古河電気工業 (株) 2015年3月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万円)
  2015年
3月期
2015年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 874,879 867,817 0.8 -
営業利益 27,116 17,873 51.7 -
経常利益 18,710 18,598 0.6 -
当期純利益 10,007 7,355 36.1 -
電装・エレクトロニクス部門
売上高 321,930 299,667 7.4 -ハードディスク用アルミ基板材や電子機器・鉄道車両用放熱部品は売上を伸ばしたが、自動車部品事業において円安の影響により海外工場からの逆輸入製品コストが増加したこと、さらに自動車用バッテリーの主原材料である鉛の価格上昇が収益を圧迫した。
営業利益 12,923 12,923 0.0
金属部門
売上高 117,557 130,254 (9.7) -
営業利益 (1,118) (4,944) - -

海外事業

<タイ>
-古河ASがタイ・バンコク市に設立した東南アジア統括会社で7月から業務を開始したと発表した。新会社では同地域向け製品の設計、営業、調達などの各機能を一極で管理し、顧客対応力を強化する。主要納入先の日系 メーカーに対する商圏の拡大につなげる方針だ。古河ASアジア太平洋(FAAP)は今年2月に設立した新会社で、ワイヤーハーネスの設計や販売統括を事業の目的としている。今後も日系メーカーを中心とした東南アジアでの自動車生産が増加傾向にあることから、新機種向けの部品開発などを東南アジア域内で迅速 に行える体制を整えた。(2014年9月11日付日刊自動車新聞より)

国内事業

-三菱電機メテックス(神奈川県相模原市)から低錫りん青銅「MF202」の技術情報などの開示を受け、当該製品の製造・販売を引き継ぐと発表した。7月の納入開始をめどに準備を整える。同じ製品名で販売を継続し、主に車載用電子部品の高機能材料として自動車分野での拡販を目指す。(2015年5月22日付日刊自動車新聞より)

事業再編

-銅条・高機能材事業部門の貴金属めっき事業を分割し、子会社の古河精密金属工業 (FHE、栃木県日光市) に継承すると発表した。両社で展開している類似事業を一本化することで経営基盤の強化を図り、自動車市場などからの要求に迅速に応えられる体制を整える。相互の技術を融合し、製造可能なめっき種なども拡大する。10月1日を効力発生日とし、古河電気工業が日光伸銅工場 (栃木県日光市) などで手がけている貴金属めっき事業を会社分割してFHEに吸収させる。事業統合によるシナジーを生かすことで、国内外で増えている高機能めっきの需要に対応する。海外では顧客からの現地供給の要求なども強まっていることから、今後は同事業を展開しているタイ子会社のフルカワ・プレシジョン・タイランド (アユタヤ県) の資源も有効に活用していく。(2015年6月6日付日刊自動車新聞より)

-リチウムイオン電池 (LiB) などの材料に用いる電解銅箔の国内生産を縮小する。電気自動車 (EV) 向けの需要などが伸び悩んでいるため、今市東工場 (栃木県日光市) の生産能力を現在の月700ト ンから同300トンに半減させ、銅箔事業の収益改善を図る。同工場はマザー機能や高付加価値製品の生産に特化し、ボリュームが多い製品については台湾の生 産拠点を活用していく。(2015年5月13日付日刊自動車新聞より)

-国内2拠点 (千葉事業所、三重事業所) に分散していた銅荒引線および銅伸線の製造を、2014年3月末に三重事業所へ集約完了したと発表した。銅荒引線および銅伸線は、同社が生産する通信ケーブルや電力ケーブル、巻線、自動車用ワイヤーハーネスなどの主要原材料となる。(2014年5月29日付プレスリリースより)

事業計画

自動車向けめっき事業
-同社グループは、自動車向けめっき事業を強化する。子会社のKANZACC (大阪市北区) が新たに開発したコネクター用銀系特殊めっきの量産を下期から展開し、めっき事業全体に占める自動車向けの比率を2014年度の10%から18年度に50%まで引き上げる計画だ。めっき製品の拡販や高品質化を通じて、銅条や車載コネクターなど、グループ各社が販売する製品群の売り上げ増加にもつなげていく。(2015年4月18日付日刊自動車新聞より)

自動車向け銅条製品
-2018年度までに銅条製品の自動車向け販売比率を現在の40%から60%に引き上げる。自動車はスマートフォンなどの電子機器とは異なり、今後もグローバルでの需要が伸びていく可能性が高いことから、事業成長を継続させるためには自動車分野を伸ばすことが最善だと判断した。コスト低減を追求することで車載機器向けのコネクター材料などのボリュームゾーンの領域を拡大するほか、放熱性や導電性、強度を高めた付加価値の高い製品を拡販していく。二次、三次の部品メーカーとも幅広い接点を持つグループ各社の連携を強め、自動車分野でのサプライチェーンを構築する考えだ。(2015年4月10日付日刊自動車新聞より)

-日光事業所で銅条製品の一貫生産を再開したことを機に、車載向け事業を大幅に拡大する。従来は同事業所の生産量の半分弱だった車載向け製品の比率を2015年度後半から17年度にかけて75%まで引き上げる計画だ。これまではエレクトロニクス分野に主軸を置いてきた特殊機能製品を車載向けにも提案し、ボリュームゾーンでの受注獲得を目指していく。(2015年1月13日付日刊自動車新聞より)

自動車向け平角線の用途拡大
-自動車の小型モーター向けに平角線 (リボン線) の用途提案を強化する。モーターの小型化や高性能化に貢献する技術として、機能性を優先する高付加価値型の部品市場を狙う考えだ。平角線が広く使われているHID (ディスチャージランプ) 用変圧器に加え、パワーウインドーやワイパーなどの超小型モーター向けでの新規採用を目指していく。平角線は帯のような平面に近い形状を持つマグネットワイヤーで、丸線よりも表面積の占有率が高いのが特徴。製造コストは増加するが、導体としての特性は向上できるため、現在は高効率の電圧変換が必要なHIDユニットなどに多く採用されている。(2015年1月22日付日刊自動車新聞より)

バッテリー事業
-古河ASは、自動車用鉛バッテリーの状態を監視するバッテリー・ステート・センサー (BSS) の販売を2020年までに年間600万個に拡大する。13年度実績の90万個に対して、7倍近くに増やす計画だ。電装品の増加でバッテリーの負荷が高まっていることを背景に、年々伸びているBSSの需要を獲得する。世界各国の自動車メーカーからの受注を目指し、グローバルシェアで20~25%を目標としていく。(2014年9月13日付日刊自動車新聞より)

-アイドリングストップシステム (ISS) 用電池の充電状況などを検知する「バッテリーステートセンサー (BSS)」の販売を2020年度までに年間600万台に拡大する。13年度実績の約90万台に対して、7倍近くに増やす計画だ。生産設備を現在の2ラインから10ライン規模まで段階的に増強し、確実な増加が見込まれるISSの需要に対応する。(2014年6月26日付日刊自動車新聞より)

中期経営計画

-2013年、中期経営計画 「Furukawa G Plan 2015」 を策定。対象期間は2014年3月期から2016年3月期。インフラ、自動車市場で事業を拡大するとともに、収益構造、財務体質の改善を図り、売上高は900,000百万円、営業利益は38,000百万円を目指す。営業増益分の75%をインフラ、自動車事業で稼ぐ計画。

-2014年12月、柴田光義社長がグループ事業の近況を報告した。2013~15年度の中期経営計画で目標としている売上高9千億円、営業利益380億円については、2014年2月に日光事業所で発生した大規模な雪害や電力関連の需要低迷、銅箔製品の国内工場集約などにより厳しい現状にあると説明。成長市場にある自動車事業を加速させることで、できる限り目標に近づけていく方針だ。現段階では、「15年度の営業利益は200億円台後半になるだろう」としている。主力のワイヤーハーネスは継続的なグローバル需要の増加をにらみ、ここ1年の間にもメキシコ、インドネシア、中国などで新工場の立ち上げや増産を進めてきた。今後も「常に3年後の市場に向けた投資を展開」し、日系メーカーの海外展開に追従していく。中国など新興国の現地メーカーへの拡販も検討してきたが、「スペックがローエンドすぎる」ことから、現段階では戦略を見送っている。(2014年12月26日付日刊自動車新聞より)

2016年3月期の見通し

(単位:百万円)
  2016年3月期
(予測)
2015年3月期
(実績)
増減
(%)
売上高 910,000 867,817 4.9
営業利益 23,000 17,873 28.7
経常利益 23,000 18,598 23.7
当期純利益 10,000 7,355 36.0


>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

研究開発費 

(単位:百万円)
  2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
全社 16,845 16,599 17,461
-電装・エレクトロニクス 4,263 4,292 4,343
-金属部門 1,157 896 931
-軽金属部門 - - 1,374

研究開発拠点

拠点名 所在地
自動車電装技術研究所 神奈川県
平塚市
横浜研究所 神奈川県
横浜市
メタル総合研究所 栃木県
日光市
Furukawa Electric Institute of Technology Ltd. ハンガリー


-ハンガリーの研究開発拠点との連携を強化すると発表した。今後も市場の成長が期待される欧州地域での自動車事業を拡大するため、グループ間での技術共有化を図っていく。電気絶縁材料の研究を手がけるハンガリー子会社の「フルカワ・エレクトリック・インスティテュート・オブ・テクノロジー(FETI)」との新たな人的交流を展開する。将来的には、米国地域などの欧州以外の研究開発拠点とも連携を強めていく考えだ。(2015年7月2日付日刊自動車新聞より)

研究開発活動

<電装・エレクトロニクス部門>
アルミ電線を使用したワイヤーハーネス
-車両軽量化の要請を背景とした更なる適用部位拡大に向け、高強度なアルミ電線の開発や防食端子などの関連技術開発を進めている。

自動車用バッテリーセンサー
-バッテリー電力を管理することにより自動車のエネルギー利用効率化への貢献が期待されており、拡販および受注活動とともに、高性能化に向けた開発を進めている。また、今後予測される車載電子機器の増加・電動化に対して、電源品質を維持する電源マネージメントシステムに関連した製品の開発を行っている。

24GHz帯を使用したレーダー
-自動車の予防安全システムに用いられる車両周辺監視センサー用に開発を進めている。自動車メーカーの基本的な機能要求を満たすとともに、機能拡張性のある製品開発を推進している。

ヒートパイプ技術
-ヒートパイプ技術を活用した熱マネジメント (均熱・放熱) 技術システムについては、HEV (ハイブリッド電気自動車) など次世代自動車への搭載に向けて、リチウムイオンバッテリーやインバーターなどの発熱量の増大に対応するべく開発を進めている。

-電気自動車(EV)などに搭載されるインバーターやリチウムイオン電池の放熱・均熱化機器に最適な水冷式ヒートパイプを開発したと発表。従来のヒートパイプは溝状のウィックなどを通して熱媒を輸送するが、勾配の大きい上り坂では冷却液が下部に停滞してしまうため、冷却性能を十分に果たせないこと (トップヒートモード) が課題とされている。同社では銅粉末を焼結したスポンジ状のウィックを開発し、毛細管力を高めることで重力に関係なく熱媒を移動させることに成功した。坂道でも、ポンプなどで圧力を加えずに冷却性能を保てるヒートパイプとして、EVやハイブリッド車に向けて提案していく。(2015年6月2日付日刊自動車新聞より)

巻線の絶縁状態の薄膜化

電界方式のワイヤレス給電システム
-非接触の電力給電方法として期待される。

GaN (窒化ガリウム) パワーデバイス
-2014年4月に同製品市場の有力事業者であるTransphorm, Inc. (米国) に出資を行った。これにより両社のGaNパワーデバイス応用製品群の強化、育成を図っている。

カーボンナノチューブ導体
-NEDO (独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構) からの委託事業である省エネルギー革新新技術開発事業「カーボンバンドルをユニットとする新規軽量導体の研究開発」に参画。カーボンナノチューブのみからなる線材について、世界最小値となる電気伝導度の低抵抗化を達成した。

-信州大学と共同で世界トップクラスの導電率を付与したカーボン・ナノチューブ (CNT) 導体の開発に成功したと発表した。この成果は新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) 事業に採択され、今後は車載機器用途などでの実用化に向けた研究を進めていく。開発したCNTは、炭素原子が六角形に結合したシートを円筒状にしたもの。 銅の5分の1の重量で鋼鉄に比べて20倍の強度を持ち、約1千倍の電流密度を有しているのが特長。軽量かつ導電性に優れた同材料を活用することで、電子部品の重量削減や性能向上などを図ることができる。(2015年6月18日付日刊自動車新聞より)

<金属部門>
-自動車の次期ワイヤーハーネス向けにアルミ合金電線を開発し、顧客提案および製品化を進めている。
-銅ナノ粒子を用いたエレクトロニクス向け接合・配線材料としての開発を進め、顧客にてサンプル評価を実施している。
-リチウムイオン電池用電解銅箔の評価技術の確立に取り組み、顧客の要求特性を満たすための銅箔設計指針を構築した。

設備投資額

(単位:百万円)
  2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
全社 25,687 30,674 37,436


<電装・エレクトロニクス部門>
-自動車用電装部品の増産、および自動車用バッテリーの国内生産拠点の集約および増産を目的とした設備投資を主に実施。

<金属部門>
-日光伸銅工場の雪害復旧、および生産設備の維持更新を目的とする投資。

国内投資

-2015年1月から銅条製品の一貫生産を再開した日光事業所(栃木県日光市)で、新たに建設した素条工場の落成式を実施した。車載部品のコネクターやワイヤーハーネスなどの母材となる銅条の製造を手がける日光事業所は、昨年2月の大雪で素条工場の屋根が崩落し、中間材料の素条が生産できない状態が続いていた。約90億円の費用をかけ、2015年1月に生産設備を全面復旧した。(2015年3月30日付日刊自動車新聞より)

-日光事業所(栃木県日光市)での超電導製造装置の試運転・調整期間が終了し、一貫生産を開始したと発表した。(2015年6月25日付日刊自動車新聞より)

海外投資

<インドネシア>
-古河電池は、インドネシアの連結子会社 Furukawa Indomobil Battery Manufacturingが自動車用鉛蓄電池の生産工場を新設すると発表した。約6,000億ルピア (約53億円) を投じて土地、建物、機械などを取得する。同工場は、2015年1月以降に稼働を開始する計画。(2014年7月31日付プレスリリースより)

設備の新設計画

-2016年3月期の設備投資計画は33,000百万円。
-電装・エレクトロニクス部門では、自動車用電装部品等の量産化および増産に12,900百万円を投資する計画。
-金属部門では、伸銅製品の製造設備更新、工場建屋の整備に2,600百万円を投資する計画。