トヨタ紡織 (株) 2019年3月期の動向
2019年3月期の業績 |
(IFRS基準、単位:百万円) |
2019年 3月期 |
2018年 3月期 |
増減率 (%) | 要因 | |
全社 | ||||
売上高 | 1,417,376 | 1,407,392 | 0.7 | -中国での増産や日本の車種・構成変化により増収 |
営業利益 | 61,257 | 74,429 | (17.7) | -日本の減価償却費の増加や北米における新製品の生産準備対応、南米での為替影響により減益 |
税引前利益 | 61,489 | 75,849 | (18.9) | - |
親会社株主に帰属する当期利益 | 27,457 | 44,818 | (38.7) | - |
-2019年3月期よりIFRSを採用。
受注
-シート、ドアトリム、フィルター関連製品がトヨタ自動車の新型車レクサス「UX」に採用されたと発表した。フロントシートでは、シート表皮に伝統的な刺繍技法「刺し子」をモチーフとしたキルティングを採用。縫い目がクロスするようなデザインで、シート全体の上質感を演出する。シート形状は上下2分割シートバック構成で、腰周りを包み込む下部、ショルダー部は張りを持たせてタイトに仕上げた。(2018年12月11日付日刊自動車新聞より)
-高耐衝撃軽量発泡ドアトリムがトヨタ自動車の新型「Crown」に採用されたと発表した。世界トップレベルの耐衝撃性能を有する樹脂素材「高耐衝撃プラスチック」を活用し、発泡成形技術を用いることで、高い衝撃性能を維持しながら、従来の基材と比較し約20%の軽量化を実現した。(2018年6月28日付プレスリリースより)
合弁事業
-マツダとの取引の多いデルタ工業、東洋シートと、米国での自動車用シート生産の合弁会社設立に向けた覚書を締結したと発表した。トヨタ自動車とマツダは米アラバマ州に合弁会社を設立し、2021年から完成車生産を行う計画。部品メーカー間でも、トヨタ系とマツダ系が手を組み、受注活動を推進する。場所や工場の稼動時期などの詳細は今後つめる。 (2018年11月30日付日刊自動車新聞より)
事業提携
-豊田通商の子会社で国内大手自動車用サンバイザーメーカーの共和産業(愛知県豊田市)に出資した。豊田通商が保有する株式93.95%のうち、20%を取得し、2位の株主となった。資本参加することで共和産業との連携を強化して内装部品の品質向上や原価低減活動を推進して競争力強化につなげる。共和産業は、国内のサンバイザーのシェアが約8割。愛知県豊田市の本社工場のほか、海外では米国や中国、インドネシアにも拠点を展開している。トヨタ紡織は、共和産業からサンバイザーの供給を受け、内装システムとしてトヨタに製品を納入している。(2018年4月27日付日刊自動車新聞より)
経営計画
<2020年中期経営実行計画の進捗 (2019年5月)>
-売上高や自己資本比率等は計画に沿った進捗だが、営業利益は目標を下回る
2019年度 通期予想 |
2020年経営目標 | ||
2019年度 | 2020年度 | ||
売上高 | 13,900億円 | 13,700億円 | 14,000億円 |
営業利益 | 530億円 | 660億円 | 700億円 |
営業利益率 | 3.8% | 4.8% | 5.0% |
<事業タスク>
-環境変化 (車種構成・材料費上昇による影響) への対応
- 低コスト・適正グレード材料への置換 (ユニット部品)
- 構成材料まで含めた現地調達化の推進 (内外装部品ケナフ基材)
- 外観品質基準見直し、樹脂材料のまとめ発注による原価低減
- グローバルな経営基盤整備の加速
-新たな課題 (合理化の減少と諸経費増の影響) への対応
- シート事業戦略:グローバルに製品事業戦略を実現する最適生産体制の再構築
- 集中生産とJIT生産をすみ分け効率化
- 最適生産を支える生産技術革新 (IoTの具現化と工程革新)
- 生産拠点の寄せ止め (地域別に再編)
- 日本地域の生産/物流再編
-持続的成長に向けた取り組み
- ユニット部品事業の新製品事業化推進
- 新規ビジネス拡販:燃料電池関連 (セパレーター等)、電動関連 (モーターコア等)
- これまで精密プレスやセパレーターなどで培ってきた技術を生かし、車載用リチウムイオン電池を開発する。高容量・高出力を実現し、急速充放電が3万回以上可能とし信頼性を確保する。国内外のスーパースポーツカーメーカー向けに20年代の早い時期に実用化する計画。25年度の新規事業の営業利益100億~200億円程度に目標に設定する。(2018年5月17日付日刊自動車新聞より)
- 新興国小型車事業
- 製品開発がほぼ完了 (シート骨格、デバイス、内装加飾、軽量ユニット部品など)
- 新興国に展開している拠点の活用及び、営業拠点を強化し各自動車メーカーに拡販予定
- 2019年5月、インドのハリヤナ州グルガオン市に事務所を開設すると発表した。新事務所には営業と開発の機能を備え、自動車メーカーと車両の開発段階から連携してシートや内装品を提案していく。これにより、インドをはじめとする新興国市場の小型車事業で営業活動を強化する考え。新事務所の名称は「トヨタ紡織オートモーティブインディア・グルガオン事務所」で、従業員9人体制でスタートする予定。今後、新興国におけるユーザーの体格や安全基準といった地域特性に合わせてシート骨格や機能、シートカバーなどを提案するとともに、市場調査や新規仕入れ先の開拓を通じてシートや内装品の競争力を強化していく。(2019年5月10日付日刊自動車新聞より)
- モノづくりの進化・革新 (スマート、リーン、フレキシブルな工場)
- 自動運転を見据えた車室空間を提案 (覚醒維持システム等の開発)
研究開発費
(単位:百万円)
2019年3月期 | 2018年3月期 | 2017年3月期 | |
全社 | 46,965 | 47,393 | 37,884 |
-セグメント別の研究開発費は以下の通り。
- 日本:46,786百万円
- 北中南米:178百万円
研究開発拠点
地域 | 所在地 |
日本 | -猿投開発センター (愛知県豊田市) -大口開発センター (愛知県丹羽郡) -刈谷開発センター (愛知県刈谷市) -多治見技術センター (岐阜県多治見市) |
北中南米 | 米国ミシガン州 (テクニカルセンター) 米国カリフォルニア州 (シリコンバレーオフィス) |
中国 | 上海 (R&Dセンター) |
アジア・オセアニア | タイ バンコク (R&Dセンター) |
欧州・アフリカ | イタリア ミラノ (デザインスタジオ) |
設備投資額 |
(単位:百万円) |
2019年3月期 | 2018年3月期 | 2017年3月期 | |
全社 | 61,341 | 52,095 | 35,500 |
-新製品対応、生産設備の合理化・更新などの投資を重点に実施。
- 日本: 27,348百万円
- 北中南米: 16,989百万円
- アジア・オセアニア: 13,258百万円
- 欧州・アフリカ: 3,743百万円
設備の新設 |
(2019年3月31日現在) |
会社名/事業所名 | 所在地 | 設備の内容 | 投資予定 総額 (百万円) |
着手 | 完了予定 |
猿投工場 | 愛知県 豊田市 |
シート、ドアトリムの新製品対応、設備の維持更新 | 21,647 | 2019年 4月 |
2020年 3月 |
刈谷工場 | 愛知県 刈谷市 |
エアフィルター等の新製品対応、設備の維持更新 | 7,689 | 2019年 4月 |
2020年 3月 |
岐阜工場 | 岐阜県 岐阜市 |
バンパー等の新製品対応、設備の維持更新 | 2,044 | 2019年 4月 |
2020年 3月 |
高岡工場 | 愛知県 豊田市 |
シート、ドアトリムの新製品対応、設備の維持更新 | 1,936 | 2019年 4月 |
2020年 3月 |
トヨタ紡織インディアナLLC. | 米国 インディアナ州 |
シートの新製品対応新製品対応 | 4,014 | 2019年 4月 |
2020年 3月 |
国内投資
ー刈谷本社 (愛知県刈谷市) に新本館を建設すると発表した。投資額は約45億円で、2020年5月に完成する計画。管理・経理などコーポレート分野のほか、IT関連の部署などを集約して経営の意思決定を早める。トヨタ自動車系のグループ企業のほか、取引先や有識者など社外人材と話し合う場もつくり新技術の創出につなげる。新本館は、刈谷本社の敷地内に設ける。地上6階建てで延べ床面積は1万2600平方メートル。19年5月に着工し20年5月に完成予定。(2018年11月14日付日刊自動車新聞より)
ー愛知県豊田市の猿投工場内に次世代ラインに必要な生産技術開発などを行う「ものづくり革新センター」を新設すると発表した。投資額は約68億円で、2019年11月に完成する計画。AI (人工知能) や自動化技術などを織り込んだ次世代ラインやIoT (モノのインターネット) の具体化など、将来の生産技術の開発を加速する。国内外の各拠点との連携を強化しながら、グローバルに製品の立ち上げを強固に推進するための主要拠点としての役割も担う。同センターは、地上5階建てで建屋面積は7350平方メートル。18年11月に着工し、19年11月に竣工する予定。収容人数は450人。(2018年11月13日付日刊自動車新聞より)
海外投資
ー中国・天津市で自動車用フィルター製品を造る天津豊田紡汽車部件を新工場に移転し、生産を開始したと発表した。土地や建屋を含めた投資額は約13億円。当面の年間生産能力はエアクリーナーが60万台、キャビンエアフィルターが200万台で、従来の1.5倍の生産エリアを確保した。今後は、それぞれ生産でさらに30%の能力増強が可能になる。現地でのトヨタ自動車の生産拡大や中国の環境意識の高まりなどに対応する。製品はトヨタやデンソーなどに供給する。これまで樹脂部品は外注していたが、新たに樹脂成型設備を導入し、エアクリーナーを含む吸気系構成部品を生産から完成品まで一貫して内製でき、競争力を高める。(2018年10月24日付日刊自動車新聞より)
2020年3月期の見通し |
(IFRS基準、単位:百万円) |
2020年3月期 (見通し) |
2019年3月期 (実績) |
増減率 (%) | 要因 | |
全社 | ||||
売上高 | 1,390,000 | 1,417,376 | (1.9) | 1) |
営業利益 | 53,000 | 61,257 | (13.5) | 2) |
親会社株主に帰属する当期利益 | 29,000 | 27,457 | 5.6 |
1) 減収要因
-日本:車種構成の変化
-アジア・オセアニア:タイの減産、車種構成の変化
-欧州・アフリカ:台数減
2) 減益要因
-北中南米:新製品の生産準備費用等の増加
-欧州・アフリカ:減産および諸経費の増加