Schaeffler AG 2014年12月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万ユーロ)
  2014年
12月期
2013年
12月期
増減率
(%)
要因
全社
 売上高 12,124 11,205 8.2 -
 EBIT 1,523 1,008 51.1 -
自動車部門
 売上高 8,983 8,164 10.0 1)
 EBIT 1,234 683 80.7 -
自動車部門4事業の売上高
 エンジンシステム 2,266 2,035 11.4 2)
 トランスミッションシステム 3,826 3,322 15.2 3)
 シャシーシステム 1,364 1,313 3.9 4)
 オートモーティブアフターマーケット 1,527 1,494 2.2 -

要因
1) 自動車部門
-2014年12月期の同部門の売上高は前年比10.0%増の8,983百万ユーロ。為替の影響を除くと、売上高は前年比10.7%増となる。

-同部門の地域別売上高は、中国が前年比34.4%増と大幅増収を達成、製品・組織の現地化の進展が寄与した。アジア・太平洋全体では同7.0%増、欧州は同6.9%増、米州は同8.0%増を確保。

2) エンジンシステム事業
-2014年12月期の同事業の売上高は、主力のカムシャフトフェージングシステムとバルブトトレイン部品の伸びにより前年比11.4%増の2,266百万ユーロ。地域別では中国と米州が寄与。同事業の売上高は自動車部門全体の25.2%を占めた。

3) トランスミッションシステム事業
-同事業の売上高は、乾式DCTとアクチュエーターの伸びにより同15.2%増の3,826百万ユーロ。主力のデュアルマスホイールとトルクコンバーターも好調。地域別では中国が大きく寄与。同事業の売上高は自動車部門全体の42.6%を占めた。

4) シャシーシステム事業
-同事業の売上高は、同3.9%増の1,364百万ユーロ。パワーステアリング用ボールねじドライブとパーキングブレーキ関連製品が堅調。地域別では中国と欧州が寄与。同事業の売上高は自動車部門全体の15.2%を占めた。

グループ再編

-2014年10月、Schaeffler Verwaltungs GmbHの完全子会社であるSchaeffler AGが有限会社(GmbH) に改編するとともに、社名をSchaeffler Verwaltung Zwei GmbHに変更。さらに、INA Beteiligungsgesellschaft mit beschränkter Haftungが株式会社 (AG) に改編するとともに、社名をSchaeffler AGに変更。この結果、Schaeffler AGに代わって、同族企業のSchaeffler Verwaltungs GmbHとSchaeffler Verwaltung Zwei GmbHがContinentalの株式を合わせて46%保有することになった。Schaeffler AGとしてはContinentalの株式を保有していないため、Schaeffler AGはContinentalを連結していない。

Mobility for tomorrow 戦略

-2013年後半に策定したMobility for tomorrow 戦略を基づき、「Eco-friendly drives」、「Urban mobility」、「Interurban mobility」、「Energy chain」の4つの領域に注力。

- 「Eco-friendly drives」では自動車部門を通じて燃費向上、排ガス削減に貢献する。主要部品は可変バルブ機構、冷却水温度管理モジュール、湿式・乾式DCT、電子制御モジュールなど。 電動ホイールハブドライブ 「E-Wheel Drive」なども燃費向上、排ガス削減により重要な役目を果たしつつある。

- 「Eco-friendly drives」の一環としてこれまでに「Efficient Future Mobility India」、「Efficient Future Mobility North America」、「Efficient Future Mobility China」、「Gasoline Technology Car (GTC) 」、「System 48V」、「ACTIVeDRIVE」、「Fiesta eWheelDrive」などのコンセプトカーを発表。

Continentalとの協業

次世代ガソリン車 (GTC)
-同社はContinentalとともに2014年5月の第35回ウィーン国際モーターシンポジウムで48Vマイルドハイブリッドシステム搭載の次世代ガソリン車 (Gasoline Technology Car: GTC) を発表。ベース車は1.0L 3気筒ガソリンエンジン 「EcoBoost」 を搭載したFord 「Focus」。以下の部品を採用することでベース車の燃費を17%改善、2017~18年に施行される欧州排出ガス基準「Euro 6」にも対応している。

次世代ガソリン車 (GTC) の主要マイルドハイブリッド部品
サプライヤー 部品

Continental

燃料噴射ユニット
エンジン制御ユニット (ECU)
48Vエコドライブシステム (駆動・発電モーター、48Vリチウムイオン電池、DC-DCコンバーター)
Schaeffler パワートランスミッション
デカップリング式ベルトテンショナー
冷却水総合制御モジュール
電子制御流体クラッチ
Emitec 電気加熱式触媒コンバーター

アジア太平洋事業

-2020年にアジア太平洋地区の売上高を現状の倍となる20億ユーロ (約3千億円) 以上に増やす計画。日本や中国を中心にクラッチやトランスミッション関連製品、48ボルトのハイブリッドシステムなどの受注拡大を目指す。これに合わせて日本の研究開発体制を強化するとともにタイに生産拠点を新設するなど、生産・開発両面で自動車メーカーへの対応力を高めていく。高い伸びが見込めるアジア太平洋地区の売上高比率を現状の10%から15%まで引き上げることで、収益拡大につなげていく。(2014年11月21日付日刊自動車新聞より)

受注

-ホンダと新型「レジェンド」に搭載した湿式7速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)を共同開発、デュアルクラッチなど同社製の主要構成部品が採用された。DCTの採用は「フィットハイブリッド」「ヴェゼル」に続くもので、湿式タイプはレジェンドが初めて。(2014年11月12日付日刊自動車新聞より)

-トヨタ自動車からオートマチックトランスミッション (AT) 向けにエンジンの振動を抑制する遠心振り子式ダンパーを受注。トヨタからの同製品の受注は初めて。来年から供給開始する。燃費性能の向上を目的にエンジンの振動が大きくなる傾向にある。同社が独自に開発した遠心振り子式ダンパーは振り子機構を用いて吸振する技術を取り入れている。エンジンの回転数に応じて周波数が変わるため、低回転域でも優れた振動減衰を可能とする。同製品は2008年から量産を開始しており、メルセデス・ベンツのATやBMWのマニュアルトランスミッションなど欧州メーカーを中心に採用されている。(2014年10月29日付日刊自動車新聞より)

英国プロジェクト「ACTIVE:Advanced Combustion Turbocharge Inline Variable Valvetrain Engine」

-同社の英国子会社は、「ACTIVE:Advanced Combustion Turbocharge Inline Variable Valvetrain Engine」プロジェクトに参加する。このプロジェクトには、英国政府および業界から数百万ポンドが投じられる。参加するのは、同国に拠点を置く11の技術関連団体。Fordの1.0L EcoBoostエンジンに注力し、CO2の大幅な低減に向けた次世代の低炭素技術の導入を目指す。これらの技術には、先進ターボチャージャーシステムや燃焼システム、さまざまなバルブトレイン技術などが含まれる。Fordとそのパートナーが取り組む1億ポンドのプロジェクトには、EcoBoostエンジンのアップグレードに向けて英国政府から13.1百万ポンドの助成金が授与される予定。今回、同プロジェクトに参加する11団体に含まれるのは、Ford、Schaeffler UK、Continental、UEES (Unipart Eberspaecher Exhaust Systems) など。なお、Schaefflerは現在、メカニカルタペットおよび可変カムタイミングシステムをFordの1.0L 3気筒EcoBoostエンジン向けに納入している。(2014年5月23日付プレスリリースより)

受賞

授与者 受賞名 受賞対象
GM Supplier Quality Excellence Award -
Automotive News 2014 PACE Awards 振動を抑制した省エネ型トルクコンバーター
Shanghai GKN HUAYU Driveline Systems (SDS) 2013 Supplier Quality Award -
- Innovation of the Year 電動ホイールハブ駆動「E-Wheel Drive」
- Silver Materialica Design + Technology Award バルブトレイン部品用コーティングシステム「Triondur」

 

開発動向

研究開発費

(単位:百万ユーロ)
  2014年12月期 2013年12月期 2012年12月期
全社 626 611 593
売上に占める割合 (%) 5.2 5.5 5.3

 

研究開発体制

-16の研究開発センターにて、6,387名が研究開発に従事。
-地域別拠点数:欧州 (9)、米州 (4)、中国 (1)、アジア・太平洋 (2)
-2014年の特許登録は2,518件とドイツ国内2位。社内の発明考案は2013年の2,584件から2014年は2,772件に増加。
-イノベーションを支援する経営陣直轄の「Technology Board」を新設。

研究開発拠点

<日本>
-日系自動車メーカー向けの開発体制を強化すると発表。2015年5月に日本国内にある日本法人および研究開発拠点を横浜市内で移転。20年までに敷地面積を現在の3倍にあたる6千平方メートルまで拡大し、従業員数も倍増する。15年中には栃木県宇都宮市にホンダの対応窓口拠点を設ける。さらに日系メーカーへの供給を目的に、タイ・チョンブリ県にエンジンおよびトランスミッション部品の生産拠点を新設。16年上期に操業を開始する。同社のタイでの生産体制は、グループ会社のコンチネンタルの製造拠点の一部を活用して生産している。今回新設するタイ工場は、日系メーカーへの供給をメーンとしている。敷地面積が5万5千平方メートルで、15年上期に建設を開始する。開設当初はクラッチディスクやクラッチ圧力板、ベルトテンショナー、シンクロナイザー用リング、クラッチリリースシステムなどを製造する5本のラインを設置する。(2014年10月30日付日刊自動車新聞より)

製品開発

トルクコンバーター「iTC (インテリジェント・トルクコンバーター)」
-厚みを抑えたオートマチックトランスミッション用トルクコンバーター「iTC (インテリジェント・トルクコンバーター)」を開発。トルコンのタービンとロックアップクラッチを一体化することでトルコン全体の厚みを従来比で約10%薄型化し、制振ダンパーなどを装着できるスペースを確保した。自動車メーカーなどへの提案を積極化し、数年内の量産を目指す。(2014年5月26日付日刊自動車新聞より) >>> 2014 人とくるまのテクノロジー展

小型48V電気駆動モジュール
-小型48V電気駆動モジュールを開発。このモジュールには、クラッチと遊星トランスミッションが内蔵されており、フロントアクスルとリアアクスルのどちらにも取り付けできる。出力は最大12kW。この48Vシステムを使用することで、これまで高電圧ハイブリッド部品を搭載した車両でしかできなかったEV走行が可能になる。例えば、電気を使って発進・低速走行・駐車を行う都市交通の渋滞における「微速走行」、始動時のブーストやコースティング走行などを実現するという。(2014年4月4日付プレスリリースより)

新型ディテントベアリング
-設計に影響を与えることなく設置が可能な新型ディテントベアリングを開発。このベアリングは、設計スペースの確保や、従来のディテントピンおよびロックの形状を採用するのが難しい状況において、代わりにギアシフトフォークをロックすることができる。回転・直線運動をするベアリングにロック機能を組み合わせることにより、ディテントベアリングをトランスミッションの外壁および中央壁部分に組み込むことが可能になった。さらに、ギアシフトフォークにおけるギアの位置の検出やシフトの軌道の測定が必要な場合には、ディテントベアリング内にセンサーを実装することができる。このセンサーベアリングは、特にDCTやAMTなどの自動マニュアルトランスミッション向けとなる。(2014年2月19日付プレスリリースより)

 

設備投資

設備投資額

(単位:百万ユーロ)
2014年12月期 2013年12月期 2012年12月期
全社 943 573 827
-自動車部門 754 441 618

 

海外投資

<ロシア>
-ロシアに初の生産工場を開設。同国のUlyanovskに位置する新工場は、国内外の自動車メーカーおよび鉄道市場向けに生産する。現在、2本の生産ラインでクラッチおよびトランスミッション部品を生産している。従業員数は100名超で、今後300名程度まで増員する計画。(2014年10月13日付プレスリリースより)

<中国>
-中国江蘇省の太倉 (Taicang) 拠点において、第5工場の開所式を実施。2013年4月に建設を開始し、2014年1月の完成後から試験生産を行っている。第3工場を拡張した形で建設された新工場は、主に湿式ダブルクラッチおよび油圧トルクコンバーターを生産する。両製品ともオートマチックトランスミッションの主要部品であり、同社が中国で生産するのは今回が初めてとなる。(2014年4月17日付プレスリリースより)