愛知製鋼 (株) 2016年3月期の動向

業績

(単位:百万円)
2016年
3月期
2015年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 214,120 240,647 (11.0) -主力製品である鋼材・鍛造品の需要が弱含みだった。
-2016年1月8日に発生した、同社知多工場の爆発事故の影響で、減収。
営業利益 5,883 10,616 (44.6) -原材料・エネルギー価格の下落があったものの、販売数量の減少や販売価格の値下がりがあった。
-知多工場爆発事故を受けた代替生産に伴うコストアップ等により、減益。
経常利益 5,835 11,141 (47.6) -
親会社株主に帰属する当期純利益 20 6,023 (99.7) -特別損失として、爆発事故で損壊した設備の復旧費用など4,426百万円を計上したことなどにより、減益。
鋼材事業
売上高 94,321 114,808 (17.8) -知多工場爆発事故の影響を含めた販売数量の減少と、販売価格の値下がりにより、減収。
営業利益 6,157 8,320 (26.0) -
鍛造品事業
売上高 102,248 108,976 (6.2) -販売数量の減少と、販売価格の値下がりにより、減収。
営業利益 (1,217) 1,195 - -
電磁品事業
売上高 13,495 12,665 6.6 -
営業利益 416 642 (35.2) -

新製品受注

-従来より強度を5割高めたコンロッド用鋼を開発し、トヨタ自動車が一部改良した「Auris」に搭載している新型ターボエンジン向けに供給を開始したと発表した。トヨタと共同開発したもので、コンロッド鋼の大幅な技術革新は約20年ぶりという。同等の排気量クラスでコンロッドを平均15%程度軽量化でき、環境性能の向上にも貢献する。今後1年間で5億円の販売を見込んでおり、長期ビジョンの最終となる2020年には30億円に引き上げる計画だ。(2015年4月8日付日刊自動車新聞より)

-上記コンロッドはトヨタ 「Lexus NX200t」および 「Lexus RC F」でも採用されている。同社の「鍛鋼一貫」のプロセス開発を駆使し、世界最高レベルの強度と現用鋼と同等の加工性の両立を実現した。


生産動向

-2015年11月、無段変速機 (CVT) 用熱間鍛造プレスラインを新設すると発表した。本社地区の鍛造工場 (愛知県東海市) に2本の生産ラインを着工し、2017年1月の操業開始を目指す。生産能力は2本合わせて月産約30万個。現在は既存ラインで月約29万個を生産しており、新ライン稼働に合わせ一部を移管していく。新ラインと合わせた生産能力は月36万個となる見込みで、現状に比べて2割程度能力を高める計画だ。新ラインには38億円を投資する。(2015年11月17日付日刊自動車新聞より)

-2015年10月、鋼材の生産工程を抜本改革する活動 「鋼材4Sリエンジ (Simple, Slim, Short, Straight Re-engineering)」 で検査工程に当たる精整工程の改善に着手したと発表した。同改革は5段階で進める計画で、今回が3段階目の取り組みとなる。設備投資額は30億円で、2017年1月の稼働を目指す。検査工程の流れを改良するほか、受注が増えている鋼材のサイズ域の設備を増やすなどして検査能力を現状から1割高めて月1万3千トンに引き上げる。主力の知多工場 (愛知県東海市) の生産性向上や出荷のリードタイム短縮を実現し、効率的に製品の供給力を高める。(2015年10月22日付日刊自動車新聞より)

-国内でめっき品の生産を拡大する。知多工場 (愛知県東海市) の生産能力を増強するほか、岐阜工場 (岐阜県各務原市) にもラインを設置し、それぞれ2016年に稼働させる。投資額は総額で数十億円を予定しており、生産能力を現状に比べ倍増させる。生産を増やすのはインバーターの冷却部品に使われる金めっき品。グループのトヨタ自動車がハイブリッド車 (HV) の設定車種を拡大していくことに伴い、HV用部品に使われるめっき品の需要が増える。能力拡大に合わせて生産拠点を分散し、災害時にも供給できる体制にする。(2015年6月4日付日刊自動車新聞より)


2020ビジョン

2021年3月期、数値目標

  • 連結売上高:3,000億円
  • 営業利益:  200億円


-ビジョン実現のための施策

課題 施策
「安全・安心」 の再構築 ①よいやり易い作業への手順見直しと作業手順・ルール遵守のための徹底した教育による再発防止
②製造現場でのロックアウト化 (不意の設備起動防止) やフェールセーフ化による安心な職場づくり
③顧客工程を含む在庫の一元・一貫管理と、生産リスクに備えたBCP (Business Continuity Plan:事業継続の対応策)、BAP (Backup Action Plan:代替生産対応) の再構築
基幹事業の競争力強化

①2020ビジョン達成を見据えてのZZZ200 (*1)の着実な実行と原価の見える化の加速により、収益力を強化。

(*1) ZZZ200 (トライゼット200): 「分数経営」 という考え方。分母は原価、分子は売上・利益。どれだけムダ・ロスなく効率よく生産・販売しているかの指標。
②4Sリエンジ (Simple, Slim, Short, Straight Re-engineering) をはじめとする計画的設備投資のやり切りにより、整流化、モノづくり改革の効果を発揮する。
③開発初期段階からの顧客との協働により、 「TNGA (Toyota New Global Architecture)」 に対応した着実なモノづくりを行う。
④タイをIMV (Innovative International Multi-purpose Vehicle) の重要なグローバル供給拠点と位置付け、新しい鍛造設備を導入。
⑤日本をマザー工場として、フィリピン、インドネシア、中国、アメリカを含めた最適なサプライチェーンを確立し、BCP (Business Continuity Plan:事業継続の対応策)、BAP (Backup Action Plan:代替生産対応) を考慮した強固なグローバル生産体制を構築する。
グローバル展開の強化 ①海外鍛造拠点の限量経営 (限りある生産量、限りある資源で効率よく経営すること) の徹底による経営基盤の改革と安定収益の確保
②ウッシャー・マーティン社 (Usha Martin Limited) (インド西ベンガル州コルタカ) との提携強化により、グローバルでの鍛鋼一貫効果の実現。
新事業による収益体質強化 ①同社独自の 「オンリーワン」 技術・商品を活かした技術開発・新商品企画の積極的展開による、次世代への対応
②ステンレス商品の特性や魅力の市場への浸透により、インフラ再構築や水素社会への対応
③電磁品のブランド力・安定供給体制など強みを活かしたビジネスの発掘・拡充により収益拡大

  • 磁石事業:自動車車モーターへの展開
  • センサー事業:ローム社との提携により、競争力のある磁気センサーの開発
  • HV用放熱部品:大きなシェアを保有。PHV、EV、FCVの普及につれ、数量増を見込む。



2017年3月期の見通し

(単位:百万円)
2017年3月期
(予測)
2016年3月期
(実績)
増減
(%)
売上高 213,600 214,120 (0.2)
営業利益 12,000 5,883 103.9
経常利益 11,500 5,835 97.1
親会社株主に帰属する当期純利益 7,500 20 -


>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

研究開発費

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
鋼材事業 2,154 2,204 2,049
鍛造品事業 57 116 177
電磁品事業 1,071 1,216 1,244
合計 3,282 3,538 3,471

研究開発体制

-2016年3月31日現在、研究開発人員は約230名。

研究開発活動

鋼材事業
-主な開発の成果は以下の通り:

  • エンジンの軽量化や燃費向上に貢献するクランクシャフトやコンロッド用鋼の研究開発
  • 駆動伝達ユニットの軽量化や高出力化に貢献する高強度歯車用鋼および低コスト化に貢献する省合金歯車用鋼 (モリブデン含有量を低減) の研究開発
  • 水素社会に対応する高圧水素用ステンレス鋼 「AU316L-H2」 の省合金化、低コスト化をはかる高圧水素用ステンレス鋼の更なる研究開発

鍛造品事業
-主な開発の成果は以下の通り:
1) 鍛造プロセスの高効率製造・低コスト化

  • CVTシャフトのショットブラスト工程および機械加工工程の改善による生産性向上
  • 小型クランクシャフト専用4500Tプレスの適用拡大と大型クランク用6000Tプレスの集約
  • グローバル展開を見据えた、アップセッタ代替工法であるスクリュー成形によるリアアクスルシャフトの適用拡大
  • 熱処理炉の炉内断熱強化による省エネルギー・低CO2化

2) 鍛造品の高精度・低コスト化

  • 高精度パーキングロックギヤ成形のラインナップ拡大
  • 鍛造金型の長寿命化を目的とした表面処理技術開発と適用部品拡大

電磁品事業
-主な開発の成果は以下の通り:

  • MIセンサー、モーター用磁石、車載電子機器用放熱部品の開発
  • 次世代自動車向け高効率モーター用磁性材料技術 (NEDO委託業務組合) に参画し、次世代の磁石開発に取り組んでいる。
  • MIセンサーの開発ではローム株式会社との技術連携は計画通り進んでおり、両社のシナジーを発揮したMI素子の販売拡大やMIセンサーの特長である高精度・省電力を活かした次世代に向けた商品開発に取り組んでいる。



設備投資額

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
鋼材事業 8,942 4,721 3,199
鍛造品事業 4,752 5,967 7,730
電磁品事業 1,194 2,003 1,960
その他 520 61 41
合計 15,408 12,752 12,930


鋼材
-製造設備の合理化および維持更新・環境対応等に投資。

鍛造品
-生産能力増強および製造設備の合理化および維持更新等に投資。

電磁品
-生産能力増強等に投資。

設備の新設計画

(2016年3月31日現在)
事業所名
(所在地)
事業の
種類
設備内容 投資予定
総額
(百万円)
着工 完了 完成後の
増加能力
知多工場
(愛知県東海市)
鋼材ほか 製鋼設備、圧延設備ほか 11,986 2014年
2月
2018年
5月
*
刈谷工場
(愛知県刈谷市)
鋼材 圧延設備ほか 502 2015年
6月
2018年
9月
*
鍛造工場
(愛知県東海市)
鍛造品 鍛造品生産設備 9,775 2013年
12月
2019年
3月
*
岐阜工場
(岐阜県各務原市)
電磁品 電子機能材料・部品製造設備ほか 1,569 2015年
12月
2021年
3月
*
関工場
(岐阜県関市)
電磁品 磁石応用製品製造設備 72 2015年
11月
2017年
9月
*
電子部品工場
(愛知県東海市)
電磁品 電子機能材料・部品製造設備ほか 13 2016年
3月
2018年
3月
*

*設備完成後の生産能力は、2016年3月末とほぼ同程度となる見込み。