BorgWarner Inc. 2011年12月期の動向
ハイライト
業績 |
(単位:百万ドル) |
2011年 12月期 |
2010年 12月期 |
増減率 (%) |
要因 | |
全社 | ||||
売上高 | 7,114.7 | 5,652.8 | 25.9 | - |
エンジン部門 | ||||
売上高 | 5,050.6 | 4,060.8 | 24.4 | 1) |
*修正後EBIT | 774.3 | 537.9 | 43.9 | |
ドライブトレイン部門 | ||||
売上高 | 2,084.5 | 1,611.4 | 29.4 | 2) |
*修正後EBIT | 161.2 | 137.0 | 17.7 |
要因
1)エンジン部門
-全ての主要製品群がグローバルにわたり堅調に推移したこと、およびコスト管理が奏功。
2)ドライブトレイン部門
-韓国における4WDドライブシステムとトランスミッション、および欧州におけるデュアルクラッチトランスミッションモジュールの堅調な売上が奏功。
-2011年12月期の修正後EBITの増加率は7.7%であり、前年の8.5%より0.8%減少した。主に欧州事業における運用効率の悪化や、Haldex ABより買収したトラクションシステム事業の買収関連費用が影響。
事業買収
-同社は、Haldex Groupのトラクションシステム事業買収を完了した。同事業はスウェーデン、メキシコ、ハンガリーの各拠点で、乗用車およびクロスオーバー車向け全輪駆動(AWD)システムを生産している。主な納入先はVolkswagen、Audi、Skoda、Seat、Lamborghini、Bugatti、Volvo、Land Rover、Saab、GMなど。なお、今回の買収金額は205百万米ドル。(2011年2月1日付プレスリリースより)-スペインのDytech ENSA SLを買収した。Dytechはスペイン、ポルトガル、インドに拠点を保有し、各種EGR製品(モジュール、クーラー、チューブ、バルブ)などを生産して いる。2009年には約180百万米ドルの売上を記録した。主な納入先はRenault/日産、VW/Audi、Ford、Fiat、Navistar、 GM、Daimler、PSA、スズキ、Mahindra & Mahindra、TATA、Ashok Leyland、MAN、IVECOなど。(2010年4月9日付プレスリリースより)
-BorgWarner BERU Systemsは、Eichenauer Heizelemente GmbH & Co. KG (ドイツ)と合弁で運営していたBERU Eichenauer GmbHの全株式を取得し、完全子会社化した。BERU-Eichenauer GmbHはドイツKandelに本社を置き、自動車用電気ヒーターの開発・生産を行っている。(2010年5月3日付プレスリリースより)
事業提携
-同社は、タイミングチェーントランスミッションシステムやトルクマネジメントシステムなどに関して、長城汽車と戦略的提携契約を締結したと発表。同社と長城汽車は、2005年より協業を開始。まず、四輪駆動用の電子制御式トランスファーケースを、SUV「Haval」およびピックアップトラック「Wingle」に納入した。現在、BorgWarnerのトランスファーケースは「Haval H5」シリーズに搭載され、生産を行っている。さらに、トルクマネジメントシステムは「Haval H6」シリーズに採用。2011年末までに生産を開始する予定。(2011年10月8日付プレスリリースより)売却
-同社は、タイヤ空気圧監視システム事業をHuf Electronics GmbHへ売却することで合意したと発表。今回の売却には、従業員約230名を抱えるドイツのBretten工場が含まれる。なお同事業は、BERUの ディーゼルエンジン用冷間始動システム事業およびイグニションシステム事業の一部として、2005年にBorgWarnerが買収した。(2011年11 月30日付プレスリリースより)受賞
-同社傘下のBorgWarner Morse TECは、中国浙江省の寧波(Ningbo)工場が上海大衆汽車動力総成(Shanghai Volkswagen Powertrain)より「Best Supplier Award」を受賞したと発表。同工場では、エンジン「EA111」向けにタイミングチェーンドライブの生産を行っている。このエンジンはVolkswagen「Polo」および「Touran」、Skoda「Octavia」、「Superb」、「Fabia」に搭載されている。(2011年6月23日付プレスリリースより)-BorgWarner Turbo Systemsは、中国重型汽車(China National Heavy Duty Truck Group Corporation: CNHTC)より「Excellent Supplier Award」を受賞した。同社の納入・品質における実績が評価されたもの。(2011年4月14日付プレスリリースより)
受注
<エンジン部門>製品 | 搭載モデル | エンジン | 備考 |
ターボチャージャー | Ford | 3.5L「Ecoboost」 | - |
2ステージターボチャージャー | Fiat | 3.0Lコモンレールディーゼルエンジン「F1C」 | -同エンジンは排出ガス基準「EPA 2010」を達成するとともに、従来のエンジンと比べて10%の燃費改善に寄与。 |
可変タービンジオメトリー式(VTG)ターボチャージャー | 長城汽車 「Hover/Haval H5」(中国モデル) | 2.0Lディーゼルエンジン | -長城汽車製エンジンの欧州排出ガス基準「Euro4」、平均燃費34mpg(6.8L/100km)の達成に寄与。 |
可変タービンジオメトリー式(VTG)ターボチャージャー | BMW 「MINI」 | 1.6L 4気筒コモンディーゼルエンジン | -ディーゼルエンジンの排気量を2.0Lから1.6Lに小型化することに貢献。 |
サイレントチェーン | -現代 「Sonata」(北米・韓国モデル) -起亜 「Sorento」(北米・韓国モデル)、「K5」(北米・韓国モデル)、「Sportage」(北米・韓国モデル) |
4気筒ガソリン直噴(GDI)エンジンおよびターボGDIエンジンのバランスシャフトドライブ向け | -従来のバランスドライブ製品向けローラーチェーンに比べて、NVH性能および耐久性を大幅に向上。 |
タイミングチェーンドライブ | -Volkswagen 「Polo」、「Touran」 -Skoda 「Octavia」、「Superb」、「Fabia」 | 「EA111」 | - |
カムトルク駆動(CTA)型可変カムタイミング(VCT)システム | スバル 「Forester」 | 2.0L 4気筒ボクサーエンジン、2.5L 4気筒ボクサーエンジン | - |
エンジンタイミングシステム(サイレントチェーン使用) | Chrysler 「Jeep Grand Cherokee」(2011年モデル) | 3.6L 「Pentastar V6」 | - |
-カムトルク駆動(CTA)型可変カムタイミング(VCT)システム -タイミングドライブシステム | Ford 「Super Duty」(2011年モデル) | 6.2L V8ガソリンエンジン | -385馬力、最大トルク405ポンドフィートの実現に貢献 -従来の5.4リッターエンジンと比べて、15%の燃費向上に寄与。 |
-エンジンタイミングシステム -排ガス再循環(EGR)チューブ -インスタントスタートシステム |
-Ford 「Transit」、「T6-GCP-Ranger」 -Fiat 「Ducato」 -PSA 「Boxer」 -Land Rover 「Defender」 |
2.2Lディーゼルエンジン「I4」および3.2Lディーゼルエンジン「I5」 | - |
電子制御式ファンドライブ | -Freightliner Trucks 「Cascadia」(北米モデル) | 「DD13」および「DD15」 | -エンジン冷却機能を向上させ、燃費改善および出力増大に貢献。 -エンジン温度を厳密に管理することで、エンジンおよび部品の寿命を延長。 |
プラグトップ型イグニッションコイル用ダブルプラチナスパークプラグ | -Audi 「A4」、「A4 Avant」、「A5」、「A5 Sportback」、「A5 Cabrio」 | 1.8Lおよび2.0L 4気筒TFSIエンジン | -高電圧使用に対応する一方で、エンジン失火の原因となるアーク放電やフラッシュオーバーの危険性を最小限に留める。 -ダブルプラチナチップは腐食を抑制し製品寿命の長期化に寄与。 |
小型プラグトップイグニッションコイル | Fiat | 0.9Lガソリンエンジン「TwinAir」 | -磁気回路技術を使用することで小型化に成功。また、高い燃焼エネルギーと点火電圧を実現。 |
電子制御バタフライ式EGR(排ガス再循環)バルブ | Cummins オンハイウェイ商用ディーゼルトラック | 11.9L、15.0Lエンジン | - |
<ドライブトレイン部門>
製品 | 搭載モデル | エンジン | 備考 |
第三世代タイヤ空気圧監視システム(TSS) | Volkswagen 「Passat」(米国モデル) | - | -集積アンテナ付き小型制御ユニットと四輪電子ユニットで構成され、それぞれのタイヤの中心圧力と温度を測定。 -アンテナの信号強度分析により、TSSは個々のホイールの位置を検知し、タイヤ圧力の偏差が0.2バールになるとドライバーへ警告を行う。 |
トランスファーケース | 長城汽車 「Haval H5」 | - | - |
トルクマネジメントシステム | 長城汽車 「Haval H6」 |
- |
- |
-フリクションプレート -ワンウェイローラークラッチ |
-現代 「Equos」(韓国モデル)、「Genesis」(韓国モデル) -起亜 「Mohave」(韓国モデル) |
4.6Lおよび3.8L | -同部品が現代自動車の後輪駆動車用8速オートマチックトランスミッションに採用。 |
トランスファーケース | 長城汽車 「Hover/Haval H5」(中国モデル) | 2.0L | - |
トランスファーケース | Tata 「Aria」 | 2.2L | -両社は共同で同社のECUとソフトウェアをTataの車載ネットワークへ統合。これにより、同部品はドライバーの操作なしに二輪駆動と四輪駆動の自動切換えを実現。 |
展望
-同社は、2012-2014年のパワートレイン事業における新規受注金額が250億米ドルに達する見込みと発表した。過去3年間(2009-2011)と比べると9%の増加にあたる。新規受注のうち、約80%はエンジン関連製品によるものと見られる。対象製品は、ターボチャージャー、イグニションシステム、エミッション部品、エンジンタイミングシステム、可変カムタイミングモジュール、サーマルシステムなど。また、「DualTronic」トランスミッションや従来のオートマチックトランスミッション、四輪駆動製品など、ドライブトレイン関連製品の受注が残りの約20%を占める見込み。(2011年11月8日付プレスリリースより)-2012年は欧州において、前年と比べて生産量が減少。グローバルで受注が増加することで来期の売上高は増加を見込んでいる。
-世界規模の直噴ディーゼルおよびガソリンエンジンの増加、欧州とアジア太平洋におけるATの採用、可変カムおよびチェーンタイミングシステムへのシフトにより、同社は長期的な成長を見込み、製品開発や戦略的投資に取り組んでいる。
開発動向
研究開発費 |
(単位:百万ドル) |
2011年12月期 | 2010年12月期 | 2009年12月期 | |
合計 | 243.7 | 185.0 | 155.2 |
売上に対する比率 | 3.4% | 3.3% | 3.9% |
-各事業部門はR&D組織を設置。
研究開発拠点
-中国・上海に新拠点「BorgWarner China Technical Center」を開設した。2012年までに約400人を雇用し、同社最大規模の研究開発拠点となる見込み。研究開発の対象となる製品は、ターボチャー ジャー、「DualTronic」クラッチモジュール、EGRバルブ、エアポンプ、タイミングチェーン、ファンおよびファンドライブ、ウォーターポ ンプ、イグニッションシステム、トランスミッションソレノイドおよびコントロール、フリクションプレート、4WDシステムなど。(2010年3月26日付 プレスリリースより)製品開発
-同社は、サイレントチェーンを新開発した。現代自動車の「Theta II」4気筒ガソリン直噴(GDI)エンジンおよびターボGDIエンジンのバランスシャフトドライブ向け。これらのエンジンは、現代 「Sonata」、起亜 「Sorento」、「K5」、「Sportage」の米国・韓国モデルに搭載されている。新型サイレントチェーンは、従来のバランスドライブ製品向けローラーチェーンに比べて、NVH性能および耐久性を大幅に向上させた。(2011年9月12日付プレスリリースより)-開発した2ステージターボチャージャー「R2S」とハイブリッドチューブEGRクーラーは、商用ディーゼルトラック・バスの排ガス低減および燃費向上に貢献する。2010年に入って北米の大手商用トラックメーカーに採用された本製品は、「EPA2010」排出ガス基準の達成に寄与するという。 (2010年12月8日付プレスリリースより)
設備投資
設備投資額 |
(単位:百万ドル) |
2011年12月期 | 2010年12月期 | 2009年12月期 | |
合計 | 393.7 | 276.6 | 172.0 |
売上に対する比率 | 5.5% | 4.9% | 4.3% |
海外投資
<メキシコ>-同社は、メキシコRamosにターボチャージャー工場を開設したと発表。このターボチャージャーは、Fordの3.5Lエンジン「Ecoboost」に採用されている。なお、このエンジンは2010年11月発売の後輪駆動乗用車およびトラックに搭載。同社は今後、同工場で従業員185名超を雇用し、受注済みの新規ビジネスに対応していく予定。(2011年10月17日付プレスリリースより)
<ブラジル>
-同社は、ブラジルItatibaに新たに工場およびエンジニアリングセンターを建設すると発表。施設の面積は、204,500平方フィー ト(19,000平方メートル)。既存のCampinas工場に取って代わる予定で、2012年8月に完成が見込まれる。新施設では、乗用車および商用車 向けターボチャージャーなどの様々な燃費向上製品や、ビスカスファンおよびファンドライブなどを生産する。今後、可変カムシャフトタイミング(VCT)や エンジンタイミングシステムなどの生産も行う予定。(2011年7月21日付プレスリリースより)
<インド>
-BorgWarner Thermal SystemsはインドChennai近郊に工場を開設した。ビスカスファンやファンドライブを生産し、Tata Motors、Tata Cummins、Ashok Leyland、Mahindra & Mahindraなどに供給する計画。(2010年3月30日付プレスリリースより)