BorgWarner Inc. 2012年12月期の動向
ハイライト
業績 |
(単位:百万ドル) |
2012年 12月期 |
2011年 12月期 |
増減率 (%) |
要因 | |
全社 | ||||
売上高 | 7,183.2 | 7,114.7 | 1.0 | -北米地域で17%の成長、日本で19%の成長を達成したが、一部欧州での6%のマイナス成長により相殺。 |
営業利益 | 752.9 | 797.5 | (5.6) | - |
エンジン部門 | ||||
売上高 | 4,913.0 | 5,050.6 | (2.7) | 1) |
ドライブトレイン部門 | ||||
売上高 | 2,298.7 | 2,084.5 | 10.3 | 2) |
要因
1) エンジン部門
-2012年12月期の売上高は、前年比2.7%減少の4,913.0百万ドル。
-2011年第4四半期および2012年第3四半期の資産処分、ユーロを始めとした為替差損の影響を除外した場合の同部門の売上高は、前年比4%の増加。主要製品群の大部分がグローバルで堅調に推移したことが奏功した。
2) ドライブトレイン部門
-2012年12月期の売上高は、前年比10.3%増の2,298.7百万ドル。
-Haldex ABより買収したHaldex Traction ABの買収および為替差損(主にユーロ)の影響を除外した場合、同部門の売上高は前年比13%の増加。全ての主要製品群がグローバルで力強い成長を達成したことが主な要因。
受注
-2012年のプレスリリースによる主な受注は以下の通り。<エンジン部門>
製品 | 搭載モデル (エンジン) |
備考 | |
3ステージターボチャージャー | BMW 「M550d xDrive」セダン、「Touring」、「X5 M50d Touring」、「X6 M50d」 (直列6気筒ディーゼル 「M Performance」) | -小型の高圧可変タービンジオメトリー式ターボチャージャー2個と、大型の低圧水冷式ターボチャージャー1個で構成。 -2ステージターボチャージャーを用いたBMW 「740d」と比べて、3ステージターボチャージャーを搭載した「M550d xDrive」は出力が約25%、燃費が8%向上。 |
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2ステージターボチャージャー | 現代 (Hyundai) 「Aero Town」、「Green City」、「Mega Truck」 (5.9L 直列6気筒ディーゼル) | -2ステージターボチャージャーにより、同エンジンは1,400 rpmで最大トルク981 Nmを実現し、欧州排出基準「Euro 5」を達成。 | |
2ステージターボチャージャー | Daimler 「Mercedes-Benz S 250 CDI BlueEFFICIENCY」 (2.2L 4気筒ディーゼル) | -同製品は小型の高圧排ガスターボチャージャーと、大型の低圧排ガスターボチャージャーで構成。 -同製品により、エンジンは1,600 rpmで最大トルクを発揮し、燃費は100kmあたり5.7L (41mpg)を達成。 |
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可変タービンジオメトリー(VTG)式ターボチャージャー | Renault 「Scenic」(欧州モデル)、「Grand Scenic」(欧州モデル) (1.6L 4気筒ディーゼルエンジン 「Energy dCi 130」) | -同エンジンはCO2排出量115g/km (185g/マイル)以下、および従来エンジンに比べて20%の燃費向上の達成に貢献。 | |
ターボチャージャー | 比亜迪汽車(BYD) 「G6」セダン(中国モデル) (1.5L 直列4気筒ガソリン直噴) | -同ターボチャージャー搭載の直列4気筒エンジンは、出力154馬力(113kW)・最大トルク240Nm (177ポンドフィート)を実現し、「Euro 5」を達成。 | |
ターボチャージャー | Ford 「F-150」2012年モデル (3.5L 「EcoBoost」) | - | |
ターボチャージャー | Ford 「Explorer」(北米モデル)、「Edge」(北米モデル)2012年モデル 長安Ford 「Mondeo」(2.0L 4気筒「EcoBoost」) |
- | |
ターボチャージャー | Daimler 「Mercedes-Benz」 (12.8L 直列6気筒 「Blue Efficiency Power」) | -「Euro 6」に対応。 -オンロード商用車のほかオフハイウェイ車にも搭載可能。 |
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ターボチャージャー、エンジンタイミングシステム、カムトルク駆動(CTA)型可変カムタイミングシステム | BMW 「335i」クーペ (3.0L N55 DOHC 直列6気筒) Chrysler 「300S」、「Jeep Wangler」 (3.6L Pentastar DOHC V型6気筒) Ford 「Edge」(2.0L EcoBoost DOHC直列4気筒)、「Mustang Boss 302」(5.0L DOHC V型8気筒) GM 「Buick Regal GS」(2.0L DOHC直列4気筒) |
- | |
カムトルク駆動(CTA)型可変カムタイミングシステム | スバル 「Impreza」2012年モデル (2.0L 「SUBARU BOXER」) | - | |
タイミングドライブシステム | Ford 「F-150」2012年モデル | - | |
可変カムタイミング位相器 | Ford (5.0L 「Coyote」、6.2L 「Boss」) | - | |
低摩擦サイレントチェーン、小型油圧テンショナー | ダイハツ 「Mira e:S」 (660cc 直列三気筒) | -同モデルの燃費30km/L (70.5 mpg)に貢献。 |
<ドライブトレイン部門>
製品 | 搭載モデル (トランスミッション) |
備考 | |
フリクションプレート | Audi 「Q5 Hybrid Quattro」2012年モデル (ZF 8速フルハイブリッドAT) | -今後、Audi 「A6」、「A8」、BMW 「5-series hybrid」に採用される予定。 | |
「DualTronic」コントロールモジュール、統合ねじり振動ダンパー付きクラッチモジュール | 第一汽車 (FAW) 「Hongqi (Red Flag)」 (7速湿式デュアルクラッチトランスミッション) | -「DualTronic」クラッチ・コントロールモジュールは、新型のソレノイドと摩擦材を使用したクラッチパックデザインで、従来の乾式クラッチシステムに比べて燃費・トルク伝達を向上。 | |
1速トランスファーケース | Ford Australia 「Territory」 | - | |
1速トランスファーケース | Ford 「F-150 Harley-Davidson」 | - | |
2速トランスファーケース | Ford 「F-150 Lariat」、「F-150 King Ranch」、「F-150 Platinum」 2012年モデル | -同2速アクティブ四輪駆動システムでは、4-highモード、4-lowモード、フルタイムモード、自動四輪駆動モードを選択可能。 | |
HY-VOチェーン、フリクションプレート、1速トランスファーケース | Ford 「F-150」 (6速AT) | - |
売却
-Federal-Mogulは、同社のスパークプラグ事業を買収することで正式合意したと発表。この事業は、同社が2005年に買収したBERUの1部門にあたる。今回の買収には、フランスのChazelles sur Lyon工場とドイツのNeuhaus工場が含まれる。この2工場の従業員数は約500名。現在、BERUブランドのスパークプラグを生産し、欧州自動車メーカーおよび自動車アフターマーケット向けに供給している。この買収により、Federal-Mogulの年間売上額は約80百万米ドル増加するとともに、スパークプラグの年産能力は350百万ユニット超に拡大する。また、買収する工場は、Federal-Mogulのイグニッション製品ブランド「Champion」を含む同社のイグニッション事業に統合される予定。このブランドの製品には、小型庭園用機器、モータースポーツ、乗用車、商用車、産業用機械で使用する燃焼型エンジン用スパークプラグが含まれる。なお、現在Federal-Mogulは米国・中国・インド・メキシコにおいて、イグニッション部品に関する生産工場を6拠点、テクニカルセンターを3拠点稼動している。一方の同社は、グロープラグ、ディーゼル用冷間始動システム、その他のガソリン用イグニッションシステムなどBERU Systemsの中核製品の拡大に引き続き注力する計画。(2012年7月2日付プレスリリースより)受賞
-BorgWarner Turbo Systemsは、Porscheより2011年度「Supplier of the Year Award」の最優秀賞を受賞したと発表。ガソリンエンジン用の可変タービンジオメトリー(VTG)式ターボチャージャーの開発が評価されたもの。(2012年8月27日付プレスリリースより)-同社はエンジンの燃費向上への貢献が評価され、ダイハツより「Suppliers' Excellence Award」を受賞した。(2012年7月19日付プレスリリースより)
見通し
-欧州を始めとした世界経済の動向は軟調に推移しているが、同社は2013年のグローバル規模の同社製品生産量は前年比わずかに増加すると見ている。同社の最大の市場である欧州においては生産量が前年比で減少するものの、同社製品の普及率が増加するため、2013年の全社売上成長率は2-6%増加すると予測。-同社は、2013‐2015年のパワートレイン事業における新規受注金額が23億ドルに達する見込みと発表した。新規受注のうち、約80%がエンジン関連製品によるものと見られる。対象製品は、ターボチャージャー、イグニションシステム、排気システム部品、エンジンタイミングシステム、可変カムタイミングモジュール、サーマルシステムなど。一方、「DualTronic」トランスミッションや従来のオートマチックトランスミッション、四輪駆動製品などドライブトレイン関連製品が受注の残り約20%を占める見込み。また、2013‐2015年の新規受注額のうち、欧州市場の割合は30%を見込む。2009-2012年では45%を占めていた。アジア市場の割合はこれまでの3年間で35%だったのに対し、2013-2015年は約50%を占めると見られる。なかでも、中国における受注比率は約32%に達する見込み。さらに、米州市場の割合は約20%で、そのうち11%は北米自動車メーカーからの受注が占めると見られる。(2012年11月6日付プレスリリースより)
開発動向
研究開発費 |
(単位:百万ドル) |
2012年12月期 | 2011年12月期 | 2010年12月期 | |
合計 | 265.9 | 243.7 | 185.0 |
売上に対する比率 | 3.7% | 3.4% | 3.3% |
研究開発拠点
-2012年、中国浙江省の寧波 (Ningbo)拠点において新たに生産工場とエンジニアリングセンターを開設した。エンジニアリングセンター 「Ningbo Engineering Center」の建物面積は107,000平方フィート(10,000平方メートル)で、試作品製作室のほかターボチャージャーとエンジンの試験台が2台設置されている。(2012年12月17日付プレスリリースより)-2012年、ブラジル Itatibaに新たにエンジニアリングセンターを建設。
-同社は、中国・上海に新拠点「BorgWarner China Technical Center」を保有している。2012年までに約400人を雇用し、同社最大規模の研究開発拠点となる見込み。研究開発の対象となる製品は、ターボチャージャー、「DualTronic」クラッチモジュール、EGRバルブ、エアポンプ、タイミングチェーン、ファンおよびファンドライブ、ウォーターポンプ、イグニッションシステム、トランスミッションソレノイドおよびコントロール、フリクションプレート、4WDシステムなど。
製品開発
デュアルコイルイグニッションシステム-BorgWarner BERU Systemsは、デュアルコイルイグニッションシステムの開発を行っている。プラグトップイグニッションコイルと同様に、この新型システムは1つのハウジングに2つのイグニッションコイルを収納し、そのハウジングが各シリンダー内のスパークプラグに直接接続する。現在、複数の大手自動車メーカーと試験・開発を行うなかで、このシステムは点火遅れを大幅に改善するとともに、様々なエンジン速度やエンジン負荷における点火タイミングの精度が向上。さらに、シングルスパークモードまたはマルチスパークモードを選択できる。同社は、この新型イグニッションシステムに関して、12V、40V、50Vの3種類を開発する計画。(2012年11月20日付プレスリリースより)
「I4」エンジン用カム位相器
-同社は、「I4」エンジン用のカム位相器の新製品群により、可変カムタイミング(VCT)システムを向上させる。これらのカム位相器はモジュラー設計で、カムトルク駆動(CTA)位相器や中間ロック付ねじり補助(TA)位相器などが含まれる。それぞれの位相器には、センターボルトとスプール弁が一体化され、小型化および設置の簡素化に貢献している。この技術は2015年に、大手自動車メーカーのディーゼルおよびガソリンエンジン向けに発表される予定。なお、生産は東欧における新たな生産施設で行われる。(2012年10月5日付プレスリリースより)
設備投資
設備投資額 |
(単位:百万ドル) |
2012年12月期 | 2011年12月期 | 2010年12月期 | |
合計 | 407.4 | 393.7 | 276.6 |
売上に対する比率 | 5.7% | 5.5% | 4.9% |
海外投資
<中国>-同社は、中国浙江省の寧波 (Ningbo)拠点において新たに生産工場とエンジニアリングセンターを開設した。新工場では、20社超の顧客による50を超えるプロジェクト向けに、Morse TEC製の可変カムタイミング(VCT)システムやエンジンタイミングシステムの生産および試験を行う。工場の生産スペースは177,000平方フィート(16,500平方メートル)。一方、エンジニアリングセンター「Ningbo Engineering Center」の建物面積は107,000平方フィート(10,000平方メートル)で、試作品製作室のほかターボチャージャーとエンジンの試験台が2台設置されている。(2012年12月17日付プレスリリースより)
<ブラジル>
-2012年、同社はブラジル Itatibaにエンジンおよびドライブトレイン部品の製造拠点を新設した。