住友電気工業 (株) 2012年3月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万円)
2012年
3月期
2011年
3月期
増減率 (%) 備考
全社
売上高 2,059,344 2,033,827 1.3 -
営業利益 86,946 103,810 (16.2) -
経常利益 106,696 129,099 (17.4) -
当期純利益 58,861 70,614 (16.6) -
自動車関連事業
売上高 991,246 959,341 3.3 -東日本大震災の影響により、上半期の需要は減少したものの、下半期の生産回復需要の捕捉や、グローバルな自動車需要の拡大、ワイヤーハーネスのシェア向上が寄与。
-ワイヤーハーネスのグローバル生産数量は過去最高を更新。
営業利益 54,331 64,118 (15.3)

-2010年2月から公正取引委員会の調査を受けていた自動車用ワイヤーハーネス関連製品の取引に関して、独占禁止法に違反する行為があったとして、同委員会より課徴金約21億222万円の納付命令を受けたと発表した。なお、本件に伴い2012年3月期第1四半期決算において、21億42百万円を特別損失として計上する。(2012年1月19日付プレスリリースより)

新会社

<タイ>
-タイのラヨーン県に、自動車ワイヤーハーネス(組み電線)などの電線・ケーブルの母線となる銅荒引線・伸線などの製造と販売を行う「SEI Thai Electric Conductor(仮称)」を設立すると発表した。自動車のATのバルブ部品に加工される切削用アルミ棒材の製造と販売も行う。2014年4月に稼働予定。15年度には銅製品で月約1万トン、アルミ製品で約110トンの販売量を目指し、年間売り上げ目標は15年度約470億円とする。銅荒引線・伸線の製造拠点は日本とインドネシアに加えて3拠点となる。新会社は東南アジア最大の製造能力を持つ銅荒引線・伸線工場になる。アルミ棒材はこれまでグループ会社の富山住友電工が製造していたが、今後は富山住友電工が鋳造圧延などの上工程を行い、新工場が最終製品化する。(2012年1月27日付日刊自動車新聞より)

<インド>
-インドのハリヤナ州Gurgaonに現地法人「SEI Trading India Private Limited」を設立し、11月1日より営業を開始したと発表。資本金は5百万ルピー(約7.7百万円)。同社グループ関連製品の販売を行う。(2011年11月8日付プレスリリースより)

事業再編

-電子ワイヤー事業を行う100%子会社の住友電工電子ワイヤーと住友電工フラットコンポーネントの2社を2012年4月1日付で合併すると発表した。住友電工電子ワイヤーを存続会社とし、従業員数は約770人になる。新会社は2社の事業を統合し、電子線やハーネス(組み電線)、フラットケーブルなどの開発、製造・販売を行う。(2011年12月9日付日刊自動車新聞より)

-住友電装は、2011年10月1日付で東日本の製造子会社4社を合併により統合すると発表した。海外での現地生産化が加速するワイヤーハーネス事業において、統合によりモノづくりの効率化や人材の有効活用、機動的なローテーションなど地域を超えた総合力を強化し、国内のグローバルマザー機能の役割りを明確にするのが狙い。対象4社は東北住電装(山形県南陽市)と協立ハイパーツ(岩手県一関市)、協立ハーネス(同)、関東住電装(栃木県小山市)。存続会社は東北住電装で、残る3社は消滅会社となる。統合新会社となる「SWS東日本」は岩手県一関市に本社を置き、2012年度に156億円の売上高を目指す。(2011年8月9日付日刊自動車新聞より)

国内事業

-CHAdeMO仕様EV急速充電器用コネクタ付きケーブルが、東京電力事業所内のCHAdeMO仕様急速充電器に設置されたと発表。「CHAdeMO」は急速充電規格の一つで、東京電力、自動車・充電器メーカー、行政等が加入するCHAdeMO協議会が標準化を進めている方式。このコネクタ付きケーブルは、本体に軽量アルミ合金、テーブルにゴム被覆タイプを採用することで、優れた操作性を実現している。(2011年9月29日付プレスリリースより)

>>> 次年度業績予想(売上、営業利益等)

2013年3月期の見通し

(単位:億円)
2013年3月期
(見通し)
2012年3月期
(実績)
増減率 (%)
売上高 22,000 20,593 6.8
-自動車 10,800 9,912 9.0
営業利益 1,100 869 26.6
経常利益 1,300 1,067 21.8
当期純利益 700 589 18.8
研究開発費 930 866 7.4
-自動車

550

490

12.2
設備投資額 1,600 1,350 18.5
-自動車 - 605 -

2013年3月期 事業計画

-海外自動車メーカー向けビジネスを拡大。Ford、Chrysler、PSA等への営業体制強化。
-徹底的なコスト低減活動の推進。
  • 自動化などによる生産性向上。
  • グローバル最適生産体制の再構築:メキシコ、東南アジア(カンボジア、ベトナム、インドネシアなど)を増強。
  • 部品・材料の現地調達化の加速。
-ハイブリッド/電気自動車用の高電圧ハーネスや、自動車の軽量化に寄与するアルミハーネス、小型・軽量化のニーズに応じた防振ゴム製品、リアクトル、電池関連製品の開発。

開発動向

研究開発費

(単位:百万円)
  2012年3月期 2011年3月期 2010年3月期
全社 86,582  79,026 72,259
自動車関連事業 49,017  45,107 37,512

-2013年3月期の研究開発費は930億円を予定。その内、自動車関連事業は550億円。

研究開発活動

ワイヤーハーネス/車載エレクトロニクス機器事業
-同社と住友電装、および両社の共同出資によるオートネットワーク技術研究所を中心に、安全・快適・環境のニーズに対応した新製品の開発を実施。
-ワイヤーハーネス:次世代車載システムに対応できるハーネスアーキテクチャーを構築。それに必要な要素技術の開発を推進。また、環境対応としてハーネスの軽量化に取り組んでおり、銅に比べ軽量なアルミを使ったワイヤーハーネスの開発に成功し量産化に至った。さらに市場規模が拡大しているEV/HEV用高圧ハーネスやコネクタ等の開発を推進。

-車載エレクトロニクス機器:IT化、高機能化、ネットワーク化に対応すべく、PD(Power Distributor)等のエレクトロニクス機器や半導体デバイス、次世代の車載LAN(Local Area Network)の開発を推進。

技術提携

-同社と明電舎は29日、住友電工のアルミニウム多孔体「アルミセルメット」を電極材料に使用する電気二重層キャパシタを共同開発すると発表した。電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)など自動車向けを中心に2015年度の製品化を目指す。(2012年3月30日付日刊自動車新聞より)

製品開発

高機能フッ素コート
-同社と住友電工ファインポリマーは30日、樹脂中でトップクラスの耐摩耗性と滑り性を備えた「高機能フッ素コート」を開発したと発表した。板材からのプレス加工が可能で、自動車用の巻き軸受などに成型できる。高い滑り性を持つため、低トルク化などにもつなげることができる。今後自動車のシャフトなど、任意形状の部品への技術応用も検討を進める方針。(2012年1月31日付日刊自動車新聞より)

鋳鉄の高速・連続加工用新材種
-幅広い用途で従来材種の1.5倍以上に長寿命化した鋳鉄の高速・連続加工用新材種「エースコートAC405K/AC415K」の2材種を開発して発売開始したと発表した。両材種ともに、新コーティング技術を採用。コーティング膜の中でも耐摩耗性を担うチタンカーボンナイトライド層を構成するセラミック粒子の微細・高硬度化を達成した。これによって耐摩耗性が従来品と比べて約50%向上するとともに、鋳鉄加工の大幅な高速化が可能となった。鋳鉄は、自動車用のエンジン、クランクシャフト、カムシャフト、ブレーキディスクなど様々な用途で使われる、硬さと粘り強さ、防振・防音、耐熱性を備えた、鉄と黒鉛の複合材料。自動車分野では、燃費向上のための部品の薄肉・軽量化ニーズが高まり、より強度が高く被削性の悪い球状黒鉛鋳鉄(ダクタイル鋳鉄)が用いられるケースが増加している。初年度4億円、3年後に17億円の売上げを計画している。(2012年1月26日付日刊自動車新聞より)

4インチ径および6インチ径の薄膜GaN(窒化ガリウム)基板
-同社とフランスの半導体材料メーカーS.O.I. TEC Silicon On Insulator Technologies S.A. (Soitec)は、4インチ径および6インチ径の薄膜GaN(窒化ガリウム)基板の製造に成功し、量産に向けたパイロット製造ラインの整備を開始したと発表。両社は、2010年12月に薄膜GaN基板の開発に関して協業を開始している。本技術開発の成功により、両社は、それぞれ兵庫県伊丹市とフランスBernin市に、4インチ径および6インチ径の薄膜GaN基板パイロット製造ラインの整備に着手した。照明用の高輝度LEDや、電気自動車用や電力制御用のパワーデバイスなどに使用される。(2012年1月24日付プレスリリースより)

アルミニウム多孔体
-アルミニウム多孔体「アルミセルメット」を新たに開発した。大阪製作所にミニラインを導入し、量産に向けた開発を加速する予定。セルメットは、金属不織布、発泡金属などの他の金属多孔体にはない大きな気孔率(最大98%)を有する。最近では、ハイブリッド自動車用ニッケル水素電池の正極集電体に採用。アルミセルメットは、アルミニウムの比重がニッケルの約3分の1と軽量で、電気抵抗率もニッケルの半分以下という高い導電性を持つ。また、リチウムイオン二次電池やキャパシタの高容量化にも有効。同社試算では、自動車等に搭載される組電池にあてはめると、電池の容量は1.5-3倍になるという。(2011年6月24日付プレスリリースより)

設備投資

設備投資額

(単位:百万円)
  2012年3月期 2011年3月期 2010年3月期
全社 135,039  98,424 73,306
自動車関連事業 60,498  45,666 29,609

-自動車関連事業では、ワイヤーハーネス・防振ゴムの増産および合理化のための投資を実施。

海外投資

<欧州・その他>
-モロッコ・チュニジア・東欧等で、Renault、PSA、Volkswagenグループ、Fiatグループ、日系自動車メーカー向けのワイヤーハーネスの生産能力を増強。

<米州>
-ワイヤーハーネスおよび部品の生産拠点(メキシコ、ブラジル、米国)を増強。
-防振ゴムの生産能力を拡大。

<中国・アジア>
-ワイヤーハーネスおよび部品の中国拠点(恵州、天津、上海、常熟)、タイ、ベトナム、フィリピン、インドネシア等の拠点を増強。
-防振ゴムの拠点を増強。

設備投資計画 (2013年3月期)

-全社で160,000百万円の投資を計画。

-自動車関連事業では、ワイヤーハーネスと防振ゴムの製造設備等に77,000百万円の投資を予定。

海外投資
<欧州、その他>
-北アフリカ(モロッコ)等で、Renault、PSA、Volkswagenグループ、Fiatグループ、日系自動車メーカー向けのワイヤーハーネスの生産拠点を増強。

<米州>
-ワイヤーハーネスおよび部品の生産拠点(メキシコ、ブラジル)を増強。
-防振ゴムの生産能力を拡大。

<中国・アジア>
-ワイヤーハーネスおよび部品の製造拠点(中国、カンボジア、インドネシア、ベトナム)を増強。
-防振ゴムの拠点を増強。
-インドネシアに自動車用ワイヤーハーネス(WH)、焼結部品、切削工具の新工場を建設すると発表した。約50億円を投資して各分野の生産拠点を新設する。WHに関しては、住友電装と共同で現地生産会社に第2工場を設置。2015年度までに生産能力を現状の3倍に引き上げる。焼結部品は現地の企業グループと合弁で製造・販売会社を設立し、2013年2月から生産開始する。切削工具は、グループ会社の住友ハードメタルが現地企業と合弁で製造・販売会社を設け、2013年4月に生産を開始する。焼結部品、切削工具分野での進出は初めて。WHは、西ジャワ州プルワカルタ県に設置する既存拠点のPT. Sumi indo.Wiring Systemsに14億円を投じ、建屋を増設する。焼結部品の工場は同じ西ジャワ州のブカシ県に設置する。投資額は25億円を見込む。切削工具に関しては、12億円を投じて西ジャワ州カラワン県に生産体制を整える。(2012年3月24日付日刊自動車新聞より)