Dana Incorporated (旧 Dana Holding Corporation) 2019年12月期の動向

業績

(単位:百万ドル)
2019年12月期 2018年12月期 増減率 (%) 要因
全社
売上高 8,620 8,143 5.9 1)
当期純利益 233 440 (47.0) -
部門別売上高
ライトビークル 3,609 3,575 1.0 2)
商用車 1,611 1,612 (0.0) 3)
パワーテクノロジー 1,040 1,112 (6.5) 4)


要因
1) 売上高
-2019年12月期の全社売上高は、前年比5.9%増の8,620百万ドル。Oerlikon Drive Systems、SME、Prestolite E-Propulsion Systems、Nordresa、TM4の買収、またブラジルにおけるサスペンション事業の売却で654百万ドルのプラスとなった一方、為替影響により177百万ドルのマイナスとなった。北米では中大型トラック生産増に伴う受注で増収となったが、欧州では下半期の需要が弱含み減収となった。アジア・大洋州は中国経済の減速によるマイナス影響を受けたが、南米は比較的堅調に推移した。

2) ライトビークル向け売上高
-2019年12月期の部門売上高は前年比1.0%増の3,609百万ドル。為替の影響を除いた前期比成長率は2%。受注残消化による売上増は、アジア・大洋州でのフルフレームトラック生産減、大口OEMの現行モデル生産減等により一部相殺された。また、顧客の価格設定およびコスト改善影響により、同セグメント売上は13百万ドル押し下げられた。

3) 商用車向け売上高
-2019年12月期の部門売上高は前年並みの1,611百万ドルとなったが、為替の影響や、合併および事業売却の効果を除いた前期比成長率は2%であった。米国では2019年上半期に、ブラジルでは2019年通年で中大型トラックの生産が増加し、同セグメントの成長に寄与。

4) パワーテクノロジー向け売上高
-2019年12月期の部門売上高は前年比6.5%減の1,040百万ドルで、為替の影響を除くと前年比4%減。主な要因は需要減とプログラム立ち上げ件数減。
 

買収

Nordresa Motors
-カナダ・モントリオール拠点のNordresa Motorsの買収を完了したと発表した。Nordresa Motorsは、商用車向け電動パワートレインの開発・事業化における専門性を統合し応用している。この買収により、同社のポートフォリオであるモーター、インバーター、チャージャー、ギアボックス、サーマルマネジメントと、Nordresa Motorsの特許取得技術であるバッテリーマネジメントシステム、電動パワートレインコントロール、包括的な電動パワートレインシステムに関する専門性を組み合わせ、Danaの車両電動化技術を高めることが可能になるという。(2019年8月26日付プレスリリースより

Oerlikon Group 
-Graziano、Fairfieldブランドを含むOerlikon Groupのドライブシステム事業の買収が完了したと発表した。Danaは小型車および商用車向け高精度ヘリカルギアの技術ポートフォリオを拡張し、Oerlikon Drive Systems グループ傘下のVOCISの買収を通じてトランスミッションおよびドライブライン用電子制御システムラインナップ強化を図り、Ashwoods Electric Motorsを通じてモーター技術のさらなる拡大を目指すという。今回の買収で、Danaは研究開発施設4カ所、製造拠点12カ所を追加することとなる。ドライブシステム事業はBMW、Daimler、Fiat Chrysler、Volkswagenなどにサービスを提供している。(201931日付プレスリリースより)

SME Group
-イタリアArzignanoに本拠を置くSME Groupの買収が完了したと発表した。SME Groupマテリアルハンドリング、農業、建設業などのオフハイウェイの電気自動車向けに低電圧AC誘導および同期リラクタンスモーター、インバーター、制御装置の設計、製造を行っている。Danaの既存の「Spicer Electrified」シリーズにSMEの低電圧モーターを組み合わせることにより、最大電力を250kWまで拡張することが可能となる。SME Groupの従業員数は100名超で、イタリアのほか中国、ドイツ、カナダで事業を展開している。またDanaは、2019年第1四半期にOerlikon Groupのドライブシステム事業買収を予定しており、幅広いハイブリッドおよび電気自動車製品の供給強化を図るという。(2019115日付プレスリリースより)

 

合弁会社

-カナダの電力公社Hydro-Quebecは、Dana Incorporatedとの合弁企業Dana TM4に電気パワートレイン分野での成長促進のため8,500万カナダドルの出資を行ったと発表した。8,500万カナダドルの出資により、Hydro-QuebecはDana TM4の株式保有比率である45%を維持したまま、戦略的関係を強化する。この出資を受けたDana TM4は、バスやトラック向けの電動パワートレインシステムを製造・販売する中国企業Dana Electric Motorの株式保有率を50%から100%に引き上げ、交通の電動化が急速に進む中国での事業活動を最適化・発展させる。また、イタリアに本拠地を置きオフハイウェイ車両向けなどの多様な電気モーターを開発するSME Groupの事業を統合し、Dana TM4は小型車や商用車、オフハイウェイ車両を含む全車種向けの電動パワートレインシステムを提供できるようになるという。(2019年7月31日付けプレスリリースより
 

提携

-ValeoDanaは、エンドツーエンドの48Vハイブリッドおよび電気自動車(EV)システムを市場投入するためのグローバル規模の提携を発表した。最初の製品は2020年初めに欧州自動車メーカーの量産モデルに搭載される予定。このシステムはValeoが製造した電気モーター、インバーターと、Danaのeギアボックス「Spicer Electrified」で構成されており、三輪、四輪の都市型車両の電動化および重量2.5トン以下の車両のハイブリッド化に必要なすべてのコンポーネントを提供する。また、60V以下の低電圧構造で手頃でメンテナンスの必要性も少なく、あらゆるタイプの車両に簡単に適用できるという。(2019103日付プレスリリースより)

 

事業動向

-商用車市場向けの総コスト計算ツールを発表した。フリート管理者および独立系事業者はこのツールを使用して、ディーゼル車と電気自動車(EV)とのコスト比較を行うことが可能となる。このツールには6つの主要な「電動化優先」アプリケーション用の共通パラメータがあらかじめ入力されており、燃料、装備およびその他費用によって1マイル当たりのコストと年間総運用コストを算出する。ユーザーは、ディーゼルと電動パワートレインの評価の切り替え表示や、比較のため両方の結果を並んで表示させることができるという。(201927日付プレスリリースより)

 

受注

-北米商用車メーカーと提携し、2020年から電動パワートレインシステムを供給すると発表した。3年間のプログラムの受注額は約200百万ドル。DanaのSpicer Electrifiedを搭載するトラックは2020年後半に受注を開始し、2021年納車を予定する。同社の電動パワートレインシステムは、バッテリーパック、バッテリー管理システム、オンボードチャージャー、パワーエレクトロニクスクレードル、および電動補助システムで構成されている。(20191028日付プレスリリースより)

-カナダのアルバータ州EdmontonとCalgaryを年間に渡り貨物輸送する Class 8の大型トラクタートレイラーにモーターインバーターシステム「TM4 SUMO HP」が統合された「Spicer Electrified e-Propulsion」ソリューションを提供すると発表した。供給するトラックは、11.2百万ドル (15百万カナダドル) 規模の「Alberta Zero-Emissions Truck Electrification Collaboration (AZETEC)」と呼ばれる3年間のプロジェクトの一部で、プロジェクトには大型・長距離・水素燃料電池式ハイブリッドトラックの設計・製造も含まれる。Emissions Reduction Albert (ERA) から7.3百万カナダドルの出資を受けているAZETECは、貨物輸送燃料であるディーゼルの代替として水素をゼロエミッション燃料としてテストを行い、水素充填に関するインフラやその他システムなどの州に要求される項目も含めて検証する。(2019年8月1日付プレスリリースより

-カナダのLion Electricのクラス8電気トラック「Lion8」に製品を供給すると発表した。「Lion8」はDanaのダイレクトドライブモーター「TM4 SUMO HD」、チャージャー・インバーター「BCI20」、コントローラー「Neuro」、ドライブアクスル「Spicer DS404」、ドライブシャフト「SPL 250」などを搭載予定。2008年に設立されたLion Electricはクラス5-8のトラック、学校や公共機関などの小型・中型バス用の電動アーキテクチャを開発、製造している。(2019318日付プレスリリースより)

-クラス8の大型トラック向け電動化ソリューションを手掛けるHyliion Incorporatedとの戦略的提携を発表した。DanaHyliionの主力投資家として株式を保有しており、今回の契約でモーター、インバーター、コントロール、ギアボックスおよび熱管理技術を統合したeアクスルやドライブライン製品を供給する。2015年に設立されたHyliionは、新車のトラックや既存のトラックへ設置できるクラス8トラック用の電動ハイブリッドアーキテクチャを開発し、伝統的な6x2トラックから6x4ハイブリッドトラックへの転換を推進している。「Hyliion 6X4 HE」は、独自の機械学習アルゴリズムとバッテリー技術を採用しているため、燃費と車両性能を最適化して排出ガスを削減し、ドライバーの快適性を向上させるという。(201937日付プレスリリースより)

  

2020年12月期の見通し

-2020年12月期の売上高は、8,250ドルから8,750ドルまでの範囲となると予想している。

 

研究開発費

(単位:百万ドル)
  2019年12月期 2018年12月期 2017年12月期
全社 271 252 220
売上高に占める割合 (%) 3.1 3.1 3.1



研究開発拠点

-2019年12月期、同社は7のテクニカル・エンジニアリングセンターを保有。加えて19の研究開発拠点を有する。

   

製品開発

新型ダイレクトドライブ電動パワートレイン「TM4 SUMO LD」
-新型のダイレクトドライブ電動パワートレインである「TM4 SUMO LD」を発表した。モーター及びインバーターは、クラス2からクラス6まで対応可能で、現在1万2000台以上の電動車に使用されている「TM4 SUMO」の全体のラインナップを拡充させる。「TM4 SUMO LD」は、現在主流のダイレクトドライブ向けに設計されているが、将来的に商業用のミニバスや、中型トラック・バス、大型のクラス8のハイブリッド車両などのハイブリッドeアクスルプラットフォームが普及した場合に対してのモジュラーソリューションも提供する。現在3種類のモデルの中で、「TM4 SUMO LD」は最大250kWの継続的なパワーと1200Nmのトルクを発揮するほか、すでに世界では数千台規模で使用されている3段階のCO150インバーターと組み合わせが可能だという。(2019年4月25日付プレスリリースより

「TM4 MOTIVE」モーター・インバーター
-乗用車市場向けに「TM4 MOTIVE」モーターとインバーターを導入したと公表した。新型の「TM4 MOTIVE」モーターとインバーターは、電気自動車向け「Spicer」ギアボックスおよびeアクスルとシームレスに統合する高回転型の永久磁石モーターと高密度インバーター、アドバンスドコントロールが搭載されていることが特徴の統合的システムである。クラス2までの商用車に最適化された乗用車向けのアプリケーションにより、小型乗用車では当該モーターとインバーターのシステムは、乗用車の前輪駆動もしくは後輪駆動にそれぞれ使用することが可能となるほか、車重の重い車両については複数のシステムを連携させて作動させることができる。このシステムは現在、2020年の中国での量産を前にテスト段階にあるという。(2019年4月17日付プレスリリースより

燃料電池用バイポーラプレート
-電気バスや水素燃料鉄道(ハイドレール)など公共交通システム向け燃料電池用バイポーラプレートの設計・製造を発表した。同社が製造する複合バイポーラプレートASSYは、柔軟な製造プロセスを通じて個々のニーズと各顧客の要件を満たすようにカスタマイズ可能。また、複合バイポーラプレートに加えて金属バイポーラプレートも製造している。同社は高精度かつ高速のスタンピングと、レーザー溶接を活用する独自のプレート製造により、生産を合理化し、費用対効果の高い製品供給をサポートしている。(201941日付プレスリリースより)

 

設備投資額

(単位:百万ドル)
  2019年12月期 2018年12月期 2017年12月期
ライトビークル 179 195 279
商用車 52 27 31
オフハイウェイ 85 36 32
パワーテクノロジー 46 36 32
消去他 64 31 19
合計 426 325 393

-2020年12月期の設備投資額は売上の約4.5%となる予想で、おおよそ380百万ドルを見込む。