いすゞ自動車:タイに新興国向けトラック開発統括拠点を設置

LCVをインドで生産し、低価格ピックアップトラックも生産

2014/07/14

要 約


タイで生産するD-MAXベースのSUV "mu-X"

日本ベースからグローバル三極体制へ
いすゞ自動車は、商用車のボリュームゾーンはアジアを中心とする新興国へ移行しているとし、従来の日本ベースの事業体制から、インドネシア(新興国CV (Commercial vehicle)拠点)、タイ(LCV (Light commercial vehicle)拠点)と合わせた「グローバル三極体制」への転換を進めている。新興国市場ニーズに合った商品の展開のため、開発を現地化し生産体制を拡充する。

タイに新興国向けCV開発統括拠点を設置
CVに関しては、タイに新興国向けトラック開発統括拠点を設置し、2014年4月に運営を開始した。またインドネシアにCV新工場を建設中で、2015年に生産能力を5万台規模に倍増して稼動開始する。

インドでLCVを生産し、低価格ピックアップトラックも生産
LCVでは、次世代ピックアップトラックをGMと共同開発する。またタイに続いてインドでも2016年春にLCVの生産を開始し、低価格ピックアップトラックも生産する計画。

2014年度に設備投資1,000億円、成長費用250億円を投資
 いすゞの2013年度業績は、国内外の販売好調と為替変動効果253億円などが貢献し、連結売上高は1兆7,609億円、営業利益は1,742億円で、2年連続で増収、2年連続で過去最高利益を更新した。営業利益率は9.9%に達した。2014年度については、1,000億円の設備投資を計画し、また当期損益に反映される「成長戦略関連費用」250億円などの先行投資を行う。このため、国内外で出荷台数の増加を見込み売上高は1兆8,400億円に4.5%増加するが、営業利益は1,650億円に5.3%減少すると見込んでいる。


関連レポート: いすゞ・日野の中期計画:タイ/インドネシアを中核拠点へ (2012年10月掲載)



新興国市場強化に向け、開発の現地化と生産体制拡充を推進

 いすゞ自動車は、タイに新興国向けトラック開発統括会社を設立し、2014年4月から運営を開始した。今後、日本はベース開発に特化し、既にタイに移管されたLCVの開発に続いて、新興国向けCVの開発はタイとインドネシアの開発拠点が担当する。2015年をめどに、新興国向けの中型トラックを投入する。

CV事業:アセアン地域の開発と生産を強化

タイに新興国向け
トラック開発
統括拠点
 いすゞは、タイに新興国向けトラックの開発を統括する「いすゞ・グローバルCVエンジニアリング・センター(Isuzu Global CV Engineering center Co., Ltd: IGCE)」を設立し、2014年4月1日から運営を開始した。
 IGCEは、アセアン/中国をはじめ、世界の部品サプライヤー、並びにいすゞグループ関連会社と協業することで、市場情報の集約から商品投入に至るまでの意思決定を迅速化し、新興国市場ニーズに合致する高いコストパーフォーマンスを備えた商用車をよりスピーディーに開発する。
 いすゞは、既にインドネシアを新興国向けCVの開発・生産拠点として強化しており、両拠点が協力・分担して開発を進めるとのこと。
インドネシアの
生産能力を増強
 いすゞは、2013年10月に、インドネシア新工場の起工式を行った。1兆3,000億ルピア(約112億円)を投資して、インドネシアの生産能力を現在の2倍の5万台規模に拡大し2015年に生産を開始し、将来は8万台規模への拡大を予定。生産するラインアップも拡充して、多様な需要に応える。
新興国向け中型
トラックを開発
 いすゞは、2011年に新興国向け中型トラックをインドネシア拠点を中心に開発し、インドネシアで発売した。しかし日本仕様と共通する部分を多く残した車両であったため、新たに地域のニーズを全面的に取り込んだ中型トラックを開発し、2015年をめどに投入する。
 新たに開発するトラックは、インドネシア国内だけでなく新興国全体を攻略する戦略商品として開発する。提携している中国のトラックメーカーと協力し、中国製部品の調達を増やして価格を2割引き下げる。また部品を交換しやすくするなど、簡単に整備・修理ができる構造に改良する方針。

(注)いすゞの中期計画では、新興国向けHD(大型トラック)を中国拠点も協力して開発し、2015年までに投入するとしている。2014年7月初旬時点で、具体的な計画は発表されていない。

アフリカ・中南米事業を拡充
南アフリカ  いすゞは2013年10月、市場の拡大が見込まれる南アフリカ市場において商用車製造・販売事業の拡充を図るために、いすゞトラックサウスアフリカの出資比率を引き上げた。これまで、いすゞとGMサウスアフリカがそれぞれ50%出資していたが、GM保有株式の一部を購入し、いすゞの出資比率を70%に引き上げた。
 いすゞは、アフリカ南部を重点地域に設定。南アフリカ、ナミビア、ボツワナなどこの地域の9カ国の販売を、5年以内に2013年度実績3倍の1万台に増やす計画。
中南米地域  いすゞは、既に2011年から各新興国市場に新興国向け小型トラック(日本名エルフ)を投入してきたが、2013年7月に中南米地域を販売地域に加えた。中国製部品の採用や、日本の古いモデルのキャブを利用するなどで低価格を実現した。高い耐久性を求めず、購入費を抑えたい客層を中心に売り込む。
代替燃料車の投入
大型CNGトラック  いすゞ自動車は、CNG(圧縮天然ガス)で走る大型トラックを2015年に国内で発売する。軽油燃料に比べ、CO2排出量を2割程度削減できる。いすゞは、既に小型・中型のCNG車を発売している。長距離輸送の大型トラックには、タンク容量の問題などから向かないとされてきたが、今回エンジン性能の強化などで1回の充填で500km以上走行できることを可能にし、発売する。
 いすゞは、LCVにも新たにCNG車を設定する方針。


 LCV分野では、2012年にタイの生産能力を年40万台に増強。さらに2016年からインドでピックアップトラックと派生SUVを生産する。2020年までにD-MAXより価格を2~3割引き下げた低価格ピックアップトラックも生産する計画。また次世代ピックアップトラックをGMと共同開発中。

LCV事業:次期型車をGMと共同開発、インドでも生産

GMと次世代
ピックアップトラック
を共同開発
 2013年1月、GMと次世代ピックアップトラックの共同開発に向けた協議を開始することで合意した。GMは現在でもピックアップトラックの世界最大手だが、両社のシェアを合わせると、世界シェア25%の巨大連合となる。
 なお、いすゞとGMは長い協業の歴史があり、ピックアップトラックD-MAXはChevrolet Coloradoの姉妹車、2013年10月にMU-7後継車として発売したSUVのmu-Xは、Chevrolet TrailBlazerの姉妹車(いすゞは、PPV (Passenger Pickup Vehicle)と呼称)。
 共同開発したピックアップトラックは、今後の有望市場であるアフリカや中近東にも、共同で販路を開拓する計画。
インドで
ピックアップトラック
を生産
 いすゞは2014年1月、インドのアンドラ・プラディッシュ州に確保した約43万平方メートルの土地でLCV新工場の建設を開始した。 同工場では、2016年春から年産5万台規模でD-MAXと派生SUVのmu-Xの生産を開始する。
 さらに2020年までに、生産能力を年12万台に高め、廉価版ピックアップトラック(D-MAXより2~3割安く設定するとされる)の生産を追加する。低価格志向の強いインド市場で8万台販売する他、中近東やアフリカへの輸出4万台を計画する。 コスト低減のため部品の現地調達率100%を目指し、廉価版に搭載するディーゼルエンジンはインドGMから調達する。
 いすゞ自動車は、現在タイをピックアップトラックの生産拠点と位置付け世界100カ国に輸出しているが、インドも新たな輸出拠点と位置付けている。
トルコ  これまでは、タイ工場で生産したD-MAXをトルコへ輸出してきたが、2014年3月から地元のAnadolu Isuzuでトルコ国内向けに生産開始した。約2億円を投資し、2014年に約2,000台、2015年に2,500-3,000台を生産する計画。建設業や各種自営業の購入を想定する。


 いすゞ自動車は、2011年11月に、中期経営計画(2011年4月~2014年3月)を発表した。現在進めている各計画もこの中期経営計画の延長線上にあるとしている。中期計画の骨子を下記に掲載する。

 

いすゞ自動車の中期経営計画(2011年11月発表)の骨子

環境認識
市場認識  商用車のボリュームゾーンは、アジアを中心とした新興国に移行・拡大。中・韓・印メーカー台頭により、競争が激化している。
商品ニーズが
分かれる
 先進国:環境性能・低排出ガス、安全・快適。静粛性を重視する。
 新興国:ロバスト性(耐乱用性)ー高積載、粗悪燃料、必要最低限の装備でよい。
基本方針
事業体制  日本ベースの事業体制から、「グローバル三極体制」へ転換する。
 グローバル三極体制は、日本(ものづくりマザー機能 + 先進国CV拠点)、インドネシア(新興国CV拠点)、タイ(LCV拠点)とし、さらに中国(CVサポート拠点)とインド(LCVサポート拠点)がそれぞれサポートする。
商品戦略  新興国向け専用廉価HD(Heavy duty)を、2015年までに投入する。
 現地ニーズに合致した低価格MD(Medium duty)を開発し、2011年から投入している。
 パワートレイン:DEダウンサイジング、CNGなど代替燃料対応。
開発体制  日本はベース開発に特化、アセアン中心に現地最適商品開発のための固有開発機能を海外シフト。

資料:いすゞ自動車中期経営計画(2011年4月~2014年3月)、2011年11月発表

 

 



いすゞのグローバル出荷台数

いすゞのグローバル出荷台数 2013年度において、CV出荷台数は国内・海外とも増加し、特に海外は22.1万台で過去最高であったが、タイ市場の低迷からLCV出荷台数は前年度41.4万台から34.3万台へ減少した。

 2014年度は、CV・LCVとも増加し(海外CVは24.2万台で過去最高を更新する計画)、グローバルで合計70万台に達すると見込む。地域別には、中南米、中近東・アフリカ、中国などで拡販するとしている。


CV/LCV出荷台数(完成車およびKDセット他)

(1,000台)
2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度
見通し
CV国内
CV海外
LCV(全量海外)
73
203
364
54
194
306
42
127
259
47
206
346
59
211
299
62
214
414
75
221
343
81
242
377
海外計 567 500 386 552 509 628 564 619
出荷合計 640 554 427 598 568 690 639 700

(注)「出荷」は、(1)CVについては日本のいすゞ自動車単体からの出荷台数、(2)LCVについては、タイからの出荷台数と、日本から中国・インド・インドネシアの現地工場に出荷している各国向け専用部品の合計。

CV/LCV地域別出荷台数 (完成車およびKDセット他)
(1,000台)
CV LCV (Pickup TruckとSUV)
2011年度 2012年度 2013年度 2014年度
見通し
2011年度 2012年度 2013年度 2014年度
見通し
日本 59 62 75 81 -
北米 14 12 21 21 -
中南米 28 27 20 24 24 29 23 28
欧州 10 10 11 12 8 18 14 15
中近東・アフリカ 47 52 58 67 49 64 67 76
オセアニア 9 10 9 10 15 12 15 20
タイ 48 67 60 57 177 218 168 161
その他アジア 51 36 52
中国 56 36 42 52 25 22 20 26
海外出荷計 211 214 221 242 299 414 343 377
世界出荷 269 276 296 323 299 414 343 377

資料:いすゞの決算発表資料

 

タイでのLCV生産台数

2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度
見通し
完成車・KDセット  229,600 192,019 177,922 237,481 211,242 353,545 300,923 329,000

(注)いすゞは2012年10月に、中大型トラックを生産していたゲートウェイ工場の第2工場として、年産9万台のピックアップ工場を完成させ、タイのLCV年産能力は、3割増の40万台に増強された。いすゞは、タイ工場で生産するピックアップトラックD-MAXを世界100カ国に輸出している。

 

 



2014年度国内市場:全体需要・いすゞ出荷とも増加を見込む

 国内トラック市場は、2009-2010年度に10万台程度まで需要が落ち込んだが、2011年度から回復し、2013年度は17.1万台に拡大した。景気回復に加え、震災復興事業、公共事業拡大に絡んだ需要も販売を押し上げた。

 2014年度の見通しについて、いすゞは足元の受注状況などから普通トラックの全体需要は増加すると予測し、いすゞの国内車両出荷台数は7.5万台から8.1万台に増加を見込む。いすゞの実績では、国内出荷台数は世界全体の10%前後だが、売上高は35~40%に相当し、業績への影響が大きい。

 因みに日野自動車は、消費増税や人手不足が響いて普通トラック・小型トラックとも2014年度の国内全体需要は減少すると見込み、見通しが分かれている。

 ☆日野自動車については、別途レポートする予定。

 

国内のトラック全体需要実績と予測

2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度
見通し
普通トラック(4トン超) 62,964 41,622 51,412 59,310 68,535 79,929 増加を見込む
(注)
小型トラック(2-3トン) 70,059 48,859 54,469 65,309 75,637 91,520
合計 133,023 90,481 105,881 124,619 144,172 171,449
(注) 1. いすゞは、2014年度トラック全体需要台数は発表していないが、増加するとしている。いすゞの国内出荷台数は、2013年度の7.5万台から2014年度8.1万台に増加すると見込む。
2. 因みに日野自動車は、2014年度全体需要について、消費増税や人手不足の影響で減少を予測。普通トラック73,000台、小型トラック86,000台、合計159,000台の予測を発表している。

いすゞのシェア

2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度
普通トラック(4トン超) 29.7% 32.9% 32.8% 31.1% 33.9% 33.4%
小型トラック(2-3トン) 39.1% 40.0% 40.2% 40.2% 39.5% 39.6%

資料:いすゞの決算発表資料

 

 



2014年度決算予想:増収だが、積極的先行投資で営業減益

 いすゞの2013年度連結売上高は1兆7,609億円で、2年連続で増収。営業利益は1,742億円、経常利益1,866億円、当期純利益1,193億円で、3項目とも2年連続で過去最高を更新した。営業利益率は9.9%に達した。
 いすゞは1999~2002年度の4年間大幅な最終赤字となり、米国生産から撤退するなどのリストラを行った。またリーマンショックにより2008年度に再度最終赤字になったが、2010~2013年度は売上高が順調に拡大し、収益性も安定している。

 2014年度には、2011年11月に発表した中期計画の延長線上と位置づけて次の成長に向けて積極投資する計画。設備投資は前年度比22.1%増の1,000億円を予定し、国内で老朽設備の更新を進め、海外では現地生産を加速するための投資を実施する。また、新興国向けトラックの開発、東南アジアなどでのものづくり体制の構築など「成長戦略関連費用」250億円(当期損益に反映される費用)を投資する計画。次の成長に向けて、必要な投資だとしている。

 そのため、2014年度の売上高は1兆8,400億円に4.5%増加するが、営業利益は5.3%減の1,650億円と見込んでいる。

いすゞの連結決算

(100万円)
2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度
予想
売上高 日本
海外
533,800
890,900
433,000
647,900
498,600
917,000
558,400
841,700
592,200
1,063,400
630,600
1,130,300
660,000
1,180,000
合計 1,424,708 1,080,928 1,415,544 1,400,074 1,655,588 1,760,858 1,840,000
営業利益
営業利益率
経常利益
21,651
1.5%
15,236
11,010
1.0%
11,393
88,220
6.2%
91,258
97,373
7.0%
102,893
130,783
7.9%
141,719
174,249
9.9%
186,620
165,000
9.0%
175,000
当期純利益 (26,858) 8,401 51,599 91,256 96,537 119,316 100,000
設備投資
減価償却費
研究開発費
66,700
39,600
67,700
25,700
39,500
55,200
29,400
36,400
58,600
33,300
36,000
58,800
57,500
35,600
61,200
81,900
41,600
66,600
100,000
47,000
76,000

資料:いすゞの決算発表資料

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>