曙ブレーキ工業 (株) 2018年3月期の動向
業績
(単位:百万円)
2018年 3月期 |
2017年 3月期 |
増減率 (%) |
要因 | |
売上高 | 264,921 | 266,099 | (0.4) | -欧州やアジア地域での順調な需要に対し、北米での減収が影響。 |
営業利益 | 8,143 | 4,223 | 92.8 | - |
経常利益 | 5,796 | 761 | 661.4 | - |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 782 | 354 | 121.0 | - |
要因・事業動向
<日本>
ー増収減益。鋼材などの材料の市況高騰、業績連動による賞与支給額が増加。
<北米>
ー当期の北米における売上高下落は、米系完成車メーカーによるセダンタイプの乗用車生産からの撤退や補修品市場の一時的な在庫調整による摩擦材の受注減などの影響。
当社は2015年からの北米事業売上高下落について、収益安定に向けた諸施策の効果により生産性は正常化しているとする。
ー米国内で摩擦材補修品市場の低迷が続いており、利益率の高い摩擦材の数値は下落基調。米国内の人員不足も影響。
ー鋼材など材料費高騰の影響により(10億円)が発生したものの、前年起用の外部コンサルタント費用(21億円)と空輸による緊急輸送費(12億円)が終了、人件費の圧縮にて14億円、生産・調達の合理化にて17億円の改善。前期-30億円の営業利益を18億円とした。
<欧州>
ー欧州事業は増収減益。
要因は、フランス工場における利益率の高い摩擦材ビジネスの減少とスロバキア工場における高性能量販車用ディスクブレーキ製品のための諸費用発生による。また、第4四半期に営業利益率が大きく下落しているが、在庫調整の影響。
<アジア>
ー中国、タイ、インドネシアのいずれの事業においても増収増益。
特にインドネシアにおいて利益率の高い二輪車ブレーキ製品の生産比率が高くなったことにより10%台の営業利益率を達成。
2019年3月期の見通し
中期経営計画
-長期ビジョンとして2020年度 (2021年3月期) を期限とする成長目標 「Global 30」を策定。OEM向けディスクブレーキパッドの世界市場シェア30%と営業利益率10%の達成を目標とする。
-「Global 30」の達成に向け、最終年度を2018年度 (2018年3月期) とする新中期経営計画 「akebono New Frontier 30 - 2016」の初年度として諸施策を講じ、一定の成果をあげた。
2018年3月期における目標は、
売上高 2,650憶円
営業利益 80億円
当期純利益 30億円であり、売上高、営業利益においてはおおむね達成したものの純利益が大幅に未達。
新中期経営計画 「akebono New Frontier 30 - 2016」
1) 北米事業の立て直し | |||
重要取り組み | 北米本社 (Akebono Brake Corporation) の会社基盤の再建 | -米国本社主導によるマネジメント強化と抜本的な組織改革 | |
コストマネジメント強化 | -売上重視から脱却し、利益重視へ転換 -販売・調達価格の適正化 |
||
生産性改善 | -メキシコ工場の活用 -安全第一の堅守 -品質の安定化 -緊急出荷のゼロ化 |
||
2) 製品別事業部制への移行による、グローバルネットワークの確立 | |||
1. 営業、開発などの主要な機能を振り分ける、製品別事業部制の導入 | |||
事業部 | HP (ハイパフォーマンス) 事業部 | HP用ディスクブレーキおよびパッド | 欧州地域を軸に、更なる競争力 (性能・コスト) を獲得、市場シェア拡大を狙う |
ファウンデーション事業 | ディスクブレーキ、ドラムブレーキなどメカ部品 | 安全・品質の基盤を強化し、グローバルに展開。事業基盤として利益と量を確保。 | |
社会インフラ&モビリティ事業 | 産業機械向け製品、鉄道向け製品、センサー製品 | 技術の深化・融合による新規ビジネス分野を開拓、売上拡大へ。 | |
フリクション事業 | パッド、ライニング | 材料技術、NVH技術など同社の強みを深化し、競争力を拡大 | |
アフターマーケット事業 | 補修品 | 新興国市場などのニッチマーケットを含め、グローバルで収益を拡大 | |
2. 地域毎のマーケッティング機能強化による、グローバルでの戦略策定 | |||
3. S+t (標準化+特性) をベースにしたグローバルでの製品戦略の展開 | |||
4. グローバル調達活動による合理化の推進 | |||
3) ハイパフォーマンス (高性能量販車) ビジネスの拡大と欧州事業の新築 | |||
1. ハイパフォーマンスブレーキ技術を量販車向けブレーキに適用 。より一層の差別化を図る :高性能6ポットキャリパーを量産中。世界初の量産10ポットキャリパーを投入し、技術先進性をアピールする。 |
|||
2. 従来フランスで摩擦材を製造していたが、2015年にスロバキアのAkebono Brake Slovakia s.r.o.の新設をもって、ディスクブレーキ (アルミキャリパー) の欧州一貫生産が可能となった。 |
数値目標
(単位:億円)
- | 新中期経営計画 | 長期ビジョン | |||
2016年3月期 (実績) |
2017年3月期 (実績) |
2018年3月期 (実績) |
2019年3月期 (目標) |
2020年3月期 (目標) |
|
売上高 | 2,813 | 2,661 | 2,649 | 2,550 | - |
営業利益 | (38) | 42 | 81 | 100 | - |
営業利益率 (%) | - | 1.6 | 3.1 | 3.9 | - |
親会社株主に帰属する当期純利益 | (195) | 3.5 | 7.8 | 50 | - |
グローバルOEMディスクブレーキパッドの市場シェア | - | - | - | - | 30% |
研究開発費
(単位:百万円)
2018年3月期 | 2017年3月期 | 2016年3月期 | |
全社 | 10,340 | 10,836 | 11,928 |
研究開発体制
拠点名 | 所在地 | 備考 |
日本 | ||
開発部門 | 埼玉県 羽生市 |
- |
テストコース 「Ai-Ring」 | 福島県 いわき市 |
-自動車部品メーカーとして国内最大規模 -テストコースを使ったブレーキ関連の試験・評価受託など |
(株) 曙ブレーキ中央技術研究所 | 埼玉県 羽生市 |
-新素材開発
|
(株) 曙アドバンスドエンジニアリング | 埼玉県 羽生市 |
-高性能ブレーキシステムの研究開発 |
北米 | ||
Akebono Engineering Center | 米国 ミシガン州 |
- |
欧州 | ||
Akebono Europe S.A.S. | フランス ゴネス市 |
- |
Akebono Engineering Center, Europe S.A.S. | フランス ランス市 |
-ファウンデーションブレーキの研究・開発 |
Akebono Advanced Engineering (UK) Ltd. | 英国 ウォーキングハム市 |
-モータースポーツ用および高性能車両用ディスクブレーキ開発 |
Akebono Europe GmbH | ドイツ ヘッセン州 |
-ディスクブレーキ開発 |
中国 | ||
中国開発センター | - | -2011年1月設立 |
タイ | ||
タイブレーキ開発拠点 | - | -2014年1月設立 -ASEAN諸国向けのブレーキ開発 |
研究開発活動
-交通機関、産業機械の各種ブレーキ製品を担う新摩擦材・次世代型のブレーキ開発を進める。
<日本>
摩擦材
-米ワシントン州を含む複数の州で条例化された、銅の環境規制に対応する摩擦材の開発。
-EV・PHV・HVのブレーキ特性にあわせた摩擦材の開発
ディスクブレーキ・ドラムブレーキ
-高性能車両向けアルミ合金製対向型ブレーキにおいて製品化を実現。
電動化技術
-ブレーキに小型電気モーターを搭載し、パーキングブレーキ機能を電動化した電動パーキングブレーキを開発中。
(株)曙ブレーキ中央技術研究所において、
- 摩擦材バインダーとして植物由来の木質なの繊維を複合化した繊維の開発・適用化検討
- 次世代コンセプトブレーキ開発において、摩擦ブレーキとは大きく異なる構造をもつMR流体を用いた新発想のブレーキの開発
- 応答性、コントロール性向上による自働化、摩耗粉ゼロ、鳴き振動制御による低環境負荷・快適性の追求、構造設計・軽量素材による小型・軽量化の研究
を行っている。
<北米>
-米ワシントン州を含む複数の州で条例化された、銅の環境規制に対応する摩擦材の開発。
ー軽量アルミ合金によるディスクブレーキの開発
ーディスクローター/ドラムブレーキの量産展開
<欧州>
-環境規制の厳しい欧州市場に適合する摩擦材の開発
-ドイツ・イギリスに開発機関を置き、イギリスではモータースポーツ用ディスクブレーキ開発等を行う。
<中国/タイ>
摩擦材
-部品・原材料の現地調達化と現地の環境に適したつくり方により、新興国市場で通用するコストと性能特性を有する製品開発
ディスクブレーキ
-現地のニーズや使われ方を調査・分析し、必要な機能・性能を低コストで提供できる製品の開発
受注
ー同社製のブレーキキャリパーとブレーキパッドが日産の新型「リーフ」のリアブレーキに採用されたと発表。リーフに採用されたのは片押しタイプの油圧式ブレーキキャリパーとブレーキパッド。横滑り防止装置などによる挙動制御を向上するため、よりスムーズなパッドの動きを実現した。電気自動車の航続距離を延ばすのに貢献するため、素材を改良するなどして軽量化を図った。(2018年3月5日付日刊自動車新聞より)
ーVolvo Carsの高性能ブランドPolestarの新型EVクーペ「Polestar 1」に、同社のフロント6ポットキャリパーとブレーキパッドが採用されたと発表。高級車・高性能車向けに開発された6ポットアルミ製モノブロック対向ピストン型キャリパーは、高性能パッドとの併用により、高速、高負荷、高温制動時の優れたブレーキ性能と、高価格車としての快適性を実現するとしている。(2017年10月27日付プレスリリースより)
ー同社製のリアブレーキパッドがトヨタ「C-HR」に、フロントブレーキパッドが「プリウスPHV」と「カムリ」にそれぞれ採用されたと発表。同社では、車種のキャラクターや重量に合わせてブレーキパッドを開発している。トヨタ「C-HR」ではスポーティーな走行を考慮した特性を持たせた。「カムリ」向けでは、鳴きを抑えるなど、静粛性と質感に配慮した。(2017年9月28日付日刊自動車新聞より)
設備投資額
(単位:百万円)
2018年3月期 | 2017年3月期 | 2016年3月期 | |
全社 | 11,550 | 18,670 | 18,568 |
-設備投資の内訳は、日本2,734百万円、北米4,088百万円、欧州2,202百万円、インドネシア670百円、中国1,660百万円、タイ196百万円。
-主な投資案件は以下の通り:
- 日本:岩槻工場の品質・生産性向上投資及びハイパフォーマンス(高性能量販車)向け受注拡大に伴う増産投資
- 北米:ピックアップトラック向け受注拡大に伴う増産投資
- 欧州:ハイパフォーマンス向け生産設備の増設
- 中国:受注拡大に伴う生産能力増強及び環境対応投資
- インドネシア・タイ:生産能力増強
-2018年3月期の設備投資額は、150億円を見込む。
ー米国のグラスゴー工場でブレーキキャリパーとブレーキパッドの生産能力を増強する。同工場の生産ラインを一部改造するなど、工場レイアウトを見直して、ブレーキキャリパーを製造するラインを2本新設する。今年10月に1ライン、来年2月に1ラインをそれぞれ新設し、ともに米国市場で需要が拡大している大型SUV用を製造する。投資額は数億円規模。また、今年末にアフターマーケット向けブレーキパッドの生産能力も増強する。同社は、財務体質を改善するため、年間の設備投資額を150億円以内に抑える方針だが、同社にとって最大市場である米国拠点に投資を集中して効率的に事業を拡大していく方針だ。(2017年8月8日付日刊自動車新聞より)
設備の新設計画
(2018年3月31日現在)
会社/事業所 (所在地) |
設備の内容 | 投資予定 総額 (百万円) |
着手 | 完了 |
本社部門他 (埼玉県羽生市他) |
合理化、環境保全、情報システム他 | 550 | 2018年4月 | 2019年3月 |
試験・研究開発用設備 | 1,440 | |||
曙ブレーキ岩槻製造 (株) (埼玉県さいたま市) |
ディスクブレーキ・ドラムブレーキの製造設備 | 3,250 | 2018年4月 | 2019年3月 |
曙ブレーキ福島製造 (株) (福島県桑折町) |
ブレーキライニング、産業機械・鉄道用製品の製造設備 | 510 | 2018年4月 | 2019年3月 |
曙ブレーキ山形製造 (株) (山形県寒河江市) |
ディスクブレーキパッドの製造設備 | 640 | 2018年4月 | 2019年3月 |
曙ブレーキ山陽製造 (株) (岡山県総社市) |
ドラムブレーキの製造設備 | 180 | 2018年4月 | 2019年3月 |
(株) 曙ブレーキ中央技術研究所他 (埼玉県羽生市) |
試験・研究開発用設備他 | 70 | 2018年4月 | 2019年3月 |
Akebono Brake Corporation (米国ミシガン州他) |
ディスクブレーキ・ドラムブレーキ・ディスクブレーキパッドの製造設備、研究開発用設備 | 1,720 | 2018年1月 | 2018年12月 |
Akebono Brake Mexico S.A. de C.V. (メキシコ グアナファト州) |
ディスクブレーキ・の製造設備 | 1,180 | 2018年1月 | 2018年12月 |
Akebono Europe S.A.S. (フランス ゴネス市他) |
ディスクブレーキパッドの製造設備 | 230 | 2018年4月 | 2019年3月 |
Akebono Brake Slovakia s.r.o. (スロバキア トレンチーン市) |
ディスクブレーキ製造工場 | 310 | 2018年4月 | 2019年3月 |
曙光制動器 (蘇州) 有限公司 [Akebono Corporation (Suzhou)] (中国蘇州市) |
ディスクブレーキパッドの製造設備 | 380 | 2018年1月 | 2018年12月 |
広州曙光制動器有限公司 [Akebono Corporation (Guangzhou)] (中国広州市) |
ディスクブレーキ・ドラムブレーキの製造設備 | 490 | 2018年1月 | 2018年12月 |
PT. Akebono Brake Astra Indonesia (インドネシア ジャカルタ市) |
ディスクブレーキ・ブレーキ用部品の製造設備 | 510 | 2018年1月 | 2018年12月 |
Akebono Brake Astra Vietnam CO., LTD (ベトナムハノイ市) |
ディスクブレーキ・マスターシリンダーの製造工場・設備 | 100 | 2018年1月 | 2018年12月 |
Akebono Brake (Thailand) Co., Ltd. (タイ チョンブリ県) |
ディスクブレーキの製造設備 | 200 | 2018年1月 | 2018年12月 |
A&M Casting (Thailand) Co., Ltd. (タイ ラチャブリ県) |
鋳造製造工場・鋳造製造設備 | 240 | 2018年1月 | 2018年12月 |