水素エンジンの開発動向
日本・欧州企業の取り組み
2025/09/01
要約
水素エンジンは、エンジン技術や生産・補修体制が転用しやすいことから既に実用域にあり、脱炭素への即効性が期待できる。欧州が使用過程車のエンジン改造も含め、トラック・建設機械などで水素使用の早期拡大を図る一方、日本は実用域を超えた限界性能で世界の先頭を切るべく技術開発を進めている。
欧州ではインフラ育成のためにも実用域での水素使用量を拡大している。2024年末のIAAショーで発表されたGCW 40tの商用車は、ディーゼルエンジンの水素化コンバージョン大手KEYOUによる量産開始が2026年初(18t車は既に量産中)に予定されており、ドイツで化学関連の物流企業などに納車が決定している。なお、KEYOUは水素100%エンジンの 92t(積載量)ダンプも試作、共同開発先のコマツは国内で実証試験を進めている。
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HySEの水素エンジンによるレース車両(出所:トヨタ) | 水素化コンバージョンのGCW 40t商用車(出所:KEYOU) |
日本では限界性能面の技術をリードする目的で、実用域を超えた二輪やモータースポーツを舞台に、異常燃焼対策や水素用部品開発など課題の抽出を進めている。その代表的な活動がHySE(技術研究組合水素小型モビリティ・エンジン研究組合)で、最新の成果として2025年ダカールラリーでのクラス2位入賞を紹介している。HySEのレース車両は、BEV、水素エンジンまたはそのハイブリッド動力車からなるMission 1000 ACT 2クラスに出場。同クラスでは2025年に出走した5台全車が完走し、1位はMAN 6×6トラックを専門業者が水素ハイブリッドエンジンに改造・エントリーした車、3~5位はSEGWAY電動オフロードバイクであった。
本稿では水素燃焼技術のさまざまな開発方向について、日欧の発表が多数揃った2025年の自動車技術会 学術講演会を中心に紹介する。