住友電気工業 (株) 2017年3月期の動向

業績

(単位:百万円)
2017年
3月期
2016年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 2,814,483 2,933,089 (4.0) -海外を中心に自動車用ワイヤーハーネスや光ファイバ・ケーブル、光・電子デバイス等の需要は堅調であったものの、携帯機器用フレキシブルプリント回路の需要減少、及び円高や銅価格下落の影響が大きく減収。
営業利益 150,503 143,476 4.9 -グローバルでのコスト低減、新製品の開発・拡販を進めたため増益。
経常利益 173,872 165,658 5.0
親会社株主に帰属する当期純利益 107,562 91,001 18.2
自動車関連事業
売上高 1,511,739 1,540,817 (1.9) -特に中国をはじめとする海外での販売数量が増加した一方で、円高や銅価格下落の影響を受け減収。
営業利益 98,616 88,654 11.2 -円高の影響があったものの、グローバル生産拠点でのコスト低減を進め増益。

製品開発

従来より強度の高いマグネシウム合金
-シートフレームなど自動車用プレス部品向けに活用できるマグネシウム合金を開発した。材料の鋳造から圧延までの工程で温度制御を最適化することで、従来の鋼板の強度270メガパスカルを上回る330メガパスカルの強度を確保するとともに、約60%の軽量化を実現した。高強度・軽量化を両立する部材として2020年にも日系自動車メーカーの上級グレード車での受注獲得を目指し、順次量産車へ採用拡大を狙う。自動車向けとしてはシートフレームやシフトノブ、ホーンボタン回りでの実用化を想定している。(2016年9月6日付日刊自動車新聞より)

受賞

-日産より日本国内Electric部門における品質最優秀賞にあたる「Japan Regional Quality Award (Electric Category)」を受賞した。同社がこの賞を受賞するのは今回で2回目となる。(2016年7月22日付プレスリリースより)

買収

-米国の大手焼結部品メーカーKeystone Powdered Metal Companyを買収すると発表した。同社が100%出資する米国子会社Sumitomo Electric U.S.A. (SEUHO) とSEUHOが設立する特別目的会社、Keystoneの3社で買収契約を締結。特別目的会社とKeystoneを合併させることで、SEUHOがKeystoneの全株式を取得する。買収手続きは2016年9月末に完了する見込み。Keystoneは米国ペンシルベニア州を本拠とし、同州の2カ所、ノースカロライナ州の1カ所に生産拠点を保有している。従業員数は570名で2015年の売上高は119百万ドルとなった。(2016年9月6日付プレスリリースより)

持ち株比率の変更

<ブレーキメーカーのアドヴィックス>
-トヨタ自動車は、同社、アイシン精機デンソーと、ブレーキメーカーのアドヴィックス(愛知県刈谷市)の増資と持ち株比率の変更で合意したと発表した。今年9月にアドヴィックスが103億3800万円の第三者割当増資を行い、アイシン、トヨタ、デンソーが引き受ける。併せて、デンソーは同社から株式譲渡を受ける。この結果、持ち株比率はアイシン精機が55%から51%へ、デンソーが 18%から34%へ、同社が18%から6%へ変更される。トヨタは9%で変わらない。増資は、アドヴィックスの事業基盤強化に活用する。(2016年 5月2日付日刊自動車新聞より)

研究開発費

(単位:百万円)
2017年3月期 2016年3月期 2015年3月期
全社 115,155 110,839 105,604
-自動車関連事業 70,894 68,402 64,431


-2018年3月期の研究開発費は、全社115,000百万円、自動車関連事業71,000百万円を計画している。

研究開発活動

ワイヤーハーネス/車載エレクトロニクス機器事業
-同社と住友電装、および両社の共同出資によるオートネットワーク技術研究所を中心に、安全・快適・環境のニーズに対応した新製品の開発を実施。
-ワイヤーハーネス:

  • 次世代車載システムに対応できるハーネスアーキテクチャーを構築し、それに必要な要素技術の開発を推進している。
  • 環境対応としてハーネスの軽量化に取り組んでおり、銅に比べ軽量なアルミを使ったワイヤーハーネスを量産し、さらに高強度な電線を開発し適用範囲拡大の取り組みを進めている。
  • 市場規模が拡大しているEV/HEV車用高圧ハーネスやコネクター、バッテリー内配線モジュール等の開発を推進している。

-車載エレクトロニクス機器:

  • 電源系、情報系のネットワーク化に対応すべく、電源制御機器や半導体デバイス、ボディ制御ECU、次世代の車載LAN (Local Area Network) 製品の開発を進めている。

-住友理工

  • 既存事業のコア技術を進化させる材料技術研究所と、コア技術を集約するために新設した先行技術研究所で技術開発を進めている。
  • 体圧を検知する「スマートラバー (SR) センサー」を自動車のシートに埋め込み、呼吸や心拍などのバイタル情報によってドライバーの異変を検知、危険を回避する乗員状態検知機能の実用化に向けた開発や、電気自動車 (EV) および燃料電池自動車 (FCV) 向けの環境対応製品の技術開発などに取り組んでいる。

設備投資額

(単位:百万円)
2017年3月期 2016年3月期 2015年3月期
全社 183,693 167,282 148,213
-自動車関連事業 76,946 76,274 75,561


-自動車関連事業では、ワイヤーハーネス・防振ゴムの増産および合理化のための投資を実施。

設備投資の見通し (2018年3月期)

-全社で180,000百万円の投資を計画。
-自動車関連事業では、80,000百万円の投資を予定している。

地域別設備投資額と予定

(単位:億円)
2018年3月期
(予定)
2017年3月期
(実績)
2016年3月期
(実績)
2015年3月期
(実績)
日本 978 922 796 726
米州 195 213 165 148
アジア 483 561 549 468
欧州・その他 144 141 163 140
合計 1,800 1,837 1,673 1,482

2018年3月期の見通し

(単位:百万円)
2018年3月期
(予測)
2017年3月期
(実績)
増減率
(%)
売上高 3,000,000 2,814,483 6.6
-自動車関連事業売上高 1,550,000 1,511,739 2.5
営業利益 175,000 150,503 16.3
経常利益 195,000 173,872 12.2
親会社株主に帰属する当期純利益 115,000 107,562 6.9


-2018年3月期の自動車関連事業の取り組み方針は以下の通り:

  • 高強度アルミハーネス、環境対応車向けの高電圧ハーネス、高速通信用コネクタ、さらにEVや自動運転に対応した電装部品などの新製品開発・拡販
  • 海外系顧客向けの更なるシェア拡大とコスト低減
  • 住友理工M&A会社を活かしたグローバルでの拡販

>>> 次年度業績予想 (売上、営業利益等)

中期経営計画

-2018年3月期を最終年度とする新中期経営計画「17VISION」の数値目標は以下の通り:

(単位:億円)
2018年3月期
(予測)
2018年3月期
(中計最終年度目標)
売上高 30,000 33,000
営業利益 1,750 2,000
営業利益率 5.8% 6.0%以上


-2017年度までの中期経営計画 「17VISION」 の修正分を発表した。グローバル事業環境の変化や円安の進展などから17年度の数値目標を見直し、 売上高3兆3千億円、営業利益2千億円、投下資産営業利益率 (ROA) 9%以上に設定した。新たな指標として株主資本利益率 (ROE) 8%以上を追加した。自動車事業では総合的な自動車部品サプライヤーを目指し、ワイヤーハーネスやコネクター、防振ゴムで非日系向けのシェア向上に取り組む。自動車エレクトロニクス商品ではコミュニケーション (ICT) との融合領域である非ハーネス製品の拡大を図る。(2015年5月27日付日刊自動車新聞より)

-2018年3月期は、為替前提を合わせれば、エレクトロニクスを除く4セグメントで見直し17Vをほぼ達成する予想。(2017年3月時点)


自動車関連事業
-めざす姿:総合的な自動車部品サプライヤーをめざす
-修正した目標値に向けた戦略は以下のとおり;

1) 非日系市場シェアの拡大

  • ハーネス/コネクター、防振ゴムの市場シェアの拡大

2) 新製品開発の加速

  • 軽量化 (アルミハーネス等)、モジュール化への対応
  • エレクトロニクス製品 (セントラルゲートウェイ等) の拡大