アイシン精機 (株) 2016年3月期の動向

業績

(単位:百万円)
2016年
3月期
2015年
3月期*
増減率 (%) 要因
売上高 3,243,178 2,964,619 9.4 -国内外の得意先カーメーカーの生産台数の増加
営業利益 176,435 166,103 6.2 -研究開発費や減価償却費の増加
-為替差損
経常利益 186,887 188,377 (0.8)
親会社株主に帰属する当期純利益 96,974 77,550 25.0
アイシン精機グループ
売上高 1,178,873 1,085,530 8.6

-国内外の得意先カーメーカーの生産台数の増加

営業利益 61,505 48,170 27.7 -売上高の増加
-収益体質強化活動の成果

*同社および一部の連結子会社の国内売上は、従来、主として出荷基準により収益を認識していたが、当連結会計年度から検収基準に変更したため、2015年3月期については、当該会計方針の変更を反映した遡及修正後の数値を記載。

アイシングループの事業再編

-マニュアルトランスミッション、制御ブレーキ、車体部品の3事業を再編する。

  • マニュアルトランスミッション事業: トヨタの開発・生産機能を、アイシンAIに集約
  • 制御ブレーキ事業: トヨタ、デンソー、アイシン精機の開発・生産機能を、アドヴィックスに集約
  • 車体部品事業: アイシン精機がシロキ工業を完全子会社化


マニュアルトランスミッション
-2015年10月、トヨタ自動車とアイシン精機、同社の子会社アイシンAIの3社でマニュアルトランスミッション (MT) 事業集約に関し追加合意したと発表。2016年内をめどに量産車向けのMT開発機能をアイシンAIに集約するとともに、トヨタの国内生産分を16年2月までにアイシンAIの国内工場へ移管を完了する。また海外生産では、フィリピンとインドのトヨタ子会社にアイシンが16年1月と7月をめどにそれぞれ資本参加し、競争力強化を目指す。(2015年10月1日付日刊自動車新聞より)

シート
-2015年12月、アイシン精機とシロキ工業は、アイシン精機を完全親会社、シロキ工業を完全子会社とする株式交換契約を締結したと発表。この株式交換は、2016年4月1日を効力発生日として行う。これに先立ち、シロキ工業は2016年3月29日に上場廃止となる予定。なお同社は、経営統合後も現状の社名と本社所在地を維持するとしている。両社はこの統合について、2014年12月に基本合意に達していた。(2015年12月23日付プレスリリースより)

-2015年5月13日、トヨタ紡織とアイシン精機、シロキ工業はシート骨格機構部品の事業譲渡契約を締結したと発表。アイシン精機とシロキ工業が手がけるシート骨格を構成するリクライナーなどの部品事業がトヨタ紡織に移管されることになる。(2015年5月14日付日刊自動車新聞より)

組織の再編
-2016年2月、走行安全商品本部と電子部品本部を統合する組織変更を4月1日付で実施すると発表。統合後の名称は「走行安全・電子商品本部」とする。同社はトヨタグループの部品事業再編に伴い、制御ブレーキ事業を子会社であるアドヴィックス(愛知県刈谷市)への移管を進めている。同事業を手がけてきた走行安全商品本部の陣容が縮小することから、統合により事業や開発体制の効率化を図る。今回の統合でアイシン精機の本部級組織は7本部から6本部体制となる。(2016年2月27日付日刊自動車新聞より)

事業動向

-2016年3月、2016年度中にも市販向けのカメラモニター市場に初参入すると発表。第1弾としてリアのナンバープレートにカメラを搭載して死角を確認できる「リアマルチビューカメラ」を発売する計画だ。トヨタグループの部品、用品流通を手がけるタクティー (名古屋市中村区) や部品商社などを通じて販売する。安全性能の向上を目的に新車を中心にカメラモニターシステムの需要が拡大していることを背景に新規参入する。発売に向けて準備を進めているリアマルチビューカメラは、カメラの映像をカーナビのモニターに映し出して駐車時などの安全性の向上に貢献する。標準モードとワイドモードを設定しており、広角で車両後部の様子を確認できる。カメラは100万画素の高画質を確保しており、夜間も奇麗に映像を表示できる。同様の製品は既にアフターマーケット市場で流通しているが、画質の良さや夜間時の性能などをセールスポイントに販売する考えだ。(2016年3月29日付日刊自動車新聞より)

2017年3月期の見通し

(単位:億円)
2017年3月期
国際会計基準 (IFRS)
(予想)
2016年3月期
日本基準
(実績)
増減
(%)
売上高 34,000 32,431 4.8
営業利益 1,750 1,764 (0.8)
経常利益 - 1,868 -
親会社株主に帰属する当期純利益 900 969 (7.2)


-2017年3月期、売上増加に伴う利益増の一方、減価償却費、研究開発費等の固定費増に加え、為替差損 (380億円) 、熊本地震のマイナス影響 (200億円)。利益の増加要因として、IFRS適用による影響 (168億円) の他、シロキとの株式交換差額 (195億円)。結果として前期並みの営業利益額を見込む。

地域別売上高見通し

(単位:億円)
2017年3月期
国際会計基準 (IFRS)
(予想)
2016年3月期
日本基準
(実績)
増減
(%)
日本 19,920 18,241 9.2
北米 5,270 5,644 (6.6)
欧州 2,800 2,814 (0.5)
中国 3,459 3,309 4.5
アジア他 2,551 2,421 5.4


>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

研究開発費

(単位:億円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
アイシン精機グループ 689 670 651
アイシンAWグループ 658 554 524
アドヴィックスグループ 193 190 195
アイシン高丘グループ 12 14 13
その他 73 62 58
合計 1,626 1,491 1,443


-グループ主要各社の2016年3月期の設備投資、研究開発費を過去最高水準に設定した。研究開発費は前年度より109億円増の1,600億円に拡大。中長期的に世界各国で燃費、排出ガス関連などの環境規制や、安全規制が強化されることを想定して上積みしている。(2015年5月8日付日刊自動車新聞より)

研究開発拠点

<中国>
-2015年4月、中国で開発体制を強化すると発表。現地の研究開発子会社である愛信(南通)汽車技術中心有限公司の新たな社屋を建設し、これまでなかった評価設備や試走路も新設する。部品の設計から評価まで一貫して手がけられる体制を整え、現地に進出する完成車メーカーや民族系メーカーのニーズに即した製品をタイムリーに開発できるようにしていく。新社屋の完成は12月を予定しており、2016年1月稼働を目指す。新社屋の敷地面積は2万6097平方メートルで、この中に1万1400平方メートルの建屋と240メートルの試走路を備える。設備投資額は建屋が10億円、評価設備に今後2年間で20億円をかける計画だ。また、従業員も現在の80人から20年までに200人に増員していく。(2015年4月21日付日刊自動車新聞より)

グループ共通の開発ツールの導入

-電子制御部品に搭載するソフトウエアの開発でグループ企業間のプラットフォームの共通化に着手した。アイシンAWアドヴィックスとともに、米メンターグラフィックス社の開発ツールを導入した。シャシー部品、自動変速機、制御ブレーキで、順次、プラットフォーム層を共通化する。従来、同分野の開発は3社が個別に取り組んできたが、今回の措置で大幅な効率化が見込める。今後は商品力を左右するアプリケーション層に能力を振り向け、競争力を高める。(2015年4月21日付日刊自動車新聞より)

研究開発活動

-システム化、モジュール化からITS関連商品の開発など、最先端の自動車部品技術を基盤に、住環境と生体の科学的研究、燃料電池やレーザーをはじめとする先端技術研究など、さまざまな分野へ開発の領域を広げている。最近の主な成果は、ハイブリッド車用電動式4WD駆動ユニットやインテリジェント駐車支援システム。

製品開発

電気式四輪駆動 (4WD) ユニット
-2016年1月、同社を含むグループ3社とトヨタ自動車が電気式四輪駆動 (4WD) ユニットを共同開発したと発表。トヨタが2015年12月に発売した新型「Prius」に採用された。競合製品に比べてユニットを小型化したほか、磁石レスとして磁力による引きずり損失を抑えた誘導モーターの採用などで高性能化も実現した。グループ3社ではアイシン精機が4WDユニットの設計を統括し、アイシンAWがモーターを、アイシンAIがギアやデファレンシャルなどの設計を担当した。グループ各社が共同で新製品の開発に取り組むのは初めて。また、アイシンとして電気式4WDユニットを手がけるのも初となるという。(2016年1月22日付日刊自動車新聞より)

シート

-トヨタ自動車は、アイシン精機、トヨタ紡織シロキ工業の3社と協力し、シートをフロアに直接取り付ける手法を新型「Prius」で採用した。従来必要だった取り付け用のブラケットを不要としたことで、車体の横方向の動きに対するシートの安定度を高め、車体と一体になった操作感をドライバーが味わえるようにした。新設計「Toyota New Global Architecture (TNGA)」の導入によって可能になったもので、プリウス以外のモデルにも広げる。(2016年1月18日付日刊自動車新聞より)

設備投資額

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
アイシン精機グループ 105,570 107,262 81,673
アイシン高丘グループ 23,077 21,190 25,377
アイシンAWグループ 123,236 78,820 74,854
アドヴィックスグループ 23,730 25,800 13,180
その他 19,996 15,552 10,413
消去 (1,422) (809) (763)
合計 294,188 247,816 204,736


-2016年3月期、グループでの生産協力体制を進めるなど、設備投資の圧縮に努めるとともに、オートマチックトランスミッションの増産に向けた生産能力の増強を進めた。

-2016年3月、2016年度からの5カ年計画「第6次アイシン連結環境取組プラン」を策定したと発表。今回から2050年のCO2ゼロ化という長期目標を掲げており、この実現に向けたステップとして第6次プランの期間中、エネルギー使用量を半減させるクリーンエネルギー工場を新たに設置する計画だ。同工場をモデルに、新設工場建設時だけでなく、既存工場の改修時もノウハウを取り入れ環境負荷の軽減に力を入れる。クリーンエネルギー工場は18年の立ち上げを目指すメキシコ新工場から導入する。省エネ技術や再生可能エネルギーの活用を広げる。また、こうした工場の将来的な世界展開に向けたロードマップの作成にも取り組む方針だ。(2016年3月31日付日刊自動車新聞より)

海外投資

<メキシコ>
-2016年1月、メキシコにサンルーフやドアフレームなどを生産する新工場を建設することを明らかにした。投資額は約60億円で、2018年1月の稼働を目指す。同社はメキシコ北部にドア部品などの生産拠点を持つが、米国への輸出がメーンとなっている。一方、新工場はメキシコ国内で生産する自動車メーカー向けの供給を主力とする計画。現地ではトヨタ自動車が新工場建設を進めるなど自動車生産のボリュームが増加している。アイシンも投資拡大で需要に応え、受注増につなげる狙いだ。(2016年1月20日付日刊自動車新聞より)

<中国>
-2015年5月、子会社「唐山愛信汽車零部件有限公司 [Tangshan Aisin Automotive Parts Co., Ltd.]」は、工場第3期建設が竣工したと発表。投資総額は約350百万元。延べ床面積は32,063.7平方メートル。主に自動車部品、自動車部品用精密打ち抜き型、精密中空プレス型、金型用治具などを生産する。フル稼働後には380百万元の売上増を見込む。3期にわたるこの建設の投資額は累計15億元に達し、アイシン精機にとって、中国での最大投資プロジェクトになった。(2015年5月27日付け各種リリースより)

設備の新設計画

(2016年3月31日現在)
投資予定額
(百万円)
主な設備投資の内容
アイシン精機グループ 109,900 ボディ関連製造設備、エンジン関連製造設備等
アイシン高丘グループ 16,800 鋳造設備等
アイシンAWグループ 78,000 ドライブトレイン関連製造設備等
アドヴィックスグループ 43,600 ブレーキおよびシャシー関連製造設備等
その他 13,900 ドライブトレイン関連製造設備等
消去 (5,200) -
合計 257,000 -


-2017年3月期の設備投資予定額は、前年比12.6%減の2,570億円。得意先のモデルチェンジに対応した新商品・改良商品への投資および新技術・新商品等の研究開発が主な内容。