旭硝子 (株) 2016年12月期の動向

業績

(IFRS、単位:百万円)
2016年
12月期
2015年
12月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 1,282,570 1,326,293 (3.3) -円高の影響
営業利益 96,292 71,172 35.3 -自動車用ガラス及び化学製品の出荷数量増加
-建築用ガラスの販売価格上昇
-原燃材料価格下落等のコストダウン
税引前利益 67,563 84,522 (20.1) -
親会社の所有者に帰属する当期純利益 47,438 42,906 10.6 -法人所得税費用減少
ガラス部門
売上高 679,071 691,411 (1.8) -自動車用ガラスは、欧州、中国、北米で自動車生産台数が増加したことから、同社グループの出荷も増加し増収。
営業利益 31,825 13,046 143.9 -



製品開発

車載ディスプレー用カバーガラス
-同社は世界で初めて三次元曲面形状の車載ディスプレー用カバーガラスの量産を京浜工場 (横浜市鶴見区) で開始したと発表した。また、今後の車載ディスプレーの大型化や需要増加を見込んで、同工場でのカバーガラスの生産能力を増強する。今回、量産開始した製品は、三次元曲面形状のガラスに化学強化、光学成膜、印刷などの表面処理を施したもので、車の内装デザインの向上に貢献する。(2017年6月8日付日刊自動車新聞より)

-同社は曲面型車載ディスプレー向け高機能カバーガラスを実用化する。ディスプレー形状の複雑化や大面積化によって保護面の耐傷性や耐候性がさらに重要になることから、樹脂製のカバーよりも信頼性の高い部材として自動車メーカーや部品メーカーに提案し、数年以内の実用化を目指す。特に、カバーガラスの需要が高い欧州市場での採用を想定する。旭硝子グループのAGCディスプレイグラス米沢 (山形県米沢市) が曲面ディスプレーに対応する三次元形状の加工量産技術の確立に成功した。平面型向けに納入実績のある欧州自動車メーカーに対して既に曲面型カバーガラスのサンプル出荷を開始している。今後は試作品を製作し、実評価に移る見通し。(2016年6月23日付日刊自動車新聞より)

-同社は車載ディスプレー用カバーガラスの供給体制を拡充する。増強中の生産設備を4月に本格稼働させる。カーナビや運転情報表示用パネルの視認性、操作性を高める高性能カバーガラスの引き合いが増えており、生産能力を増やして対応する。ディスプレー用カバーガラスを手がけるグループのAGCディスプレイグラス米沢 (山形県米沢市) が増産する。具体的な生産量は非公表だが、今回の増強によって生産能力が倍増する見通しという。車載向けでは既存の供給車種を含めて30車種以上での採用が決まるなど、持続的な成長が見込めるため。今後は、デザイン性に優れた三次元曲面形状のカバーガラスについても量産準備を進めていく。(2016年3月30日付日刊自動車新聞より)

紫外線 (UV) ・赤外線 (IR) カットガラス
-2016年6月、トヨタ自動車がマイナーチェンジして発売した 「エスティマ/エスティマハイブリッド」 の上級グレードに高機能ガラスが採用されたと発表した。後部ガラスを含めた全面に紫外線 (UV) ・赤外線 (IR) カット機能を持つ特殊ガラスが採用された。全てのガラス (三角窓を除く) を99%UVカット対応したミニバンは世界初。旭硝子の 「UVベールプレミアム・プライバシールド」 が、エスティマの 「アエラス・プレミアムG」 と 「アエラス・スマート」 の2グレー ドの全てのガラスに採用された。(2016年6月17日付日刊自動車新聞より)

-2015年12月、紫外線 (UV) を約99%カットするリアドアガラス/リアガラス 「UVベールプレミアム・プライバシールド」 が米国の皮膚がん財団の認証を取得したと発表した。認証取得済みのフロントガラスとフロントドアガラスを合わせ、自動車の全方位で同財団認証の窓ガラスを提供できるのは世界初。 (2015年12月22日付日刊自動車新聞より)

-2015年11月、紫外線(UV)の透過を99%遮断できる自動車用リア・リアドアガラス 「UVベールプレミアム・プライバシールド」 の販売を開始すると発表した。UVと同時に赤外線 (IR) も大幅にカットすることが可能。フロントガラス・ドアガラスに加え、後部ガラスにも99%のUVカットの機能を付加したのは同社が初めてとなる。(2015年11月25日付日刊自動車新聞より)


受賞

-同社傘下のAGC Automotive Americas Co. (米国テキサス州San Antonio) は、Fabricated & encapsulated glassの品質について、トヨタ「Excellence Award」を受賞した。(2016年3月16日付プレスリリースより)

研究開発体制

-グループの総合的な技術戦略を推進する 「技術本部」 が以下の研究開発組織を統括している:

  • 先端技術研究所:革新的な基盤技術の創出と、最先端のIT技術や高度な解析技術等の共通基盤技術を担当
  • 商品開発研究所:マーケット視点からの新商品の創出、商品技術課題の解決
  • 生産技術部:設備の投資執行と維持管理、生産技術の開発・課題解決・改良
  • 知的財産部:知的財産の調査・分析・出願・権利化・権利行使と知的戦略策定・推進

-2017年2月、同社は新たな研究開発体制を構築する。京浜工場(横浜市鶴見区)に新たな研究棟を建設し、現在京浜工場と中央研究所(横浜市神奈川区)に分散している基盤技術開発・新商品開発・プロセス開発を集約し、社内でシームレスに研究開発を遂行する。また、他の企業や研究機関とコラボレーションを行う空間も作り、京浜工場の立地を活かして都市型価値創造拠点として整備していく。新研究施設の延床面積は47,000平方メートル。新たな研究開発体制は2020年6月よりスタートする予定。(2017年2月3日付プレスリリースより)

-AGCオートモーティブは、日本 (中央研究所、商品開発センター)・米国 (Detroit R&D Center)・ベルギー (Gosselies Technovation Center) に技術開発拠点を置き、自動車用ガラス成形技術、および新商品の開発に取り組んでいる。AGCグループの5つのコア技術 (ガラス材料設計技術、ガラス生産加工技術、フッ素化学技術、薄膜形成技術 (表面処理)、光・電子関連設計技術) をベースとし、デジタルデザイン技術、表面処理技術、自動車ガラス生産技術などの要素技術を融合させている。



技術供与契約

(2016年12月31日現在)
相手先 (国名) 契約内容 契約期間
PT Asahimas Flat Glass Tbk
(インドネシア)
フロート板ガラス製造技術の提供 1993年1月1日より10年間 (以降毎年1年ずつ更新)



研究開発費

(単位:百万円)
2016年12月期 2015年12月期 2014年12月期
グループ全体 39,212 38,927 44,758
-ガラス部門 6,961 7,466 8,190

-2017年12月期の研究開発費計画は42,500百万円。

設備投資額

(単位:百万円)
2016年12月期 2015年12月期 2014年12月期
グループ全体 126,000 125,100 118,200
-ガラス事業 50,300 42,300 44,600


-2016年12月期、ガラス事業においては、インドネシアにおける建築用および自動車ガラス素板用等のフロート板ガラス製造設備の新設等に設備投資を実施。

-2017年12月期の設備投資計画は160,000百万円。


海外事業

<インド>
-同社のインド法人Asahi India Glass (AIS)は、Taloja工場の改修作業が進んでおり、2017-2018年度の第3四半期に操業を開始する予定であると発表した。同工場では、自動車用生ガラスなどの上質なフロートガラスを製造する。AISは30億ルピーを投資して550トンの容量拡張を行い、輸出などの地域対応も強化する。さらにAISは50億ルピーを投資してGujarat州のMehsana近郊に2段階に分けてガラス工場を新設、マルチスズキが新設したGujarat工場に製品を供給する。年間生産能力は第1段階ではラミネートガラス100万セットおよび強化ガラス120万セットとなる見込み。(2016-2017年度年次報告書より)

<インドネシア>
-インドネシア子会社Asahimas Chemical (Jakarta) はアニール工場 (バンテン州) で 「増強設備・初出荷式」を開催した。増産用設備の竣工を記念したもので、間もなく新設備での商業生産を開始する。増強したのは苛性ソーダや塩化ビニール樹脂(PVC)の製造設備で、自動車生産などが拡大する東南アジアの需要増加への対応を目的としたもの。(2016年2月17日付日刊自動車新聞より)

<ベトナム>
-2016年6月、ベトナム子会社であるPhu My Plastics & Chemicals (PMPC) の社名を「AGC Chemicals Vietnam Co., Ltd.」に変更したと発表した。また、同社の東南アジア向け塩化ビニル樹脂 (PVC) 製品のブランド名を、インドネシア子会社Asahimas Chemicalが製造・販売する 「ASNYL」 に統合し、同地域におけるAGCブランドの浸透・拡大を図る。 (2016年6月30日付プレスリリースより)

<中国>
-2017年1月、同社は中国・広東省にTFT(薄膜トランジスタ)液晶用ガラス基板の合弁工場を新設すると発表した。次世代の大型ディスプレーに対応した高性能ガラスの生産を需要地の中国で現地化する。2017年後半に新会社を設立し、19年の量産開始を計画している。現地メーカーの深圳市華星光電半導体顕示技術と合弁会社「旭硝子新型電子顕示玻璃(深圳)」を設立する。資本金は約108億円で、旭硝子が70%、深圳市華星光電半導体顕示技術が30%出資する。 (2017年1月19日付日刊自動車新聞より)

-2016年3月、中国・蘇州の自動車ガラス生産子会社の社名を変更すると発表した。現在の旭硝子特殊玻璃 (蘇州) から、旭硝子汽車玻璃 (蘇州) に改称する。「汽車」 の単語を社名に組み込むことで、自動車ガラスの生産拠点であることを広く印象づけるのが狙いだ。今回、中国の他の同製品生産子会社の旭硝子汽車玻璃 (中国)、旭硝子汽車玻璃 (仏山) と横並びの社名とし、改称を機に3社の連係を強める。(2016年3月7日付日刊自動車新聞より)

<モロッコ>
-2016年8月、モロッコで自動車用ガラスを製造する拠点を新設すると発表した。同社グループが北アフリカに進出するのは初めて。現地企業との合弁で新会社を設立し、モロッコに進出している欧州系自動車メーカー向けに自動車用ガラスを供給する。同社のベルギー子会社AGC Automotive Europeが、モロッコのガラスメーカーであるInduverと自動車用ガラスを製造する合弁会社を設立することで基本合意した。合弁会社は、2019年までにモロッコに工場を新設する計画。車載用合わせガラスや強化ガラスなど、旭硝子が持つ高品質製品の製造技術と、Induverの現地でのネットワークを融合して、競争力の高い製品を供給して事業の成長を図る。(2016年8月3日付日刊自動車新聞より)

<北米>
-ミシガン州経済開発公社 (MEDC) の発表によると、旭硝子の米国子会社AGC Automotive Americasは、拠点をケンタッキー州Hebronからミシガン州Farmington Hillsに移転する予定。MEDCからの援助がケンタッキー州やもともと拠点にしていたオハイオ州が提案した奨励金を上回った。旭硝子は、新拠点に最大849,000ドルを投じる計画。(2016年10月12日付Detroit Free Pressより)

<メキシコ>
-2016年4月、メキシコ子会社が自動車用ガラス新工場の開所式を実施したと発表した。2013年に設立したメキシコ子会社のAGC Automotive Glass Mexico (San Luis Potosi) は、年産能力約75万トンの自動車用ガラス工場を建設し、2015年後半から商業生産を開始している。メキシコ工場の本格稼働により、旭硝子グループ北米での自動車用ガラスの生産能力は年間360万トンから435万トンに拡大した。(2016年4月23日付日刊自動車新聞より)

<ブラジル>
-2016年3月、ブラジル子会社のAGC Glass Brazil (Sao Paulo) がフロートガラスの新工場を建設し、同国での生産能力を年間22万トンから2.4倍の同53万トンに増強すると発表した。費用は約180億円で、ブラジル南東部での工場建設を予定している。新工場は2018年内に完成させ、「ブラジル第2フロート工場」 として稼働する。AGC Glass Brazilでは、自動車用のガラス素板や合わせ・強化ガラス、建築用ガラスなどを製造している。現在は年間22万トンの生産能力を有するが、同国では自動車生産などの拡大によって中長期的な経済成長と共にガラス製品の需要拡大が見込まれる。(2016年3月14日付日刊自動車新聞より)

2017年12月期の見通し

(単位:百万円)
2017年12月期
(予想)
2016年12月期
(実績)
増減
(%)
売上高 1,450,000 1,282,570 13.1
営業利益 115,000 96,292 19.4

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)
-化学品の出荷増により増収。
-営業利益は、出荷数量増加やコストダウンにより増益。

中長期経営計画

-2017年2月、同社は中期計画AGC plus-2017の進捗状況を発表。同社は2017年度の経営財務目標として、売上高1兆6,000億円、営業利益1,000億円以上、ROE 5%以上を目指している。2016年度の売上高は1兆2,826億円、営業利益は963億円、ROEは4.3%となった。ポートフォリオ経営の推進により、ガラス・電子・化学品の各事業がバランスよく利益を生む構造を実現したという。同社は2020年度までにROE 8%以上の達成を目指す。(2017年2月7日付プレスリリースより)

-2015年~17年度中期経営方針 「AGCプラス」 を発表した。17年度の営業利益を14年度比で6割増の1千億円に引き上げる。売上高の目標は、同18.6%増の1兆6千億円とした。グループの強みとする 「多様性を最大限に活用」 し、収益を生み出す新たな製品や技術、市場などを開拓していく。自動車分野では、欧州向けの受注が拡大している調光ガラスを始め、収益性の高い高付加価値ガラスをグローバルに拡販する。また、中東や東南アジアではローカル企業との合弁や提携などを進め、旺盛な市場の新規需要を取り込む。 (2015年2月10日付日刊自動車新聞より)

-同社は営業利益に占める戦略事業の構成比を10年間で倍増する。モビリティー分野などを中心に、同事業の利益構成比を現在の20%から2025年には40%台まで引き上げる方針だ。従来の年間2千億円規模の設備・開発投資に加え、今後の5年間に3千億円の「戦略投資枠」 を追加し、新規分野での企業の合併・買収 (M&A) を進めていく。高付加価値商品のビジネスを拡大することで、グローバル企業としての持続的成長を図る。(2016年2月9日付日刊自動車新聞より)

2017年度財務目標

  • 売上高: 16,000億円
  • 営業利益: 1,000億円以上
  • ROE: 5%以上
  • D/E: 0.5以下