日産とボルボカーズの自動運転:TU Automotive Japan 2016から

日産のプロパイロットは、単眼カメラと画像解析技術のシンプルな構成

2016/11/22

要約


高速道路、同一車線での自動運転ProPILOTを設定した日産セレナ(写真:日産)

 TU Automotive Japan 2016が、2016年10月18~19日東京で開催された。本レポートはここでの講演を中心に、日産とボルボカーズ(Volvo Cars)の自動運転について報告する。

 日産は、2016年に高速道路上の同一車線での自動運転技術、2018年に高速道路上で車線変更を自動で行う複数車線での自動運転技術、2020年に交差点を含む一般道路での自動運転技術を投入する計画。2016年8月に、日本で販売するミニバン・セレナに、高速道路、同一車線での自動運転技術プロパイロット”ProPILOT”を設定した。(1)スピード維持、(2)追従・停止・停止保持、(3)ステアリング制御、の3つの自動運転機能を実現した。NHTSAの区分で、レベル2に相当する。

 技術面では、単眼カメラと、Mobileye社の画像解析技術および日産独自のアルゴリズムというシンプルな構造で、オプション価格は税込み136,080円。2018年に投入する複数車線対応型には複数のカメラやレーダーを搭載し、2020年に投入する一般道路も走行可能な自動運転技術は、LIDARや立体地図も採用するとされる。

 Volvo Carsは、2020年までにVolvo車による死亡者および重傷者ゼロを目指す “VOLVO VISION 2020”を進めている。

 Volvo Carsは、2015年から日産のProPILOTと同じレベル2に相当する自動運転技術 Pilot Assistを90シリーズに搭載している。また2017年から、スウェーデンのイェーテボリ市(英名:Gothenburg市)で、100人の顧客による自動運転車の公道実証実験を行い、次いでロンドン、中国でも行う予定。Volvo carsは、適切に使用されている限り、自動運転モードにおける全ての責任を負うと発表している。



関連レポート:

米国NHTSA:自動運転車へのガイダンスを発表(2016年11月)
日産:セレナ自動運転車、ノート・シリーズHVを2016年内に国内投入(2016年7月)



日産の自動運転

 日産は、車を取り巻く環境を、1)エネルギー問題、2)気候の温暖化、3)道路の混雑、4)交通事故、の4つの面からとらえ、これらに対して、

  1. Electrification(車の電動化)
  2. Vehicle Intelligence(車の自動化)
  3. を2本の柱とする戦略を進めている。

 ここ20年間に、1996年のABSの標準搭載から2014年のRear Cross Traffic Alert設定まで多くの予防安全技術を実現してきた。このうち、Lane Keep Support Assistなど8つの技術は世界で初めて実現したとしている。日産が進めてきたAll-around SAFETY SHIELDは既に完成し、自動運転技術の基盤となっている。

 自動運転では、1)センシング(Sensing)、2)認識(Cognition)、3)判断(Decision)、4)操作(Action)、の4つの過程を人間・ドライバーに代わって機械が行うことになる。4つの過程において、機械の応答速度は人間・ドライバーの100倍を超えるとしている。



日産が20年間に実現してきた安全技術(資料:日産) 既に完成した日産のAll-around SAFETY SHIELD(資料:日産) 自動運転のキーとなる4つの要素機能(資料:日産)


日産のProPILOT:単眼カメラと画像解析技術のシンプルな構成

 日産のAutonomous Drive導入ロードマップは、2020年までに段階を追って、

  • 2016年:高速道路上の同一車線での自動運転技術、
  • 2018年:高速道路上の複数車線での自動運転技術、
  • 2020年:交差点を含む一般道路での自動運転技術
  • を導入する計画。

 2016年8月に、日本で販売するミニバン・セレナに、「高速道路、同一車線での自動運転技術”ProPILOT”」を設定した。米国NHTSAの基準で「レベル2」に相当する(ドライバーが運転の責任を持つ)。メーカーオプションだが、購入顧客の約7割が装着している。1)スピード維持機能、2)追従・停止・停止保持機能、3)ステアリング制御機能、を実現した。全車速域(0~100km/h)でアクセル・ブレーキ・ステアリングを自動で制御し、ドライバーをサポートする。高速道路での渋滞や長時間運転による負荷を軽減する。

 センサーは単眼カメラ(ZF TRW Automotive製)のみで、イスラエルのMobileye社の画像解析技術と日産独自のアルゴリズムを活用する。ProPILOTは、ハードウエアの構成が自動ブレーキと同じなので、価格を税込み136,080円と低価格にできた。今後さらにコスト低減も期待できるので、より高度な自動運転導入後も、ProPILOTの存在意義がありうるとしている。欧米市場にも導入する計画

 なお、2018年に導入する高速道路上複数車線での自動運転技術には複数のカメラやレーダーを搭載し、2020年に計画する一般道路も走行可能な自動運転技術には、LIDARや立体地図も搭載するとされる。



日産の自動運転技術導入ロードマップ(資料:日産) ProPILOTのベネフィット(資料:日産)



ProPILOTの使用条件

高速道路や
自動車専用道路
ProPILOTは、高速道路や自動車専用道路の、直線や緩やかなカーブで、単一車線での使用を想定している。一般道での使用は、思わぬ事故につながるおそれがあり危険と警告している。
手放し運転をすると警告し、それでも改めないとステアリング制御を停止する。



機能と作動条件

機能 見ているもの 概要
(前にクルマがいないとき)
(1)スピード維持
- 設定した車速(約30~100km/h)で走行する。((3)ステアリング制御のため、白線は認識している)。
(前にクルマがいるとき)
(2)追従・停止・停止保持
前のクルマ 設定した車速(約30~100km/h)を上限に、車間距離を保つように制御する。
停止保持は、新規に採用された技術。従来は車が停止した後にドライバーがブレーキを踏む必要があった。停止後3秒までであればシステムが継続し、3分までは専用ボタンを押すことでシステムが継続利用できる。3分を超えると電動パーキングブレーキが作動して停止を保持し、システムはキャンセルされる。
(両側に白線がある場合)
(3)ステアリング制御
両側の白線
前のクルマ
車線中央を走るようにステアリング操作を支援。全車速域でのステアリング制御は初。ただし、白線を認識できない場合または50km/h以下で先行車がいない場合は、ステアリング制御は行わない。
従来の20倍以上の、精緻な操舵角検知を行い、それに基づきコントロールする。ステアリング制御は、0~100km/hの全車速域で、単一車線内に収まるよう電動パワーステアリングが自動操舵する。
レーンチェンジのウインカーを出すとProPILOTは停止するが、レーンチェンジを終えウインカーが元に戻りシステムが安全を確認すると、ProPILOTが作動を再開する。
資料:日産セレナ発売プレスキット



単眼カメラとMobileye社の画像解析技術のシンプルな構成

Mobileye社は、自動ブレーキの画像解析技術で世界シェアトップ セレナに設定したProPILOTのシステムは、単眼カメラとイスラエルMobileye社の画像解析技術というシンプルな構造で、コストを抑えた(価格は税込み136,080円)。Mobileyeは、自動ブレーキなどADASの画像認識ロジックで世界の7~8割を抑える。日産は、エクストレイルの自動ブレーキにも同じ組合せを採用している。
単眼カメラで距離を測定 Mobileyeは、単眼カメラを使用する自動ブレーキ制御システムを開発した。距離の測定に関しての詳細は明かされていないが、基本は「道路の幅や車線は無限遠の地平線で1点(消点)に収束する」という遠近法の原理を利用。前方のクルマのタイヤが地面に接する位置は、自車に近くになるにつれて消点より下にずれて見えることをカメラのCMOSセンサーで観測することにより、80~90m程度の前方車両までの距離測定が可能になった。前方物体の形状から、歩行者や自転車も識別する。画像処理半導体EyeQを提供する。
蓄積した膨大なデータで検証 Mobileyeは、1999年の創業以来数多くの自動車メーカーに、ADASの画像認識ロジックを提供し、膨大な走行データを蓄積してきた。それによる検証能力は、他社が追い付けないものだとしている。
なお、セレナのProPILOTも、開発において日産は国内の主要な高速道路を全て走行し、誤認識が起こる場所があった場合、ソフトを改良してきた。
(注)
1. 海外で発売するProPILOTにはミリ波レーダーを搭載するが、日本では欧米に比べ車速が遅いため、ミリ波レーダーを省いてコストを抑えたとされている。
2. センサーは単眼カメラのみなので、逆光などで前方車両を検知できない場合は、ドライバーに運転を返す仕組みとしている。
3. ProPILOTの価格(136,080円)は、ライダー(オーテック30周年特別仕様車)(価格は3,480,840円)と、同プロパイロットエディション(3,616,920円)の差額。両モデルは、ProPILOTの他は、装備内容が同じ。


Volvo S90, V90, XC90にレベル2自動運転のPilot Assistを標準装備


Pilot Assistを搭載するVolvo S90(デトロイトオートショー2016)

 Volvo Carsは、2020年までに新しいVolvo車による死亡者および重傷者ゼロを目指す"VOLVO VISION 2020"を進めている。日本では2009年に初めて「完全に停止するオートブレーキ」の認可を取得し、また2011年に歩行者検知機能を追加、2013年にサイクリスト検知機能を追加、2016年に歩行者・サイクリストの夜間検知を可能にするなど、自動ブレーキを強化してきた。2009年から2015年までの7年間に新規登録された自動ブレーキを搭載したVOLVO車では、非搭載車に比べて事故発生率が69.0%減少した。

Volvo Carsは、デトロイトオートショー2016に、米国NHTSAの区分でレベル2に相当する自動運転技術である第二世代 Pilot Assist を標準装備するS90とV90を出展した。ミリ波レーダーとカメラを搭載し、白線が容易に確認可能な道路で、レーン中央での走行を保ちながら、時速80マイルまでの範囲で設定した速度で走行または前走車を追従走行する。

 自動でレーンチェンジする機能は持たない(同じレベル2に位置付けられるが、Mercedes-Benz E-ClassとTesla Model S/model Xの自動運転技術は、手動でウインカーを操作するとレーンチェンジは自動で行う)。また、ドライバーは、両手をステアリングホイールに置いておくことが必要。

 Volvo XC90は、既に2015年にこのシステム(第一世代)を設定したが、設定できる時速は30マイルまで、またシステムが機能するには前走車が必要だった。XC90は、2017年にS90、V90と同じ第二世代のPilot Assistを設定する。






Volvo Cars:2017年から100人の顧客による自動運転技術”Autopilot”の実証実験を開始

 Volvo Carsは、2017年からスウェーデン第2の都市イェーテボリ市(Gothenburg市)内の通勤経路を選び、100人の顧客によりXC90ベース自動運転車の公道実証実験プロジェクト “Drive Me Project” を行う。

 テスト車両は、カメラ、レーダー、レーザースキャナー、立体地図と、Volvoが “Autonomous Driving Brain”と呼ぶコンピューターを搭載する。先のPilot Assistに対して、テスト車両に搭載する技術は”Autopilot”と呼ぶ。

 Pilot Assistでは、ドライバーが車をモニター・監督し、緊急時には介入する責任があるが、Autopilotでは、ドライバーは車のモニターや運転操作から解放され、運転以外のことを行うことができる。安全については、自動運転が正しく使用されている限り、製造業者であるVolvo Carsが責任を持つ。自動運転と謳っておいて、「事故があったら、ドライバーであるあなたの責任」では商品にならないとしている。

 また、Autopilotでは、いつでも自動運転と人による運転を切り替えることが可能。今回の"Drive Me Project"でも、指定された区域外を走る場合は、ドライバーが運転する。

 2016年9月にテストに使用する自動運転第1号車がラインオフし、社内の技術部門で厳格なテストを行った上で、2017年から顧客に引き渡して実証テストを開始する。

 テスト走行では、技術上の課題に加えて、実際に毎日の生活のなかで使用してもらい、課題を探るとしている。

 2017年に、ロンドンと中国でも同様の実証実験を行う予定。

 実証実験を通して完成度を高め、2021年頃市場導入したいとしている。

 Volvo Carsは、自動運転技術の開発には、多くの分野のノウハウを結集することが必要だとしている。2016年8月に、ライド・シェアリング最大手のUberと次世代自動運転技術を共同開発することで合意し、9月には、自動車向け安全システム大手のAutolivと共同で、自動運転向けソフトウエア開発会社を設立することで合意した。



Autopilotの実証実験を2017年からスウェーデン、ロンドン、中国で行う(写真:Volvo Cars) Pilot AssistとAutopilotの比較(写真:Volvo Cars) Autopilotが搭載する自動運転技術(写真:Volvo Cars)



自動運転車室内レイアウトのビジョン:Concept 26

 Volvo Carsは、2015年11月にロサンゼルスオートショーで将来の自動運転車の室内レイアウトのビジョン「Concept 26」を発表し、デトロイトオートショー2016にも出展した。ドライバーは、長距離の走行と通勤時の運転こそシステムに委ねたいと感じており、毎日通勤のため車中で過ごす時間が平均26分であることからConcept 26と命名した。ドライバーおよび乗員は、車中の時間を、運転から解放されて他の有意義なことに使うことができる。

 自動運転時には、ステアリングホイールが引っ込んで通常の位置より低くなり、シートがリクライニングし、ダッシュボードから大型スクリーンが現れてエンターテイメントを提供する。



Concept26:ドライバーが運転する時のレイアウト(写真:Volvo Cars) Concept26:自動運転時のレイアウト(写真:Volvo Cars)

キーワード

日産、ボルボカーズ、自動運転

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