人とくるまのテクノロジー展2014:部品メーカーの出展(2)燃費向上・快適性向上

車種をまたいで搭載可能なエアコン、小型・中型車共通に搭載できるEPSなど

2014/06/16

要 約

 本レポートは、2014年5月21~23日に開催された「人とくるまのテクノロジー展2014(公益社団法人 自動車技術会主催)」での部品メーカーの出展のうち、先にレポートしたEV/HVに関連する部品・技術以外の出展について報告する。

 ガソリン車の燃費向上について、超小型ターボチャージャー・電動スーパーチャージャー、ヒートコレクター(排熱回収器)、高着火スパークプラグなどが出展された。

 新たな要求に応えるトランスミッションやEPS(電動パワーステアリング)が、出展された。

 自動車メーカーのモジュール戦略に対応する部品・技術も出展された。NSKは、グローバルに展開される複数の車種に対して、共通の設計で対応可能なEPSを出展、デンソーは車種をまたいで搭載可能な世界初のエアコンユニットを出展した。


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ガソリンエンジンの燃費向上

高着火スパークプラグ

 高EGR、リーン燃焼、ターボチャージャー装着などにより、ガソリンエンジン筒内では、混合気流が高速化し、また高電圧化している。NGKデンソーが、こうした筒内環境に対応するため開発している高着火スパークプラグを展示した。

 

ターボエンジン用高着火スパークプラグ 気流誘導高着火スパークプラグ
ターボエンジン用高着火スパークプラグ、写真下部のL字状の先端が接地電極、その上が中心電極(NGKの出展) デンソーが出展した「気流誘導高着火スパークプラグ」、
写真左「開発品」の最下部左の突起が誘導板

 

NGK ターボエンジン用
高着火
スパークプラグ
 ダウンサイジング・ターボエンジンでは、筒内の混合気の流れが速く放電電圧も上昇し、電極の消耗が激しい。接地電極(写真参照ください)の貴金属チップを拡大し、溶接の方法も変更して貴金属チップの脱落を防止する。
 また、本来の、着火位置である中心電極と接地電極の間ではなく、プラグ頭部で火花放電することがある(フラッシュオーバー現象)。絶縁体を7.7mm延長して防止するようにした。
デンソー 気流誘導高着火スパークプラグ  ガソリンエンジンの筒内環境は、今後高EGR、リーン燃焼による高流速化が進むと考えられる。このような環境では、気流を遮る位置に点火プラグの接地電極が配置されると、中心電極周りに混合気の淀みが発生し着火性が悪化してしまう場合がある(自動車メーカーのラインでエンジンを組立てる際、接地電極の向きは管理されていないとのこと)。
 その対策として、デンソーは「誘導板」を開発した。これにより、いかなる接地電極取り付け向きにおいても、気流を中心電極の周りに誘導することができ、着火性を確保できる。デンソーは、2010年代後半に製品化する計画。


 

ヒートコレクター(排熱回収器)とEGRクーラー

 自動車のエンジンで発生するエネルギーのうち、走行に使用されるのは約25%で、残りの75%は有効活用されることなく排出されている。ユタカ技研カルソニックカンセイが、熱エネルギーを有効活用し燃費を向上させるシステムを提案した。

 

ヒートコレクターとEGRクーラー 排熱回収器
ユタカ技研が出展したヒートコレクターとEGRクーラー カルソニックカンセイが出展した排熱回収器
EGRクーラー
カルソニックカンセイが出展したEGRクーラー

 

ユタカ技研 ヒートコレクター/
EGRクーラー
 ヒ-トコレクターは、暖機時に排気ガスを「暖機中流路」を通し、熱交換コアでLLC(Long Life Coolant、エンジン冷却に使う不凍液)を暖め、暖機を促進し、早期にアイドリングストップを機能させるなど燃費を向上させるシステム。更に冬季のヒーター性能向上、燃費悪化の抑制などの効果がある。
 規定温度に達するとバルブを切り替え通常の排気ガス流路に戻し、排気システムとしての出力性能を低下させないようにしてある。
 なお、ユタカ技研は、ヒートコレクターの熱交換コアの技術を応用した次世代のEGRクーラーを開発し展示した。EGRクーラーの構造は、ヒートクレクターの暖機中の流路と共通した構造になる。従来品に比べ体積を約1/2にした製品を開発した。
カルソニック
カンセイ
排熱回収器/
EGRクーラー
 カルソニックカンセイは、車両全体の「熱マネージメント モックアップ」を展示し、その一環として排熱回収器(排気ガスの熱を回収し、暖房性向上や燃費向上に貢献するシステム)を提案した。
 排気ガスが流れる際の抵抗を最小化し、理想的な縦渦を発生させる世界初のVG(Vortex generator)フィンを開発し、それにより熱交換効率を向上させ、またバイパス(非回収時の通路)と熱交換器を一体構造とした。2017年に生産を開始する予定。
 同社は、2014年1月に、VGフィンを使用する世界最小クラスのEGRクーラーを商品化したと発表。既に量産を開始している。本展示会にも「熱マネージメント モックアップ」の一環として出展した。

 (注) 既にトヨタ・アクアなどに排熱回収システムを納入しているティラド/三五は、同製品の本展示会への出展はなかった。ティラドは、同じ原理に基づくとするEGRクーラーを展示した。


 

小型ターボチャージャー・電動スーパーチャージャー

 

ターボチャージャー 電動スーパーチャージャー
1.0L未満の乗用車用ターボチャージャー、
写真の3点は全て開発品(三菱重工の出展)
ヴァレオが出展した電動スーパーチャージャー

 

三菱重工 小型高性能ターボチャージャー  CO2排出規制に対応するため、ガソリンエンジンの「過給ダウンサイジング」が進んでいる。更なるダウンサイジングや、排気量1.0L以下の小型機種対応のため、羽根車の直径を現行機種に対して80%以下に縮小した超小型ターボチャージャーを開発中。小型ターボチャージャーのラインアップを強化しているとのこと。
 本展示品は、現在自動車メーカーが開発中のエンジンに搭載されるので、数年をめどに市場に出る見込み。
ヴァレオ 電動スーパーチャージャー  電動スーパーチャージャーは、従来のターボチャージャーとは異なり、ターボラグがなく瞬時に応答する。エンジンの大幅なダウンサイジングが可能となり、12V電源駆動では、ダウンサイジング効果を含め8~10%の燃費削減が可能(他に24V向け製品を開発済み、また48V向けを開発中)。2015年に、欧州自動車メーカーがプレミアムカーに搭載する予定。

 

 



新型トランスミッションおよび構成部品

 ホンダは2014年4月、ニューヨークオートショーで新型アキュラTLXの量産モデルを発表し、2.4Lエンジンには新開発した世界初のトルクコンバータ付8速DCTを組み合わせると発表した。アキュラブランド車に、スポーティーな走りと運転の楽しさを持たせる狙いとされる。

 この8速DCT向けのトルクコンバータはユタカ技研が、トルコンのロックアップクラッチ用ツインダンパーはFCCが供給する。

 

大型ピックアップ用6速AT 高容量SUV向けFR6速MT
アイシン精機が出展した大型ピックアップ用6速AT
(写真は同社の提供による)
高容量SUV向けFR6速MT
(アイシン・エーアイの出展)
フルトロイダル機構のディスクとローラー ロックアップクラッチ用ツインダンパー
フルトロイダルCVT機構のディスク(写真左右)とローラー(中央)
(ユニバンスの出展)
ホンダの8速DCT用トルクコンバータに搭載する
ロックアップクラッチ用ツインダンパー (FCCの出展)

 

アイシン精機 大型
ピックアップ用
6速AT
 アイシン精機は、北米ピックアップトラック用の、超高容量化と省燃費の要求を満足する新6速ATを開発した。クライスラー社の、Ram1500/2500/3500(北米のClass2とClass3のトラック)に2013年から供給している。
 従来と同等サイズのまま、ワンウェイクラッチ廃止、摩擦材改良などによるひきずりトルクの低減、高容量対応の高ねじれダンパー付きのトルクコンバータの開発などにより、トルク容量をクラストップレベルに大幅向上させた。
 入力トルクは1,300Nm(従来品は765Nm)、連結総重量(GCW、牽引する車台を含む車両総重量)は19,080kg(従来品は11,810kg)、PTOの最大トルクは399Nm(183Nm)にそれぞれ強化した。
アイシン・
エーアイ
高容量SUV向けFR6速MT  ピックアップトラック・タコマや、IMVシリーズのフォーチュナーが搭載するFR6速MT。MTでは、インプットリダクション(エンジンの回転を減速してからMT変速機構で変速する)が一般的だが、本展示品はアウトプットリダクション(変速後に減速する)を採用した。アウトプットリダクションでは、インプットリダクションに比べ変速機構に要求されるトルクが小さい。
 その結果、従来品比5%軽量化した。また従来品比 +35%のワイドギヤレシオ(1速5.232、6速0.728(従来は4.171~0.799))を実現し、それにより低速での動力性能を向上させるとともに、高速走行時の燃費を改善した。
ユニバンス フルトロイダルCVT
機構のディスクとローラー
 ユニバンスは、フルトロイダルCVT機構におけるディスクとローラーの量産化技術を開発したと発表した。本件に関する多数の特許・知的財産を所有する、英国のTorotrak社と共同開発した。ユニバンスの熱処理技術、表面改質技術、精密加工技術を活かし、大幅なコスト低減を実現した。高級車への搭載を見込み、完成車メーカーや変速機メーカーへ働きかける計画。
 フルトロイダルCVT機構は、駆動力伝達および変速部がディスクとローラーで構成されており、部品点数が少なく小型軽量化に有利、アクセル操作に対してダイレクトな変速応答性が得られる、などの特徴がある。
ユタカ技研 トルクコンバータ  ホンダが北米で新型アキュラTLXの2.4Lエンジン車に搭載する8速DCTの、トルクコンバータを供給する。トルコン付き8速DCTは世界初で、素早い変速によりスポーティーな走りを実現するとともに、スムーズな始動と低速走行時走行を可能とする。
FCC ダンパー  上記トルクコンバータの、ロックアップクラッチ用ツインダンパーを供給する。ダンパーの低バネ定数化(バネを柔らかくする)により衝撃を吸収してロックアップ領域を拡大し、燃費向上に貢献する。

(注) ホンダのフィット・ハイブリッドおよび北米で発売したアキュラRLXのハイブリッド車は7速DCTを搭載するが、モータで始動するためトルコンは装備していない。

 

 



ステア・バイ・ワイヤのバックアップシステム

メカニカルクラッチユニット
次世代ステアリング用メカニカルクラッチユニット。
内部が見えている部分がローラクラッチ部、
その左奥が電磁クラッチ部。(NTNの出展)

 

NTN ステア・バイ・
ワイヤの
バックアップ機構
 日産が、スカイライン/インフィニティQ50に世界で初めて採用したステア・バイ・ワイヤシステム(ダイレクトアダプティブステアリング)のバックアップ機構で、「メカニカルクラッチユニット(MCU)」と呼ぶ。
 電磁クラッチ部とローラクラッチ部で構成。通常は電流ONで電磁クラッチが開放されているが、電気系統に故障が発生すると電流OFFとなり電磁クラッチが締結し、それによりローラクラッチが締結されて機械的なステアリング機構がつながりバックアップする仕組み。
 3個の独立したコンピュータが状況を監視し、2個以上のコンピュータが「故障」と判定すると作動する。判定後0.1秒以内でバックアップ機構がつながる。
 なお長期的(例えば20年後)には、ステア・バイ・ワイヤの信頼性が高まり、バックアップ機構も不要になる見通しとのこと。

 

 



電動パワーステアリングの出展

 

NSKの出展 ラックパラレルタイプのEPS
NSKの出展、写真左は従来製品、
右が「モジュール化対応高機能EPS」。
ジェイテクトが出展したラックパラレルタイプのEPS
DPA-EPSとBRA-EPS
ショーワがホンダを中心に納入するCセグメント車向け
DPA-EPS (写真上段) とDセグメント向けBRA-EPS (下段)

 

NSK モジュール化対応EPS  NSKは、グローバルに展開される複数の車種に対して、共通の設計で対応可能な電動パワーステアリング(EPS)を開発し、量産を開始した。様々な仕様で生産される小型および中型車に共通のEPSを搭載できるため、車両のグローバル展開に最適としている。
 ヒートシンクなどの小型化や部品点数の削減、シンプルな構造により、ECUを小型化し24%の軽量化を実現。この他モータの小型化も含め、全体で約10%軽量化した。複数の車種に搭載可能にするには、一番スペースの小さい車種に合わせることが要求されるとのこと。
 EPSを制御するECUには、従来の2倍以上の高い演算性能を持たせた。これにより、パーキングアシストやレーンキープから、さらに将来の自動運転の支援までを想定したソフトウェアの開発が可能になり、グローバルに多様化する高機能なニーズに対応する。
ジェイテクト RP-EPS  RP(Rack parallel type)-EPSは、モータをラック軸に並行に配置し、ベルトでラック軸をアシストする。モータと減速機ハウジングの小型化により搭載性がよい構造とした。開発品(まだ実車搭載例はない)。
 同社は、ラック軸を直接アシストする「RD(ラック同軸式)-EPS」を量産している。効率が高く中大型車に採用されているが、モータをラックと同軸に配置するためその部分が嵩張り、車種によっては搭載性が課題となる。
ショーワ 外乱抑制制御EPS  路面のわだち、舗装の継ぎ目を通過した際など、ハンドルをとられることがあり、また路面の凹凸などにより、ハンドルが振動することがある。従来のEPSでは、それがそのままハンドルに伝わり、不安感や不快感を起こしていた。
 外乱抑制制御EPS(The EPS with Disturbance Reduction Control)は、モータアシストにより抑制力を働かせ、ハンドルの不安定な動きを抑制して、安心感や快適性を高める。2017年をめどに、製品化する計画。
 現在この機能の搭載は、海外車が先行している。制御の精度も上がっているので、国内販売車にも普及させたいとの思いから開発しているとのこと。
DPA-EPS/
BRA-EPS
 ショーワは、ホンダを中心に、主にCセグメント車にDPA-EPS(Dual-pinion Assist Electric Power Steering)、Dセグメント車にBRA-EPS(Belt Rack Assist Electric Power Steering)を供給している。
 ショーワは、「気持ち良さ」「楽しさ」「安心」のステアリングフィールを研究・開発している。これらの評価を数値化し、またステアリングフィールシミュレータを使って商品性確認を行い、その成果を2016年頃から上記二つのタイプのEPS次期型に反映させる計画。
 その内容としては、運転していての違和感を減らし楽しさを高め、今でも人気のある油圧パワーステアリングに近い感覚を実現したいとしている。

 

 



車種をまたいで搭載可能なエアコンユニット

 デンソーは、車種をまたいで搭載可能な、世界初のエアコンユニットを開発した。小型車から高級車まで、設計を標準化したエアコンユニットの搭載を可能にした。2013年12月に発売された新型トヨタ・ハリアー、2014年1月発売のトヨタ・ノア/ヴォクシーから搭載されている。

 

COA HVAC
デンソーが開発した、車種をまたいで搭載可能なエアコンユニット「COA HVAC」の側面視。写真右側の縦長の部品はエバポレーター、写真中央はヒーターコア。

 

デンソー 車種をまたいで
搭載可能な
エアコンユニット
(COA HVAC)
 デンソーは、B~Dセグメント車を対象に、車種をまたいで搭載可能な世界初のエアコンユニットを開発した。従来は、車種ごとにサイズや構造が異なっていたが、構成部品であるエアミックスドア、サーボモータ、ブロアファンなどを新たに開発し、従来の同社製品比20%小型化することで標準化を可能にした。例えばサーボモータはこれまで複数個ついていたが、エアコンユニットの構成部品を標準化したことにより、1個に統合した。
 新製品は構成部品の共通化を進めつつ、要求される性能を実現できる構造とした。大幅な標準化を進めるとともに、小型・軽量化、高性能化を実現したとしている。
 セグメントが異なると必要な空調性能が異なるため、エアコンユニットの横幅のみ拡大・縮小して調整する(設計は標準化されている)。さらに、モ-タ出力の調整、「ドライバー席のみの空調」などの機能の追加を行う。
 この新型エアコンユニットは、エコカーにも対応できる。例えば、アイドルストップ車にはエアコンケース内のエバポレーターを蓄冷エバポレーターに置き換えることができる、またEV/HVでは、ヒーターコアを置き換えヒートポンプ式エアコンにすることなども可能。

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>