ルノーグループは2月15日、Luca de Meo CEOとThierry Piéton CFOが2023年通期決算に関するプレゼンテーションを行った。
2023年通期決算のハイライト
- ルノーグループの財務実績は過去1世紀以上で最高となり、2023年2月に公表した営業利益率とフリーキャッシュフローの目標を上回った。
- 7.9%という過去最高の営業利益率を達成、30億ユーロのフリーキャッシュフローを実現した。
- コスト削減、価格設定と業績を継続的に改善する戦略により、わずか3年間で大幅な赤字から記録的な業績を達成。 ラインナップ、販売戦略、組織についての綿密な作業が結果につながった。
- ルノー グループは、PowerおよびHORSE (ICE・ハイブリッド)、Ampere (EV・ソフトウェア)、Alpine (ハイエンド)、Mobilize (金融、エネルギーおよび モビリティ)とNeutral (循環経済)の5つがコア分野をカバーする。
- ティア1 サプライヤーと独占的に取引するのではなく、さまざまなレベルでサプライチェーンに深く関与し、より目に見える関係を構築している。
- ルノー、日産、三菱のアライアンスは事業面にフォーカスして再構築した。
業績概要
- 2023年の売上高は前年比13.1%増の523億ユーロ(金融、モビリティ、自動車サービスを含む)。
- 自動車部門の売上高は 481億 5,000 万ユーロに達した。
- ルノーブランドの販売は 9.4%伸長。欧州では、乗用車およびLCV市場で5位から2位に浮上した。
- 欧州LCV 市場においてルノーは25.7%増加して2位に、商用バンでは首位となった。
- ルノーグループは欧州市場で3位に浮上した。
2024年の計画と商品ポートフォリオ
- ルノーグループは2024年、平均して毎月1モデルの市場投入を計画している。合計10モデルのうち、5モデルは電気自動車(EV)あるいはルノー「マスター(Master)」シリーズのモデルとなる。
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- ルノーブランド: 「セニック E-テック(Scénic E-Tech)」、「ラファール(Rafale)」、「ルノー 5 E-テック(Renault 5 E-Tech)」、「カーディアン(Kardian)」、「シンビオズ(Symbioz)」、「マスター(Master)」、 DセグメントSUV(韓国)
- ダチアブランド:「ダスター(Duster)」、「スプリング(Spring)」
- アルピーヌ:「A290」
- これらのモデルに加え、ルノー「ダスター」を欧州域外で発売し、「キャプチャー(Captur)」のフェイスリフトも実施する。
- ルノーは2024年、ラテンアメリカ、トルコ、モロッコ、韓国でも主要モデルの発売を予定しており、国際市場に焦点を当てた新たな計画をスタートさせる。この戦略は今後 36カ月以内に実施される。
- 今後数年間はコストに重点をおき、2027 年までにEVのコストを最大50%、ICEおよびハイブリッド車のコストを30%削減する。
- 2024 年は営業利益率7.5%、 フリーキャッシュフロー25 億ユーロ以上を目指す。
Q&A
1.価格設定
Q: 電気自動車(EV)と内燃エンジン(ICE)車の価格設定に関するルノーの中期的な見解を伺ってきたが、長期的な価格設定に関して中期と大きく異なる点はあるか? 消費者はEVをより優れた車と認識して高価格でも購入したいと思うようになるのか、それとも長期的にEVはICE車より安くならざるを得ないのだろうか?
A: (Luca de Meo CEO) 2030年までの世代のEVにおける価格設定の考え方には常に若干の変動が伴う思う。もちろん、小型車の場合バッテリーを小さくして価格を下げればコスト競争力は高まる。実際、現時点では誰もがEVのコストを下げてICE車と同等の価格を実現しようとしている。しかし、我々は総所有コストにも注目している。例えば電気SUV「セニック」で3年間に3万km走行した場合のエネルギーコストはプラグインハイブリッド車のコストに迫っている。我々は同等価格に近づいているのだ。業界は一丸となってEV自体の価格を下げようとしているが、私はこの世代で低価格化が必ず実現するとも、それが最も重要なことだとも思わない。ルノーはEVに関して非常にバランスの取れた市場アプローチを取っており、望まれない車を市場に出すことはないし、既存車両の残存価値を破壊しないよう細心の注意も払っている。さもなければ、まずいことになるだろう。
2. 金融サービス
Q: 市場におけるEVの残存価値が予想より低いことがMobilize Financial Services(ルノーの金融サービス部門)に与えるリスクはあるか? 現時点でMobilizeの帳簿に占めるEVの割合はどの程度か? また、残存価値がMobilizeに影響を及ぼし始める前に一層下落する恐れはないのか?
A: (Thierry Piéton CFO) Mobilize Financial Servicesの帳簿にEVが占める割合は比較的小さい。欧州におけるEVのシェアは10%なので影響は限定的だ。MobilizeがEV製品群すべてにリスクを負っているわけでもない。我々は常に慎重なアプローチをとり四半期毎に収益化を図っている。残存価値に関しては、市場動向に基づいて前提条件を調整し、決算のたびに担当チームと見直し、評価を行っている。我々は堅実に行動しており今後も監視を続けていく。
3. CセグメントSUVの価格設定
Q: 今年初めの「メガーヌE-Tech (Mégane E-Tech)」の値下げは原材料価格低下の追い風でどの程度カバーされているのか? 2024年への期待は? 同業他社の中には特にSUVのCセグメントでコストを削減しているメーカーもある。それを考慮した上で「セニック」の現在価格は適切なのか、それとももう少し低価格で市場投入すべきだと思うか?
A: (Thierry Piéton CFO) 我々のアプローチでは、まずコストを削減し、次に価格を調整する。原材料と生産性の関係については詳述しないが、新しいEVを発売するプロセスでは「メガーヌ」の場合と同様、新モデルの進歩を念頭に、変更や改良の可能性を探って改善点を検討する。価格ミックス(価格戦略)における原材料価格下落の効果は引き続きプラスに働くだろう。原材料価格下落によるコストの相殺が始まっているので価格面の圧力は減っているが、我々は価格調整を継続し、為替差損益も価格調整で相殺する。2024年の価格設定も強気になると思うが2023年ほどではない。
また、「セニック」に関する質問だが、このモデルのエントリーレベルは4万ユーロを切っており、特に中国の競合車に比べて非常に有利な位置にあると思う。
4. プロダクトミックス
Q: プロダクトミックスでは「クリオ(Clio)」が2023年下期にプラスの影響を与えなかったものと理解している。これに対する計画変更はあるか?
A: (Thierry Piéton CFO) おっしゃる通り下期は「クリオ」のせいで売上が伸び悩んだ。「クリオ」の売れ行きは非常に好調だが、多くのコストを削減したため1台あたりの平均売上は若干下がった。しかし利益面では改善している。2024年は「セニック」、「ルノー5 」、「ラファール」など台当たり収益が高い車を数モデル投入するので状況は少し変わるだろう。利益面では引き続きプロダクトミックスの要素を高めていく。
5. 2024年の実行計画
Q: コストベース削減に向けた2024年の実行計画について教えてほしい。小型車に関するVWとの提携の可能性についてコメントがあればお願いしたい。財務面では2024年の購買コストと生産コストの削減について伺いたい。
A: (Luca de Meo CEO) EV分野ではEVとソフトウェアを担当するAmpere部門設立により製品開発にこれまでと異なるアプローチを採用する。これまでのように、あるチームがあるモデルを開発し、数年後に同じチームが別のモデルや次世代モデルを開発するのとは異なり、Ampereのアプローチでは、あるプラットフォームでコスト削減の方法が見つかれば即座にそれを採用できる。EV事業ではスピードが命であり、特に海外の競合他社に勝ちたいならなおさら重要だ。他のOEMとの提携の可能性についてはコメントできないが、昨年吉利汽車と行ったように提携自体には前向きだ。
A:(Thierry Piéton CFO) 財務面ではサプライヤーとの話し合いが実を結び始めており、2024年の大きな変化は今後に向けた良いニュースとなるだろう。
6. 小型商用車(LCV)とダチアの戦略
Q: ルノーはバンに関して他社より規模が小さい。このセグメントに対する戦略は? また、ダチアは以前比較的安価なモデルを提供していたが、最近は変化が見られ、ダチア車の基本コスト構造が上昇している。こうした変化の中でダチア車のシェアを維持することはできるのか?
A: (Luca de Meo CEO) ルノーのLCVは企業にとって魅力的だ。「カングー(Kangoo)」や「トラフィック(Traffic)」のように競争力の高いモデルもある。ブランド面ではルノーは欧州トップの地位を占めている。ダチアについては現在も将来もコスト面で有利であり続けることが我々の戦略だ。ダチアに関する最新動向は、もはやBセグメントに限定せずCセグメントに参入するという点だ。1万ユーロの車を販売することはないだろうが、収益性を確保した2万5,000ユーロから3万ユーロの範囲での販売を見込んでいる。ダチアの戦略は引き続き有効でありEV部門参入に向けたソリューションを積極的に模索している。
7. 政策変更の可能性とCO2排出量
Q: ルノーの事業に直接影響を与えると予想される税金や中国車に関する政治的・公的な決定が、2024年6月の欧州議会選挙後に下される。政治的変化に対応するルノーの柔軟性について教えてほしい。規制やCAFE(企業別平均燃費基準)規制の厳しさによっては業界から反発があるだろうか?
A: (Luca de Meo CEO) 欧州議会選挙の前なので何も決まっていない。ただ、CO2排出量の迅速な削減を求める規制に基づいて相当数のEVを急速に市場投入する必要があり、当社もその一翼を担うことになるだろう。当社はこの需要に応え規制を満たすのに必要な車両を販売する。
CAFE規制では、2025年までに全フリートで許容CO2排出量を100g程度にまで大幅削減することが義務付けられている。2030年にはさらに低い排出量(50g)まで削減することを目指している。2025年目標を達成するためには、EVや燃料電池車の比率を現在の16%から25%に高め、2030年目標を達成するためには自動車販売の大半をゼロエミッション車にする必要がある。つまり、これらの目標を達成するには、排出ガスを出さない自動車をより多くの市場に導入する必要がある。EVが業界の未来であり、環境にとって有益であることは誰もが認めるところだ。我々はこの進化を推し進めなければならない。
業界は今回の政治的変化をシステムの改善と捉えているため、業界から反発が起きる可能性は低いだろう。市場は確かに新しいインフラと補助金に依存しているが、これは変わりつつある。ルノーでは実際、EVプラットフォームの次世代Bセグメントモデルを用意している。これはメガーヌ-セニックプラットフォームよりも約30%安い。我々は3万ユーロ以下の価格帯で多くの新規顧客を獲得できる。中国はCセグメント、CセグメントSUV、及びそれ以上のセグメントで非常に強力だが、欧州には小型車の巨大市場がある。我々の予測によれば、CAFE規制の2025年目標達成は可能であり、2030年の目標達成も期待できる。