝達装置 (減速機、減速比:7.937、変速機構なし) 型式:RE1F61A型 愛知機械工業 モータールーム搭載
リチウムイオンバッテリーモジュール (総電圧:360V、総電力量24kWh、出力90kW以上) AESC オートモーティブエナジーサプライ製 車両床下搭載
BMS バッテリーマネージメントシステム カルソニックカンセイ リチウムイオン電池モジュール内搭載
衝突検知システム パナソニック リチウムイオン電池モジュール内搭載
車載充電器 (入力電圧:100VAC~264VAC、出力電力:最大3.3kW) ニチコン製 荷室内搭載
ノイズフィルター (充電時ノイズ抑制) - 荷室内搭載

電気自動車システム以外の関係補機類

エアコン用電動コンプレッサー パナソニック 荷室内搭載
PTC素子ヒーター (温水350V、4.0kW (寒冷地仕様:5.0kW)) ドイツEberspaecher モータールーム搭載
ヒーター用ウォーターポンプ 日東電工製 モータールーム搭載
接近警報装置 パナソニック モータールーム搭載
キャパシター (電気制御ブレーキ用電源バックアップユニット、12Vバッテリ低下時の電力供給) パナソニック 荷室内搭載
電動パーキングブレーキ用ECU アドヴィックス 荷室内搭載
電動パーキングロック・アクチュエーター (トランスミッションに取付け) デンソー 荷室内搭載


日産リーフ EVシステム図・分解手順

分解作業の流れは、以下のように進めた。

作業は上図の3ブロックに分かれ、1)モータールーム内(エンジン搭載車両ではエンジンルームに相当する)の ①~④、2)車体床下のバッテリーユニットに関する ⑤、3)荷室内の充電・補機類に関する⑥、分かれて実施した。

車両床下リチウムイオンバッテリーモジュールの取外し作業、フロントエンド、タイヤ等外装取外し作業については既に作業済みであったため省略してある。

※写真はクリックすると拡大されます。

分解取外し作業風景
車体よりドライブユニット(電動モーター、動力伝達装置、ドライブシャフト等)を下ろしたところ。

モータールーム内俯瞰
モータールーム上方からモータールーム下方後方から
モータールーム上方からの俯瞰、写真右側が前方向、日産マークが付いたトップカバーのユニットはインバーター、その後方にDC-DCコンバーターが見える。
動力モーターや動力伝達装置などのドライブユニットはインバーターの下方になる。
モータールーム下方後方からの俯瞰。写真右側が車両右側面、写真奥側が車体前方、手前に動力モーターと左側に一体取付けされた動力伝達装置=減速機。(写真上側に)動力伝達装置から出ているドライブシャフトが見える。


①モータールーム作業 – インバーター、充電ポートの取外し

インバーター本体の取外しインバーター本体の撤去後
インバーター本体の撤去後、写真左側にはインバーター後方に搭載されているDC-DCジャンクションボックスの側面が見える。 中央にある3極のオレンジ色のカプラーは動力モーターとインバーターを接続する高圧ケーブル。写真右側にあるオレンジ色のケーブルは車体フロントエンドにある充電ポートからの高圧ケーブル。

取外したインバーター本体取外したインバーター本体(後方より)
取外したインバーター本体 (搭載方向前方側より)
日産自動車内製もあるが、本車両に搭載されていたものはカルソニックカンセイ製である。
前方左側に冷却水ホース接続のバルジが見える。
取外したインバーター本体 (搭載方向後方側より)

充電ポート普通充電用・急速充電用ポート
バンパーユニットを外して充電ポートを見たところ。
右側のオレンジ色のキャップは普通充電用ポート、左側の大型のものは急速充電用ポート。
普通充電用・急速充電用ポートを車両より取外したところ。
普通充電用ポートからは、荷室内に搭載された車載充電器へ接続され、整流されたうえでモ-タールムーム内のDC-DCコンバーターへ接続される。(高圧ケーブルは、一旦、荷室内へ行ってからモータールームへ戻ってくることとなる。)
一方、急速充電用ポートからは直接DC-DCコンバーターへ直接接続される。


②モータールーム作業 – ドライブユニットの取外し

車両前方からのドライブユニットドライブユニット
充電ポートを取外し、ラジエーターおよびエアコン用コンデンサーの冷却システムを撤去すると、車両前方からドライブユニットを見ることができる。
上方左側がエアコン用電動コンプレッサー、コンプレッサーの下に動力モーター、モーターの右側に一体締結された動力伝達装置(減速機)が見える。
ここでは、動力モーター・動力伝達装置が一体になったものを動力ユニット、動力伝達装置とつながるドライブシャフトやハブなどをドライブトレーン、動力ユニットとドライブトレーンを合わせてドライブユニットと称している。
車体より下ろしたドライブユニット (車両左側面前方より)。手前側が動力伝達装置(減速機)となる。
オレンジ色の3極カプラーは動力モーターとインバーターとの高圧接続ケーブル。

動力ユニットの主要コンポーネント
ドライブトレーンと動力ユニット動力モーターと動力伝達装置
ドライブトレーン(手前側)と動力ユニット(奥側)を分離した状態。 電動コンプレッサーを取外し、動力モーター(左側)と動力伝達装置(右側)を見たところ。 (今回の分解調査ではモーターと動力伝達装置との分離・分解は行っていない。)
動力モーターは、三相交流同期モーターで最高出力80kW、最大トルク 280N・mのスペックを持つ。 日産自動車横浜工場内製である。

動力モーター搭載方向前面動力伝達装置のシャフト結合部
動力モーター搭載方向前面にあるモーター型式「EM61型」の刻印 ドライブシャフトを取外した動力伝達装置のシャフト結合部 (車体左方側)
動力伝達装置には変速機構は無く、減速比:7.937の減速機であり、モーター高回転時のトルク低下を抑えるために機能している。 [愛知機械工業製 RE1F61A型]

電動パーキングロック・アクチュエーターエアコン用電動コンプレッサー
電動パーキングロック・アクチュエーター (動力伝達装置の上部に搭載)
電動パーキングブレーキECUは荷室内に搭載されている。 [デンソー製]
エアコン用電動コンプレッサー [パナソニック製]
搭載位置は動力モーター上部に締結。
エンジン付き車両ではエンジン回転を利用してコンプレッサーを駆動するが、電気自動車である日産リーフでは動力モーターの回転動力でコンプレッサーを駆動するのではなく、DC-DCコンバーターより供給される高電圧電源で駆動する。


③モータールーム作業 – DC-DCコンバーターの取外し

ドライブユニットを取外した状態の車両前方下方からの俯瞰DC-DCコンバーター(車室側)
ドライブユニットを取外した状態での車両前方下方からの俯瞰では、DC-DCコンバーターの搭載状態と高圧ケーブル接続状態がよく判る。 動力モーター・動力伝達装置・インバーターなどを含めた動力ユニットはドライブトレーン・メンバーを介し搭載されているが、DC-DCコンバーターは衝突時の安全性を考慮した堅牢なメンバーフレームに搭載され保護されている。
DC-DCコンバーターではあるが、各種高圧ケーブルのゲートウェーイでもあり、DC-DCジャンクションボックスとも呼ばれている。 [デンソー製]
写真中央で奥側(車両後方)へ向かうケーブルはバッテリーモジュール接続用、右手から奥側(車両後方)へ向かうケーブルはDC-DCコンバーターおよび普通充電ポートから荷室内にある車載充電器への接続用である。
また、DC-DCコンバーター前面より写真手前右側からのケーブル2本は急速充電ポートとの接続用、手前中央から右方向へ延びるケーブルはPTC素子ヒーター電源用である。
車両から取外した状態を車両搭載方向後方側(車室側)より見る。
写真下方中央にある高電圧カプラーはリチウムイオンバッテリーモジュールとの接続ハーネス用である。
上方右側に見える金具はコンバーター冷却水ホースの接続バルジである。


④モータールーム作業 – 補機類取外し

ヒーター用ウォーターポンプ、PTC素子ヒーターPTC素子ヒーター
ヒーター用ウォーターポンプ(上方に見える丸状のもの)、 PTC素子ヒーター(その下に見える箱状のもの)の搭載状態。 (車両右側方より俯瞰) 車体より取外したPTC素子ヒーター。 (搭載時上面側)
350V、4.0kW (寒冷地仕様:5.0kW)の定格で、ドイツEberspaecher製である。
エンジン搭載車両ではエンジン冷却水を利用してヒーター熱源としているが、電気自動車である日産リーフではDC-DCコンバーターを介して供給される高電圧電源によりPTC素子で加熱された温水をウォーターポンプで循環している。

ヒーター温水循環用ウォーターポンプ12V蓄電池
車体より取外したヒーター温水循環用ウォーターポンプ [日東電工製] 車体より取外した12V蓄電池。 (搭載箇所はモータールーム左側後方)
バッテリー型式は46B24L。
日産リーフの搭載バッテリーはリチウムイオンバッテリーだけではなく、ワイパーモーターなど12V駆動電装品のために従来の12V鉛蓄電池も搭載されている。 12V電源はリチウムイオンバッテリーの高電圧電源をDC-DCコンバーターにて変圧のうえ供給される。

接近警報装置
接近警報装置、歩行者への車両接近を知らせるための機能がある。 (車載状態) [パナソニック製]

車体底面
リチウムイオンバッテリーモジュールを取外した状態の床下俯瞰
リチウムイオンバッテリーモジュールを取外した状態の床下俯瞰。 (写真左側が車体前方)
前後に広がる左右各々の空間にはバッテリモジュールのフロントモジュールスタック部(モジュール前方部搭載のバッテリーパックが左右に各々12個が並ぶ)が搭載される空間となる。
リチウムイオンバッテリーモジュールを取外した状態の床下俯瞰。 (写真右側が車体後方)
この左右に広がる空間にはバッテリモジュールのリアモジュールスタック部(モジュール後方部搭載のバッテリーパック24個が並ぶ)が搭載される空間となる。
手前のオレンジ色のケーブルは荷室内に搭載される車載充電器とモータールーム内のDC-DCコンバーターおよびフロントエンドの普通充電ポートとを接続している高電圧ケーブルである。
真中の金属管2本は車載充電器の冷却水用フィード/リターン配管。


⑤リチウムイオンバッテリーモジュール分解作業

バッテリースタック内部俯瞰
バッテリースタック内部俯瞰 (車両搭載前方向より見る。)
バッテリーモジュール全体の重量は294kg、外形寸法は幅1,188 x 長さ 1,570 x 厚み265mmである。手前のオレンジ色の高圧カプラーにはDC-DCコンバーターとの接続用高電圧ケーブルがコネクティングされる。
写真手前側の左右にある平積みされたバッテリーパック群はフロントモジュールスタック部で、左右に各々12個のバッテリーパックからなる。 また、写真奥側にある横方向へ縦置きしたバッテリーパック群はリアモジュールスタック部で、24個のバッテリーパックなり、合計48個のバッテリパックにより定格360Vの出力がもたらされる。バッテリーパックはAESC オートモーティブエナジーサプライ製。
写真中央手前(平積みされたバッテリーパックの間に黒く見える部分)にあるモジュールは衝突検知システム(パナソニック製)であり、衝突を検知した際には高電圧を遮断する機能を持つ。
衝突検知システムの奥には(白い部品)、SD/SW(サービス・ディスコネクト・スイッチ)のサービスプラグが搭載されている。このシステムは、事故などにより運転席のパワースイッチOFF操作や高圧電源遮断用ヒューズボックスのあるモータールームのボンネットフードが開けられないなどの緊急時措置として、後席床下を開けることによりSD/SWが現れ、挿入されているプラグを抜くことにより手動で高電圧回路のヒューズを遮断することができる。

バッテリースタックより取外した上蓋SD/SWのサービスプラグ用カプラー
バッテリースタックより取外した上蓋。 (車両搭載前方向より)
写真奥側の高くなっている部分がバッテリーパックが縦置・24個横並びになるリアモジュールスタック部。
中央の穴は後席床下へSD/SW(サービス・ディスコネクト・スイッチ)のサービスプラグを通すためにあけられている。
SD/SW(サービス・ディスコネクト・スイッチ)のサービスプラグ用カプラー

衝突検知システム
衝突検知システム (バッテリースタック搭載状態、保護カバーで覆われている。)
(写真手前側が車両搭載時の前方向)
衝突検知システム (バッテリースタックから取外し保護カバーを撤去した状態。 
同じ検知器が2個一組となっている。) [パナソニック製]
(写真手前側が車両搭載時の前方向)

BMS バッテリーマネージメントシステム車載後方から前方を見たBMS搭載位置
BMS バッテリーマネージメントシステム (カルソニックカンセイ製)
リチウムイオン電池の充放電を管理・制御する機能をもつ。
搭載位置は、リアモジュールスタック部の車両搭載状態左側。 (右の写真はBMSを取外した状態のリアモジュールスタック部である。)
車載後方から前方を見たBMS搭載位置、リアモジュールスタック部。 (写真手前のバッテリーパック並びの一番手左に見えるブラケットを介して取付けられる。)

リアモジュールスタック部の取外しバッテリーパックからBMSへのハーネス
バッテリーパック24個からなるリアモジュールスタック部の取外し。 下段のバッテリーパックから出ているハーネスは温度センサー (各スタック部にある)。 計測温度はBMS(バッテリーマネージメントシステム)へ送られる (写真はフロントモジュールスタック部)。
バッテリーパック1個につきラミネート型の薄いシートセルが4枚組み込まれている (今回の調査では分解していない)。
全48個のバッテリーパックにより総セル数192となり定格電圧360Vが得られるようになっている。

バッテーリパックから取外した接続カプラー
各バッテーリパックから取外した接続カプラー。
写真上側がリアモジュールスタック部用、下側がフロントモジュールスタック部用。


⑥荷室内作業 - 車載充電器と電装品取外し

リアシートと荷室との間のスペースにあるに車載充電器など機器保護カバーを撤去した状態での荷室搭載機器
室内のリアシートと荷室との間のスペースに車載充電器など機器が搭載されている。
写真はリアシートおよび保護カバーを撤去した状態で前方より後方を見たもの。 写真手前が後席着座位置、奥側が荷室となる。
各種機器は、写真左から車載充電器(金属製の大型シャーシー)、ノイズフィルター(白い部品)、キャパシター (黒い四角い部品、電気制御ブレーキ電源バックアップユニット)、そしてキャパシターの下部に電動パーキングブレーキ用ECU(茶色の部品)である。
保護カバーを撤去した状態での荷室搭載機器。 (車両後方より前方を見る。 手前が荷室、奥側が後席位置。)
写真右から車載充電器、ノイズフィルター、キャパシター、後方衝突に備え保護バー(横方向に黒く見える棒状のもの)。

リアシート後方の荷室スペースに収まる車載充電器キャパシター
リアシート後方の荷室スペースに収まる車載充電器(ニチコン製)と手前は充電時ノイズ抑制用ノイズフィルター。 (写真左側が車両前方向・後席背もたれ、右側が荷室方向。)
普通充電ポートより給電された商用交流電源を車載充電器で交流から直流に整流し、モータールーム内にあるDC-DCコンバーターへ送り出す。
キャパシター (電気制御ブレーキ電源バックアップユニット)。 パナソニック製で、電動ブレーキの補助電源として12Vバッテリー電力が低下した際には電力を供給する緊急対応の機能を有する。 電気自動車制御システムとは直接関係していない部品である。

電動パーキングブレーキ用ECU荷室搭載機器
電動パーキングブレーキ用ECU、アドヴィックス製でキャパシタの前方下方に搭載されている。 電動パーキングブレーキはモータールーム内のトランスミッション上部に搭載されている。 荷室搭載機器をブラケットごと車両より取外した状態。
写真左から車載充電器、ノイズフィルター、キャパシター(電気制御ブレーキ電源バックアップユニット)。


⑦全体作業 – 各種部品の取外し

取外された部品群を前に、作業にあたって頂いた埼玉自動車大学校一級自動車整備科学生の皆様。

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>