※英GlobalData社 (旧LMC)のアナリストによるショートレポート (3月13日付) をマークラインズが翻訳したものです。
・GlobalDataは2025年3月5日から7日まで韓国・ソウルで開催された「InterBattery 2025」に参加した。今年は韓国のバッテリーセルメーカー、原料供給会社、製造装置サプライヤーなど688社が出展し、韓国電池産業協会(KBIA)主催の電池会議(TBA)も同じ会場で同時開催された。
・今年のイベントのハイライトは、Samsung SDI、LG Energy Solution、SK Onといった韓国の大手バッテリーメーカーが登場したことである。特筆すべきは、これらすべての企業がこのイベントでハイニッケル46xxシリーズの円筒形セルを初披露したことである。韓国のバッテリーメーカーは、優れた熱管理システムと従来のポーチセルに比べて高いエネルギー密度により、これらの46xxシリーズの円筒形セルは近い将来、特に自動車用途において需要が見込まれると指摘している。
・ニッケル系電池に加え、韓国メーカーはリン酸鉄リチウムイオン(LFP)バッテリーを提供する準備が整っていることを展示して見せていた。LG Energy SolutionとSK OnはLFPパウチセルを自社開発し、Samsung SDIはLFP角形セルを実験中である。韓国のバッテリーメーカーは、LFPバッテリーが今後数年間でエントリーレベルの電気自動車(EV)モデルに採用されるとみている。
・固体電池とナトリウムイオン電池も韓国メーカーの課題である。Samsung SDIは現在、ナトリウムイオン電池のテスト生産を行っており、2027年頃に量産を開始する予定である。また、同社は2025年中に固体電池のテスト生産を開始することも目指しており、2029~30年頃の商業化を見込んでいる。LG Energy Solutionも同様のタイムフレームで次世代電池のロードマップを明らかにしており、ナトリウムイオン電池は2027年、半固体電池は2028年、全固体電池は2030年までにそれぞれ導入される見込みとなっている。
・この他のホットな話題は、韓国メーカーに影響を与える世界のバッテリー事情である。韓国メーカーに影響を与えそうな懸念として、1)韓国製バッテリーの普及率を低下させる可能性のある欧州におけるEV生産の減速と中国製EVの流入、2)インフレ削減法(IRA)の改定につながる可能性のある第2次トランプ政権下における米国自動車産業の変化の可能性の二つが挙げられる。
・しかしながら、CO2排出量目標の強化と、より手頃な価格の自動車の流入により、欧州におけるEV需要は引き続き増加すると予想される。最近の動きとして、欧州委員会が新車の乗用車・小型商用車(バン)の二酸化炭素(CO2)排出基準の算定期間を2025年単年から2025-27年の3年間に延長することを計画している。2025年の欧州のEVの伸びは、当初の計画よりも鈍化する可能性が高い。
・米国では、多くの自動車メーカーが電動化戦略を見直しており、EVの需要が伸び悩む中、EVプログラムを減速させる一方でハイブリッド車(HEV)を追加している。しかしその他の課題もある。インフラ抑制法に基づく連邦政府による購入補助金の受給資格を得るため、EVとPHVで構成するプラグイン電気自動車(PEV)を提供するOEMは、年々厳しくなるバッテリー原材料と部品の調達規則を遵守する必要がある。さらに、米中間の緊張と関税は、韓国のバッテリーメーカーが強い存在感を示す好機となっている。
・GlobalDataが2024年第4四半期に発表したハイブリッドとEVの予測では、欧州の小型車(LV)市場におけるEVは、2024年の12%から2030年には53%まで伸び続け、2036年には83%に達すると予測している。一方、欧州委が乗用車・小型商用車(バン)のCO2算定期間を2025-27年まで拡大する意向であることから、短期的にはEVの成長鈍化が予想される。
・米国では、2030年にはEVが新車販売台数の約30%を占めると予想される。しかし、トランプ政権の政策変更、特に燃費と排ガスに関する法律や税額控除の優遇措置の変更がより明確になれば、この割合は減少する可能性が高い。