長城汽車:徐水工場の拡充で生産能力強化 、日本開発拠点の設立

Havalブランドの充実で、中国SUV市場No.1を堅持

2016/10/26

要約

 長城汽車股肦有限公司(以下、長城汽車)は、乗用車/商用車を生産/販売する、中国で販売台数(工場出荷台数)第7位(2015年)の自動車グループ企業で、民族系では販売台数トップの企業である。中国において販売台数6位までの自動車メーカーは、全て国営/政府系で外資と合弁を結んでいるが、長城汽車は中国国内で外資合弁を行っていない。

 長城汽車は、中国北部河北省保定市に1984年設立の自動車アフターパーツ販売等を生業とする「長城制造厰」から始まった。1990年に現董事長の魏建軍氏が「長城汽車工業公司」の総経理に就任すると、完成車メーカーに転業。強いリーダーシップのもとで急速に成長し、1990年代前半にはピックアップトラックの生産/販売で成功を収めた。2003年に、中国の民営企業で初めて香港(H株)に上場し、2011年には、上海証券取引所にも上場した。

 2010年の中国での年間販売台数は10位であったが、その後、経営資源をSUVモデルの開発に集中し、次々とSUVモデルを市場投入することで、中国で「SUVの先駆者」としての地位を確立。2014年は、一時的に販売台数が落ち込んだものの、2015年には前年比20.2%増の82.3万台に回復した。世界販売(国内及び輸出)では、2015年は前年比15.5%増の84.6万台となった。長城汽車は、2016年は世界での目標販売台数を95万台と設定している。

 長城汽車の販売(国内及び輸出)における2015年のSUVの割合は、前年比10.5%ポイント増の81.9%と高まり、2016年上半期では83.7%とさらに高い割合となっている。ピックアップトラックに関して、2015年は中国国内で9.3万台を販売しており、18年連続トップである。



長城汽車の販売台数

(台)

  2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2015年
1-6月
2016年
1-6月
SUV 国内 119,807 116,793 244,977 387,887 499,185 682,104 331,162 377,768
輸出 17,175 30,548 34,979 32,415 24,023 11,242 5,305 3,100
ピックアップトラック 国内 73,763 85,269 94,421 104,658 104,547 93,347 51,288 50,438
輸出 24,880 36,404 42,273 31,474 17,055 7,392 3,857 2,569
セダン 国内 115,171 175,331 181,107 194,404 80,013 46,899 23,133 19,705
輸出 7672 12,173 18,149 11,047 7,466 4,900 2,980 1,081
その他 国内 4,786 6,009 5,444 8,728 700 385 150 152
輸出 228 152 88 6 0 3 0 0
中国国内販売合計 313,527 383,402 525,949 695,677 684,445 822,735 405,733 448,063
輸出合計 49,955 79,277 95,489 74,942 48,544 23,537 12,142 6,750
総合計 363,482 462,679 621,438 770,619 732,989 846,272 417,875 454,813

 (資料:長城汽車年次報告書より作成)





長城汽車の2つのブランド:HavalとGreat Wall

 2013年、長城汽車は、それまでSUVのモデル名として使用していた「Haval(哈弗)」を、SUVに特化したブランド名と位置づけた。その後、次々とSUVモデルを市場投入し、中国のSUVブームに乗り着実に販売台数を増やしている。2016年上半期には「H6」が販売台数24万台で、中国市場のSUVカテゴリーにおいて2013年から引き続きトップとなった。なお、SUV以外の乗用車モデルやピックアップトラックなどは、「Great Wall(長城)」ブランドに位置づけている。

H6

H6

H7のBlue-label

H7のBlue-label



 「Haval」ブランドに関して、2015年の上海モーターショーで「紅藍標戦略」が発表された。各モデルは、「紅色Logo:Red-label」と「藍色Logo:Blue-label」という二つの商品ラインに分かれ、それぞれ、異なる設計理念で外観、装備/機能などに独自の特徴を加えられている。「紅色Logo」のモデルは「豪華、便利、多用途」をキーワードにファミリー層をターゲットにしており、一方、「藍色Logo」のモデルは「クール、ユニーク、スポーツ」をキーワードに若年層をターゲットとしている。なお、モデルにより「紅色Logo:Red-label」、「藍色Logo:Blue-label」の片方の商品ラインしかない場合がある。

Havalブランド:小型から大型まで豊富なSUVラインナップ

モデル 価格(万元) 概要
H1 5.49- ・2014年に発売された若年層をターゲットとしたコンパクトSUV。パワートレインは、1.5Lガソリンエンジンと5速MTを設定。2016年Red-labelは、最高出力78kW、最大トルク138N・m。全長3995×全幅1728×全高1617mm。
H2 8.68- ・2014年に発売されたコンパクトSUV。スタイリッシュ且つ躍動感あふれる外観で若年層をターゲットとした累計30万台を超える主力モデルの一つ。
・2017年モデルのパワートレインは、1.5Lターボガソリンエンジンと6速MTまたは6速ATの組み合わせで、2駆と4駆を設定。最高出力110kW、最大トルク210N・m。全長4335×全幅1814×全高1695mm。スマートフォンと連携するコネクティビティシステム、バックセンサー、クルーズコントロール、ABS、革シート等を標準装備。
H5 9.48- ・2010年に発売されたコンパクトSUV。シャシーはピックアップモデルの風駿と同じ。2016年モデルのパワートレインは、2.0Lターボガソリンエンジンと6速MTと2.0Lターボディーゼルエンジンと6速MTでそれぞれ2駆と4駆を設定。ガソリンエンジンモデルは、最高出力140kW、最大トルク250N・m、ディーゼルエンジンモデルは、最高出力100kW、最大トルク320N・m。
H6 8.88- ・2016年上半期に中国SUV市場で最も売れたモデル。2016年1~9月の販売台数は前年同期比約47.6%増の37万台。2011年に初代モデルが発売され、2015年11月には量産累計100万台を達成。
・2017年スポーツモデルのパワートレインは、1.5Lターボガソリンエンジンと6速AT、最高出力110kW、最大トルク210N・m及び6速MTと2.0Lディーゼルターボエンジンと6速MT、最高出力120kW、最大トルク350N・m。それぞれ2駆と4駆タイプを設定。全長4649×全幅1852×全高1710mm。
H6 Coupe 12.28- ・2014年の上海モーターショーで初披露された、H6からの派生モデル。スポーティーな外観の中型SUV。
・2016年モデルのパワートレインは、1.5Lターボガソリンエンジンと6速AT及び6速MTで2駆の設定。最高出力110kW、最大トルク210N・m。2.0Lディーゼルエンジンと6速MTの2駆と4駆の設定、最高出力120kW、最大トルク350N・m。なお、ガソリン、ディーゼルともに全長4549x全幅1835x全高1700mm。
H7 14.98- ・2016年の北京モーターショーで発売となった中型SUV。6速DCT(Dual Clutch Transmission)と2.0Lターボガソリンエンジンを搭載の2駆。最高出力170kW、最大トルク355N・m。全長4700×全幅1925×全高1718mm。LDW(Lane Departure Warning) 、LKA(Lane Keeping Assist)、CTA(Cross Traffic Alert)等の安全機能も装備されている。
・現行モデルは、「紅色Logo:Red-label」タイプであるが、今後「藍色Logo:Blue-label」タイプ及び7人乗りの市場投入が予定されている。
H8 18.88- ・2015年に発売されたハイエンドSUV。2013年の広州モーターショーで発表された後に、不具合発生により発売が延期されていた。
・パワートレインは、2.0Lターボガソリンエンジンと6速セミATで2駆と4駆を設定。最高出力160kW、最大トルク324N・m。全長4806×全幅1975×全高1794mm。
H9 20.98- ・2014年に発売されたハイエンドSUV。2016年モデルのパワートレインは、2.0Lターボガソリンエンジンと6速セミAT。最高出力160kW、最大トルク324N・m。スペアタイヤ吊下げ式:全長4856×全幅1926×全高1900 mmと背面式(全長5090mm、全幅全長は吊下げ式と同じ)の2タイプ。それぞれ5人乗りと7人乗りがある。

 (資料: 長城汽車の資料及び各種報道をもとにMarkLinesが作成)

Great Wallブランド:コンパクトセダンとピックアップトラック

車種 モデル 価格(万元) 概要
セダン 長城C30 6.29- ・2013年の初代モデルは年間販売台数12.6万台であったが、2015年は3.4万台と減少している。
・パワートレインは、1.5LガソリンエンジンとCNGで5速MTと6速セミATの設定。最高出力78kW、最大トルク138N・m。全長4471×全幅1705×全高1480mm。
長城C30経典版 5.49- ・パワートレインは、1.5Lガソリンエンジンと5速MT。最高出力78kW、最大トルク138N・m。全長4452×全幅1705×全高1480mm。
ピックアップトラック 風駿5 6.88- ・ピックアップトラックのエントリーモデル。ガソリンとディーゼルの2タイプ。
・ディーゼルエンジンのパワートレインは、2.0Lと5速MT及び6速MTと2.8Lと6速MTの組み合わせ。最高出力は68/78/95kW、最大トルクは220/315N・m。ガソリンエンジンのパワートレインは、2.2Lと5速MTの組み合わせ。最高出力74.5kW、最大トルク184/190N・m。
・なお、派生モデルに約100カ国で販売されている「風駿5欧州版」がある。
風駿6 8.68- ・ディーゼルエンジンのパワートレインは、2.0Lと6速MTの組み合わせで2駆と4駆の設定。最高出力95kW、最大トルク305N・m。ガソリンエンジンのパワートレインは、2.4Lと5速MTで2駆と4駆の設定。最高出力90kW、最大トルク205N・m。ガソリン、ディーゼルともに全長5345×全幅1800×全高1760mm。

 (資料:長城汽車の資料及び各種報道をもとにMarkLinesが作成)



新エネルギー車:資金調達方法の変更により計画が不透明

 長城汽車は2006年からEV及びHV関連の研究を開始しており、2015年の上海モーターショーでは、新エネルギー車のプラットフォームとネットワークに関する技術が展示された。

 2016年末頃に、EVモデルの市場投入の計画があり、2016年の北京モーターショーで出展された「長城C30」と報じられていた。

長城C30 EV

長城C30 EV

長城C30 EVのモータールーム

長城C30 EVのモータールーム

 

 このような中、2015年夏に非公開株注1)(A株)発行をすることで資金調達をし、下記の新エネルギー車の開発に関する発表を行った。

  1. 新エネルギー車の研究開発
  2. 新エネルギー車の変速機の50万台生産
  3. 新エネルギー車のモーター及びモーター制御装置の50万台生産
  4. 新エネルギー車の駆動用バッテリーシステムの100万台生産
  5. スマートカーの研究開発

 しかし、2015年下半期以降、市場変動の影響、自社株の低迷により、2016年5月に最終的に非公開株の発行中止が決定した。これにより、長城汽車は、新エネルギー車の開発/市場開拓等に関して遅れる可能性がある。

 注1) 中国の非公開株は、特定の第三者に対して新株を引き受ける権利を与える増資で、日本の第三者割当増資に近い。



研究開発:中国国内に2つの研究開発センター、日本に初の海外研究拠点を設立

 長城汽車は以前より研究開発機関を保有していたが、2015年6月に50億元を投じ「長城新技術センター」を本社のある河北省保定市を設立した。試作、テスト、デザインなど様々な機能/環境を備え、中国国内最大の風洞実験室も有している。また、上海に、情報収集をメインとした研究開発センターがある。

 2016年1月には、日本の新横浜に初の海外研究開発拠点となる「長城日本技研株式会社」を設立した。日本法人では、情報収集を行うとともに日本の人材を活用して、ボディーや内外装の形状デザイン/設計等を行う模様である。なお、今後数年間のうちにドイツやインドにも研究開発拠点設立の動きがある。



輸出/海外販売台数:2013年をピークに減少

長城汽車の輸出台数推移
(資料:長城汽車の年次報告書よりMarkLinesが作成)

 長城汽車は1997年に中国自動車メーカーとして初めて輸出を開始して以来、ロシア、オーストラリアや中東を中心に2012年まで順調に輸出台数を伸ばしていた。しかし、2012年の9.5万台をピークに減少。2015年は前年比51.5%減の2.3万台で、2006年当時の輸出台数と同レベルとなっている。

 2010年以前より海外でKD生産体制を整えており、2013年には、各国における販売台数は過去最高となった。しかし、2014年以降は減少している。年次報告書によると2015年の海外販売台数の減少の要因は、原材料価格の下落と原油価格の低迷が各国経済に影響を与えたこと、各国の政局の変動によるものと述べている。

 なお、2016年9月時点における海外販売ネットワークは、アジア地域が18カ国、オセアニア地域が14カ国、アメリカ地域が22カ国、ヨーロッパ地域が9カ国、中東地域が14カ国、アフリカ地域が38カ国の合計115カ国である。









各国における長城汽車の販売台数

(台)

  2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
チリ 4,420 6,540 8,202 8,097 7,019 3,826
ロシア 3,637 6,777 14,373 19,954 15,005 3,181
南アフリカ 0 6,545 7,794 6,860 3,272 2,518
ブルガリア 0 0 0 0 2,104 2,325
イラン 1,582 820 2,502 2,210 1,528 2,294
コロンビア 243 1,003 976 1,134 1,866 1,845
ウルグアイ 858 960 855 918 691 502
ニュージーランド 306 538 999 1,027 919 427
マレーシア 0 0 173 281 85 417
英国 0 7 476 667 279 361
ラオス 0 0 0 0 0 301
ウクライナ 0 0 0 0 744 251
オーストラリア 6,690 8,665 11,006 6,105 2,637 142
フィリピン 0 0 0 0 0 120
ハンガリー 0 0 0 0 63 55
アラブ首長国連邦 0 0 0 304 231 26
アイルランド 0 0 4 18 14 24
イスラエル 2 44 205 104 99 5
ポーランド 0 0 0 0 0 2
サウジアラビア 0 0 0 886 475 0
ルーマニア 89 20 0 0 0 0
エジプト 590 235 67 692 22 0

 (資料:MarkLines データベースより作成)



生産拠点: 徐水工場2期の量産開始、ロシアで中国メーカー初の完成車工場を建設

 長城汽車は、国内に2拠点あり、海外には12拠点の生産拠点があるとされている。国内生産拠点のうち、保定市の徐水工場は2013年に開設され、2016年上半期に第2期工場で量産が開始された。徐水工場は総面積約1,300万㎡、総投資額300億人民元で、敷地内にはテストコースを有する。生産モデルは、H9、H8、H6 Coupe、H2、H7。今後も順次拡張され、2017年には年産60万台、最終的には、年産100万台の工場となる予定である。

 長城汽車の海外KD生産の開始時期は、2010年前後である。海外生産は全てKD方式だが、現在ロシアで完成車工場を建設している。ロシア工場の建設に関する報道が出始めた2013年は、長城汽車のロシアにおける販売台数は19,000台を超えており、また中国政府が唱えた「一帯一路」注2)の時期であった。その後、ロシア経済の低迷により当初2017年に生産開始予定だったが、今年に入り2018年に変更されたと報じられた。ロシア工場は当初は年産7万台規模の生産能力で、その後年産15万台まで増強予定となっている。

 注2) 2013年に習近平国家主席が提唱した中国が目指す経済/外交圏構想。中国西部から中央アジア、ロシアを経由して欧州に繋がる「シルクロード経済ベルト」、中国沿岸部から南シナ海からインド洋、アラビア半島沿岸部、アフリカ東部に繋がる「21世紀海上シルクロード」を中国が中心となり発展させていく構想。


 下記は、各種報道を元にまとめた長城汽車の主な中国国内及び海外生産拠点の一覧である。

中国国内

(台)

工場 2016年 計画
河北省保定工場 現有工場 *40万 *40万
徐水工場 50万 60万(2017年)→100万
天津工場 *60万 *80万
合計 *150万 *220万

 (資料:MarkLinesデータセンターが各種報道を元に作成 2016.9)
注)*印の付いたデータは商用車または商用車を含む生産能力。

海外

ロシア ・2009年にKD生産を開始。2011年にはパートナーのIritoの関連会社Derwaysの工場でも生産開始。なお、Iritoは、長安汽車や東風汽車のKD生産も請け負っている。
・2014年、完成車工場の建設が発表された。2015年10月に鍬入れ式が行われた。2017年末には生産開始予定だったが、2018年に変更となる。
・工場建設地はモスクワ州に隣接する機械製造業が盛んなトゥーラ州で、投資額は33.3億人民元、敷地面積は約216万㎡。当初は年産7万台規模の生産能力、その後2020年に年産15万台まで増強予定。主に「Haval」ブランド車の製造が報じられている。
ウクライナ ・2007年ピックアップトラック「風駿」とCUV「Hover」がラインオフ。
ブルガリア ・2012年に「風駿」と「Hover」のKD生産を開始。イタリア、英国に輸出。
マレーシア ・2011年よりKDで「風駿5」と「H5」を生産開始。
・2014年4月マレーシア国際通商産業省(MITI)より、KD生産先である「Go Automobile Manufacturing Sdn Bhd (GAM)」に省エネルギー自動車(EEV)の生産ライセンスが発給された。対象モデルは、SUV「M4」および「H6」。省エネルギー自動車の生産に向けて既存のグルン工場に20億リンギを投資。最終的に2019年に年産10万台の工場となる予定。
・2015年時点での工場の生産能力は、年産2.5万台。2016年第3四半期には5万台に引き上げられる予定だが、2016年9月時点で年産増強の報道はない。
ベトナム ・2009年、KD生産により「Hover」がラインオフ。
フィリピン ・2011年より「風駿」と「Hover」のKD生産が開始。
インドネシア ・2008年よりKDで「風駿」を生産開始。
タイ ・2014年にタイの政情不安により、当初2015年にRayong県に建設予定であった年産10万台規模の工場建設が延期。
イラン ・2012年に7月「長城C30」及び「風駿3」をラインオフ。
エジプト ・2008年にKD生産を開始。
セネガル ・2011年にKD生産を開始。
エチオピア ・2010年にKD生産を開始。
ベネゼエラ ・2010年にKD生産を開始。
・2015年2月に新しいライン設備を中国より輸出。
エクアドル ・2012年「H5」及び「風駿5」のKD生産を開始。
・2014年、6,250万元を投資し生産ラインを新設。
ブラジル ・2013年にブラジルに総投資額10億ドル、年産5万台の工場建設計画が報じられた。しかし、2016年9月時点で建設に関する最終決定がなされていない。
・生産予定モデルは、ピックアップトラック1モデル、SUV2モデルとなっていた。

(資料:MarkLinesデータセンターが各種報道を元に作成 2016.9)

*上記一覧は、稼働開始時の情報であり、一部現況不明な内容がある。



サプライヤーとの提携:2010年代に大手サプライヤーとの技術提携を加速

 2010年以降、長城汽車は積極的にサプライヤーと技術提携を結び、研究開発分野まで踏み込んだ関係となっている。以下は、主な大手サプライヤーとの提携時期ならびに提携内容である。

サプライヤー/研究機関 時期 提携内容
Ricardo 2011年3月 ガソリンエンジンや6速DCTを含むパワートレイン技術の研究開発。
MAHLE 2011年6月 ピストンやバルブなどエンジン中核部品の共同開発。
Brose 2011年7月 ドアロックシステムや冷却ファン、ドアモジュール、モーター等の技術提携を強化。
Valeo 2011年7月 ワイパーやオルタネーター、スターター、クラッチ等で提携関係を強化。また、パワートレイン部品やビジビリティーシステム、サーマルシステム、ドライブアシストシステム等の幅広い技術交流や情報共有。
宝鋼集団 2011年8月 ハイテン材、レーザーテーラーブランク、ホットプレス技術、油圧成形技術、新素材等での協力体制。長城汽車の新モデル開発。
2013年9月 共同で実験室を設立。乗用車の軽量化関連のテストを行うとともに、宝鋼の新素材を用いた応用実験や評価なども実施。
Bosch 2011年9月 エンジンマネジメントシステム、シャシーシステム等に関する提携。
BorgWarner 2011年10月 タイミングチェーンやトルクマネジメントシステム等に関する提携。
Delphi 2011年11月 既存の電子制御システム、燃料ポンプの供給の拡大、電気・電子構造システム、エレクトロニクス・安全システム、パワートレインシステム、サーマルシステムに関する協力関係の強化、アクティブセーフティーシステムおよびナビゲーション製品に関しても共同で研究・開発。
Netherlands Organization for Applied Scientific Research 2011年11月 パッシブセーフティー、排出ガス対策、新エネルギー技術の分野での共同開発。
POSCO 2012年2月 ハイテン材、ホットプレス技術、油圧成形技術で研究開発の段階での協力体制。
敏実集団 2012年5月 ドアフレーム、ウィンドウガイドレール、フロントグリル、ルーフラック、装飾用ストリップ、コーナーウィンドウなどの製品の設計開発における提携。
福耀集団 2012年5月 自動車ガラス、窓枠、モール等の設計開発における提携。
Hella 2012年7月 ボディエレクトロニクスモジュール、ボディコントロールモジュール、ランプなどに関する提携と製品の設計・開発および技術交流。
鞍鋼股份 2012年8月 外板パネル、ハイテン材の製品分野での協力体制、車体軽量化や耐久性、衝突時の車体状況や部品の分析等。
3M Company 2012年10月 内装品やライト、振動/騒音軽減などの分野での技術提携。
Webasto 2012年12月 サンルーフに関する技術提携を強化。消費者ニーズへの対応、品質向上などに関する共同の研究開発。
Kostal 2013年6月 自動車用電子部品に関して、Kostal製品の採用を拡大。
STMicroelectronics 2013年7月 長城汽車の技術センター内に共同実験室の開設。パワートレインやシャシー、安全技術、車体、車載インフォテインメント、新エネルギー技術などの研究開発。
Harman International 2013年7月 ハイエンドモデルにHarman製のカーステレオを優先的に採用。オーディオ関連部品の品質向上のための、共同研究開発。
Autoliv 2014年2月 エアバックの生産を、Autoliv長春工場から、長城汽車の工場のある徐水地区にAutolivの生産拠点を移行。
Eaton 2014年4月 エンジンバルブギア、トルクコントロール製品、メカニカルスーパーチャージャー、燃料蒸発ガス排出抑制技術などの領域に関する提携。車両性能、安全性、バルブや電気技術への展開。
Mando 2014年6月 ステアリングシステム、サスペンションシステム、制動システムなどの領域で提携。開発期間の短縮や製品の競争力強化。

 (資料:長城汽車資料、各種報道をもとにMarkLinesが作成)



2016年上半期は売上高12.1%、営業利益3.6%の伸び

長城汽車の売上高及び営業利益推移
(資料:長城汽車の年次報告書よりMarkLinesが作成)

 長城汽車の2015年の売上高は対前年比21.4%増の約760億元で過去最高を達成している。主な要因は、2014年下半期発売のH2の販売が引き続き好調だったこと、またH6が中国SUV市場で、単月33カ月連続でトップだったことが挙げられる。

 また、2016年上半期の売上高は、対前同期比12.1%増の約416億元で、このままのペースで推移すれば過去最高となる。

 2016年は研究開発をさらに深化させ、世界一流レベルの開発力を構築するとしているが、2016年上半期の売上高に占める研究開発費の割合は、前年同期と同等の3.0%となっている。なお、2014年が過去3年で研究開発費の売上高に占める割合が高い。








長城汽車の業績

(百万元)

  2012年 2013年 2014年 2015年 2015年
1-6月
2016年
1-6月
Operating
revenue
43,160 56,784 62,591 75,955 37,115 41,601
Operating profit 6,663 9,668 9,244 9,280 5,614 5,814
% revenue 15.4% 17.0% 14.8% 12.2% 15.1% 14.0%
Total profit 6,841 9,920 9,640 9,689 5,718 5,920
Net profit 5,722 8,232 8,041 8,060 4,717 4,928
Research & development 957 1,693 2,572 2,761 1,143 1,258
% revenue 2.2% 3.0% 4.1% 3.6% 3.1% 3.0%

 (資料:長城汽車の年次報告書よりMarkLinesが作成)



長城汽車の中国販売台数(工場出荷台数)

(台)

ブランド 車種 モデル 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2015年
1-9月
2016年
1-9月
Haval SUV 哈弗 (Haval) H 116,790 143,816 221,549 0 0 0 0 0
哈弗 (Haval) H1 0 0 0 0 13,049 74,571 48,738 50,223
哈弗 (Haval) H2 0 0 0 0 49,351 168,467 113,583 114,524
哈弗 (Haval) H5 0 0 0 61,875 45,945 23,212 17,077 16,972
哈弗 (Haval) H6 0 0 0 217,842 315,881 373,229 252,824 373,229
哈弗 (Haval) H7 0 0 0 0 0 0 0 21,812
哈弗 (Haval) H8 0 0 0 0 0 8,985 5,872 5,466
哈弗 (Haval) H9 0 0 0 0 5,102 14,011 11,310 8,104
哈弗 (Haval) M 33,314 20,563 59,603 137,665 0 0 0 0
哈弗派 (Haval π) 0 0 0 45 0 0 0 1
Great Wall 基本型乗用車(セダン・ハッチバック) 酷熊 (Cool Bear) 2,918 54 17 0 0 0 0 0
精霊 (GWPERI) 303 0 0 0 0 0 0 0
長城 C20R (GW C20R) 0 0 0 9,601 1,701 92 92 0
長城 C30 (GW C30) 0 0 0 126,036 52,463 34,005 22,201 20,269
長城 C50 (GW C50) 0 0 0 65,611 38,611 20,081 13,593 3,424
騰翼 C20R (Voleex C20R) 0 5,775 12,189 0 0 0 0 0
騰翼 C30 (Voleex C30) 71,689 155,693 136,502 0 0 0 0 0
騰翼 C50 (Voleex C50) 0 136 41,802 0 0 0 0 0
凌傲 (Phenom) 10,028 819 2,288 898 0 0 0 0
炫麗 (Florid) 54,029 32,935 7,892 0 0 0 0 0
SUV 長城 (GW) M 0 0 0 0 90,117 36,577 29,648 0
MPV 長城 V80 (GW V80) 0 0 0 7,861 266 0 0 0
騰翼 V80 (Voleex V80) 5,110 5,284 5,528 0 0 0 0 0
軽型トラック 103,181 121,736 137,232 126,808 118,286 99,463 71,717 75,968
総合計 397,362 486,811 624,602 754,242 730,772 852,693 586,655 689,992

注)2010年から2013年の哈弗 (Haval) H5)の販売台数及び2011年から2012年の哈弗 (Haval) H6の販売台数は、哈弗 (Haval) Hに含まれる。

(資料:MarkLines データベース)



LMC Automotive生産予測:長城汽車の生産は堅調な伸びで2019年に107万台となる見込み

(LMC Automotive, 2016年8月)

長城汽車の売上高及び営業利益推移

 LMC Automotiveの2016年8月予測によると、長城汽車の2016年の生産は前年比4.5%増の92.3万台になる見込み。生産は引き続き伸び、2019年には対2016年比15.6%増の106.9万台となる予測である。

 長城汽車の生産の95%は中国国内で行われ、わずかではあるが、ブルガリア、イラン、マレーシアでKD生産を行っている。長城汽車は、34億元をかけて3番目のSUV工場建設を行った。新しい徐水工場は、中国北部の河北省保定市にあり、2014年末に生産が開始された。生産能力を2016年内に50万台まで増やし、2018年には75万台に拡大するとしている。徐水工場は、長城汽車グループで最大の工場となる予定である。

 長城汽車の成長は、SUVモデルの拡充により加速している。H8、H6 Coupéが続いて発売され、そしてH7の発売と、これらSUVラインナップの拡大によって、競争が激しいSUV市場でのその地位を堅持してきた。とりわけ、Haval H6は今後5年で最も多く生産されるモデルで、引き続きSUVセグメントにおいて今後数年はトップを維持する可能性がある。Haval H6 Coupéの発売は、将来、長城汽車のコンパクトSUVでのシェア拡大を後押しする。

 LMC Automotiveは以下のようにコメントしている。「中国の一時的な減税政策の終了により、長城汽車の2017年の販売はわずかながら減少する。しかし将来に目を向けると、長城汽車は2015年から2020年までの間、平均伸び率約6%の販売増を続けるだけの潜在力があると確信している。競争は激化するが、急速なSUV市場の拡大が、長城汽車の成長を助ける。同社は中国乗用車市場で上位10社の地位を維持することを目指しており、厳しい品質管理と進行中の研究開発の改善が、長城汽車の成功の継続に不可欠である。」



長城汽車の市場・ブランド別生産予測(LMC Automotive,2016年8月)

(台)

COUNTRY GLOBAL MAKE 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019
Great Wall Motor Haval 303,573 450,410 678,999 773,578 744,218 820,434 871,349
Great Wall 478,903 305,714 203,722 149,047 172,061 182,864 197,908
Great Wall Motor Total 782,476 756,124 882,721 922,625 916,279 1,003,298 1,069,257
China Haval 280,840 431,397 674,471 765,195 730,536 793,142 839,814
Great Wall 476,818 299,173 195,123 137,631 145,312 152,159 161,178
China sub-total 757,658 730,570 869,594 902,826 875,848 945,301 1,000,992
Iran Great Wall 459 3,469 3,158 2,533 15,364 19,361 25,555
Russia Haval 21,911 17,090 0 0 3,922 18,957 24,119
Bulgaria Great Wall 1,626 2,781 5,100 7,891 9,390 9,664 9,758
Haval 630 1,722 4,528 8,383 9,760 8,335 7,416
Bulgaria sub-total 2,256 4,503 9,628 16,274 19,150 17,999 17,174
Malaysia Great Wall 0 144 341 992 1,995 1,680 1,417
Ukraine Haval 192 201 0 0 0 0 0
Great Wall 0 147 0 0 0 0 0
Ukraine sub-total 192 348 0 0 0 0 0
Source: LMC Automotive "Global Automotive Production Forecast (Aug. 2016)"
(注) 1. データは、小型車(乗用車+車両総重量 6t以下の小型商用車)の数値。
2. 本表の無断転載を禁じます。転載には LMC Automotive 社の許諾が必要になります。
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キーワード
長城汽車、SUV、Haval、ハバル、新エネルギー車、H6

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