分析レポート シート (欧米市場編)

シート (日本市場編)をみる

本稿では、製品としてシートアッセンブリー(ASSY)を基に、主要構成部品であるシートフレーム、アジャスター、リクライナーおよびシート表皮を扱う。

欧州および米州にて現在生産されている(直近まで生産されていたモデルも一部含む)モデルを扱う。Ⅳ項の製品搭載状況において、ASSYと主要構成部品のサプライチェーンが把握できるようモデルごとにASSY-構成部品の組合せを掲載している。またASSYのサプライヤーが不明でも構成部品のサプライヤーが判明している場合も搭載状況に掲載する。

1) 世界事業拠点展開状況

• シートの世界市場は、サプライヤー上位10社で市場の約90%を占めている。
• 上位10社の内訳は欧米系5社、アジア系5社となっている。
• 本稿では欧米系サプライヤー4社を主な対象とするが、5社のうちの1社独BroseはシートASSYの生産はしていないため、米Adient (旧 Johnson Controls)、米Lear、仏Faurecia、米Magna Seatingの4社のシートASSY事業を中心に述べる。
• アジア系のうち4社が日系であり、これらは日本市場編レポートで扱う。(トヨタ紡織は欧米市場にもビジネスを有し世界市場第2位であるが、系列であるトヨタ自動車向けが主であるため、本稿では扱わない。)
• 自動車部品の中で容積が大きい部品群であるシートASSYおよびシート関連部品の生産拠点を世界各地に確保し、JIT体制(Just_In_Time)を整えOEMのグローバル展開に応えることが各サプライヤーに求められている。
• 米系の米Adient (旧 Johnson Controls)、Lear、Magnaは以前よりグローバル展開を進めており、生産体制の整備が進んでいる。
• 欧州系のFaureciaは、過去の主力市場は欧州であったが、2012～2013年の2年間で米州・アジアに生産拠点・開発拠点を相次いで開設し、積極的な投資を行ってきた。
• グローバル展開を進める中で、特にアジア地域では日本・中国・東南アジア各国市場に対し現地有力サプライヤーと提携・合弁によりパートナー関係を構築している。(以下の事例は日本市場)
  • Adient: トヨタ紡織、タチエスと合弁事業
  • Lear: タチエス、日本発条(NHK)と合弁会社
  • Faurecia: 日本発条(NHK)と合弁会社
  • Magna: 難波プレス工業と合弁会社
• 大手各社は、シート事業や部品事業の買収を2012年初頭までは積極的に展開していたが、2013年以降は落ち着いてきている。しかしながら、2015年から2016年にかけてシート事業の大きな変革期を迎えたのがシート関連事業でトップ企業であった米Adient (旧 Johnson Controls)であった。
  
  • シート事業を除く内装部品事業(競合先多かつ低利益率)を中国の合弁企業へ移管
  • シート事業は新会社“Adient (アディエント)”として分社化し、スピンオフによる財源確保を狙う
  • Adient分離後のJCIはパワーソリューションズ部門およびビルディングシステム部門に特化

注)シートおよびシート関連部品の生産拠点を記載。但し、Adientについては、一部内装部品 (インストパネル・ドアパネル・コンソールなど)の生産拠点を含む。

Adient plc (旧 Johnson Controls Inc.)

事業概要

• Adient plcは、2016年10月31日付で米国Johnson Controlsより自動車用シートおよび内装部品事業の分社化が完了し、ニューヨーク証券取引所に上場した。
• 自動車部品グローバル売り上げで分社化前の旧 Johnson Controls時代は世界第7位(FY2015)であったが、独立後のAdientは売上高世界第12位(FY2016)にランクングされている。シートASSY世界シェア25～30%で、シート事業売上額16,616百万ドルはともに自動車用シートのトップサプライヤーとなっている。(2016年9月期)
• 2016年10月の分社化の時点で全従業員数は75,000名、33カ国に230の生産・組立拠点を有する規模である。中国市場では、17のシート合弁会社が32都市に60の生産拠点を運営。
• 米国系企業であるが、グローバル企業らしくシート事業の主要顧客は欧米日の主要OEMとなっている。
• シート事業のグローバルシェアトップを維持するため、2011年以降分だけでも買収に10億ドル以上を費やし規模拡大によるビジネス戦略を執ってきた。シート事業部門は"Johnson Controls"からのスピンオフによる財源確保を狙い、発足した新会社Adientの事業となった。
  • 2013年9月、HomeLink事業をGentex社へ売却済
  • 2014年7月、ボディエレクトロニクス・インフォテインメント等の事業をVisteon社へ売却済
  • 2015年7月、シートを除く内装部品を中国の延鋒汽車飾件系統 (Yanfeng Automotive Trim Systems)との合弁企業、延鋒汽車内飾系統有限公司 (Yanfeng Automotive Interiors Co., Ltd. 本拠地: 上海)へ移管した
  • 2016年10月、JCIのシート事業を担う新会社“Adient”が発足し、ニューヨーク証券取引所に上場した。

生産拠点

• 2012～2013年の過去2年間でJVを含め10拠点の工場新設・拡張・子会社化の投資を行った。2014年以降のシート部門事業所としての新規開設は以下の1拠点のみ。 2014年2月、メキシコ: 成形ポリウレタンフォーム
• 2016年10月の分社独立以降の新規開設は以下の1拠点のみ。 2017年6月、マケドニアのStrumica技術開発ゾーンでシートカバーを生産する新工場を開設した。新工場の面積は12,500平方メートル、主に欧州市場の顧客の需要に応える目的で開設された。建設の初期投資としては、20百万ドル以上が投じられ、今後1300人以上のスタッフを雇用する予定である。これに続く生産設備投資については、今後順次明らかになってくるものと思われる。
• 中国: シート事業を含む自動車部品部門の生産拠点を57から68拠点に今後数年間で増加させる計画を2013年9月に発表したが、内装部品の合弁企業への移管、シート事業のスピンオフ新会社への移管となり計画は見直されると思われる。

開発拠点

• 2014～2015年の過去2年間での欧米地域における開発拠点の顕著な投資は無く、開発拠点動向は中国のみであったが、2016年10月の分社独立後には米国、中国で開発部門を含む新オフィスの開設を行っている。
• 中国: 2017年1月に上海に新オフィスを開設した。上海のビジネス地区の中心に位置し、従業員数は約280名で、財務、法務、IT、HR、調達、品質管理、プログラムマネジメント、事業開発、経営およびR&Dなどの本社機能を有する。
• 米国: 2016年11月にカリフォルニア州San Joseに西海岸オフィスを開設した。新オフィスは、既存および新規顧客向けにコネクテッドカーおよび自動運転に焦点を当てた研究開発拠点となる。事業開発、製品開発および工業デザインの部門に約25名が従事し、今後、自律走行、電動化、軽量シートおよび消費の個別化に対応する製品と技術に向けた投資拡大の予定である。

Lear

事業概要・生産拠点

• 自動車部品グローバル売り上げで世界第10位(FY2016)、シートASSYでは世界市場シェア15～20%かつ部門売上額14,356百万ドルはAdientに続く米国に本拠地を置く大手シートサプライヤー。(2016年12月期、トヨタ向けが多いトヨタ紡織を除く)
• 事業構成はシート事業と電装事業に大別され、売上における部品を含めたシート事業の比率は77%(2016年12月期)と高く、そのため企業規模に対してグローバルシート市場での上位シートサプライヤーの位置づけにある。
• シート事業の主要顧客はGM、Ford、BMW、FCA、VWと米国系・独系に強みを持つ。
• 2015年末以降、シート事業に対し積極的な生産投資を行っている。新工場2拠点を既に開設し、さらに2拠点を今後開設する計画を発表している。
  
  • [開設] メキシコ: 2017年5月、45番目となる工場をZacatecas州Caleraにシートカバーを生産する” Lear Mexican Trim Operations”を開設した。投資額は21百万ドル、初期の従業員数は1,300名で、2018年には9.5百万ドルを追加投資して工場を拡張し、600名を新規採用する予定。2017年末までにメキシコ国内の従業員数は総勢56,000名に達する見込み。
  • [開設] ハンガリー: 2015年12月、Szolnok工業団地にレザー裁断工場を開設した。新工場は2004年に建設された既存のレザー工場に向かい合った立地にある。面積は16,000平方メートル、これにより生産スペースが2倍となった。Lear傘下のEagle Ottawaが運営しており、欧州の高級自動車メーカーを主にレザー部品を納入している。2工場合わせて2,000名超の従業員が勤務している。
  • [拡張計画] 米国: 2016年7月、アラバマ州VanceのMercedes-Benz向けシートの生産拠点を拡張する発表をした。現在、｢Mercedes-Benz C-Class｣向けのシート生産に約140名が勤務しているが、今後SUVである｢GLE｣や｢GLS｣向けシートの生産開始時には535名まで増員される計画である。
  • [開設計画] 中国: 江蘇省揚州 (Yangzhou) にレザー加工工場を建設することを発表した。新工場の敷地面積は56,700平方メートルで、建物面積は32,000平方メートル、従業員数は2018年には約300名となり、生産能力の拡大に合わせて約700名まで増員する見込み。今後の拡張に向けて、隣接する28,000平方メートルの土地も確保し、中国における売上急増と事業拡大をサポートする。
• 買収: 2017年5月、フランスに本社を置くGrupo Antolinの自動車用シート事業の買収が完了した。取引額は286百万ユーロ。Grupo Antolinのシート事業の売上高は年間約300百万ユーロ、欧州および北アフリカの5カ国で12カ所の生産拠点と2カ所の研究開発センターを持つ。従業員数は2,273名。

開発拠点

• リエゾンオフィスを含む管理/テクニカルサポート拠点は世界34拠点(2015年12月現在)、米系であるが欧州・アジアに開発拠点を多く有している。
• 研究開発の中核拠点は米国ミシガン州Southfieldのグローバルイノベーション・テクノロジーセンター、他に世界6拠点に先進技術センターを有す。
• 2016年内にイノベーション・デザインセンターの設立を米国Detroitに準備中で、自動車分野におけるコンセプト開発の中心となり、独自のファブリック・レザー・縫製技術を用いて次世代の自動車シートや内装部品を開発する。
• 中国: 上海楊浦区(Yangpu District, Shanghai)でアジア太平洋地区本社及びテクニカルセンターの起工式を行った。この本社ビルの敷地面積は2.8万平方メートルで、管理オフィス、製品研究開発センター、エンジニアリング・テストセンター、アジアイノベーションワークショップなどで構成される。最新の設備を用いてスマートシート、ＥＶ・ＰＨＶ関連製品、配電システムなど自動車シート、電装部品の開発を行う。また複雑なゲートウェイモジュールや最新のコネクテッドカー技術の開発も行う。

Faurecia

事業概要

• 自動車部品グローバル売り上げで世界第9位(FY2016)、シートASSYではシェア10～15%かつ部門売上額6,607百万ユーロは、規模ではLearに続く仏系サプライヤー。(2016年12月期)
• 事業区分は、売上額順に排気コントロール、シート、内装部品、外装部品。
• 売上における部品を含めたシート事業の比率は35%(2016年12月期)であり、企業全体売り上げではライバル米Learを超えているが、シートビジネスではシート事業比率が高いLear(同77%)の後塵を拝している。
• 部品レベルではフロントシートフレームおよびメカニズムがJohnson Controls (JCI)、Lear、トヨタ紡織などを抑えてトップサプライヤである。
• 仏系サプライヤーであることからPSA・Renault・VW/Audiなどフランス・ドイツのOEMに対しビジネスの強みを見せてきたが、近年は生産拠点・開発拠点とも中国・インドなどアジア市場にウェイトを置き始めている。特にRenaultとアライアンス関係にある日産へのビジネス展開が著しい。
• 新商品の開発に継続して積極的であり、軽量化やスマートシートを開発している。
• カバーに彫刻模様を施す技術｢カバーカービング技術 (Cover Carving Technology: CCT)｣を用いたフロントシート用軽量バックパネルを開発した。
• ワンタッチで2列目・3列目の任意のリアシートを自動で折り畳める機能シートを開発し、“Renault Espace”に採用され、2014年パリモーターショーにて公開した。
• 軽量化: メタル/コンポジット材のハイブリッド部品、中国一汽鋳造との提携によるマグネシウム合金製フレームを採用した。(スチール製重量比25%減)
• 新商品開発: GPSを利用し道路状況・運転状況に応じてシートポジションをドライバーに最適化する“SmartFit”コンセプトを公開した。

生産拠点

• 2013～2015年の3年間における工場新設は前年同様に中国・インド・インドネシア、韓国などアジア市場に引続き投資している。一方、アジア以外では2014年第3四半期に北米(メキシコ・米国)へ現地OEM向け生産工場2拠点を新設している。
  • 中国: 日産、DPCA(神龍汽車)向けに、シートフレーム・シートASSYの生産拠点を湖北省に2013年末に開設
  • インド: 日本発条(NHK)ならびにインドのクリシュナグループとの合弁シート生産拠点をチェンナイ市郊外に設立し日産向けにシートを供給、2013年末より稼働
  • インドネシア: 日本発条(NHK)との合弁シート生産拠点をジャワ州に設立、2014年春より日産向けにシートの納入開始
  • 韓国: 現代自動車、ルノー三星、GMコリア等に供給するためのシートフレーム工場を2015年に慶尚北道永川市 (Yeongcheon)に開設
  • メキシコ: メキシコ日産向けにフロントおよびリアシート一式を生産するシート工場を2014年9月にプエブラ州Huejotzingoに開設
  • 米国: GMのピックアップトラック向けシート工場を2014年12月にミズーリ州のWentzvilleに開設
• モロッコ: 直近の2016年以降の生産拠点新設は排気コントロール関連が主であったが、モロッコのSale(サレ)にシート工場を2017年7月に新設した。投資額は170百万ディルハムで、広さ12,800平方メートル、1,300名の雇用を創出する。将来的にはさらに500名の従業員を追加する予定である。生産能力はレザー/ファブリックシートカバーを日産約10,000個、主にPeugeot「3008」および「5008」向けである。
• 今後の大きな生産設備投資として、中国事業の売上高を2018年までに14年比約2倍の40億ユーロ以上(約5920億円)に引き上げる中期目標を2014年11月に発表した。排気システムとシートビジネス中心に生産拠点を38カ所から55カ所に、エンジニアを800人から1,200人以上へ増員する計画を示している。

開発拠点

• 2013～2017年の最近5年間における新規開設はフランス、中国、メキシコ、日本
• フランス: Brieres-les-Scellesの技術センターに、自動車用シートカバーの専門技術センター｢CoverTech｣を建設し、2015年12月から稼働している。｢CoverTech｣の開設により自動車用シートカバーの設計、切断、縫製、取付の技術や工程に関して新たな境地に踏み出す考えである。
• 中国: シートASSY工場に生産工程技術を主としたシート開発センターを2013年末に湖北省の生産拠点に併設
• メキシコ: VW、日産、Chryslerなどメキシコに拠点を持つOEM向けのシート開発拠点を2014年にMexico Cityに開設
• 日本: 日産自動車向け開発拠点を2016年に神奈川県に開設

Magna Seating

事業概要

• カナダを本拠地とする小物部品からパワーユニット・車体組み立てまで幅広い事業をグローバルに展開しているメガサプライヤーMagna Internationalのシート事業部門が、米ミシガン州ノバイ市に本部を置く“Magna Seating”である。シート事業の生産品目はシートASSYのみならず、メカニズム、ストラクチャ、シートフォームなどの部品も生産しているため、米3社とFiat向けシートASSYのTier-1サプライヤーに対してTier-2の役割もあわせ持っている。
• 数多くのM&Aや合従連衡を経て規模拡大化してきている代表的サプライヤーのひとつで、近年は変速機の名門サプライヤー独Getragを買収したことで知られる。シート事業部門は最近5年間でブラジル“Resil Minas”、アルゼンチンの“Pabsa S.A.”、ドイツの“Vogelsitze GmbH”の買収をおこなった。また、シート事業が属していた内装部品事業部門が、シート事業を除いてスペインの“Grupo Antolin”へ2015年に売却された。
• Magna Internationalの自動車部品グローバル売り上げは世界第3位(FY2016)であり、シートビジネスを有するサプライヤーとしては最大の企業であるが、他の大手シートサプライヤーと比較するとシート部門単体のビジネス規模はMagna本体の巨大さの割には小さく、シート部門売上額5,079 百万ドル(2016年12月期)は5～6位の規模である。これは米国デトロイト3社にはシートASSY・ビジネスを有しているが、欧州の主要OEM各社へ入り込めていないこと、中国市場への展開が遅れている(Chrysler、Ford、Volvoのみ)ことが、中堅規模に甘んじている大きな要因と考えられる。
• Fordとの共同開発により従来のスチール製プレス部品と比較して34%軽量化した炭素繊維サブフレームのプロトタイプの開発中であることを2017年3月に発表した。従来品に比べ部品数を87%削減、スチール製の45部品から6部品（2つの成形部品と4つの金属部品）に削減に成功した。現在Fordによる車両テストを行っている。

生産拠点

• シート部門の生産拠点は部品工場・合弁を含め世界48工場(北米19・南米6・欧州15・アジア8)。グローバル企業であるMagnaではあるがシート事業に関してはアジア展開に遅れをとっていた。しかし、2014年第3四半期～2016年第1四半期の約2年の間にアジアに4拠点を開設(中国2拠点・インド2拠点)、中国では従来のChrysler向け3工場に加え、Geely傘下のVolvo向け、長安Ford向けが整った。今後は欧米での複数のシートビジネスを有するGMの中国生産車向けビジネスの獲得が中国市場での成長課題の一つと思われる。
• “Magna Seating”の競合他社に対する強みは、シート以外の内装・外装を含めた一貫生産受託に応えられることや、巨大組織“Magna International”の材料技術や加工技術などの先進的な研究開発力を享受できることである。
• 米国サウスカロライナ州にて4番目の生産拠点となるSpartanburgでシート工場を開所した。新工場ではBMWグループから受注したシートの供給を行う。2017年6月操業開始、従業員数は2020年までに最大で480名になる見込み。

開発拠点

• シート部門の開発拠点は世界5拠点(米国1・ブラジル1・ドイツ1・中国1・インド1)。

Brose

• 扱う製品は内装部品・電動部品・エレクトロニクス部品が主であり、シート分野のビジネスでは第10位前後の規模にある。
• シートASSYの生産は行わず、アジャスター、リクライナーなどサブASSYレベルのシートシステムまでの供給に留まる。このため納入先はOEM各社のみならず、Johnson Controls、Lear、FaureciaなどシートASSY大手各社も対象となる。
• 2014～2015年の過去2年間でのシート事業の新生産規拠点は2拠点(米1・南アフリカでの合弁1)の開設に留まる。
• 2014～2015年の過去2年間でのシート事業の新開発拠点は1拠点、シート専用ではないが独WurzburgにEMC (Electromagnetic Compatibility、電磁両立性) のテストセンターを開設した。シート製品ではパワーシートやスマートシートの電気雑音試験などに用いられる。

2) 主要な提携・合弁関係図

Adient plc (旧 Johnson Controls Inc.)

• シート分野のトップサプライヤーでありグローバルに各地域のメジャーOEMへ供給している。
• 米系の強みを生かし、欧州でも米系OEMとの関係が深いFiatやOpel/Vauxhallに高いシェアを持っている。
• 飛び抜けた納入シェアを持つOEMは少ないが、各社に対し安定したビジネスを有することがシートのトップサプライヤーであることへとつながっている。
• 他の大手シートサプライヤーと比べた特徴の一つが、高級スポーツカーを中心としたRecaroブランドのシートビジネスを持つことであり、Aston Martin、Lamborghini、Lotus、Porscheなどのスポーツカーメーカーの各モデルのほか、Audi、Ford、Mercedes-Benz、Renaultなどの上級スポーツモデルにも搭載されている。

Lear

• Adientと同様に米系ながらグローバルにビジネスを展開し、近年は欧州系にも参入が加速されてきたが、トヨタや日産など日系OEMへのビジネスが弱いことがAdientとの差異の一つとなっている。
• 今回の調査ではトップシェアを獲得できている主要OEMは無いが、各社に万遍なく採用されており、米系の強みからGMには搭載モデルが多くみられる。

Faurecia

• グローバルシェアではAdient、Learの米系2社の後塵を拝しているが、グローバルに各地域のメジャーOEMへ供給している。
• 搭載状況から独・仏メジャーOEMに対し強いことが判り、OEMビジネス売り上げのうち欧州系OEMが70～80%を占める。また、地域売り上げでも欧州市場が約60%水準であり米州市場の約25%を大きく離している。
• 近年のアジア地域への生産拠点・開発拠点の投資を鑑み、今後は合弁を含む欧州系OEMを中心としたアジア市場の比率が上昇してくるものと思われる。

Magna Seating

• 米系3社を主にシートASSYを供給している。
• 欧州系はメジャーOEMのサブブランドが中心である。
• シート部品供給も行っており、米3社向けが中心となっている。

Brose

• シートASSYの生産はしておらず、アジャスター、リクライナーなどのサブASSYレベルのシートシステムまでの供給をOEM、シートASSYサプライヤーに行っている。
• 搭載情報ではシートシステムとして一部のOEMへの記載のみだが、実際はBrose製のシートシステムが組み込まれたシートASSYが他社経由で納入されている。

Industria de Asiento Superior (INSA) / Tachi-S

• タチエスと日産との関係で北米における日産向けシートビジネスを主力としており、Sentra、Tiida、NV200などの小型乗用車・小型商用バン向けにシートASSYを納入している。
• 日産以外ではホンダ、三菱向けなど日系OEMが納入先となる。

Sitech

• VWの100%子会社。シートASSY工場がドイツと中国にあるため、搭載モデルは欧州地域のVW車の一部と中国市場のVW合弁モデルとなる。
• VWが強い南米市場には現時点で生産工場が無く、ポーランドの部品工場よりVWアルゼンチン生産拠点へメタル構成部品を供給しているに留まっている。そのため、VW南米向けのシートASSYはMagnaなどがビジネスを獲得している。

Grammer / GRA-MAG

• 商用車・産業機械・鉄道車両に特化したシートサプライヤーであり、Daimlerなど欧州商用車へ納入。米国市場ではMagnaとの合弁会社GRA-MAGによりPackerグループのPeterbilt、Kenworthへ納入を行っている。

<<搭載情報一覧-欧州>>

各社広報資料、聞き取り調査等から作成

<<搭載情報一覧-米州>>

各社広報資料、聞き取り調査等から作成

シート部門売上高

(参考) 全社売上高

各社広報資料、聞き取り調査等から作成

Adient plc (旧 Johnson Controls Inc.) (米)

Lear Corporation (米)

Faurecia S.A. (仏)

Magna International Inc. (加)

<自動車産業ポータル マークラインズ>