(株) ブリヂストン 2015年12月期の動向

業績

(単位:百万円)
2015年12月期 2014年12月期 増減率 (%) 要因
売上高 3,790,251 3,673,964 3.2 -
営業利益 517,248 478,038 8.2 -
経常利益 507,303 463,212 9.5 -
当期純利益 284,294 300,589 (5.4) -
タイヤ部門
売上高 3,168,218 3,088,626 2.6 1)
営業利益 472,762 435,837 8.5 -

*ベネズエラ子会社 (Bridgestone Firestone Venezolana, C.A.およびその子会社) を連結から除外し、関連損失435億円を特別損失として計上している。

要因
1) タイヤ部門
<日本>
-暖冬による冬タイヤ需要の減少などにより、乗用車および小型トラック用タイヤの販売本数は前年を下回った。トラック・バス用タイヤの販売本数は前年並みに推移。

<米州>
-北米タイヤ事業において、乗用車および小型トラック用タイヤの販売本数は前年を上回って堅調に推移。トラック・バス用タイヤの販売本数は前年を上回り順調に推移。

<欧州>
-乗用車および小型トラック用タイヤ、並びにトラック・バス用タイヤの販売本数は、前年を上回り好調に推移した。

<中国・アジア・太平洋地域>
-乗用車および小型トラック用タイヤの販売本数は、前年を上回り好調に推移。トラック・バス用タイヤの販売本数は前年を上回り順調に推移。


売却

<ベネズエラ>
-2016年5月、Bridgestone Americasは、ベネズエラにおけるタイヤ製造子会社のBridgestone Firestone Venezolana (BFVZ) をCorimon Groupに売却したと発表。Bridgestone Americasは、2015年第3四半期にBFVZを連結除外しており、今回の売却は他の中南米市場での事業拡大・投資に注力する戦略的決定であるとしている。(2016年5月23日付プレスリリースより)



意匠権侵害訴訟に勝訴

<中国>
-2016年5月、中国の大手タイヤメーカーである三角輪胎に対する意匠権侵害訴訟に勝訴したと発表。 ブリヂストンが意匠権を持つスタッドレスタイヤのトレッドパターンを採用したタイヤを三角が製造、販売していたとして、ブリヂストンは2013年10月、中国長春市中級人民法院に意匠権侵害で提訴していた。この結果、15年7月にブリヂストンの主張が認められ製造、販売の中止、損害賠償金の支払いを命じる判決が下された。さらに、控訴審の吉林省高級人民法院でも16年1月に一審判決を支持するとの判決が出され、今回勝訴が確定した。(2016年5月20日付日刊自動車新聞より)


中期経営計画

-2016年10月、ブリヂストンは、2017年から21年までの5カ年を対象とした 「2016中期経営計画」 を策定したと発表。15年に策定した中期経営計画から事業環境の変化や将来展望を反映し、必要と考える戦略・施策を追加・更新したもの。新しい計画では、 「真のグローバル企業」 と 「業界において全てに 『断トツ』」 を目指してグローバル企業文化の育成やグローバル経営人材の育成、グローバル経営体制の整備を重点項目として推進する。また、技術面では、ICT技術と人工知能 (AI) 技術を活用した最新鋭タイヤ成型システム 「エクサメーション」 を海外工場へ16年内に導入し、競争力の強化を図る。これまでエクサメーションはフラッグシップ工場である彦根工場のみで展開していた。(2016年10月18日付日刊自動車新聞より)

「2016中期経営計画」の主な施策

技術/ビジネスモデルイノベーション
  1. 最新鋭タイヤ成形システム 「EXAMATION」 を海外工場に導入する計画。

  2. 2016年6月、「EXAMATION」 を彦根工場に導入
    -2016年6月、ブリヂストンは、ICT (情報通信技術) を活用した新タイヤ成形システム 「EXAMATION」 を彦根工場に導入した。同社が持つ材料加工の知見や、タイヤ1本当たり480項目にも及ぶ品質データを独自のアルゴリズムにし、AI (人工知能) を活用してタイヤの成形工程を自動制御するシステムだ。システムの構築により成形工程の全自動化を実現したほか、タイヤの真円性を15%以上向上する。エクサメーションで生産するタイヤは17インチ以下の量産タイヤが対象で、今後、国内外の工場にシステムを順次導入していく方針だ。システムを初めて導入した彦根工場は、乗用車用タイヤ専用の製造拠点だ。生産能力は日産5万3千本で乗用車用タイヤの生産工場では同社グループで最大規模となる。一方で、人手不足が常態化しており、自動化による省人化技術の導入が求められていた。同社では、新しい生産システムの導入により、彦根工場全体の生産能力を1.4倍に高めることを目指している。(2016年6月14日付日刊自動車新聞より)
販売網の強化/拡充
  1. 仏Speedy社の買収
    -2016年7月、仏大手自動車整備業チェーンのSpeedy France S.A.の買収手続きを完了。(2016年8月5日付プレスリリースより)

  2. 独プノイハーゲ社 (Pneuhage Management GmbH & Co., KG) との合弁事業
    -2016年7月、ドイツで自動車部品販売事業などを展開するプノイハーゲ・マネジメント (PNH) グループとドイツでのタイヤ販売事業を合弁化することで合意したと発表。現在のブリヂストングループのドイツ国内のタイヤ小売り店は190店舗。440店舗を持つPNHグループとタッグを組み、市販用タイヤの販売を強化する。ブリヂストンの欧州子会社がPNH傘下のプノイハーゲ・パートナーズ・グループ (PPG) に25%を出資するとともに、ドイツでのブリヂストングループのタイヤ小売り事業をPPGに移管する。タイヤ販売事業を合弁化するための欧州委員会の認可取得は9月以降を見込む。(2016年7月2日付日刊自動車新聞より)

  3. 加タイヤ通信販売ソフトウェア会社TireConnect Systemsを買収
    -2015年11月、カナダのタイヤ通信販売ソフトウエア会社を買収すると発表。これに合わせて、2016年3月までに北米でタイヤの通信販売を開始する。自動車需要が好調な北米での販売網を強化することで、さらなる拡販につなげていく。買収は米子会社Bridgestone Americas, Inc.が行い、11月22日までに完了する予定。(2015年11月2日付日刊自動車新聞より)



-2015年10月、ブリヂストンは、2016年から20年までの5カ年を対象とした「2015中期経営計画」を発表し、東京都小平市の東京工場を再編すると発表した。乗用車及び小型トラック用タイヤの生産を16年6月までに国内の他工場へ移管するとともに、研究開発関連の施設を拡充する。投資額は約300億円で、17年に着工し、18年より順次開設していく。同社の主力開発拠点である東京工場の研究開発能力を高めることで、グローバルの競争力強化に結びつける。(2015年10月17日付日刊自動車新聞より)

「2015中期経営計画」の主な施策

技術/ビジネスモデルイノベーション
  1. グローバルR&D体制の最適化
    -10月16日発表:東京都小平市の生産・開発拠点を再構築
    ・研究開発分野を拡充:基礎研究、生産技術および試験・評価方法の研究を強化
    ・社外との積極的な連携を推進するため、人材や技術の交流を促すインターフェイス機能を充実させた施設を新設。
    ・投資額は300億円程度、2017年着工予定。

  2. 同敷地内にある東京工場については、乗用車用および小型トラック用ラジアルタイヤの生産を他の国内工場に移管・集約。航空機用ラジアルタイヤの生産は継続。
タイヤ事業SBU体制の再編
  1. 2006年設立当初6つあった地域SUBを4つに統合
    -2015年9月:欧州と中近東アフリカ、トルコを統合
多角化事業の拡充
  1. グローバル化
    -2016年9月:インドネシア子会社のPT Bridgestone Astra Indonesia (BSAI) が自動車用防振ゴムの新工場の開所式を実施したと発表した。BSAIはPT Astra Otoparts Tbkとの合弁会社で、ブリヂストンが51%、アストラ オートパーツ社が49%を出資し、西ジャワ州プルワカルタに設立したもの。ブリヂストングループが自社生産するインドネシア初の自動車用防振ゴムの製造拠点。生産能力は月産30万個。ブリヂストングループでは、インドネシア市場向け自動車用防振ゴムを、これまでインドネシアで自動車部品を製造するアストラ・オートパーツの子会社に技術供与してきた。今後は、BSAIの新工場に生産を移管する。新工場では新しい生産技術を導入し、高品質な製品を自動車メーカーなどにタイムリーに供給する体制を構築する。新工場で製造する防振ゴムは当面、インドネシアにある完成車メーカー向けに供給するが、将来的にはASEAN地域への輸出も視野に入れている。(2016年9月26日付日刊自動車新聞より)

受注

-2015年12月期の主な受注

製品名 搭載モデル
タイヤ - Bridgestoneブランド
Run Flat Tire 華晨BMW (BMW Brilliance) PHV 「530Le」
REGNO GR-XI 日産 「Fuga」
POTENZA RE-71R トヨタ 「86 GRMN」
POTENZA S001 トヨタ 「86 GT "Yellow Limited Aero package FT"」
POTENZA RE050A スズキ 「Alto Turbo RS」、トヨタ 「Mark X "GRMN"」
TURANZA T002、ECOPIA EP150、ECOPIA EP422 Plus トヨタ 「Prius」
TURANZA T001 マツダ 新型SUV 「CX-3」
DUELER H/L33、DUELER H/L33A トヨタ 新型SUV Lexus 「RX」
ECOPIA EP150 ダイハツ 「Cast」、スズキ 「Solio」、 「Alto Lapin」、 「Alto X grade」、 「Every Wagon」、納智捷汽車 (Luxgen Motor) MPV 「M7 Turbo Eco Hyper」、トヨタ 「Sienta」
ECOPIA R680 スズキ 「Every」
タイヤ - Firestoneブランド
Destination LE2 トヨタ 2016 All New 「Tacoma」
タイヤ以外
後部座席用のシートパッド (座面部)、エンジンマウント用防振ゴム トヨタ 新型 「Prius」



2016年12月期の見通し

(単位:百万円)
2016年12月期
(予測)
2015年12月期
(実績)
増減 (%)
売上高 3,340,000 3,790,251 (11.9)
営業利益 453,000 517,248 (12.4)
経常利益 434,000 507,303 (14.4)
親会社株主に帰属する当期純利益 257,000 284,294 (9.6)


>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)



研究開発費

(単位:百万円)
2015年12月期 2014年12月期 2013年12月期
全社 94,900 94,100 89,000
-タイヤ部門 79,400 79,400 75,100



研究開発拠点

研究開発拠点数 (2016年4月1日現在)

米州 欧州・中近東・
アフリカ・ロシア
中国・アジア・
大洋州
日本 合計
技術センター 1 1 2 6
プルービング
グラウンド
4 1 2 10

国内研究開発施設

名称 所在地
技術センター 東京都小平市
化工品技術センター 神奈川県横浜市
ブリヂストンプルービンググラウンド 栃木県那須塩原市
北海道プルービンググラウンド 北海道士別市

海外研究開発拠点

国名 所在地
技術センター
アメリカ オハイオ州Akron
イタリア ローマ
中国 無錫 (Wuxi)
タイ Pathumthani
プルービンググラウンド
アメリカ テキサス州Fort Stockton
オハイオ州Columbiana
メキシコ Acuna
ブラジル San Pedro
イタリア Aprilia
タイ アユタヤ県Nong Khae
インドネシア Karawang
中国 宜興 (Yixing)



経産省総務省主催、IoT推進コンソーシアムに参加

-2015年10月、経産省総務省により 「IoT推進コンソーシアム」 が発足。IoT推進コンソーシアムはIoTの他、ビッグデータや人工知能などの革新技術に対し、企業や業種の枠組みを超えて活用を推し進めることを目的にしている。自動車メーカーの他、同社、ジェイテクト矢崎総業など部品メーカーも活動に加わる。(2015年10月26日付日刊自動車新聞より)


研究開発

タイヤ解析技術「アルティメットアイ」
-タイヤと路面との接地状況を計測・予測・可視化する技術。2015年2月に発売されたプレミアムブランド 「REGNO」 の乗用車用タイヤ 「REGNO GR-XI」 にこの技術が採用されている。

タイヤセンシング技術 「CAIS (カイズ)」
-2015年11月、タイヤに装着したセンサーを使って路面状態を判別する技術を世界で初めて実用化したと発表。今回開発したタイヤによる路面状態判別技術 「コンタクト・エリア・インフォメーション・センシング (CAIS)」 は、タイヤ内センサーモジュールによって降雪など、路面状況の急激な変化をリアルタイムで感知する。変化する路面状態を車載解析装置で乾燥/シャーベット/積雪など七つの区分で判別する。同社は今回、この技術の試験を共同で進めてきたネクスコ・エンジニアリング北海道とライセンス契約を締結した。路面状態判別技術で収集した路面情報は道路管理事務所がリアルタイムに把握、効率的な雪氷対策作業に活用する。将来的には、危険な路面状態を事前に察知してドライバーに注意喚起するほか、高度な車両制御技術への適用にも結び付ける。 (2015年11月26日付日刊自動車新聞より)

植物素材「グアユール」
-2015年10月、天然ゴムを含む植物 「グアユール」 を原料としたタイヤを開発したと発表。グアユールの栽培からタイヤ製造まで一貫生産したのは同社が初めて。今後、グアユール生産の規模などを検討しながら2020年代前半の実用化を目指す。今回生産したタイヤは、天然ゴムのほぼすべてにグアユール由来のゴムを使用。荷重性能や耐久性などタイヤに求められる基本性能を確保した。 (2015年10月2日付日刊自動車新聞より)

「タイヤマティックス」 を活用した運送ソリューション
-2016年7月、独自のITシステム 「タイヤマティックス」 を活用した運送ソリューションの実証実験をブラジルのリオデジャネイロで開始したと発表した。ブラジルのBRT (バス高速輸送システム) の輸送事業者1社・4台を対象にスタートする。タイヤマティックスは、TPMS (タイヤ空気圧管理システム) で計測したトラック・バス用タイヤの空気圧、温度を車両位置情報とともに、遠隔でリアルタイムにモニタリングできるITシステム。運行中のトラックで、タイヤの空気圧異常や温度の急激な変化を検知すると、車両管理者と運転手に警告することで、タイヤに関する予期せぬ運行トラブルの未然防止に役立てる。(2016年7月22日付日刊自動車新聞より)

製品開発

-2016年1月、スポーツタイヤブランド 「ポテンザ」 の 「アドレナリンRE003」 に、軽自動車向けに専用開発した4サイズを追加して2月14日に発売すると発表。アドレナリンRE003は、モータースポーツ用のタイヤ開発で培った高いブロック剛性と排水性の両立を図ったトレッドパターンを採用している。高速走行時から通常の街乗りまで軽快なハンドリング性能を発揮する。濡れた路面でのグリップ力も高度に追求したシリカ配合ゴムを採用した。今回のサイズ追加により、計41サイズの展開となる。 (2016年1月21日付日刊自動車新聞より)

-2015年6月、ブリヂストンの中国子会社 「普利司通 (中国) 投資有限公司」 は、2015年5月27日、ランフラットタイヤの新技術を搭載した 「DRIVEGUARD 安馳者」 を7月に投入すると発表した。DRIVEGUARDはタイヤの空気圧がゼロになっても、一定のスピードで一定距離を安全走行できるタイヤ。空気圧が0kPaの場合、通常の状況下であれば 80km/h以下の速度で80kmを走行できるとしている。 (2015年6月9日付け各種リリースより)


設備投資額

(単位:百万円)
2016年12月期
(予定)
2015年12月期
(実績)
2014年12月期
(実績)
2013年12月期
(実績)
全社 277,000 253,500 296,300 274,900
-タイヤ部門 250,000 229,800 268,300 255,900


2015年12月期、タイヤ部門の投資内容
-ロシアおよびベトナムにて乗用車用ラジアルタイヤの新工場建設中。
-米国およびタイにて建設・鉱山車両用ラジアルタイヤの新工場建設中。
-既存工場にて高付加価値商品への転換や品質および生産性の向上。


海外投資

<米国>
-2016年3月、Bridgestone Americasは、米国のノースカロライナ州Wilsonにある乗用車用タイヤ工場を拡張すると発表し、起工式を行った。プロジェクト期間は5年間で、投資総額は164百万ドル。第1フェーズと第2フェーズでは約100百万ドルを投じて、生産スペースを167,000平方フィート拡張する。2018年までに1日あたりの生産能力を現在より3,000本増やし、35,000本にする計画。 (2016年3月9日付プレスリリースより)

-2015年12月、米国に自動車用シートパッドの新工場を設立すると発表した。米国でのシートパッド工場は3拠点目で、グローバルでは11拠点となる。2017年3月までに生産を開始し、日系自動車メーカーの北米市場向け車両に供給する。新工場 「Sanborn工場」 は、ニューヨーク州ナイアガラ郡に設立する。敷地面積は約4万5千平方メートル、延べ床面積は約6千平方メートル。現地の不動産会社が建設する建屋を賃借し、同社が500万ドル (約6億円) で生産設備を整える。17年6~8月をめどにフル生産を開始し、17年末までに約60人を雇用する。 (2015年12月18日付日刊自動車新聞より)

<カナダ>
-2016年2月、Bridgestone Canadaは、カナダのケベック州Jolietteにある乗用車・小型トラック用タイヤ工場を拡張すると発表した。プロジェクト期間は5年間で、投資総額は300百万カナダドル (約250百万米ドル) を超える見込み。今回の拡張工事は2016年中にスタートし、段階的に行われる予定。ピックアップトラックやSUV向けの大型タイヤの生産能力を拡大し、市場需要に対応する。プロジェクト全体で、2023年までにJoliette工場の1日あたりの生産能力を現在より3,000本多い20,000本に引き上げる計画。なお、同工場は2014年にタイヤの累計生産数1億5,000万本を達成した。 (2016年2月26日付プレスリリースより)