古河電気工業 (株) 2017年3月期の動向

業績

(単位:百万円)

2017年
3月期
2016年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 843,344 874,879 (3.6) -
営業利益 38,623 27,116 42.4 -
経常利益 36,024 18,710 92.5 -
当期純利益 17,570 10,007 75.6 -
インフラ
売上高 257,413 245,410 4.9 -
営業利益 14,339 7,717 85.8 -
電装エレクトロニクス
売上高 428,298 462,311 (7.4) -
営業利益 12,793 10,468 22.2 -
機能製品
売上高 124,393 130,416 (4.6) -
営業利益 11,683 8,457 38.1 -
サービス・開発等
売上高 33,238 36,740 (9.5) -
営業利益 (148) 413 - -



受注

車載用監視レーダー
-同社の子会社の古河ASはマツダが2月に販売開始した新型「CX-5」向け車載用監視レーダーに採用され、量産を開始したと発表した。自動ブレーキなどの先進運転支援システム(ADAS)用に搭載される。古河ASでは、パルス方式を用いた世界トップレベルの検知性能や安定的な品質などが評価されたとしている。マツダのADAS向けに「24ギガヘルツ(ISM帯)後方周辺監視レーダ」の供給を始めた。日系自動車メーカーが採用しているADAS用レーダーは、欧州製がほとんどで、量産モデルに日本製のレーダーが使われるのは初めて。(2017年2月8日付日刊自動車新聞より)

海外事業

<ドイツ>
-同社は、米国Superior Essex社の1部門であるEssex Magnet Wireと合弁で、耐高電圧巻線 (HVW) を欧州市場に供給するための合弁会社Essex Furukawa Magnet Wire GmbHを3月13日に設立したと発表した。新会社は、ドイツのBad ArolsenにあるEssex Magnet Wireの敷地内で操業する。Essex Magnet Wireの欧州における製造・販売力に古河電工の技術を組み合わせて、欧州自動車市場にHVWを供給することを目的とする。 (2017年3月14日付プレスリリースより)

-同社は、米Essex Magnet Wireとドイツで高耐電圧巻線(HVW)を製造する合弁会社を設立すると発表した。自動車用モーターや発電システム向けHVWを製造する。両社のマーケティング力や技術力を融合することで、欧州事業の拡大を目指す。2017年3月までに車載用電動モーター、発電機、リアクトル(静止巻線機器)に使用されるHVWの新会社を設立する。本社は独バード・アロルゼンに置き、社名は「Essex Furukawa Magnet Wire Europe」になる予定。(2016年12月9日付日刊自動車新聞より)

<メキシコ>
-自動車生産台数が増加しているメキシコにグループ4拠点目となるワイヤーハーネス工場を新設する。グアナファト州にレンタル工場を確保、2016年秋から量産開始する計画。メキシコ子会社のFurukawa Automotive Systems Mexico S.A. de C.V. (FASM)が、グアナファト州にワイヤーハーネスを生産する第2工場を立ち上げる。既存のメキシコの生産拠点での生産能力は明らかにしていないものの、新工場は、現在操業しているFASMの拠点と同じ、建屋面積9千平方メートル規模の施設をレンタルした。人員も既存工場の1,300人対して、新たに1,200人を雇用する予定で、現在操業中の工場と同レベルの生産能力になる見通し。メキシコ全体では、3拠点体制から4拠点体制になることで数十%程度の生産能力が増強されると見られる。新工場で生産するワイヤーハーネスは、トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車、マツダなど、主にメキシコで自動車生産拠点を新・増設している日系自動車メーカーに供給する計画。(2016年7月21日付日刊自動車新聞より)

<米国>
-2016年8月、米国の自動車用ワイヤーハーネス関連製品に係る集団民事訴訟で和解したと発表した。原告の自動車ディーラーや購入者に対して、合計で5,600万ドル (約57億円) を支払う。ミシガン州東部地区連邦地方裁判所の承認を経て、正式に和解が成立する見込み。(2016年8月18日付日刊自動車新聞より)



研究開発費

(単位:百万円)

2017年3月期 2016年3月期 2015年3月期
全社 17,454 16,845 16,599
-インフラ 8,763 - -
-電装・エレクトロニクス 4,711 4,263 -
-機能製品 1,837 - -
-サービス・開発等 2,141 - -

-2017年3月期~2019年3月期の研究開発投資は570億円を計画。インフラ/自動車向けが80%を占める。

研究開発活動

-同社グループは、新商品、新技術開発による新規事業の創出と展開を図るべく、国内の同社4研究所および海外のOFS Laboratories, LLC(米国)、Furukawa Electric Institute of Technology Ltd. (ハンガリー)、SuperPower Inc.(米国)を中心とする研究体制を有し、積極的に研究開発を進めている。

<電装・エレクトロニクス部門>
アルミ電線を使用したワイヤーハーネス
-車両軽量化の要請を背景とした更なる適用部位拡大に向け、高強度なアルミ電線の開発や防食端子などの関連技術開発を進めている。

自動車用バッテリーセンサー
-バッテリー電力を管理することにより自動車のエネルギー利用効率化への貢献が期待されており、拡販および受注活動とともに、高性能化に向けた開発を進めている。また、今後予測される車載電子機器の増加・電動化に対して、電源品質を維持する電源マネージメントシステムに関連した製品の開発を行っている。

ADSを支える計測技術
-先進運転支援システム (ADAS) を支える計測技術として、パルス方式により人・複数物標などの対象物を正確に認識可能な24GHz帯周辺監視レーダーを開発している。

ヒートパイプ技術
-ヒートパイプ技術を活用した熱マネジメント (均熱・放熱) 技術システムについては、HEV (ハイブリッド電気自動車) など次世代自動車への搭載に向けて、リチウムイオンバッテリーやインバーターなどの発熱量の増大に対応するべく開発を進めている。

-車載用モーターに使用される巻線の高効率化。

-自動車の電動化・電子化および電子機器の小型化・高性能化に伴い、ワイヤーハーネスの高電圧化、大電流化やコネクタの微細化、多極化への進行に対応する高機能な銅合金および貴金属めっきの開発および製品化を進めている。

-リチウムイオン電池用電解銅箔について、顧客の要求特性を満たすための銅箔設計指針を構築し、これを活用した設計を行っている。

製品開発

耐熱低低挿入力めっき材
-同社は、自動車端子向けの耐熱低挿入力めっき材を開発したと発表した。めっき表層に銅と錫の金属間化合物層を形成することで、耐熱性と低挿入力性を両立した。今春から、部品メーカーなどにサンプル出荷を始める予定。ワイヤーハーネスの端子に適している。(2017年3月27日付日刊自動車新聞より)

カーボンナノチューブ(CNT)製の線材を用いた小型モーター
-同社は、カーボンナノチューブ(CNT)製の線材を用いた小型モーターを開発した。CNT素材の巻線を使ったモーターの試作に成功したもので、電動機のコイル材にCNTを活用したのは同社では初めて。電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)用モーターの高性能化や軽量化に貢献する技術として、2030年までの実用化を目指す。(2017年3月22日付日刊自動車新聞より)

ADAS向け周辺監視レーダー
-同社は先進運転支援システム (ADAS) 向け周辺監視レーダーの実用化にめどをつけた。既にソフトウエアの開発を進めている段階で、数年以内に量産開始する計画だ。同社がADAS向けに開発しているレーダーは、パルス波による交互の送受信技術 「パルスドプラ法」 などを用いることで、車両周辺の情報を高精度、リアルタイムに収集できる。車両の周辺1メートル未満から遠方では100メートル程度に存在する物体との相対速度、距離、進行方向に対する角度などを正確に検知する。センサーモジュールは手のひらサイズに小型・軽量化し、バンパー内側などの狭小スペースへの設置にも対応できる。悪天候時でも障害物の正確な検知が可能となるため、ADAS向けに加えて、自動運転車用のセンサーにも応用できる。現在、欧州の企業と共同でアルゴリズム解析を進めており、複数の障害物が同時に近づいたり、逆に離れていく場合など、実際の交通環境を想定した複雑な演算処理プログラムを開発している。ADASではカメラを使った画像解析との連動も必要になるため、今後、他の車載機器メーカーなどとの連携も検討する。(2016年8月4日付日刊自動車新聞より)

超微細発砲光反射板
-同社は施設照明向けなどに製造・販売している超微細発泡光反射板を車載用途に展開する。LEDルームランプの照射ムラをなくすことで、LED使用量の削減やモジュールの小型化に貢献できることをアピール、新規受注を開拓する。数年後に発売する新型車での採用を見込んでおり、2020年度までに月1億~2億円の売り上げを目指す。同社の超微細発泡光反射板 「MCPET」 は、数マイクロメートルサイズの細かい気泡を無数に含んだ樹脂の発泡体。車内やインパネ用の照明装置の反射材として用いることで、LEDの照射光が空気とMCPETの境界面で乱反射を繰り返し、全方位に光の均一な照射が可能になる。平均照度が1.6倍に高まるため、LEDの数を3分の2程度に低減しても従来と同等の明るさを確保できるとしている。(2016年7月27日付日刊自動車新聞より)



研究開発拠点

拠点名 研究開発分野 所在地
自動車・エレクトロニクス研究所 自動車技術 神奈川県平塚市 (主要拠点)、
栃木県日光市 (分室)、滋賀犬上郡 (分室)
コア技術融合研究所 コア技術 神奈川県横浜市 (主要拠点)、千葉県市原市 (分室)、
栃木県日光市 (分室)、神奈川県平塚市 (分室)
先端技術研究所 新素材・新技術 神奈川県横浜市 (主要拠点)、
栃木県日光市 (分室)、神奈川県平塚市 (分室)
情報通信・エネルギー研究所 インフラ技術 千葉県市原市 (主要拠点)、
神奈川県平塚市 (分室)
Furukawa Electric Institute of Technology Ltd. (FETI) 解析 ハンガリー
OFS研究所 光ファイバー 米国
SuperPower Inc. 超電導 米国



設備投資額

(単位:百万円)

2017年3月期 2016年3月期 2015年3月期
全社 31,584 25,687 30,674



2017年3月期の設備投資

-インフラ部門:光ファイバーの増産、開発等や産業電線・機器製品の生産拠点の集約および電力事業の再編等の設備投資の実施。

-電装・エレクトロニクス部門: 自動車用電装部品、自動車用バッテリーの生産能力増強を目的とした設備投資を主に実施。

-機能製品部門:機能樹脂四品の生産設備の増産、維持更新を目的とした設備投資。

設備の新設計画

-2018年3月期の設備投資計画は38,000百万円。
インフラ部門:15,000百万円。光ファイバー・ケーブルおよび光通信デバイスの増産・開発
電装エレクトロニクス部門:12,500百万円。主に自動車用電装部品の生産能力の増強に充てる。
機能製品部門:4,500百万円。機能樹脂・放熱部品等の製造設備の新設・更新
サービス・開発等:6,000百万円。既存建物・付帯設備の維持・更新、グループ機関業務システムの更新

-2017年3月期~2019年3月期の設備投資額は110,000百万円を計画。電装・エレクトロニクス部門が38%を占める。

2018年3月期の見通し

(単位:百万円)

2018年3月期
(予測)
2017年3月期
(実績)
増減
(%)
売上高 885,000 843,344 4.9
営業利益 37,000 38,623 (4.2)
経常利益 37,500 36,024 4.1
当期純利益 20,000 17,570 13.8

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

<電装エレクトロニクス部門>

  • 自動車部品: アルミ化・機能部品の売上増
  • 電池: ハイブリッド車およびアイドリングストップ車向け鉛蓄電池を拡販
  • 銅条: 預託在庫サービスの開始と、アジアを中心とした海外市場の開拓、また純銅系製品の拡販を計画
  • 巻線: HV平角線、リボン線の堅調な拡大

<自動車部品・電池事業>

  • ハーネス: アルミ電線、防食端子、高圧ハーネス
  • 車載部品: SRC (ステアリングロールコネクター)、BSS (バッテリー状態検知センサー)、周辺監視レーダー、車内照明、等
  • 蓄電池: アイドリングストップ用ウルトラバッテリー、EN規格鉛蓄電池

中期経営計画

Furukawa G Plan 2020
-同社は、2016~20年度の中期経営計画「フルカワGプラン2020」(2016年3月期~2012年3月期)を策定したと発表した。5カ年で連結営業利益を15年度比約1.5倍に高める。売上高は9200億円以上としたものの、外部要因の影響が大きいことから具体的な数値は読めないとした。15年度の営業利益は271億円だったが、20年度には同400億円以上に増やす計画。主力の自動車分野では、高付加価値製品のアルミハーネスやエアバック動作部品のステアリング・ロール・コネクター、車載電池向けのバッテリー・ステート・センサー、レーザーレーダー用配線などの販売を伸ばす。(2016年6月2日付日刊自動車新聞より)

-自動車分野の主な施策は下記のとおり。

(1) 事業の強化と変革:
 今後も成長が見込まれるインフラ/自動車市場への注力をさらに加速していく。自動車分野では自動車の軽量化に貢献するアルミワイヤーハーネスやその接続部品、大容量かつ高耐久性能の鉛バッテリーやバッテリー状態検知センサー等で構成される電源マネジメント関連製品など、高機能製品を中心に販売拡大を目指す。

(2) グローバル市場での拡販促進:
 東南アジアや南アジアを中心に自動車部品事業の製造拠点を拡充し、成長市場への製品供給能力を増強して、海外での事業拡大を目指す。

(3) 新事業の開拓加速:
 注力分野であるインフラ/自動車市場向け製品の開発に充てる年間研究開発費を、今後5年間で2016年3月期と比べて約2割増額し、同分野での事業拡大を図るとともに、先進運転支援システムを支える計測技術である周辺監視レーダーなどの新技術を事業化していく。

<ハーネス事業>
-グローバルシフト

  • 海外日系カーメーカーの需要を取り込むべく、設計/営業を行う統括会社を中国とASEAN (タイ) に設置。
  • 縮小する国内市場に対し、市場拡大する両地域へのシフトを促進。

-アルミ化

  • 素材~電線~ハーネス化の全プロセスをグループ内に保有。グループ内の一貫生産体制により、合金開発/工程設計の最適化が可能。


<車載部品事業>
-ステアリング・ロール・コネクター (SRC)

  • 中国とASEANに地域統括会社を設置。
  • 法規制に伴い拡大が見込める地域 (インド/ブラジル) での拠点設立。
  • シェア拡大の余地が大きい欧州カーメーカーへの営業拠点設立。

-バッテリー状態検知センサー (BSS)

  • 北米/中国/フィリピン (日本向け) の3拠点の供給体制を構築。
  • バッテリー容量の劣化進行を高精度に検出可能な第2世代を2017年に投入。